穿つ者は戦い抜く

あすとろ

文字の大きさ
上 下
13 / 13
第二章 迷宮編

13 .討伐完了

しおりを挟む
体に“身体強化„をかけ、引き金を引き絞る。
地に響く程の轟音と共に上下2つのバレルが火を吹いた。
弾丸はこの時の為に作成しておいた特別製で、火薬は風属性の一部の魔法で代用している。
大口径というのも生温い、小規模な砲弾とも言える弾丸がオークの腹を次々に直撃し、肉を抉った。

「ォア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!」

オークの悲鳴が衝撃となり涼介の鼓膜をぶっ叩く。
頭が揺らされ、一瞬ふらついた涼介を見逃さなかったオークは手に握る棍棒を地面に向かって振り下ろした。
それを横っ飛びで回避したが少し遅れてしまい、右手に装備しているカラッツォの銃口が、張ってある結界ごと棍棒の振り下ろしによってひしゃげてしまった。
その衝撃のまま地面がひび割れ、一部が陥没した。
「コイツはもう使えねえ……やってくれたなクソ野郎がッ!!!」
拉げたカラッツォを壁際に投げ捨てる。
残る武装は左手のカラッツォとハイドラのみ。
周囲を駆けて背部に周り、腰に携えたハイドラをがむしゃらに撃ちまくるが、よほど筋力があるのか、弾かれてしまう。
そして頭部を集中的に狙う方針に切り替える。
「頭なら揺らすかっ飛ばすかしてりゃあ勝手に死ぬだろうがよ!!」
そう意気込んで再び“身体強化„で脚力を強化し、天井に届くかというほど高く跳んだ。
身体を捩り、天井に脚を付けて、そのまま蹴る!!
銃身下部から剣を出し重力に身を任せて加速、その勢いのままにオークの頭部へ突き刺した。
突き刺した衝撃でその頭部が歪んだ。
「グゥロオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ッ!!!」
「クソッ!!見えねえっつーの!!」
突き刺した部位からはもちろん口や目からも赤い血が吹き出し、視界を遮る。
オークは身体を無茶苦茶によじり、頭をぶん回す。
すると、剣の刺さりが浅かったためか、頭部から剣がすっぽ抜けてしまった。
(やべえっ、これじゃあ不味い!!)
咄嗟に右手に構えているハイドラの引き金を引き、その反動を利用して左手のカラッツォを頭部にゴリッと突きつけ、

「さっさと死ねや豚あああああああああああっ!!!!」

引き金を引き絞った。
ズガガガガガガガガガァンッ!!!!
爆音を立てて頭部を次々と穿った。
あと少しでこいつをぶっ殺せる!!
と、急な目眩と倦怠感に襲われる。
(やべっ、魔力が切れるっ!!)
冷や汗が頬を伝う。
この感覚に覚えはあった。
かつて武装作成中に感じた魔力が枯渇する寸前の感覚だ。
だが目の前の敵を見逃さまいと消えゆく意識を叩き起こし、目をカッと開いた。
「これでっ!!落ちろおおおおおおおおおおお!!!!」
力を振り絞って最後の魔力を残る全ての弾丸に込め、引き金にかける指へと力を込めた。

そして、
涼介が地面に降り立った頃、

「グッォオオオオオオオオオッ!!!!」

そのオークは最後の雄叫びを上げ、その体勢のまま後ろにズゥンと倒れた。
涼介は膝を着き、汗を滴らせながらもその勝利に胸を震わせた。
そして体力の限界からか仰向けに倒れた涼介は、

「はっ、ははっ!勝ったぞ…っしゃあッ!!!」

拳を突き上げた。

(あっ……やべっ…ね…む…)

そして当然の如く、魔力の過剰使用とそれによる魔力の枯渇で意識が落ちた。






元クラスメイトと思しき集団から逃げて偶然このフロアに来たわけであるが、そもそも一つ一つの階層の大きさはそこまで大きいものではないため、知らず知らずの内に深い階層へと潜ってしまっていることに涼介自身は気付いていない。






第42階層主 『劣化武装巨豚レッサーアームドオーク』 討伐完了。

しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...