68 / 71
村づくり 初級編
村の現状
しおりを挟む
「ラナ!エリサ!・・・無事で良かった」
壊れた外壁から少し進んだ所にある片側が壊れている門を潜り抜けた先でディダンと数名のエルフがラナ達を出迎えに集まっていた。
「ディダンさん・・・それにヤークさん、ハミルさんにジンさんもご無事で何よりです」
ラナが出迎えたエルフ達に笑顔を向けると、ディダン達は下を向いて悔しそうな顔をする。
「すまなかった・・・俺たちがもっと早く街から戻って来てれば、こんな事には・・・」
「それでも無理だったと思うぜ?」
マシューの一言にキッと顔色を変えてディダン達が顔を上げる。
「お前は確か・・・」
「五年前にコカトリス退治の依頼を受けた、深淵の翼のマシューだ」
ディダン達はマシューの顔をまじまじと見詰めていると、ディダンの背後にいたヤークがアッと声をあげる。
「そうだ、思い出した!そうそう!コカトリス退治の時の!」
「お!やっと思い出してくれたか」
マシューはニヤっと笑って片手を上げる。
「あぁ、それにしても随分と老けたなぁ」
ヤークはマシューを上から下へとマジマジと見詰めながらしみじみ呟く。
「ほっとけ!お前たちエルフと一緒にすんな!」
マシューは苦笑いをしながらも、お互いに懐かしそうに握手を交わした。
そんな光景を見ていたディダンはマシューたちを見渡した後、取り敢えず安全な場所へと案内するため、村の中心部へ歩き始めた。
ディダンに案内されながら村の中心部へ進んでいく途中では、建物が倒壊していたり、畑が踏み荒らされていたりと、ゴブリン達の襲撃の激しさが窺え、ラナやエリサは当然として、雄介も言葉を失い無言で歩いている。
「あ・・・」
中心部に向かう途中で、エリサは倒壊した家の前で立ち尽くす。
「エリサ?」
雄介は立ち止まったエリサに声を掛けるが、聞こえてないのか暫く立ち尽くした後、その場にしゃがみ込んでしまう。
「エリサ!大丈夫か?」
雄介はエリサの傍らにしゃがみ肩を軽く叩くが反応がなく、振り返ってラナを見ると「ここにエリサの家があったんです」と俯きながら教えてくれた。
「雄介、しばらくエリサの側に居てくれるか」
ラルフが気遣いながら雄介にエリサの事を任せ、ディダンに案内を促してこの場を離れていった。
「私の家はお父さんが早くに死んじゃって、お母さんと二人暮らしだったの」
ラルフ達が離れてから暫くして、エリサがボソリと話し出した。
「あの日はね、私はバネッサと二人で薪を拾いに行って、帰りに見つけた野苺を一杯採って帰ってきて、お母さんと明日お菓子を作ろうって、話しながらご飯を食べてたの」
雄介は無言で話を聞く。
「いつもと同じだったの、ご飯を食べて、洗い物して、ベットに入って、明日のお菓子作りを楽しみにしてただけだったの」
「急だった・・・・お母さんの悲鳴が聴こえて・・・わ、わたしは・・ビックリして起きたら・・・殴られて・・・何がなんだか解らなくて・・・」
俯いているエリサの地面の先がポツポツと濡れ始める。
「髪の毛を掴まれて・・引きずられて行くときに・・・お、お母さんが・・・お母さんが・・・」
エリサは膝を抱える様に泣き崩れ、雄介は無言でエリサの肩を抱き寄せた。
マシュー達がディダンに案内されたのは、村の中央寄にある他よりひと回り大きい建物だった。
建物は一部の壁が壊されていたが、他の建物よりしっかりと原型を留めており、雨露を凌ぐには十分な状態を維持している。
玄関から入った目の前には、片腕の肘から先が切断された女性と、片足が切断された男性、片目に包帯を巻き付けた男性が横たわっており、女性が一人で怪我人の看病をしている状況だった。
「ラナ、スマンな。お前の家しかまともに残っていなかったから、勝手に使わせて貰った」
ラナ達の案内を終えたディダンはヤーク、ハミル、ジンの三人を門の方へ見張りに戻らせて家の中へ入って行き、ラルフも村の状況を確認すると言って、ヤーク達と一緒にラナの家から出て行った。
「いえ、村長の家はその為にあるのですから、気にしないで下さい」
自分の家に入ったラナは、怪我人の状態をみつつ気丈に振る舞いながらも、顔色が悪い。
「生き残ったのはここにいる人達で全てですか?」
「・・・あぁ、あとの遺体は共同墓地の方へ・・・」
「・・・そうですか」
ディダンの話を聴き終えたラナは、俯きながらグッと唇を噛み締めた後、看病をしている女性と抱き合いながらお互いの生還を喜びつつ、怪我人の看病を手伝い始める。
その姿を見ながら、マシューはディダンの肩に手を置いて「お互いの情報をすり合わせるか」と邪魔にならない様に端の方へ移動していった。
壊れた外壁から少し進んだ所にある片側が壊れている門を潜り抜けた先でディダンと数名のエルフがラナ達を出迎えに集まっていた。
「ディダンさん・・・それにヤークさん、ハミルさんにジンさんもご無事で何よりです」
ラナが出迎えたエルフ達に笑顔を向けると、ディダン達は下を向いて悔しそうな顔をする。
「すまなかった・・・俺たちがもっと早く街から戻って来てれば、こんな事には・・・」
「それでも無理だったと思うぜ?」
