私はあなたを応援しています

クルセリア

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番外 働きたいのですが

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 私はルリナ・ウェルト。5年前に親を亡くし、長い間一人暮らしをしていた村娘です。週に5日、小さなパン屋で働き、休みの日は家の掃除を…そんな私の生活はある日を境に一変しました。それは、リン・ランディアとの出会いです。リンは私の暮らす小さな小さな村で働く兵士で、とっても強い方で…私の憧れの人でした。そして色々ありまして…私とリンは恋人…という関係なのです。リンは私と同性…女性なのですが、そんなことは気にしません。美しく、凛々しいリン…ずっと、私はあなたを応援しています。


「あの、働かせください!」

 私は机を叩き、主張した。今は、色々あり、リンと恋人になり…王都で同居しています。ほぼ毎日、仕事に出掛けるリンを見て私も働かなければと思っているのですが…

「だめだよ」

 目の前に座る美しく凛々しいリンはそれを拒否した。これで何度目なのでしょつ、何度も何度も働きたいと申し出るのだがリンは駄目だと言う。

「なんでですか~うぅ…私だってちゃんと出来ますよ…」
「うん知ってるよ、ルリナが今まで一人で頑張ってた事ぐらい」

 前のめりになる私を、微笑みを絶やさず優しく制するリン。

「リンに養われてるだけじゃだめなんです。私はリンの役に立ちたいの!」

 夜遅くに帰ってくるリンを待つだけの生活。リンが毎日忙しく働く姿を見て思うのです。わたしも役に立たなければと…

「大丈夫だよ、結構給料いいし」
「給料の問題じゃないです!私が働きたいって思ってるんです!」

 なぜリンは私の意見を聞いてくれないのでしょうと、内心怒りつつ…説得を試み続ける。リンは微笑みの表情のまま、そっと私に近づき肩に両手を乗せた。

「ルリナ…王都は広くて危険なんだよ?ルリナみたいに可憐で可愛い子なんてすぐ食べられてしまうよ」

 リン様を相変わらず微笑み顔だが、肩に乗せた両手には力が籠っている。

「……私…そんなに頼り…ないです…か?」

 自分の頭より高い位置にあるリンの整った顔を私は見上げる。目尻が熱く感じた、もっと頼って欲しい。リンの為ならなんだってするのに…

「そ、そんな…事はないよ。ルリナの料理は美味いし…いつも部屋の掃除も…洗濯も干してくれるし…ルリナが居てくれるから私も仕事をがんばれるし…」
「じゃあ…リンの役に立ててる?」
「うん。勿論だよ」

 優しく私の頭を撫でるリン。ほのかな暖かみを感じ、蕩けてしまいそうになる。

「じゃあ、働かせてくれますか?」
「う~ん…だめかなぁ」
「な、なんでですか!!」

 過保護な、騎士様はどうしても私を働かせたくないらしい。


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