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第五章 ヒノボリの神隠し
都
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無事昼食を済ませた僕らは、元々身軽だったこともあり、そのままヒノボリの都を見て回ることにした。
時刻は、太陽の位置と体内時計を擦り合わせた結果、午後二時頃だと自身がはじき出す。
「さて、どっから見て回る?」
満腹堂から出た軒先で、立木さんがそう切り出した。
正直、どこに何があるかも分からないため、いざそう聞かれると言葉に詰ってしまう。
それはターナも同じなのか、「うーん」と僕ら二人は早々に考え込んでしまうのだった。
「調達したい物資があると言っていたが、商店街を見て回るかい?」
池谷さんが提案してくれるが、クロッキアさんが「いや」と待ったをかける。
「荷物を増やすのは、宿に帰る際で構わない」
「あぁ、それもそうだね。となると、まずは適当に都でもぐるっと回ろうか」
「そうしてもらえると助かる。おそらく、歩いていれば興味を引くものもあるだろう」
と、クロッキアさんはヒノボリ初心者の僕とターナを見やった。
た、たしかに・・・・・・。
既に、都のあちこちに聳える櫓がなんなのか興味津々だけど、僕は。
「んじゃ行こうぜ。ちびっ子ども、はぐれて迷子にならねぇようになー」
歩き出す立木さんの言葉に、ちびっ子(僕とターナ)が「はーい」と返事を返す。
大通りを横切り、家屋がひしめき合う路地を進んでいく。
やはり、こうして改めて見てみても、ネグロフと違い木造建築がほとんどだ。
歩いている分には時代劇の撮影セットに迷い込んだような感覚で、扉が障子だったなら完全に江戸の街並みになるだろう。
しばらくきょろきょろしながら歩いていると、僕らは櫓のすぐ傍まで来た。
「立木さん」
「おう、どうした?」
「この塔みたいなのって、どういう意味があるんですか?」
「あぁ、これはなぁ」と、僕と同じく見上げながら説明してくれる。
「物見櫓だな。二十四時間、交代で都全域を警戒してんだよ。防犯の意味合いもあるし、火事なんかの防災の意味合いもある」
「あ、そっか・・・・・・木造の建物ばかりだから、火事が起こったら大変ですもんね」
「そうなんだよなぁ。一応、防火処理した建材使ってるはずなんだけど、燃えにくいってだけで燃えないわけじゃねぇからな」
加えて、遠望まで見渡しやすいように、宿屋や特別な理由のある建物以外は、原則として平屋建てなのだとか。
言われてみれば、背の高い建物ってほとんどないかも・・・・・・。
「都を囲う外壁付近の櫓は、外敵や不法侵入者の警戒もしてる。ま、東方は比較的魔族からの侵攻が少ない地方だから、そこまで神経質になってないんだけどな」
「そうなのですか?」
ターナが意外そうな顔をあげ、それにヒノボリの異人二人が頷いた。
「東の奥地には、古い獣憑きが棲まうとされていて、実際に魔族の侵攻が来たことはないそうだよ。過去、記録されている交戦では、いずれも北東、南東からの侵攻と記されている」
「獣憑きって、魔族も襲うんですか?」
お、驚きだ・・・・・・勝手なイメージだけど、人間ばかりを襲うものだと思っていた。
「古い獣憑きそのものがまずもって眉唾なのだけど、仲間意識はないだろうね。獣憑きというのは魔人の一種とされているけど、その本質は狂気と混沌だ。早い話が、無差別ということさ。一般に、彼らは『生命』であれば人間・魔族関係なく襲うと考えられているから」
いつしか、話は櫓から獣憑きの伝承へと変わっていく。
東方に古くから伝わる、怪物のお話。
ヒノボリの異人曰くそれは、人でもなく、魔でもないもの。
神秘に溢れるこの異世界において、怪と銘打たれた無明の存在。
その始まりは、信仰という概念の誕生にまで遡る。
神が生まれ、次いで天使と悪魔が生まれた。
その過程と同じように、獣憑きは当初、土地神の祟りとして産声をあげたという。
日本で言うところの土着神という存在に、類似しているそうだ。
つまり、元来の認識としては、獣憑きは魔人ではなく自然に属する存在であり、精霊あるいは一種の神格ともとれる。
しかしながら、人間の魂に宿るという性質からか、人々はこれを魔ととらえ、魔人の一種として分類したというわけだった。
「祐介君、精霊や神格には詳しいかい?」
池谷さんからぽんっと質問が飛んでくる。
もちろん、僕はそんな神秘的な知識を持ち合わせておらず、せいぜいイメージできて精霊が関の山だった。
「いえ、ゲームとかマンガくらいでしか知らないです」
「はは、だろうね。俺や隆也もそうだったよ。けど、意外にもそのイメージは外れていないんだ」
精霊とは、一般に考えられる魔族や魔物、魔獣ではないのだとか。
彼らは超自然的な存在であり、どちらかというと星の意思が仮初めの姿を得たものとされる。
つまり、精霊というのは惑星の代行であり、よりざっくりと言えば指向性を持った自然そのもの。
それとは別に、神格とは文字通り神様そのものだ。
獣憑きの場合、遙か古来からその土地に棲む神のことを指し、時には強大な精霊もこの神格とされる。
精霊も神格も、原始的宗教としては地球にも存在した概念であり、日本では「八百万の神」が有名だろうとのこと。
「つまりは、元を正せば獣憑きとは自然霊の一種であり、それがこの異世界特有の形として生まれたものだと、俺や隆也は考えている。特に、俺らは日本人だから、この手の話は割と身近なんだよ。祐介君も、九十九神とかは聞いたことくらいはあるだろう?」
「は、はいっ」
まさしく、そういったものは創作物のモデルとして格好の存在だった。
だから、理屈はともかくとして、言われている内容そのものは想像以上にすっと頭の中に入ってくる。
ということは、獣憑きというのは神様が凶暴化したものなのだろうか。
そんな疑問を口にすると、池谷さんは「捉え方にもよるね」と答えた。