マシューの一言にキッと顔色を変えてディダン達が顔を上げる。
「お前は確か・・・」
「五年前にコカトリス退治の依頼を受けた、深淵の翼のマシューだ」
ディダン達はマシューの顔をまじまじと見詰めていると、ディダンの背後にいたヤークがアッと声をあげる。
「そうだ、思い出した!そうそう!コカトリス退治の時の!」
「お!やっと思い出してくれたか」
マシューはニヤっと笑って片手を上げる。
「あぁ、それにしても随分と老けたなぁ」
ヤークはマシューを上から下へとマジマジと見詰めながらしみじみ呟く。
「ほっとけ!お前たちエルフと一緒にすんな!」
マシューは苦笑いをしながらも、お互いに懐かしそうに握手を交わした。
そんな光景を見ていたディダンはマシューたちを見渡した後、取り敢えず安全な場所へと案内するため、村の中心部へ歩き始めた。
ディダンに案内されながら村の中心部へ進んでいく途中では、建物が倒壊していたり、畑が踏み荒らされていたりと、ゴブリン達の襲撃の激しさが窺え、ラナやエリサは当然として、雄介も言葉を失い無言で歩いている。
「あ・・・」
中心部に向かう途中で、エリサは倒壊した家の前で立ち尽くす。
「エリサ?」
雄介は立ち止まったエリサに声を掛けるが、聞こえてないのか暫く立ち尽くした後、その場にしゃがみ込んでしまう。
「エリサ!大丈夫か?」
雄介はエリサの傍らにしゃがみ肩を軽く叩くが反応がなく、振り返ってラナを見ると「ここにエリサの家があったんです」と俯きながら教えてくれた。
「雄介、しばらくエリサの側に居てくれるか」
ラルフが気遣いながら雄介にエリサの事を任せ、ディダンに案内を促してこの場を離れていった。
「私の家はお父さんが早くに死んじゃって、お母さんと二人暮らしだったの」
ラルフ達が離れてから暫くして、エリサがボソリと話し出した。
「あの日はね、私はバネッサと二人で薪を拾いに行って、帰りに見つけた野苺を一杯採って帰ってきて、お母さんと明日お菓子を作ろうって、話しながらご飯を食べてたの」
雄介は無言で話を聞く。
「いつもと同じだったの、ご飯を食べて、洗い物して、ベットに入って、明日のお菓子作りを楽しみにしてただけだったの」
「急だった・・・・お母さんの悲鳴が聴こえて・・・わ、わたしは・・ビックリして起きたら・・・殴られて・・・何がなんだか解らなくて・・・」
俯いているエリサの地面の先がポツポツと濡れ始める。
「髪の毛を掴まれて・・引きずられて行くときに・・・お、お母さんが・・・お母さんが・・・」
エリサは膝を抱える様に泣き崩れ、雄介は無言でエリサの肩を抱き寄せた。
マシュー達がディダンに案内されたのは、村の中央寄にある他よりひと回り大きい建物だった。
建物は一部の壁が壊されていたが、他の建物よりしっかりと原型を留めており、雨露を凌ぐには十分な状態を維持している。
玄関から入った目の前には、片腕の肘から先が切断された女性と、片足が切断された男性、片目に包帯を巻き付けた男性が横たわっており、女性が一人で怪我人の看病をしている状況だった。
「ラナ、スマンな。お前の家しかまともに残っていなかったから、勝手に使わせて貰った」
ラナ達の案内を終えたディダンはヤーク、ハミル、ジンの三人を門の方へ見張りに戻らせて家の中へ入って行き、ラルフも村の状況を確認すると言って、ヤーク達と一緒にラナの家から出て行った。
「いえ、村長の家はその為にあるのですから、気にしないで下さい」
自分の家に入ったラナは、怪我人の状態をみつつ気丈に振る舞いながらも、顔色が悪い。
「生き残ったのはここにいる人達で全てですか?」
「・・・あぁ、あとの遺体は共同墓地の方へ・・・」
「・・・そうですか」
ディダンの話を聴き終えたラナは、俯きながらグッと唇を噛み締めた後、看病をしている女性と抱き合いながらお互いの生還を喜びつつ、怪我人の看病を手伝い始める。
その姿を見ながら、マシューはディダンの肩に手を置いて「お互いの情報をすり合わせるか」と邪魔にならない様に端の方へ移動していった。
1
あなたにおすすめの小説
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。
かの
ファンタジー
孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。
ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~
舞
ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。
異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。
夢は優しい国づくり。
『くに、つくりますか?』
『あめのぬぼこ、ぐるぐる』
『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』
いや、それはもう過ぎてますから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる