とあるオタが勇者召喚に巻き込まれた件~イレギュラーバグチートスキルで異世界漫遊~

剣伎 竜星

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第4章 自由連合同盟都市国家メルキオール 首都メルキオール~北方封鎖地編

第104話 遠出の真の目的と子猫達と出会った件

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俺達はの目的であるモフモバニー討伐を終えたので、本当の目的である2つの目的、封鎖地の調査と逃亡した元薬品ギルド所属員達への威力偵察のため行動を開始した。

封鎖地に関してわかっているのは容易に立ち入ることができない毒沼地の危険地帯になっていることと、ヒュドラが封印されていることだけだ。

メルキオール内で封鎖地に関することがヒュドラによる過去の甚大な被害よって、ある種の禁忌の様な扱いになっていた弊害で、メルキオール行政府も封鎖地には定期的に監視の兵を派遣するだけに留めて、調査などは行われていない。

一昔以上の月日が経過していることに加えて、ヒュドラの再来襲の危険があるにも関わらず、封鎖地内に蔓延している毒の種類などの調査は一切なされていない。

今回の俺達の調査では封鎖地の毒の調査はもとより、俺が作り出せる手持ちの対毒装備で問題なく封鎖地内を動けるかの確認とヒュドラの封印状態を調べる予定になっている。

そして、それより先に片付けるもう1つの目的。潜伏している犯罪者共へ行う威力偵察。

これに関してはヘリオスさん達には名目として偵察と言ったが、潜伏先に突撃して後腐れなく犯罪者達を殱滅することをベルを含めたこの場にいる全員と話し合って決めている。

そもそも、なんで俺達がこんなことをする羽目になったのかというと、メルキオール行政府の年明け後の政府軍の派兵という個人的に疑念を抱く決定にある。

ギルド総長であり、行政府のトップであるヘリオスさんと冒険者ギルド長のバルガスのとっつあんは逃亡者達の危険性から即時派兵を主張したものの、政府軍の司令は逃亡した犯罪者達に軍を派遣するのは過剰であると反論。

元薬品ギルド長を取り逃がした警備隊へ責任転嫁をはじめ、犯罪者達の討伐遠征は警備隊が行うべきであると主張し、警備隊の長官と口論を始める始末だったそうだ。

以前から元薬品ギルドは犯罪者集団予備軍として警備隊内でも分類されていたのは公然の秘密となっていた。

そのため、警備隊に責任がないとは言い切れない面があるけれども、昼間からをほぼ毎日夕方までしていた政府軍司令が主張するのはなんとも……。

議論の末、正式に政府軍の派遣は決まっものの、行軍が困難な季節になっているという政府軍の主張から、行軍のための準備期間を設けることを条件として、年明けに派兵するという結論になってしまった訳である。

軍隊を動かすには金銭だけでなく様々なものが大量に消費されるから、派兵に及び腰になるのも分からなくはない。しかし、それまで何もしないのではなく、哨戒部隊位は出すべきだと思った。

窮鼠猫を噛むではないが、追い詰められた外道共に時間を与えると碌なことにならないと俺は考えているのだが、メルキオールの政府軍の司令は違う考えのようだ。

今回の俺達の行動後、派兵に反対した行政府軍司令達の懲戒免職時の調査で、派遣していたとされる監視兵も実際は派遣していなかったという不祥事が発覚した。その責任は過去に遡って、既に退官していた元行政府軍の幹部達にも及んだ。

結局、行政府軍の現幹部と元幹部の大半が不正や公文書偽造などの罪が明るみになり、裁かれることとなって、行政府軍の評判は地に落ちてしまうことになった。

閑話休題。派兵を主張したヘリオスさんとバルガスのとっつあんはこのまま犯罪者達を野放しにしておくことに危機感を持ち、師弟関係でもあるこの2人は密かに共謀していた。

封鎖地の調査は断念したが、自分達が潜伏先に内密に出張って、犯罪者達に引導を渡すつもりだった様だ。

もっとも、その企みはメリクリウス家のあの悪魔な執事に筒抜けで、要職にある2人は行動開始直前早々に簀巻き捕縛されて、今でも監視付きの書類仕事の山に囲まれている。

俺はヒュドラに関してはルシィ、薬品ギルドに関しては冒険者ギルドで所属員と間違えられたことから因縁が始まり、これまで関わってきた事件に殆ど薬品ギルドが絡んでいる。

前者については簡単に終わりそうにないのだが、後者に関しては早々に因縁を清算したいところだ。



雪が舞い散る様になった中、俺達はケイロンが牽く馬車で封鎖地を目指し、森に浸食された辛うじて馬車同士が行き来できる横幅の道を北上していた。

「マスター、【索敵】内ニ状態異常ノ冒険者、及ビソノ冒険者達ノ集団ニ追跡サレテイルノ子供達ヲ捕捉シマシタ。現状維持ナラバ3分後ニ子供達ノ先頭ニ衝突シマス。指示ヲ」

「……分かった。停止してくれ」

「了解、停止シマス」

ケイロンはすぐに速度を落し、完全に停止。箱馬車に乗っている俺たちには急ブレーキがかかった様なGがかからない停車だ。

「どうするんですか?」

ケイロンと俺のやりとりを聞いていた飛鳥が俺に尋ねてきた。

「情報が欲しいのもあるが、まずは外に出て、獣人の子供達の保護を優先しよう。どうやら追いかけられている子供達は数日間まともな食事を摂っていないみたいだ。追ってきている冒険者と思しき集団は迎撃する。ああ、向こうの攻撃で

