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部下に手を出しまくったくせに私が浮気すると独占欲ですか…

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電話が掛かってきた。
「はい。池淵です。」
「あ、あの…池淵丈太郎部長の奥様ですか?」
「ええ。どうかされましたか?」
若い女性の声だった。
「私、部長の部下の谷内と言います。そ、その…大変申し上げにくいのですが、ご主人に最近言い寄られていて…仕事にもプライベートにも支障をきたすレベルで…」
「分かりました。なんとかします。」
「そうして頂けると助かります…」

もう慣れている。これまで何度もあった。まったく……いい年して何してるんだか……
呆れているだけでは私と被害者の損だ。とりあえず帰ってきた夫にはきつく叱る。
「あなたねぇ、また会社の女の子から電話があったわよ?いい加減にしなさいよ」
「ん?ああ。谷内か……」
この期に及んでもこの男はヘラヘラしている。
「懲りないのね。私に何度『仕事とプライベートは分けろ』って言われたかしら?」
夫が少し狼狽えたのが分かった。
「まあ落ち着けよ、そんなカリカリすんなって」
私はここで怒りを爆発させぬようこらえる。そして冷静に、穏やかに言い放った。
「そうやって笑ってごまかしても無駄よ。そんなことして何がしたいの?いいかげんにしなさいよ。」
若いころからこの人は顔がそこそこ良かったせいで、最近女性に気にかけられないのが少し気に食わないのかもしれない。結婚について、私は人生最大の失敗をした。そう思わずにはいられなかった。
まあ大丈夫。私は私で。

「…はぁ…はぁ…あんっ!ああぁっ!」
「はぁ……はぁ……本当に綺麗だね…30越えてもどんどん可愛くなってる…」
「あぁんっ!そんな……あんっ!やぁん!い、いっぱいきてぇ!」
「ほらっ、もっとよがって喘いで!その可愛い声聞かせて?」
「あぁっ!いやぁっ!ああんっ!」
私の結婚生活は失敗した。でも私はまだ諦めていない。
私にはこの人がいるから。きっと大丈夫。
目の前にいる、高校の時の同級生と過ごしながらいつもそう思っている。
「あなたっ!もっと激しくして!」
「はぁ……はぁ……ああ。分かってるよ」
この人と幸せになるためには、まだまだ頑張らないと。夫とうまく溝を作って、離婚したいと思っている。

そしてそのことが、バレた。
「どういうことだよ!」
「あ、あんたこそ何よ!人のことばかり!」
「…ごめん。でも、君を失いたくないんだ…」
ここへ来て独占欲?
「散々浮気しといて何言ってんの?」
「それは、ごめん。でも、俺は君が好きなんだ!」
「私は嫌いよ!大っ嫌い!」
「そう……か……」
涙ながらにうつむく彼が、今でもやっぱり本当に好きだった。
でも、離婚はする。私の幸せのために。
「お引き取りください!」
「待て!待ってくれ!!」
ああ、もう……どうして?
「なんで私がいるのに浮気しまくったの?若い子ばっかりだし!私のことは遊びだったの?」
「ごめん。本当に……でも、君を失いたくなかったんだ……」
「はぁ?なによそれ!都合いいわね!」
「俺は君のためなら何でもするから……だから離婚だけは……」
「ふざけないで!!!」
ああもう最悪!結婚したときの幸せっぷりが脳裏に焼き付いている。一生この人と一緒にいられるんだと思った。
でも、現実はそううまくいかないものだった。私が結婚した相手は、私以外にも愛する人がいた!
「君のことが好きなんだ!」
もううんざりだ。これ以上裏切られるのはまっぴら御免だった! だから私は言ってやったのさ。彼の心を折るためにね?
「もういいよ……離婚しよう?私もあなたの他に好きな人ができたし」
「……」
ああ、これで私の結婚生活は終わりだ。
「分かった……」
「……ありがとう」
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