「西洋と東洋でもそうだけど、一神教や多神教でも物の見方は随分と違ってくる。この世界で言えば、セントメアなんかは神を絶対的な存在として見る。彼らが、獣憑きを『神』として認めることはないだろう。彼らにとって、『神』というのは絶対であり不滅だからだ。到底、人や魔族が打ち倒せるものではないし、それが可能だとするならば、それは『神』ではない、と答えるだろう」
だから、獣憑きが神なのか、という議論では答えはでない。
あくまで、獣憑きを神格と見るか、それ以外の存在と見るか。
ただ、重要なのは噂や伝承で語られる以上に、獣憑きというものは恐ろしいものだということ。
「御仁、噂は聞いているかな?」
「・・・・・・人を喰うという、獣憑きの話ならば小耳に挟んだが」
「それだ。かれこれ半年以上調査を続けているが、一向に事の真相へは辿り着けない。神隠しだの獣憑きだのと噂に尾ひれはついていくが、行方不明という点で見れば人身売買との判別さえ、苦戦しているのが現状だ」
「なるほど・・・・・・警戒はしよう」
けど、半年以上も前から問題になっているなんて思わなかった。
それはクロッキアさんも同様なのか、ヒノボリの異人二人へ話の詳細を催促した。
「実は俺達がヒノボリの異人として皇に迎え入れられたのは、この行方不明者の調査が入り口だったんだ。最初の兆しは概ね一年前。だが、俺達が本格的に調査に乗り出す以前は、人身売買の線が濃厚とされ、実際に違法に手を染めている商人も数人、捕らえることができた」
「ということは、奴隷商を捕らえた以降も行方不明が発生したということか」
「その通り。いくら商人にも悪人がいるとはいえ、その違法が見つかってない時でさえ、行方不明者は増え続けた。そこで、半ば消去法のままに俺達は獣憑きの仕業という線でも、調査を始めたというわけさ」
「ふむ。・・・・・・我々は、北から東への道中で、獣憑きの噂を耳にした。そこでは、人を喰う蜘蛛の獣憑き、と聞いたな」
蜘蛛の獣憑き、ねぇ――と池谷さんと立木さんは虚空を見上げる。
さっき言っていた通り、噂に尾ひれがついた結果なのかもしれない。
「そもそも、人身売買と考えられた最大の理由が、遺体だ」
「遺体、ですか?」
これは、ターナのもの。
声音にも、不安げな胸中が表れている。
「あぁ。行方不明者は全員、遺体さえ見つかっていない。獣憑きが元凶ならば、まず死人が出てもおかしくはない。だが、それがどうにもこうにも見つからない。となると、こっちとしては獣憑きの線で調査しようにも、足がかりがないんだよ」
「確かに。遺体がないとなれば、奴隷商による違法な人身売買、というのが有力だろうな。・・・・・・行方不明の際、どこにいたか、どこから姿を消したか、も調べ尽くしたのだろう?」
ターナに答えたのと同じく、池谷さんは頷いた。
「最終目撃者も最後に目撃された場所も、共通点らしいものはなかった。無理矢理こじつけるなら、全員がこのヒノボリの都で姿を消した、という点だな」
けど、それは共通点ではあるが、足がかりとするには規模が大きすぎるとのこと。
とはいえ、絞り込もうにもそれ以上は、目撃者も目撃地点もてんでばらばらなのだとか。
「っと、すまない。観光途中だというのに、暗い話になってしまったね」
しまった、という風に池谷さんが背中越しに謝ってくる。
それに、僕もターナも「大丈夫です」と答えた。
元々ヒノボリの噂は耳にしていたし、危険に対する情報はしっかりとしておくに越したことはないと思うし。
とはいえ、話し込んでいる内に結構な距離を歩いたらしく、気づけば僕らは西の城壁近くまで来ていた。
まさしく巨壁そのものであるそれは、木造中心のヒノボリで数少ない石造りのものだ。
「そうだ秀司、寺院に寄っていこうぜ。観光ならぴったりの場所だろ」
「あぁ、言われてみれば」
二人とも思い出したようにそう言うと、少し遠目に見える建物を指差した。
皇宮に少しばかり似た雰囲気のそこは、寺院と呼ばれる場所で、神に祈りを捧げる礼拝堂らしい。
「ま、早い話がお寺だな」
「あ、なるほど」
立木さんの言葉に相づちをうつ。
今の例えは、すごく分かりやすかった。
気づけば、商店や住宅もまばらとなった開けた空間にでており、幾つかの石段の先に、目的の建物があるのがすぐに分かった。
「あ、あの・・・・・・」
すると、後ろから控えめな声が僕らの背を叩く。
振り返ると、何やら思い詰めたような表情を浮かべたワクナさんが、歩を止めて立っていた。
胸元に両手を握り、明らかに深刻な様子だ。
誰よりも早く傍にターナが駆け寄り、「どうしましたか?」と聞いた。
「・・・・・・ごめんなさい、私はここで待っています」
皆さんで楽しんでください、と続けるその言葉尻は、震えていたようにも聞こえる。
僕も心配になり駆け寄ると、それに続くようにして他の三人も集まってきた。
「ワクナさん、気分が悪くなったりしましたか?」
近くに腰を落ち着けられる場所がないか探しながら聞くと、数秒の間を空けて首を横に小さく振った。
どうやら体調不良ではないみたいだけど、顔色はよくない。
すると、クロッキアさんが口を開いた。
「ユウスケ、ターナ、彼女の傍にいてやってくれるか?」
「え・・・・・・はい、もちろんいいですけど・・・・・・」
「頼む。・・・・・・異人殿、少し話がある」
こっちへ、とクロッキアさんが池谷さんと立木さんへ目配せをする。
二人は顔を見合わせながらも、とりあえずは言われた通りに離れた場所へ歩いて行った。
「あ、あそこにちょうどいいベンチがある」
「ワクナさん、あそこで休憩しましょう」
「・・・・・・・・・うん、ごめんね」
ターナと二人で、ワクナさんを池の前にあったベンチへ誘導する。
ちょうど三人で座るくらいの横幅で、そのままワクナさんを真ん中にして、僕とターナが両脇に腰を下ろした。
その後も、依然としてワクナさんは思い詰めたような表情のままだ。
どうしたのか聞こうとも思ったけど、自分から理由を話そうとしないということは、触れられたくないのかもしれない。
ちらりとターナの方を見やると、彼女も小さく頷いた。
これは、追求するよりもまずは傍にいて安心させよう、という合図だと僕は受け取る。
ワクナさんの様子を伺いながらも、僕は遠目にクロッキアさん達を見やる。
何やら話しているみたいだけど、何を話しているのだろう。
気にはなるけど、クロッキアさんは僕とターナにワクナさんを任せたのだから、それを放ってはいけない。
そうこうしていると、しばらくして三人が戻ってきた。
「待たせたな」
「いえ、僕らは大丈夫ですが・・・・・・どうしたんですか?」
クロッキアさんに聞くが、珍しくすぐに返答は返ってこなかった。
察するに、言葉を選んでいる風に感じるのだけど・・・・・・気のせいかな。
「少し、な。ユウスケ、買い物をして一度宿屋に戻ろう」
歯切れの悪い様子に違和感を覚えるが、僕はすぐに頷くことにした。
さすがの僕でも分かるくらい、詮索無用といった空気が漂っていたからだ。
おそらく、それは誰もが感じていただろう。
異論を唱える人はおらず、僕らは来た道とは別のルートを辿り、大通りへと歩き出すのだった。
幸い、そこから先はワクナさんも元気を取り戻してくれたようで、再び観光気分で都を回る。
商店が立ち並ぶ大通りでは、クロッキアさんが池谷さんと立木さんの案内で物資調達に、僕とターナはワクナさんの案内で服選びという流れになった。
そういえば、僕らはまだ東部仕様の服装ではないので、中々に目立つのである。
「あれよね。二人とも、この先も旅をするんだから旅向けの服がいいわよね」
「そうですね。ぜひ、それでお願いします」
そんな僕の言葉に、「任せて!」と歩き出すワクナさん。
それこそ目移りどころか、店と店の切れ間さえあやふやなほどの密度でひしめく商店街では、売買のやり取りや客寄せの声がひっきりなしに飛び交う。
激しい人の往来に相応しい、せわしない活気と熱気の中をかき分け、ワクナさんの先導に従い、ある軒先で足を止めた。
店舗のイメージは八百屋さん。
ただし、そこに所狭しと陳列しているのは、あまり見慣れないものだ。
布やら紐、あとは革・・・・・・だと思われる生地が大量にあり、薄暗い店内の奥には、革鎧みたいなものも飾られている。
「すみませーん!」
一見すると売り子もいない、もぬけの殻みたいな店内に向かって、ワクナさんの高い声が投げられる。
数秒の沈黙を経て、奥から人の輪郭がこちらに迫ってくるのが見て取れた。
ようやくその人物の表情が分かるところまで距離が縮まると、気難しそうな眼が「何の用だ」と僕らを見据えていた。
「ザオさん、でしょうか?」
ワクナさんが臆する様子もなく問いかけると、再び数秒の沈黙。
小さな丸眼鏡をずらし、僕ら三人を訝しげな態度で順番に見ていくと、小さく顔を横に振る。
「お前さんらは知らんな」
ザオさん――そうワクナさんに呼ばれた白髪の男性は、呟くように言うと踵を返してしまう。
内心、「えっ」と思ってしまうが、それにもワクナさんは動じる様子がなかった。
「急にお邪魔してすみません。イケタニ様とタツギ様の紹介で来ました」
「・・・・・・紹介じゃと?」
ぴたりと足を止め、不機嫌そうな様子はそのままにザオさんがこちらへ向き直る。
「知らん名じゃが」
そこでようやくワクナさんが動きを止めるが、「あ、そうか」と閃いたように頷く。
「シュウジ様とリュウヤ様です。紹介状も預かっています」
すると、ザオさんは無言のままワクナさんに歩み寄って行く。
そういえば、クロッキアさん達と別れる前、ワクナさんが何か受け取っていたような気がした。
「こちらです」
手渡しできる距離までくると、ワクナさんがそう言って紹介状――じゃなくて、明らかにお金と思しき銀貨のようなものを数枚、差し出していた。
「・・・・・・ふん。あやつら、顔も見せんで何が紹介じゃ」
しかし、悪態をつきながらもザオさんは銀貨を受け取り、「元から紹介状など発行しとらんわ」と、吐き捨てる。
終始、僕とターナはワクナさんの一歩後ろで控えていることしかできない。
「あ、やっぱりそうなんですね」
苦笑いでワクナさんが言うと、「相変わらず子供みたいな真似しよって」とザオさんも頷いた。
「で、何の用じゃ」
「はい。実は、この二人の服を仕立ててほしいんです」
そこでやっと、ザオさんの視線が僕とターナに向けられる。
「・・・・・・ワシは服屋ではないぞ」
「はい。けど、リュウヤ様は『大丈夫だって、あの爺さん腕は良いからよ』と仰っておりまして・・・・・・」
「あやつ、ワシをなんだと思っとるんじゃ・・・・・・」
ため息交じりなザオさんだが、ここまで気難しいというか不機嫌な感じが一貫していると、それがスタンダードなのではないか、と考え始める。
現に、普通なら引き受ける様子もないが、皺の奔るその手は既に幾つかの生地を品定めしていた。
「服の用向きは」
「えっと、旅用――でいいのよね、二人とも」
完全に蚊帳の外だと決め込んでいた僕は、ワクナさんから唐突に聞かれ、一瞬返答が遅れる。
というか、咄嗟に言葉が出てこなかったので、こくこくと忙しなく頷くしかできなかった。
「次はどこへ向かうつもりじゃ」
「あ・・・・・・えっと、南ですっ」
振り向くワクナさんの目配せを受け、僕はそう答える。
返事はない代わり、ザオさんは二、三枚の革生地を手に取り、店の奥へと歩いて行く。
それを僕らが見守っていると。
「何をぼさっとつったっとるんじゃ。軒先で寸法でも測るつもりか」
なんて言葉が飛んできたのだった。
つまり、これはさっさと店の中に来い、ということなのだと解釈する。
言われようやく店内へと足を踏み入れると、やはりそこは薄暗かった。
ただし、一番奥にある作業台のような場所だけは、ランタンのようなものが天井や壁に幾つも提げられており、場違いなくらいに明るい。
「まずは坊主の方からじゃ。・・・・・・お前さん、戦士か?」
「い、一応は・・・・・・」
「一応? はっきりせんかい」
「う、ごめんなさい。そ、そうです」
うぅ、苦手だなぁ、ザオさん。