「でしたら食事の用意も必要ですね」

「我等が並のことで傷を負うことはないのじゃが、何故ご主人はその懸念と冒険者と思しき集団と言ったのじゃ?」

「主様、なぜでしょうか?」

飛鳥は獣人の子供達の栄養状態に反応し、普段しない俺の指示にクロエとルシィが揃って可愛らしく首を傾げて訊いてきた。

飛鳥を含めた3人は【索敵】と【鑑定】のスキルを、2つとも持っていない。俺が説明する言葉が足りなかったこともあるけれども、

「もうすぐ見えてくるから、聞くより冒険者と思しき集団が。怪我してもすぐにどうなる訳ではなけれども、傷口からされていって完全に侵食されると向こうのになるから注意してくれ、ケイロンは子供達を追ってくる奴等の先頭に弓矢で牽制した後、分離して迎撃に加わってくれ」

「了解。射撃武装装備完了、目標確認、牽制ヲ開始シマス」

ケイロンが返答して矢束を放った直後、

「ッ! 前!」

「!?」

「こっちにも!?」

後ろを気にして前への注意が疎かになっていた3人組みの猫獣人の子供いや、幼女達が俺達の存在に気づくのが遅れて足を止めた。

背丈はほぼ同じで各々髪の毛の色だけが見事に違う黒桃白の3色。

なぜこの子達だけの逃避行なのかは謎だが、今はそれよりも後ろから迫ってきている危険要素を排除しなければならない。

「「「アぁア、ああアああアああああッ!」」」

奇声をあげたのはもちろん3人を追いかけていた冒険者の姿をしたファンタジーでは有名な達。

しかも、死体から作られたのではなく、変えられていくタイプの厄介なものだ。

直接【鑑定】で見ると、その異常さが際立って分かる。

度合いが低い者は動きに不自然さが僅かにある二足歩行で瞳は虚ろ。

体形からようやく女性とわかる姿の者ももちらほらいるが、いづれも髪の毛はぼさぼさで口をだらしなく開けて涎を溢しているその有様は女性としての自我意識があったら絶対にしないだろう凄まじい形相だ。普通に怖い。

【鑑定】結果から、この状態ならばまだは可能。

その一方で、侵食度合いが危険域に入る者は映画「エク×シスト」に出てくる悪魔憑きの様にブリッジした状態でスパイダーウォークをしている。しかも、動きが異様に早い。

その姿を見て、飛鳥はグロやホラーに耐性がないのか、見るからに顔色が悪くなっている。

戦闘に支障が出そうだったため、今回は逃げてきた子供達を飛鳥に任せることにした。

飛鳥は一緒にメルキオールの孤児院を訪問したときに子供達の世話をしていたから大丈夫だろう。飛鳥の補佐に幼女メイド形態のクロエを付ける。

「踏ミ込ミガ甘イッ!」

ゾンビ共をスキル【挑発タウント】で引き付けているケイロンが後ろから襲い掛かってきた侵食度(軽)ゾンビを馬脚の後ろ脚で蹴り飛ばした。

直撃した様に見えたが、ケイロンはゾンビが持っている盾と体が重なる様に狙っい、更に【手加減】をして、蹴り飛ばしている。

俺はというと、

「ガあッ!?」

ケイロンが無効化していったゾンビを魔術の【氷結棺フリーズコフィン】で【凍結】して【空間収納】に入れていく。
【空間収納】内であれば時間経過も設定で弄れるうえ、解析がとてもラクになるのだ。更に、ゲームと違って倒した後に残る邪魔な死骸に足を取られることもない。

意図していなかったが『しまっちゃうおじさんコンボ』がここでも恐ろしく輝いている。

「お前等、相手はたった3人なのに何をしてミャウか! さっさと倒してシロネ達をボクの下に連れてくるミャウ!!」

ミャウミャウうるさい小柄な猫獣人がゾンビ冒険者達を叱責して、命令した。

保護した子供達よりも獣としての色合いが強い外見で、衣服はボクサーパンツだけ履いている。上半身は体毛だけの半裸姿だ。

言動からもコイツがゾンビ共を操っているのは確定的に明らかだ。

直に【鑑定】して分かったことだが、コイツの名前はミャック。称号に裏切り者と冒涜者とある。いろいろやらかしているのだろう。

しかも、コイツは元薬品ギルドの犯罪者達ともつながりがあると備考に出ている。

「ルシィ、いけるか?」

「はい、主様。【聖火焔ホーリーブレイズ】!」

ルシィの光と炎の合成魔術【聖火焔】の白い炎に【空間収納】に入っていないゾンビ共は包まれた。

この【聖火焔】は邪霊や悪霊、死霊に特攻があり、憑依を解除して依り代にはダメージを与えない。但し、完全に侵食されてしまうと手遅れで解除効果がなく、消炭になってしまう。

「あれ? 俺は何を? なんでこんな所にいるんだ?」

「うあっ、俺はなんでこんな体勢に!? こっ腰がぁ」

目論見通り、ゾンビ化が解除された。ブリッジスパイダーウォークをしていたゾンビだった冒険者も腰骨という犠牲を出したものの、数名が無事に意識を取り戻した。

「ミャんだと!? お前達、折角のボクの手駒共になんてことを!」

ミャックとか言う害獣がうるさく騒いでいるが、奴には元に戻った冒険者達を含め、冷ややかな視線が一斉に突き刺さった。

「アレは君達の仲間のか?」

飛鳥とクロエのおかげで落ち着いた3猫娘に俺が問うと、白い髪の子は首を横に振り、

「いいえ、お父様達を怪我させた悪い人です」

「そうよ。アイツは冒険者達を操って私達の集落を襲わせたわ。死んだ人はいなかったけど、大怪我した人が出たの。目的が私達だったみたいだから、私達は集落のために逃げていたのよ」

桃色髪の子に次いで、闊達な黒髪の子が答えて、未だにミャウミャウ五月蝿い害獣を睨んだ。













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