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新人狩人編
第六話 女神
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「暇だ…」
四時間目を終えた彩花が呟いた。日曜日、例のあの日から二日が経過し穏やかな火曜日を送っていた。退屈な授業もなく、スラスラと授業が進んでいくため弁当の時間も早く訪れる。もちろん今日はちゃんと弁当を持ってきている。
御守は日曜日以降、体調不良で学校を休んでいる。昨日はメールでやり取りをしたが返信も遅く、通話をかけようとしても出ない。一応ちゃんと連絡を返してくれるので縁を切ったわけではないと思うが、やはり親友のことが気になって仕方がない。
彩花は何か手土産を持ってお見舞いに行くことを決めた。
「何持ってこう…」
気づいた時には学校が終わり、彼女は帰路についていた。道なりに進み、たまに曲がり、それを繰り返すうちに家に着く。何を持っていくかずっと考えていたが、結局いい案が思い浮かばなかったため家に帰った。
そして彩花は持っていたカバンをその場で落としてしまった。
「なんで…警察が?」
震えた声で彩花が言う。
玄関前にはパトカーが一台と二人の大人、そして彼女の母が立っていた。揉めているのだろうか、カバンを取ると走り出す。
「ちょ、事件でもあったんですか?」
彩花が駆け寄ると、一人の男が振り向いた。
「……娘さん?」
「そうです、娘の彩花です」
「お母さん、何かあったの?」
「それがね…」
「ええええ!!」
鼓膜が破裂しそうな声量で彩花が叫ぶ。
工藤家族、唐突の四百万円請求。母と話している男───税務署の職員だという───彼は四百万円の税金を収める必要があると通達しに来た。
「ちょっと待ってくださいよ…なんでそんなお金を…」
「所得税です。奥様」
「ちょっと待ってください職員さん、なんでそんな…」
「………そこの娘、少し話せるか?」
「え、はぁ、はい」
口を閉じていた五十台半ばの男が彩花を指さした。
パトカーの後ろに隠れると、男が喋りだした。
「治安武の吉田警部補だ。以後お見知りおきを」
「あ、えと…工藤彩花です。よろしくお願いします」
「お前の口座にな…四千万円が振り込まれていたんだ」
「……へ?」
彩花に電流走る。ここで彼女は、この大金がジェム・ラピスを捕らえた賞金だと気づいた。
「お前…もしかしてだが、賞金稼ぎか?」
「えっ…あっと…その」
「言わなくていい、察しはついてる」
「…どうしてわかるんですか?」
「お前より若くして賞金稼ぎになるやつは多い。大半は親に内緒でな」
しばらくの沈黙が流れると、吉田はまた口を開いて言った。
「とりあえず…四百万はお前の口座から引き落としておく。親には黙っておこう…」
「ありがとう…ございます?」
「おーい、間違えたみたいだ。帰るぞー」
「え、間違いですか?」
税務署の男は呆れた様子でパトカーに乗り込んだ。
「間違えたみたいで良かったわ」
「そうだね…」
「さーてと…ご飯の用意しなきゃ」
母は一足先に家の中に入る。彩花は少し考えをめぐらせていた。
───治安武、正式名称を特別治安維持武装警察。
治安武は魔法少女の登場以降設立された新形式の警察組織だ。怪人の驚異に対抗するため高火力の武装と装甲を纏い、洗練された戦闘技術で敵を殲滅する。