元々威圧的な人が苦手な僕は、どうにもすっと言葉が出てこない。
おまけに、じっと見られると、なんだか睨まれている気がして落ち着かないのだ。
なんて考えていると、ザオさんは無言のままに僕の二の腕や肩を叩き始める。
やっぱり高齢なのか、乾いた音がする程度には強く叩かれているけど、痛いほどではなかった。
「・・・・・・なんじゃ、思ったよりしっかりしとるのう」
「・・・・・・え?」
「体つきの話じゃ。お前さん、ワシを舐めとるのか。戦士なんて面構えじゃなかろう。そこらの小童より気弱な顔をしとるわい」
あぁ・・・・・・うん、ですよね。
分かってはいたし、自覚がなかったわけじゃないけど、こうも臆面もなく言われると、さすがに受け流すこともできない。
「じゃが、筋肉のつきはいい。その顔には不釣り合いなほどな」
「・・・・・・・・・・・・」
えっと、これは一応褒められている、のかな。
一番身近な戦士がクロッキアさんだから、僕自身、肉体が鍛えられているという自覚はなかったけど、そうか・・・・・・一般の人からみれば、それなりに筋肉はついているのかも。
まさか、ネグロフでの訓練がこんなところで成果を発揮するとは。
「あの・・・・・・」
「なんじゃ」
話の流れから、思い切って話題を振ろうと思うが、ザオさんの声音に一瞬怯んでしまう。
しかし、そこで「なんでもないです」と引き下がれば更に怒られそうなので、意を決して言葉を続けた。
「ザオさんは、何の職人さん、なんですか?」
「革職人じゃ。普段は、皇宮に防具の類いを納めておる」
「あぁ、なるほど。それで、異人のお二人とはお知り合いなんですね」
「そうじゃ。お知り合い、なんて薄い付き合いでもないがの。あやつらの防具は、ワシが特注で仕立てたものじゃ。王都の重装部隊でも通用する革の防具じゃよ」
革の防具。
言葉だけだと鉄や鋼よりも廉価で柔らかい印象を受ける。
しかし、それを否定するようにザオさんは壁にかけられていた、一枚の革生地を僕に差し出した。
軽い。驚くほど、軽い。
それこそ、布に匹敵するのでは、と思わずにはいられないほどに。
「革は確かに安い。鉄や鋼に比べれば、その希少性は低いじゃろう」
口を動かしながらも、ザオさんの動きは止まらない。
たこ糸みたいなもので僕の寸法を測りながら、白髪の革職人は話を続ける。
「しかしな、それは素材の特性や性能差だけで決まっておるわけではない。鉄は確かに堅牢だが、鉱石の採掘から運搬、加工に至るまで手間がかかる。純度の高い良い鉄を使うなら、その原料も良質でなければのう」
だから、鉱石類を主原料とするものは、総じて高価になりがちなのだという。
「じゃが、革はまずもって運搬が楽じゃ。鉱石ほどかさばりもせず、重量もない。武器に使用される量も少ない分、防具や衣服へ原材料を回せることも大きい。柔軟性に富み、風雨にも強い。鉄ほど修繕も手間がかからんし、同じものを長く使える」
なんというか・・・・・・今までの寡黙が嘘かのように、ザオさんは饒舌だ。
むしろ、鉄製品へのちょっとした対抗心も垣間見えるほどに。
「聞いておるのか?」
「は、はいっ! 聞いてますっ!」
「うむ・・・・・・でな、お前さんも戦士ならば材質を侮ってはいかんぞ。北や中央では鉄製が主流だのと言うが、全身を鉄装備で固めるのにどれだけの金が動くか。動物の皮なら、最悪そこらの森ででも手に入るが、鉱石はそうもいかん。おまけに、鉄や鋼は熱伝導性が高い。フルプレートなんぞで南部へ行けば、あっという間に脱水症状であの世逝きじゃ」
確かに、それは盲点というか、勉強になる話だ。
革防具というと、僕のイメージでは鉄よりも性能は低い印象だったが、ザオさんの語りはそれを覆す説得力があった。
旅や戦いで誰もが必要とする武器防具は、それだけ経済とも密接に関わっている。
鉄は分かりやすく武器にも防具にも適しているのだ。
だから誰もが買い求めるし、それだけ需要がある。
しかし、そういったものは往々にして供給にしわ寄せがくる。
そうなると、待っているのは原材料の高騰と製品の希少性の増加なのだとか。
「文化や環境の相違と言えばそれまでじゃが、鉱物ばかりがもてはやされるのは納得いかん。第一、鉄はあの重さがだめじゃ。戦場でちんたら走っておったら、良い的じゃろう。どうせ刃は防げても、人の身では砲撃など耐えようがないんじゃからのう」
鉄を纏っていようが関係ないわ、とはザオさんの弁。
うーん・・・・・・僕は、どっちも良い点悪い点がある、と思うのだけれど、革職人であるザオさんは革製品の優位性が認められていない点に不満があるようだ。
「あの・・・・・・でも、ヒノボリでは革の防具が主流、ですよね?」
「当たり前じゃ。革だけではなく、植物の蔓から霊木まで様々じゃよ。こと防具に関してならば、大陸領土どこよりも秀でておる」
さすがに武器には向かない、という点は異論がないらしい。
いかにも職人らしい考え方だと、僕は思った。
確かに偏見や対抗心はあるかもしれないけど、戦士の見習いである僕としては、すごく役に立つ話だ。
クロッキアさんだって、旅に出る時には重い鎧を捨てちゃったわけだし、軽さというのは僕が考えている以上に影響があるのだと思う。
「じゃからのう、坊主」
「は、はいっ」
「お前さんに合った一級品を仕立ててやる。その代わり、それを捨てる際はよく考えることじゃ。戦士にとって、武器と防具は己自身と同等じゃよ。つまり、『己を知る』ことと同義というわけじゃ」
「・・・・・・ど、努力します」
一通り寸法を測り終えたのか、ザオさんは僕から離れると、先ほどより随分と落ち着いた口調でこう助言をくれた。
「お前さんの体格は、鉄や鋼には向かん。羽根のように軽く、風のようにしなやかであることを想像するとよい。あるいは、鹿を狩る肉食のように速くしなやかに」
「速く・・・・・・しなやかに・・・・・・」
言われ、僕の脳内には真っ先に豹が思い浮かんだ。
テレビでしか見たことがないけど、とんでもなく速く走るし、細身ゆえに見える骨格の動きは淀みがない。
もし、僕がそれに近づけるならば、素人目線だけれどすごくかっこいいと思う。
だって、豹はかっこいいから。
最大の問題があるとすれば、間違いなく僕は草食だという点だ。
「すごいですね。職人さんなのに、そんなことまで・・・・・・」
「職人だからじゃ。人が身につけるものを作るのに、人体を知らんでどうする」
ご、ご尤もです。
ドがつくほどの正論に、やはり僕は終始たじたじであった。
時刻は、太陽の位置と体内時計を擦り合わせた結果、午後二時頃だと自身がはじき出す。
「さて、どっから見て回る?」
満腹堂から出た軒先で、立木さんがそう切り出した。
正直、どこに何があるかも分からないため、いざそう聞かれると言葉に詰ってしまう。
それはターナも同じなのか、「うーん」と僕ら二人は早々に考え込んでしまうのだった。
「調達したい物資があると言っていたが、商店街を見て回るかい?」
池谷さんが提案してくれるが、クロッキアさんが「いや」と待ったをかける。
「荷物を増やすのは、宿に帰る際で構わない」
「あぁ、それもそうだね。となると、まずは適当に都でもぐるっと回ろうか」
「そうしてもらえると助かる。おそらく、歩いていれば興味を引くものもあるだろう」
と、クロッキアさんはヒノボリ初心者の僕とターナを見やった。
た、たしかに・・・・・・。
既に、都のあちこちに聳える櫓がなんなのか興味津々だけど、僕は。
「んじゃ行こうぜ。ちびっ子ども、はぐれて迷子にならねぇようになー」
歩き出す立木さんの言葉に、ちびっ子(僕とターナ)が「はーい」と返事を返す。
大通りを横切り、家屋がひしめき合う路地を進んでいく。
やはり、こうして改めて見てみても、ネグロフと違い木造建築がほとんどだ。
歩いている分には時代劇の撮影セットに迷い込んだような感覚で、扉が障子だったなら完全に江戸の街並みになるだろう。
しばらくきょろきょろしながら歩いていると、僕らは櫓のすぐ傍まで来た。
「立木さん」
「おう、どうした?」
「この塔みたいなのって、どういう意味があるんですか?」
「あぁ、これはなぁ」と、僕と同じく見上げながら説明してくれる。
「物見櫓だな。二十四時間、交代で都全域を警戒してんだよ。防犯の意味合いもあるし、火事なんかの防災の意味合いもある」
「あ、そっか・・・・・・木造の建物ばかりだから、火事が起こったら大変ですもんね」
「そうなんだよなぁ。一応、防火処理した建材使ってるはずなんだけど、燃えにくいってだけで燃えないわけじゃねぇからな」
加えて、遠望まで見渡しやすいように、宿屋や特別な理由のある建物以外は、原則として平屋建てなのだとか。
言われてみれば、背の高い建物ってほとんどないかも・・・・・・。
「都を囲う外壁付近の櫓は、外敵や不法侵入者の警戒もしてる。ま、東方は比較的魔族からの侵攻が少ない地方だから、そこまで神経質になってないんだけどな」
「そうなのですか?」
ターナが意外そうな顔をあげ、それにヒノボリの異人二人が頷いた。
「東の奥地には、古い獣憑きが棲まうとされていて、実際に魔族の侵攻が来たことはないそうだよ。過去、記録されている交戦では、いずれも北東、南東からの侵攻と記されている」
「獣憑きって、魔族も襲うんですか?」
お、驚きだ・・・・・・勝手なイメージだけど、人間ばかりを襲うものだと思っていた。
「古い獣憑きそのものがまずもって眉唾なのだけど、仲間意識はないだろうね。獣憑きというのは魔人の一種とされているけど、その本質は狂気と混沌だ。早い話が、無差別ということさ。一般に、彼らは『生命』であれば人間・魔族関係なく襲うと考えられているから」
いつしか、話は櫓から獣憑きの伝承へと変わっていく。
東方に古くから伝わる、怪物のお話。
ヒノボリの異人曰くそれは、人でもなく、魔でもないもの。
神秘に溢れるこの異世界において、怪と銘打たれた無明の存在。
その始まりは、信仰という概念の誕生にまで遡る。
神が生まれ、次いで天使と悪魔が生まれた。
その過程と同じように、獣憑きは当初、土地神の祟りとして産声をあげたという。
日本で言うところの土着神という存在に、類似しているそうだ。
つまり、元来の認識としては、獣憑きは魔人ではなく自然に属する存在であり、精霊あるいは一種の神格ともとれる。
しかしながら、人間の魂に宿るという性質からか、人々はこれを魔ととらえ、魔人の一種として分類したというわけだった。
「祐介君、精霊や神格には詳しいかい?」
池谷さんからぽんっと質問が飛んでくる。
もちろん、僕はそんな神秘的な知識を持ち合わせておらず、せいぜいイメージできて精霊が関の山だった。
「いえ、ゲームとかマンガくらいでしか知らないです」
「はは、だろうね。俺や隆也もそうだったよ。けど、意外にもそのイメージは外れていないんだ」
精霊とは、一般に考えられる魔族や魔物、魔獣ではないのだとか。
彼らは超自然的な存在であり、どちらかというと星の意思が仮初めの姿を得たものとされる。
つまり、精霊というのは惑星の代行であり、よりざっくりと言えば指向性を持った自然そのもの。
それとは別に、神格とは文字通り神様そのものだ。
獣憑きの場合、遙か古来からその土地に棲む神のことを指し、時には強大な精霊もこの神格とされる。
精霊も神格も、原始的宗教としては地球にも存在した概念であり、日本では「八百万の神」が有名だろうとのこと。
「つまりは、元を正せば獣憑きとは自然霊の一種であり、それがこの異世界特有の形として生まれたものだと、俺や隆也は考えている。特に、俺らは日本人だから、この手の話は割と身近なんだよ。祐介君も、九十九神とかは聞いたことくらいはあるだろう?」
「は、はいっ」
まさしく、そういったものは創作物のモデルとして格好の存在だった。
だから、理屈はともかくとして、言われている内容そのものは想像以上にすっと頭の中に入ってくる。
ということは、獣憑きというのは神様が凶暴化したものなのだろうか。
