定年退職後の生活は異世界でした

異世界到着編

来たぜ異世界！

　自分の体が分解され、また組み上がっていく不思議な感じ。
　今までに経験したことの無い感覚だが、恐怖や痛みは感じない。

　しばらくすると、分解と構成という、この不思議な感覚が次第に薄くなり、だんだんと意識が覚醒してくる。

　そして眠りから覚めるように瞼を開けた。

　そこは知らない天井・・・ではなく、雲がポカリと浮いている晴天のもと、広場の真ん中にポツンと佇むバンガローの前にだった。

　周りを見渡し、三人で顔を見合わる。
　
　「・・・」
　「・・・」
　「・・・」

　暫しの沈黙のあと、

　「着いた！」

　「着いたのね！？」

　「オー！異世界！！」

　と三者三様に喜び、万歳三唱。バンザーイ！




　さて、ひとしきり万歳もして満足したので始めることにする。

　「よし！先ずは到着報告と荷物の受取だな！」
　
　「雄介、悪いけどミミエルさんに連絡して、荷物の受取りを頼む」
　
　「あいよ！」

　早速、雄介は自分のショルダーバックに入れているタブレットを取り出し、Fac○Timeを使ってミミエルさんに連絡を取り始めた。

　「じゃ、その間に俺たちは家の中を見てみるか」

　「えぇ！」

　私は優希と一緒に目の前にあるバンガローへ足を進める。

　バンガローは高床式で玄関前に階段があり、階段を上がるとちょっとした踊り場みたくなっている。
　
　ここにロッキングチェアーを置いてパイプを燻らしたらイイ感じだ。
　実にシブい。

　玄関を開けると全面は二十畳ぐらいかな、二階まで吹き抜けとなっている広間になっており、左手に二階へ上がる階段、中央に廊下、右手にはなんと！暖炉が設置されている。

　欧米か！
　カッコイイ・・・。

 　二階は、八畳ぐらいの部屋が左右に二部屋で計四部屋。
　一階の奥は台所と、トイレなどの水回りが纏まっている。
　
　大きい家だ。

　私と優希は各部屋を見て回り、ここをどうとか、あーとかワイワイ言いながら、新婚当時に購入したマンションを思い出していた。

　一階から雄介が荷物が届くから外に来てくれと呼んで来たので、二人とも急いで外に向かう。

　外では雄介がタブレットに向かって話しているので、覗いてみるとミミエルさんが映っていた。

　優希と二人で画面に向かって挨拶をしてから、荷物を転送するとの事なので、雄介の指示に従い、家の横に移動する。

　「それでは、転送を開始します。」

　「今回は事前に準備していた物を一気にお送りするので広めの場所にしますが、小さい物でしたら、指定した箱の中に転送しておくようにしますね」

　宅配ボックスね。後で設置しておきます。

　ミミエルさんの開始の合図の後、地面に丸い模様が浮かび上がるのと同時に同じ様な模様が空中にも出てきた。

　「おぉ！魔法陣だ！」「凄いわ！」
　
　魔法陣らしい。

　その魔法陣？は、上下で円柱の様な形になって、中心あたりから緑色の小さな光りが光りはじめ、その光が円柱の中全てを包み込んだと同時に魔法陣と光がフッと消え、その場所に準備期間中に揃えていた荷物が整然と積まれていた。

　「「「・・・・」」」

　魔法スゲー！

　三人とも目が点状態で呆然としていると、ミミエルさんがタブレット越しに話しかけてきた。

　「もしもーし、荷物は無事に届きましたか？」

　三人とも呆然としていたため、ミミエルさんの呼び掛けに気付かずにいたところ、雄介がハッと我に返り、慌てて問題ない旨を伝えていた。

　頼りになる息子だ。素晴らしい。

　その後、ミミエルさんとの通話を終了し、優希は早々に荷物から掃除道具を引っ張り出し掃除へ、私と雄介は荷物の仕分けと搬入を始めた。