怪人相手に好き勝手暴れ回る魔法少女に手を焼いているというが、実際にどうなっているかは不明だ。
完全武装している時の姿は凶悪なロボットのように見えるので畏怖されているが、一応正義と平和のために活躍する警察だ。そして普段は完全武装などせず、銃と防弾ベストを着ている。
治安武は普段パトロールをしており、税金の徴収などには来ないはずなのだが何故だろうか?疑問に思いながら彩花は家の中に入った。
「あ」
「…?どうしたの?」
美麗な二十代前半と思わしき女性が御守の家の前に立っていた。二人は玄関のベルを押そうとしたところ偶然出会った。
「あなたも何か用があるんですか?」
「お友達が病気みたいでね、お見舞いに」
「えっ私もです」
「あら君も?奇遇じゃない」
石神巴と名乗る彼女がベルを押すと、すぐ玄関が開き御守が出てきた。
「巴さん…?どうしてここに?」
「久しぶり、病気って聞いてね」
「………彩花は?」
「同じく、体調良くないみたいだしお見舞い」
「とりあえず上がって」
三人は家に上がると、しばらくの沈黙を貫いていた。
「紹介するね、彼女はあたしの知り合いの石神巴さん。こっちは幼なじみの工藤彩花」
「よろ…しくお願いします」
「よろしくね」
「じゃあ…二人はお見舞いに来たって言うけど…ちょっと巴さんは待っててくれる?」
「いいわよ」
「じゃあ彩花はあたしの部屋に来て」
「彩花、日曜日に言ってたことをもう一回おさらいさせてほしいの」
「あ、あの時はごめんね…少し急いでた?もんで」
「まず、あたしは魔法少女狩りのあなたに捕まった。普通魔法少女が捕まったら殺されたり…拷問されたりするらしいけど、それをあなたがさせなかった」
真剣な目で御守が話す。
「代わりに…あなたの部下になったってわけ?」
「そういうことになる…」
額に手を当て、しばらく悩んだ後彩花に言った。
「彩花の部下になるのはいいとして…問題は協会の敵の仲間になっちゃったってこと…」
「本当に申し訳ない…」
「それより一つ聞きたいんだけど…あたしを捕まえにきた理由は?」
胸に突き刺さる質問だ。
「お金のため?懸賞金四千万円に目が眩んであたしを組織に売ったの?」
「そ…そんなわけじゃ…ない」
「じゃあ何?」
「御守を守りたかった…!」
「あたしを…ね」
「確かに一理あるかもね、とりあえずそれで信じておくことにする」
「待って…!」
巴を呼びに行こうとした御守を彩花が引き止めた。
「御守は本当に…それでいいの?」
「いいって…どういうこと?」
「だって、私の都合で魔法少女から悪の組織?の手下になっちゃったのに…」
「こっちにも色々と事情があるの」
そう言うと御守は部屋を出て、巴のいるリビングに向かった。
複雑な心境の中、独り彩花は呟いた。
「よくわからないな…」
巴が部屋に入ると、鍵がしっかりとかけられる音がした。下で待っていろと言われたが人間である以上気になって仕方がない。
彩花は足音を殺して階段を登り、ドアに耳を当てた。自分の体から出る全ての音が大きく聞こえる気がする。呼吸も、関節が動く音も──心臓からも音が漏れている感覚だ。
「……さん」
二人の会話は断片しか捉えることが出来ず、解読するのに彼女の頭を悩ませた。
「魔法少女を辞めるのね…」
(魔法少女?)
ハッキリと魔法少女というフレーズが聞こえた。
「もう契約期間も───」
(巴さんは魔法少女協会の関係者なの…?)