そんな疑問を口にすると、池谷さんは「捉え方にもよるね」と答えた。
「西洋と東洋でもそうだけど、一神教や多神教でも物の見方は随分と違ってくる。この世界で言えば、セントメアなんかは神を絶対的な存在として見る。彼らが、獣憑きを『神』として認めることはないだろう。彼らにとって、『神』というのは絶対であり不滅だからだ。到底、人や魔族が打ち倒せるものではないし、それが可能だとするならば、それは『神』ではない、と答えるだろう」
だから、獣憑きが神なのか、という議論では答えはでない。
あくまで、獣憑きを神格と見るか、それ以外の存在と見るか。
ただ、重要なのは噂や伝承で語られる以上に、獣憑きというものは恐ろしいものだということ。
「御仁、噂は聞いているかな?」
「・・・・・・人を喰うという、獣憑きの話ならば小耳に挟んだが」
「それだ。かれこれ半年以上調査を続けているが、一向に事の真相へは辿り着けない。神隠しだの獣憑きだのと噂に尾ひれはついていくが、行方不明という点で見れば人身売買との判別さえ、苦戦しているのが現状だ」
「なるほど・・・・・・警戒はしよう」
けど、半年以上も前から問題になっているなんて思わなかった。
それはクロッキアさんも同様なのか、ヒノボリの異人二人へ話の詳細を催促した。
「実は俺達がヒノボリの異人として皇に迎え入れられたのは、この行方不明者の調査が入り口だったんだ。最初の兆しは概ね一年前。だが、俺達が本格的に調査に乗り出す以前は、人身売買の線が濃厚とされ、実際に違法に手を染めている商人も数人、捕らえることができた」
「ということは、奴隷商を捕らえた以降も行方不明が発生したということか」
「その通り。いくら商人にも悪人がいるとはいえ、その違法が見つかってない時でさえ、行方不明者は増え続けた。そこで、半ば消去法のままに俺達は獣憑きの仕業という線でも、調査を始めたというわけさ」
「ふむ。・・・・・・我々は、北から東への道中で、獣憑きの噂を耳にした。そこでは、人を喰う蜘蛛の獣憑き、と聞いたな」
蜘蛛の獣憑き、ねぇ――と池谷さんと立木さんは虚空を見上げる。
さっき言っていた通り、噂に尾ひれがついた結果なのかもしれない。
「そもそも、人身売買と考えられた最大の理由が、遺体だ」
「遺体、ですか?」
これは、ターナのもの。
声音にも、不安げな胸中が表れている。
「あぁ。行方不明者は全員、遺体さえ見つかっていない。獣憑きが元凶ならば、まず死人が出てもおかしくはない。だが、それがどうにもこうにも見つからない。となると、こっちとしては獣憑きの線で調査しようにも、足がかりがないんだよ」
「確かに。遺体がないとなれば、奴隷商による違法な人身売買、というのが有力だろうな。・・・・・・行方不明の際、どこにいたか、どこから姿を消したか、も調べ尽くしたのだろう?」
ターナに答えたのと同じく、池谷さんは頷いた。
「最終目撃者も最後に目撃された場所も、共通点らしいものはなかった。無理矢理こじつけるなら、全員がこのヒノボリの都で姿を消した、という点だな」
けど、それは共通点ではあるが、足がかりとするには規模が大きすぎるとのこと。
とはいえ、絞り込もうにもそれ以上は、目撃者も目撃地点もてんでばらばらなのだとか。
「っと、すまない。観光途中だというのに、暗い話になってしまったね」
しまった、という風に池谷さんが背中越しに謝ってくる。
それに、僕もターナも「大丈夫です」と答えた。
元々ヒノボリの噂は耳にしていたし、危険に対する情報はしっかりとしておくに越したことはないと思うし。
とはいえ、話し込んでいる内に結構な距離を歩いたらしく、気づけば僕らは西の城壁近くまで来ていた。
まさしく巨壁そのものであるそれは、木造中心のヒノボリで数少ない石造りのものだ。
「そうだ秀司、寺院に寄っていこうぜ。観光ならぴったりの場所だろ」
「あぁ、言われてみれば」
二人とも思い出したようにそう言うと、少し遠目に見える建物を指差した。
皇宮に少しばかり似た雰囲気のそこは、寺院と呼ばれる場所で、神に祈りを捧げる礼拝堂らしい。
「ま、早い話がお寺だな」
「あ、なるほど」
立木さんの言葉に相づちをうつ。
今の例えは、すごく分かりやすかった。
気づけば、商店や住宅もまばらとなった開けた空間にでており、幾つかの石段の先に、目的の建物があるのがすぐに分かった。
「あ、あの・・・・・・」
すると、後ろから控えめな声が僕らの背を叩く。
振り返ると、何やら思い詰めたような表情を浮かべたワクナさんが、歩を止めて立っていた。
胸元に両手を握り、明らかに深刻な様子だ。
誰よりも早く傍にターナが駆け寄り、「どうしましたか?」と聞いた。
「・・・・・・ごめんなさい、私はここで待っています」
皆さんで楽しんでください、と続けるその言葉尻は、震えていたようにも聞こえる。
僕も心配になり駆け寄ると、それに続くようにして他の三人も集まってきた。
「ワクナさん、気分が悪くなったりしましたか?」
近くに腰を落ち着けられる場所がないか探しながら聞くと、数秒の間を空けて首を横に小さく振った。
どうやら体調不良ではないみたいだけど、顔色はよくない。
すると、クロッキアさんが口を開いた。
「ユウスケ、ターナ、彼女の傍にいてやってくれるか?」
「え・・・・・・はい、もちろんいいですけど・・・・・・」
「頼む。・・・・・・異人殿、少し話がある」
こっちへ、とクロッキアさんが池谷さんと立木さんへ目配せをする。
二人は顔を見合わせながらも、とりあえずは言われた通りに離れた場所へ歩いて行った。
「あ、あそこにちょうどいいベンチがある」
「ワクナさん、あそこで休憩しましょう」
「・・・・・・・・・うん、ごめんね」
ターナと二人で、ワクナさんを池の前にあったベンチへ誘導する。
ちょうど三人で座るくらいの横幅で、そのままワクナさんを真ん中にして、僕とターナが両脇に腰を下ろした。
その後も、依然としてワクナさんは思い詰めたような表情のままだ。
どうしたのか聞こうとも思ったけど、自分から理由を話そうとしないということは、触れられたくないのかもしれない。
