定年退職後の生活は異世界でした

青山ねこまる

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村づくり 初級編

スライムハンター

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 雄介達と別れた私達は川の下流に向かってゆっくりと進んでいく。

 「ところでアンナ、スライムってどんな所にいるんだ?」

 私はレイチェルの手を引きながらアンナにスライムの住処を聞いてみる。

 「スライムは川の流れが緩やかな所や、落ち葉が溜まっている様な所に良くいますね」

 アンナ曰く、川の流れが殆どなくて落ち葉などが溜まっている所や大きな岩の下、沼地など比較的汚れが多い場所にいるらしい。

 川虫みたいな感じだな。

 へーと私が関心しながら話を聞いていると、手を繋いでいるレイチェルが手を引っ張って「おじちゃん!そこにいるよ!」と指をさして教えてくれた。

 「え!どこ!?」

 私はレイチェルが指差す方を見るが、何処にいるか全く分からないで目を凝らしたりキョロキョロしていると、アンナが笑いながら足元近くにいた透明のクラゲみたいな物体を指で摘んで持ち上げた。

 「洋一さん、どこ見てるんですか」

 おふぅ、緑のバケツに入っているデローンとしていると思ってたよ。

 「これがスライム?透明でプルプルしてるんだね」

 アンナからスライムを手のひらに置いてもらい、レイチェルと二人でまじまじと見つめる。

 スライムは直径5センチぐらいの大きさで、寒天みたいな弾力をしており、中心に小さな石が埋まっている。

 アンナによれば、中心にあるのがスライムのコアで、それを壊すと死んでしまうとのこと。また、このスライムは子供サイズで成長するとバスケットボールほどの大きさになると手を使って大きさを教えてくれた。

 「あ!動いた!」

 レイチェルの声で手の中にいるスライムを見てみると、まるでカタツムリかナメクジの様にのそのそと手の中で動き始めた。

 おぉ!摩訶不思議異世界!

 「ね!私も触っていい!?」

 レイチェルは目をキラキラさせながら私にお願いしてきたので、レイチェルの手にそっと置いてあげた。

 レイチェルは自分の手の中にいるスライムをジッと見つめ、動き始めたスライムを嬉しそうに眺めていた。

 「レイチェルはスライムを初めて見たの?」

 私が聞いてみると、「ううん。お家にも居たけど、ばっちいから近ずいちゃダメって言われてた」と小さなスライムを見つめながら教えてくれた。

 「どこの家もゴミ捨て場にスライムを置いてましたからね」とアンナ

 「へー、どの家でもスライムを飼ってるんだねぇ」

 私は関心しながら、「さて、レイチェルちゃん。その子はこのバケツに入れて、そろそろ他のスライムを探そうか」とレイチェルが入れやすい様にバケツを近づける。

 「はーい」

 レイチェルはバケツにスライムを入れて元気よく次のスライムを探し始めた。

 素直でいい子やなぁ。

 私は元気に探し回るレイチェルの後ろ姿をのほほんと眺めそんな事を考えていた。

 「おーい!洋一さんも早く探してくださいよー!」

 おう、アンナさんスンマセン。




 太陽が沈み始めた頃、「オヤジ~帰るよ~」と雄介達が手を振りながら迎えに来たので、スライム獲りを終了して雄介達の元へ向かった。

 「どう?獲れ・・・うわぁ!?」

 雄介が釣果?スライム果?を見るためバケツを除いてあまりの量に仰け反っている。

 「ふふふ、我々はスライムハンター!どんな狭い隙間でもスパッと捕獲!スライムの事なら我々にお任せあれ!」

 「あれ!」

 私とレイチェルはビシッと雄介達にサムズアップのキメポーズを決める。

 ドヤ!

 「スライムハンターかぁ、レイチェルちゃんは可愛いねぇ~」

 雄介達はレイチェルの頭を優しく撫でながら褒めちぎった後、「もう日が暮れるし帰るよ~」と言って歩き出した。

 あ、あれ?

 「ハハハッ流石に誰もツッコミはしないと思いましたが、存在そのものを無視するとは!皆さんやりますねぇ」

 みんながぞろぞろと家路につく中、エリサがニヤッと笑いながら私の肩をポンと叩き、そのセンス嫌いじゃないですよと捨て台詞を吐いて去っていった。




 帰宅後、優希に獲ってきてと言ったが物には限度があると怒られた。

 説教中、視界の隅でエリサが期待に満ちた目で見てきたので、スライムハンターをやろうかと考えたが、本気で殴られそうだったので諦めた。

 チッ 

 エリサ、舌打ちはやめて。

 怒られた私は逃げる様に家の裏へ向かい、スライムを放すための子供が使うビニールプールに空気を入れて準備を始める。

 「洋一おじちゃん、わたしこの子飼いたい!」

 レイチェルが自分が見つけたスライムを手に持って飼いたいとお願いしてきた。

 私は足踏み式の空気入れを踏み踏みしながら、ちゃんとお世話をする事を条件に許可をしてあげると、嬉しそうにスライムを持ってみんなの所へ戻っていった。

 空気の入れ終わったプールに水を張って、バケツからドバッとスライムを入れた。ビニールプール一面に蠢くスライム・・・獲りすぎたかもしれない。

 私はちょっとだけ反省してから、溜めてあるビニール類のゴミを入れてしばらく様子を見ることにした。
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