その疑問はすぐ解消された。
「あなたがいなくなると寂しくなるわ…」
巴が続けて言う。
「ダイヤは失踪、それにあなたもいなくなったらジェムズガールズは三人グループになっちゃうわよ」
「巴さんなら一人でも一騎当千じゃん」
石神巴、魔法少女協会日本支部所属の魔法少女。恐らくジェムズガールズに所属し、もし本当であればジェム・トパーズだろう。
彩花はそう結論づけた。
(まずいね…もし私が御守をスカウトしたってバレたら…)
不安と共に彩花は階段を降りた。木が軋まないか不安になりながらもなんとか静かに一歩一歩降りた。
* * *
「バイバイ巴さん」
「それじゃあまたね」
巴は彩花よりも先に帰った。彩花はこれからジェム・トパーズについて調べるだろう。いずれ敵として戦うかもしれないのなら、調べておく必要がある。
「巴さんってどんな人なの?」
「近所に住んでるだらしないお姉さんポジションの人」
「そんな創作みたいな人が実在するんだ」
「うん、すっごい真面目そうな雰囲気出してるけど実際はだらしないよ」
「ちょっと以外、ギャップ萌えだね」
御守は巴が去るのを見届けると彩花に耳打ちした。
「ねぇ、さっきからずっとあたしたちの会話覗き見してたでしょ」
「見てはいないよ」
「じゃあ聞いてたんだね」
「まぁ…一応?」
「巴さんが誰だか知ってる?」
彩花はしばらく黙って考えた後聞いた。
「それがわかったら苦労しないんだけどね…一応予想はしてる。ジェム・トパーズ?」
「おー、当たり」
御守は家のドアを開けた。
「とりあえず家に入ろっか」
家の中に入ると、御守は急いで二階に上がり自分の部屋で何かを探し始めた。
───ジェム・ダイヤ、トパーズ、ラピス、ヘリオ、ルビー…失踪したダイヤってのも気になるけど…
「あったあったこれ!」
階段を降りてきた御守は紙を一枚片手に持っていた。
「懸賞金三億千五百万…!」
「巴さんにかけられた懸賞金、すごいよね…」
「ちょっと待って」
彩花が質問した。
「少し気になったんだけど…巴さんが御守を訪れた理由って?」
「なんでだろう…今までこんなことは無かったんだけど…協会に脱退するって言った日に偶然巴さんが来たんだよね」
「………謎だね。別れの挨拶とか?」
「それが一番有り得るけど、まぁそんなことはどうでもいいや」
懸賞金が書かれたポスターを丸めると彩花を真剣な目で見つめた。
「それで…あたしはこれからグループの戦闘員になるんだよね」
「唐突…だね?あ、もしかして脱退決めた理由ってそれ?」
「まあね」
なんて優しい少女なのだろうか。親友に誘拐された挙句格上の敵に殺されかけ、勝手に部下にされたのにも関わらず親友と同じ組織に入る道を選んだというのだ。
「あたしが魔法少女になったのは…最初は憧れだったけど、結構現実的に厳しいからね」
「それって…」
「その…なんちゃらグループとかが決めた懸賞金。実際あんたに誘拐されたしね」
「それは本当に申し訳ない」
彩花は平謝りした。
「過ぎたことはもういい。というか辞める決心がついたから良しとする」
「女神様…?」
「人間です」
御守は笑いながら反論した。
四時間目を終えた彩花が呟いた。日曜日、例のあの日から二日が経過し穏やかな火曜日を送っていた。退屈な授業もなく、スラスラと授業が進んでいくため弁当の時間も早く訪れる。もちろん今日はちゃんと弁当を持ってきている。
御守は日曜日以降、体調不良で学校を休んでいる。昨日はメールでやり取りをしたが返信も遅く、通話をかけようとしても出ない。一応ちゃんと連絡を返してくれるので縁を切ったわけではないと思うが、やはり親友のことが気になって仕方がない。
彩花は何か手土産を持ってお見舞いに行くことを決めた。
「何持ってこう…」
気づいた時には学校が終わり、彼女は帰路についていた。道なりに進み、たまに曲がり、それを繰り返すうちに家に着く。何を持っていくかずっと考えていたが、結局いい案が思い浮かばなかったため家に帰った。
そして彩花は持っていたカバンをその場で落としてしまった。
「なんで…警察が?」
震えた声で彩花が言う。
玄関前にはパトカーが一台と二人の大人、そして彼女の母が立っていた。揉めているのだろうか、カバンを取ると走り出す。
「ちょ、事件でもあったんですか?」
彩花が駆け寄ると、一人の男が振り向いた。
「……娘さん?」
「そうです、娘の彩花です」
「お母さん、何かあったの?」
「それがね…」
「ええええ!!」
鼓膜が破裂しそうな声量で彩花が叫ぶ。
工藤家族、唐突の四百万円請求。母と話している男───税務署の職員だという───彼は四百万円の税金を収める必要があると通達しに来た。
「ちょっと待ってくださいよ…なんでそんなお金を…」
「所得税です。奥様」
「ちょっと待ってください職員さん、なんでそんな…」
