女神様にスキルを貰って自由に生きていいよと異世界転生させてもらった……けれども、まわりが放っておいてくれません

剣伎 竜星

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第1章 王国の北方、アウロラ公爵領で家庭教師生活

第18.5話 (別視点)大人達の密談その2

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◆◆◆

(教授視点)

「……それで、シャルロット嬢は無事に魔術を使えるようになったんだね?」

「ああ! 教授お前が派遣してくれたディーハルト君のおかげでな! 魔術が使えないことに意識が向き過ぎていたから、まさかシャルに遺失していた当家の秘術の『黒神蛇亀』が潜んでいることには考えが及ばなかった!!」

映像水晶が映す現アウロラ公爵アイザックザックの顔は祝杯の酒によって赤くなっていた。シャルロット嬢の件で酒の量を減らしていたみたいだが、ディーハルト君が解決したから、ここぞとばかりに堪能していると見える。

「その顕現した『黒神蛇亀』はどうなったんだ?」

今回の話し合いにも臨席している現ウェルダー公爵アレックスアレクが上機嫌のザックに尋ねた。

「ディーハルト君が張った結界魔術で隔離された先で転ばされ続け、最終的に完全に心を折られて、ディーハルト君に降参。どういう交渉をしたのか、契約を拒否していた『黒神蛇亀』は手の平を返して、ディーハルト君の仲介でシャルと正式な魔術契約を結んだ。そして、ディーハルト君が作り出したという『人化魔術』で肉体を得て、うちに客将待遇で迎えている。流石にあの大きさでは屋敷に入れないからな」

とザックは思い出し笑いをした。その様子をザックとアレクは満足そうに頷いていた。

ディーハルト君との関係はアレクはザックに、フレア嬢はシャルロット嬢とほぼ同じだ。過去、フレア嬢もディーハルト君の手によって忌まわしき帝国の負の遺産から解き放たれたのだ。

その影響からか、フレア嬢のディーハルト君への執着と依存が凄まじいことになっている。本人達は否定しているが、端から見れば立派なバカップルだ。爆発しろ。

……まてよ。つまり、シャルロット嬢もディーハルト君に懸想している可能性があるのか。これは私の愉悦……じゃなかった。ディーハルト君の幸せのためにシャルロット嬢の気持ちを一度調べておく必要がありそうだ。


「……それにしても、何故、ディーハルト君は英霊教団をあれほど敵視して、竜炉のことで『黒神蛇亀』に激怒したんだ? 教授とアレクは私よりも彼と付き合いが長いからなにか知らないか? 知っていたら、教えてくれ」

笑いを止めたザックがポツリとそう言って、私達にディーハルト君のことについて尋ねてきた。

アレクは英霊教団と竜炉の単語に反応して、私に視線を向けて、ザックに説明するよう促してきた。

アレクも知っているはずだが、君の立場と、彼との関係上、私の方が適任か。仕方ない。

「当事者私達がディーハルト君と英霊教団、彼がその身にもつ竜炉について詳しく語ることはできないから、私があらましを話そう。詳しくは直接ディーハルト君本人に訊いてくれたまえ。きちんと信頼を得ているならば彼はザックに教えてくれる……ハズだ。

さて、ディーハルト君と英霊教団の関係だが、ディーハルト君にとって英霊教団はご両親と親友の命を奪った仇だ。ご両親が仇であることはザックも彼のことを調べて知っているだろう?」

ザックの下にいるセバスチャンとは私もアレクもザックと知り合って以来の長い付き合いとなっている。
彼がディーハルト君のご両親の情報をザックに伝えないことは絶対にないと確信できる。

「ディーハルト君が持っている竜炉は元々、英霊教団に殺された彼の親友が持っていたもので、教団から派遣された狂信者は竜炉を奪うべくを殺害したのだが、駆けつけたディーハルト君の手によって奴等はした」

私の話しを聴いて思わず息を飲む、ザックと険しい表情をするアレク。

「教団の狂信者が放った治癒手段がない外法禁呪によって、致命傷を負ったディーハルト君の親友は、今際の際に彼に託し、亡くなったそうだよ」

自分の口にした言葉だが、改めて壮絶な最期だっただろうことに思い至る。

ただこれは、ディーハルト君が竜炉を託されたとき、私は王都を離れていただけでなく、ディーハルト君はまだ出会っていないころ。この話はディーハルト君が王立学園の生徒だったときの出来事だ。

そして、この話は功績を挙げるも問題児であるフレア嬢とディーハルト君に胃と頭皮を痛めつけられたあの学園長に2人を押し付けられたときに聞かされた話だ。

「ディーハルト君は自分の評価をあまり気にしない言動が多い一方で、親しい人や恩義を感じる人に対する侮辱は決して許さない性格であるのは第二王子馬鹿殿下への苛烈な対応が記憶に新しい。竜炉の力を誇示して多くの貴族男子が渇望している王位を望まないのが救いだ。もっとも、彼の逆鱗に触れれば彼は躊躇いもなく、その愚か者に鉄槌を下すだろうがね」

そう言って、私はこれまでのディーハルト君の挙げた多くの功績と彼がやらかしたために私が対処せざるを得なかった後始末を思い出して嘆息せざるを得なかった。

爆弾娘フレア嬢も彼と同じ様なモノなので、彼女の父親であるアレクの顔色も私同様、悪くなっているはずだ。

「そういえば、娘で思い出したが、ザック、シャルロット嬢の姉で王立学園に通っている君の家の長女殿とは仲直りをしたのかい?」

この後、この迂闊な発言をした自分を私は殴り飛ばしたいと何度も思う羽目になった。なぜなら、私は酔いも回って号泣するザックの愚痴に朝まで付き合わされることになったからだ。

道連れにしようとしたアレクは事態を察して、既に映像結晶の通信を切断して逃げ去った後だった。

しかも、ザックはいつのまにか私の映像結晶の操作を完全に掌握していたため、私は私の意思で通信を切断できなくなっていた。脳筋のザックに映像結晶の操作掌握という高等技術ができるはずがない。おそらくディーハルト君がこうなることを予測して教えたのだろう。謀ったなぁ!
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