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第十六話
しおりを挟む今年のクリスマスは、萌にとって忘れられない一日となった。
楽しくて、嬉しくて、ドキドキして。
両親が亡くなって以来、一番素敵なクリスマスになった。
打ち合わせが終わりカフェを出た後、萌と雅也はショッピングに向かった。
お互いの洋服を選び合ったり、可愛い雑貨屋さんに連れて行ってもらったり。
萌がちょっと興味を惹かれると、すかさず雅也が気づいてくれた。
楽しい時間はあっという間に過ぎてゆく。
「もうそろそろ夕飯食べる?」
辺りはもう真っ暗で、時刻は十九時少し前。
「はい。お腹すきました。……あの、私何も考えないで誘っちゃったんですけど、ファミレスとかチェーン店のパスタ屋さんとかでもいいですか? 手持ちがあまりなくて……」
誘った時は、雅也と一緒に過ごしたい一心で何も考えていなかったが、よく考えたら、雅也と萌では行くお店が全然違う……と思う。
雅也はファミレスとかは嫌かもしれない……という考えに至り、今更ながら慌ててしまう。
「えっ、俺が払うよ! さすがに未成年に払わせられないよ」
苦笑いする雅也。
本心では、好きな子だから奢りたいと思っているが、それは言えない。
だからこそ、未成年と言うワードを使ったのだが……。
その言葉に、萌はかなり傷ついてしまった。
恋心を自覚して以来、年の差で悩んでいるのだ。
自分はお子様すぎて相手にされないという不安を裏付けるかのような子ども扱いに悲しくなった。
「子ども扱いしないでください……雅也さんだけには子ども扱いされたくない!」
感情のまま、泣きそうになりながら叫んでしまった。
それを聞いて悟らない雅也ではない。
――萌も、俺のことを好き? いや、都合のいい妄想か!? でも今のを聞く限り……
萌は萌で、自分の恋心を気づかれたのではないかとヒヤヒヤだ。
沈黙が怖い。
「ごめん、悪かった。じゃあ、ファミレス行こうか! 俺、ファミレスのハンバーグ好きなんだよね。ボリュームもあって味もおいしくて」
どうやら雅也は気づかなかったようだと思い、萌は一安心した。
この時、雅也はある一つの決意をした。
その内容を萌が知るのはもう少し後。
*~*~*~*~*~*~*~*~*~*
「はー、美味しかったね」
「はい。今日はありがとうございました。すごく楽しかったです! 最高のクリスマスになりました!」
夕ご飯を食べ終わり、イルミネーションの輝く道を二人で歩く。
駅前の輝くツリーとピンクのハート形のイルミネーションの前に来た時、萌はふいに雅也に抱きしめられた。
「まっ、雅也さん!?」
好きな人からの突然のハグに、萌はドギマギしてしまう。
顔が熱い。
体がポカポカする。
胸がいっぱいだ。
「萌……」
甘く甘くささやいた雅也は体を離し、萌の目をしっかりと見つめる。
「俺、萌が好きです。ずっと前から好きです。誰よりも萌を大事にするから、俺と付き合って」
それがたった一つの願いであるかのように雅也は萌に伝えた。
驚きと、衝撃と、喜びと、幸福感。
雅也の瞳の中に、確かな愛情と懇願の光を認めた萌は、気づけば自然と雅也に抱き着いていた。
この時ばかりは、羞恥心はどこかへ行っていた。
「私も、私も雅也さんが大好きです。世界で一番好きです」
萌にとっても雅也にとっても、今日という日は特別な日になった。
今までで一番幸せなクリスマス。
大好きな人と両想いになれた特別な日。
施設へ帰るまで、萌と雅也はずっと手をつないでいた。
他愛もないおしゃべりに喜びが溢れ出る。
「今日は本当にありがとうございました。送ってもらっちゃってすいません」
「気にしないで。恋人を送るのは当然だろ? それに、ちょっとでも長く一緒にいたかっただけだから」
その言葉一つ一つが嬉しい。
「じゃあ、またな。また電話する。おやすみ」
最後にちゅっと萌のおでこにキスする雅也。
萌も雅也も真っ赤な顔だ。
雅也はそのまま帰ろうとするが、それを呼び止める萌。
「雅也! ……大好き」
真っ赤な顔で、うるんだ瞳でギュッと抱き着く。
そして、恥ずかしかったのか、「おやすみなさい」と言うと建物の中へと駆けていった。
「反則だろ……」
後には真っ赤な顔で立ち尽くす雅也が残された。
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