「………そこの娘、少し話せるか?」
「え、はぁ、はい」
口を閉じていた五十台半ばの男が彩花を指さした。
パトカーの後ろに隠れると、男が喋りだした。
「治安武の吉田警部補だ。以後お見知りおきを」
「あ、えと…工藤彩花です。よろしくお願いします」
「お前の口座にな…四千万円が振り込まれていたんだ」
「……へ?」
彩花に電流走る。ここで彼女は、この大金がジェム・ラピスを捕らえた賞金だと気づいた。
「お前…もしかしてだが、賞金稼ぎか?」
「えっ…あっと…その」
「言わなくていい、察しはついてる」
「…どうしてわかるんですか?」
「お前より若くして賞金稼ぎになるやつは多い。大半は親に内緒でな」
しばらくの沈黙が流れると、吉田はまた口を開いて言った。
「とりあえず…四百万はお前の口座から引き落としておく。親には黙っておこう…」
「ありがとう…ございます?」
「おーい、間違えたみたいだ。帰るぞー」
「え、間違いですか?」
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「間違えたみたいで良かったわ」
「そうだね…」
「さーてと…ご飯の用意しなきゃ」
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治安武は魔法少女の登場以降設立された新形式の警察組織だ。怪人の驚異に対抗するため高火力の武装と装甲を纏い、洗練された戦闘技術で敵を殲滅する。
怪人相手に好き勝手暴れ回る魔法少女に手を焼いているというが、実際にどうなっているかは不明だ。
完全武装している時の姿は凶悪なロボットのように見えるので畏怖されているが、一応正義と平和のために活躍する警察だ。そして普段は完全武装などせず、銃と防弾ベストを着ている。
治安武は普段パトロールをしており、税金の徴収などには来ないはずなのだが何故だろうか?疑問に思いながら彩花は家の中に入った。
「あ」
「…?どうしたの?」
美麗な二十代前半と思わしき女性が御守の家の前に立っていた。二人は玄関のベルを押そうとしたところ偶然出会った。
「あなたも何か用があるんですか?」
「お友達が病気みたいでね、お見舞いに」
「えっ私もです」
「あら君も?奇遇じゃない」
石神巴と名乗る彼女がベルを押すと、すぐ玄関が開き御守が出てきた。
「巴さん…?どうしてここに?」
「久しぶり、病気って聞いてね」
「………彩花は?」
「同じく、体調良くないみたいだしお見舞い」
「とりあえず上がって」
三人は家に上がると、しばらくの沈黙を貫いていた。
「紹介するね、彼女はあたしの知り合いの石神巴さん。こっちは幼なじみの工藤彩花」
「よろ…しくお願いします」
「よろしくね」
「じゃあ…二人はお見舞いに来たって言うけど…ちょっと巴さんは待っててくれる?」
「いいわよ」
「じゃあ彩花はあたしの部屋に来て」
「彩花、日曜日に言ってたことをもう一回おさらいさせてほしいの」
「あ、あの時はごめんね…少し急いでた?もんで」
「まず、あたしは魔法少女狩りのあなたに捕まった。普通魔法少女が捕まったら殺されたり…拷問されたりするらしいけど、それをあなたがさせなかった」
真剣な目で御守が話す。
「代わりに…あなたの部下になったってわけ?」
「そういうことになる…」
額に手を当て、しばらく悩んだ後彩花に言った。
「彩花の部下になるのはいいとして…問題は協会の敵の仲間になっちゃったってこと…」
「本当に申し訳ない…」
「それより一つ聞きたいんだけど…あたしを捕まえにきた理由は?」
胸に突き刺さる質問だ。
「お金のため?懸賞金四千万円に目が眩んであたしを組織に売ったの?」
「そ…そんなわけじゃ…ない」
「じゃあ何?」
「御守を守りたかった…!」
「あたしを…ね」
「確かに一理あるかもね、とりあえずそれで信じておくことにする」
「待って…!」
巴を呼びに行こうとした御守を彩花が引き止めた。
「御守は本当に…それでいいの?」
「いいって…どういうこと?」
「だって、私の都合で魔法少女から悪の組織?の手下になっちゃったのに…」
「こっちにも色々と事情があるの」
そう言うと御守は部屋を出て、巴のいるリビングに向かった。
複雑な心境の中、独り彩花は呟いた。
「よくわからないな…」
巴が部屋に入ると、鍵がしっかりとかけられる音がした。下で待っていろと言われたが人間である以上気になって仕方がない。
彩花は足音を殺して階段を登り、ドアに耳を当てた。自分の体から出る全ての音が大きく聞こえる気がする。呼吸も、関節が動く音も──心臓からも音が漏れている感覚だ。
「……さん」
二人の会話は断片しか捉えることが出来ず、解読するのに彼女の頭を悩ませた。
「魔法少女を辞めるのね…」
(魔法少女?)