ちらりとターナの方を見やると、彼女も小さく頷いた。
これは、追求するよりもまずは傍にいて安心させよう、という合図だと僕は受け取る。
ワクナさんの様子を伺いながらも、僕は遠目にクロッキアさん達を見やる。
何やら話しているみたいだけど、何を話しているのだろう。
気にはなるけど、クロッキアさんは僕とターナにワクナさんを任せたのだから、それを放ってはいけない。
そうこうしていると、しばらくして三人が戻ってきた。
「待たせたな」
「いえ、僕らは大丈夫ですが・・・・・・どうしたんですか?」
クロッキアさんに聞くが、珍しくすぐに返答は返ってこなかった。
察するに、言葉を選んでいる風に感じるのだけど・・・・・・気のせいかな。
「少し、な。ユウスケ、買い物をして一度宿屋に戻ろう」
歯切れの悪い様子に違和感を覚えるが、僕はすぐに頷くことにした。
さすがの僕でも分かるくらい、詮索無用といった空気が漂っていたからだ。
おそらく、それは誰もが感じていただろう。
異論を唱える人はおらず、僕らは来た道とは別のルートを辿り、大通りへと歩き出すのだった。
幸い、そこから先はワクナさんも元気を取り戻してくれたようで、再び観光気分で都を回る。
商店が立ち並ぶ大通りでは、クロッキアさんが池谷さんと立木さんの案内で物資調達に、僕とターナはワクナさんの案内で服選びという流れになった。
そういえば、僕らはまだ東部仕様の服装ではないので、中々に目立つのである。
「あれよね。二人とも、この先も旅をするんだから旅向けの服がいいわよね」
「そうですね。ぜひ、それでお願いします」
そんな僕の言葉に、「任せて!」と歩き出すワクナさん。
それこそ目移りどころか、店と店の切れ間さえあやふやなほどの密度でひしめく商店街では、売買のやり取りや客寄せの声がひっきりなしに飛び交う。
激しい人の往来に相応しい、せわしない活気と熱気の中をかき分け、ワクナさんの先導に従い、ある軒先で足を止めた。
店舗のイメージは八百屋さん。
ただし、そこに所狭しと陳列しているのは、あまり見慣れないものだ。
布やら紐、あとは革・・・・・・だと思われる生地が大量にあり、薄暗い店内の奥には、革鎧みたいなものも飾られている。
「すみませーん!」
一見すると売り子もいない、もぬけの殻みたいな店内に向かって、ワクナさんの高い声が投げられる。
数秒の沈黙を経て、奥から人の輪郭がこちらに迫ってくるのが見て取れた。
ようやくその人物の表情が分かるところまで距離が縮まると、気難しそうな眼が「何の用だ」と僕らを見据えていた。
「ザオさん、でしょうか?」
ワクナさんが臆する様子もなく問いかけると、再び数秒の沈黙。
小さな丸眼鏡をずらし、僕ら三人を訝しげな態度で順番に見ていくと、小さく顔を横に振る。
「お前さんらは知らんな」
ザオさん――そうワクナさんに呼ばれた白髪の男性は、呟くように言うと踵を返してしまう。
内心、「えっ」と思ってしまうが、それにもワクナさんは動じる様子がなかった。
「急にお邪魔してすみません。イケタニ様とタツギ様の紹介で来ました」
「・・・・・・紹介じゃと?」
ぴたりと足を止め、不機嫌そうな様子はそのままにザオさんがこちらへ向き直る。
「知らん名じゃが」
そこでようやくワクナさんが動きを止めるが、「あ、そうか」と閃いたように頷く。
「シュウジ様とリュウヤ様です。紹介状も預かっています」
すると、ザオさんは無言のままワクナさんに歩み寄って行く。
そういえば、クロッキアさん達と別れる前、ワクナさんが何か受け取っていたような気がした。
「こちらです」
手渡しできる距離までくると、ワクナさんがそう言って紹介状――じゃなくて、明らかにお金と思しき銀貨のようなものを数枚、差し出していた。
「・・・・・・ふん。あやつら、顔も見せんで何が紹介じゃ」
しかし、悪態をつきながらもザオさんは銀貨を受け取り、「元から紹介状など発行しとらんわ」と、吐き捨てる。
終始、僕とターナはワクナさんの一歩後ろで控えていることしかできない。
「あ、やっぱりそうなんですね」
苦笑いでワクナさんが言うと、「相変わらず子供みたいな真似しよって」とザオさんも頷いた。
「で、何の用じゃ」
「はい。実は、この二人の服を仕立ててほしいんです」
そこでやっと、ザオさんの視線が僕とターナに向けられる。
「・・・・・・ワシは服屋ではないぞ」
「はい。けど、リュウヤ様は『大丈夫だって、あの爺さん腕は良いからよ』と仰っておりまして・・・・・・」
「あやつ、ワシをなんだと思っとるんじゃ・・・・・・」
ため息交じりなザオさんだが、ここまで気難しいというか不機嫌な感じが一貫していると、それがスタンダードなのではないか、と考え始める。
現に、普通なら引き受ける様子もないが、皺の奔るその手は既に幾つかの生地を品定めしていた。
「服の用向きは」
「えっと、旅用――でいいのよね、二人とも」
完全に蚊帳の外だと決め込んでいた僕は、ワクナさんから唐突に聞かれ、一瞬返答が遅れる。
というか、咄嗟に言葉が出てこなかったので、こくこくと忙しなく頷くしかできなかった。
「次はどこへ向かうつもりじゃ」
「あ・・・・・・えっと、南ですっ」
振り向くワクナさんの目配せを受け、僕はそう答える。
返事はない代わり、ザオさんは二、三枚の革生地を手に取り、店の奥へと歩いて行く。
それを僕らが見守っていると。
「何をぼさっとつったっとるんじゃ。軒先で寸法でも測るつもりか」
なんて言葉が飛んできたのだった。
つまり、これはさっさと店の中に来い、ということなのだと解釈する。
言われようやく店内へと足を踏み入れると、やはりそこは薄暗かった。
ただし、一番奥にある作業台のような場所だけは、ランタンのようなものが天井や壁に幾つも提げられており、場違いなくらいに明るい。
「まずは坊主の方からじゃ。・・・・・・お前さん、戦士か?」
「い、一応は・・・・・・」
「一応? はっきりせんかい」