ハッキリと魔法少女というフレーズが聞こえた。
「もう契約期間も───」
(巴さんは魔法少女協会の関係者なの…?)
その疑問はすぐ解消された。
「あなたがいなくなると寂しくなるわ…」
巴が続けて言う。
「ダイヤは失踪、それにあなたもいなくなったらジェムズガールズは三人グループになっちゃうわよ」
「巴さんなら一人でも一騎当千じゃん」
石神巴、魔法少女協会日本支部所属の魔法少女。恐らくジェムズガールズに所属し、もし本当であればジェム・トパーズだろう。
彩花はそう結論づけた。
(まずいね…もし私が御守をスカウトしたってバレたら…)
不安と共に彩花は階段を降りた。木が軋まないか不安になりながらもなんとか静かに一歩一歩降りた。
* * *
「バイバイ巴さん」
「それじゃあまたね」
巴は彩花よりも先に帰った。彩花はこれからジェム・トパーズについて調べるだろう。いずれ敵として戦うかもしれないのなら、調べておく必要がある。
「巴さんってどんな人なの?」
「近所に住んでるだらしないお姉さんポジションの人」
「そんな創作みたいな人が実在するんだ」
「うん、すっごい真面目そうな雰囲気出してるけど実際はだらしないよ」
「ちょっと以外、ギャップ萌えだね」
御守は巴が去るのを見届けると彩花に耳打ちした。
「ねぇ、さっきからずっとあたしたちの会話覗き見してたでしょ」
「見てはいないよ」
「じゃあ聞いてたんだね」
「まぁ…一応?」
「巴さんが誰だか知ってる?」
彩花はしばらく黙って考えた後聞いた。
「それがわかったら苦労しないんだけどね…一応予想はしてる。ジェム・トパーズ?」
「おー、当たり」
御守は家のドアを開けた。
「とりあえず家に入ろっか」
家の中に入ると、御守は急いで二階に上がり自分の部屋で何かを探し始めた。
───ジェム・ダイヤ、トパーズ、ラピス、ヘリオ、ルビー…失踪したダイヤってのも気になるけど…
「あったあったこれ!」
階段を降りてきた御守は紙を一枚片手に持っていた。
「懸賞金三億千五百万…!」
「巴さんにかけられた懸賞金、すごいよね…」
「ちょっと待って」
彩花が質問した。
「少し気になったんだけど…巴さんが御守を訪れた理由って?」
「なんでだろう…今までこんなことは無かったんだけど…協会に脱退するって言った日に偶然巴さんが来たんだよね」
「………謎だね。別れの挨拶とか?」
「それが一番有り得るけど、まぁそんなことはどうでもいいや」
懸賞金が書かれたポスターを丸めると彩花を真剣な目で見つめた。
「それで…あたしはこれからグループの戦闘員になるんだよね」
「唐突…だね?あ、もしかして脱退決めた理由ってそれ?」
「まあね」
なんて優しい少女なのだろうか。親友に誘拐された挙句格上の敵に殺されかけ、勝手に部下にされたのにも関わらず親友と同じ組織に入る道を選んだというのだ。
「あたしが魔法少女になったのは…最初は憧れだったけど、結構現実的に厳しいからね」
「それって…」
「その…なんちゃらグループとかが決めた懸賞金。実際あんたに誘拐されたしね」
「それは本当に申し訳ない」
彩花は平謝りした。
「過ぎたことはもういい。というか辞める決心がついたから良しとする」
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「人間です」
御守は笑いながら反論した。
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