「う、ごめんなさい。そ、そうです」
うぅ、苦手だなぁ、ザオさん。
元々威圧的な人が苦手な僕は、どうにもすっと言葉が出てこない。
おまけに、じっと見られると、なんだか睨まれている気がして落ち着かないのだ。
なんて考えていると、ザオさんは無言のままに僕の二の腕や肩を叩き始める。
やっぱり高齢なのか、乾いた音がする程度には強く叩かれているけど、痛いほどではなかった。
「・・・・・・なんじゃ、思ったよりしっかりしとるのう」
「・・・・・・え?」
「体つきの話じゃ。お前さん、ワシを舐めとるのか。戦士なんて面構えじゃなかろう。そこらの小童より気弱な顔をしとるわい」
あぁ・・・・・・うん、ですよね。
分かってはいたし、自覚がなかったわけじゃないけど、こうも臆面もなく言われると、さすがに受け流すこともできない。
「じゃが、筋肉のつきはいい。その顔には不釣り合いなほどな」
「・・・・・・・・・・・・」
えっと、これは一応褒められている、のかな。
一番身近な戦士がクロッキアさんだから、僕自身、肉体が鍛えられているという自覚はなかったけど、そうか・・・・・・一般の人からみれば、それなりに筋肉はついているのかも。
まさか、ネグロフでの訓練がこんなところで成果を発揮するとは。
「あの・・・・・・」
「なんじゃ」
話の流れから、思い切って話題を振ろうと思うが、ザオさんの声音に一瞬怯んでしまう。
しかし、そこで「なんでもないです」と引き下がれば更に怒られそうなので、意を決して言葉を続けた。
「ザオさんは、何の職人さん、なんですか?」
「革職人じゃ。普段は、皇宮に防具の類いを納めておる」
「あぁ、なるほど。それで、異人のお二人とはお知り合いなんですね」
「そうじゃ。お知り合い、なんて薄い付き合いでもないがの。あやつらの防具は、ワシが特注で仕立てたものじゃ。王都の重装部隊でも通用する革の防具じゃよ」
革の防具。
言葉だけだと鉄や鋼よりも廉価で柔らかい印象を受ける。
しかし、それを否定するようにザオさんは壁にかけられていた、一枚の革生地を僕に差し出した。
軽い。驚くほど、軽い。
それこそ、布に匹敵するのでは、と思わずにはいられないほどに。
「革は確かに安い。鉄や鋼に比べれば、その希少性は低いじゃろう」
口を動かしながらも、ザオさんの動きは止まらない。
たこ糸みたいなもので僕の寸法を測りながら、白髪の革職人は話を続ける。
「しかしな、それは素材の特性や性能差だけで決まっておるわけではない。鉄は確かに堅牢だが、鉱石の採掘から運搬、加工に至るまで手間がかかる。純度の高い良い鉄を使うなら、その原料も良質でなければのう」
だから、鉱石類を主原料とするものは、総じて高価になりがちなのだという。
「じゃが、革はまずもって運搬が楽じゃ。鉱石ほどかさばりもせず、重量もない。武器に使用される量も少ない分、防具や衣服へ原材料を回せることも大きい。柔軟性に富み、風雨にも強い。鉄ほど修繕も手間がかからんし、同じものを長く使える」
なんというか・・・・・・今までの寡黙が嘘かのように、ザオさんは饒舌だ。
むしろ、鉄製品へのちょっとした対抗心も垣間見えるほどに。
「聞いておるのか?」
「は、はいっ! 聞いてますっ!」
「うむ・・・・・・でな、お前さんも戦士ならば材質を侮ってはいかんぞ。北や中央では鉄製が主流だのと言うが、全身を鉄装備で固めるのにどれだけの金が動くか。動物の皮なら、最悪そこらの森ででも手に入るが、鉱石はそうもいかん。おまけに、鉄や鋼は熱伝導性が高い。フルプレートなんぞで南部へ行けば、あっという間に脱水症状であの世逝きじゃ」
確かに、それは盲点というか、勉強になる話だ。
革防具というと、僕のイメージでは鉄よりも性能は低い印象だったが、ザオさんの語りはそれを覆す説得力があった。
旅や戦いで誰もが必要とする武器防具は、それだけ経済とも密接に関わっている。
鉄は分かりやすく武器にも防具にも適しているのだ。
だから誰もが買い求めるし、それだけ需要がある。
しかし、そういったものは往々にして供給にしわ寄せがくる。
そうなると、待っているのは原材料の高騰と製品の希少性の増加なのだとか。
「文化や環境の相違と言えばそれまでじゃが、鉱物ばかりがもてはやされるのは納得いかん。第一、鉄はあの重さがだめじゃ。戦場でちんたら走っておったら、良い的じゃろう。どうせ刃は防げても、人の身では砲撃など耐えようがないんじゃからのう」
鉄を纏っていようが関係ないわ、とはザオさんの弁。
うーん・・・・・・僕は、どっちも良い点悪い点がある、と思うのだけれど、革職人であるザオさんは革製品の優位性が認められていない点に不満があるようだ。
「あの・・・・・・でも、ヒノボリでは革の防具が主流、ですよね?」
「当たり前じゃ。革だけではなく、植物の蔓から霊木まで様々じゃよ。こと防具に関してならば、大陸領土どこよりも秀でておる」
さすがに武器には向かない、という点は異論がないらしい。
いかにも職人らしい考え方だと、僕は思った。
確かに偏見や対抗心はあるかもしれないけど、戦士の見習いである僕としては、すごく役に立つ話だ。
クロッキアさんだって、旅に出る時には重い鎧を捨てちゃったわけだし、軽さというのは僕が考えている以上に影響があるのだと思う。
「じゃからのう、坊主」
「は、はいっ」
「お前さんに合った一級品を仕立ててやる。その代わり、それを捨てる際はよく考えることじゃ。戦士にとって、武器と防具は己自身と同等じゃよ。つまり、『己を知る』ことと同義というわけじゃ」
「・・・・・・ど、努力します」
一通り寸法を測り終えたのか、ザオさんは僕から離れると、先ほどより随分と落ち着いた口調でこう助言をくれた。
「お前さんの体格は、鉄や鋼には向かん。羽根のように軽く、風のようにしなやかであることを想像するとよい。あるいは、鹿を狩る肉食のように速くしなやかに」
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