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新人狩人編
十一話 新人狩人
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彩花と御守は自転車に乗ると、全速力で漕ぎ出した。
目的地までそれほど遠くは無いが、時間に余裕を持って行動するべきだ。初任務ということで緊張もする、特に御守。最低でも三十分前には着いて準備をしておく方がいい。
途中、警察が相乗りしているのを見てホイッスルを鳴らしたが、そんな些細なことでこの二人を止めることは出来ない。下り坂で加速し、風が二人の髪を靡かせる。
「そういえば、彩花ちゃん」
「なぁにぃ?」
「彩花ちゃんはどうやって変身してるの?」
風の音でよく聞き取れない。
彩花はもう一度言ってと頼んだ。
「彩花ちゃんは!どうやって変身してるの!」
「指パッチン!」
「それだけで変身出来るの?すごい!」
「そ、それほどでも」
カーブに差し掛かると、自転車は若干勢いを落とした。もはやペダルを漕ぐ必要すらない、チェーンがキリキリと音を立てるがこれにも趣を感じる彩花がいた。
青春───
「ラムネ飲む?」
「あたし炭酸飲めないからオレンジジュースで」
ベンチに座った二人は、たっぷり流した汗を服の裾で拭きながら冷えた飲み物を味わう。口の中で弾ける炭酸、その味は淡白だがほんのりと甘みがある。
「おい」
「なんですぅ?」
「彩花ともう一人、ここは社内だぞ」
「別にいいじゃないですかぁ、私たち社員なんですよ?」
横に立った詩織が軽くチョップを喰らわせる。当たり所が悪かったらアザが出来そうだ。
「不埒…」
「どこがです?」
「そうやってだらしなくくつろいでいるところだ!ここはお前らの家じゃないんだぞ!全く……けしからん」
まだ冬は遠いというのに厚いコートで身を包んでいるその様子は、見ているこちらも暑くなりそうだ。
「弱そう」
御守は一言呟いた。何が弱いのかは言わなかった。
* * *
「車に乗れ、任務を説明する」
「うわ…でっか」
駐車場には巨大なリムジン車が停められていた。ドアマンが扉を開け、二人が乗る。詩織もその後に続いた。
「出せ」
窓をコンコン、と叩くとエンジンがかかり車が走り出す。
詩織は鞄から数枚のファイルを取り出すと、未だにジュースを飲んでいる二人に渡した。
「今回のターゲットは…」
ストローが残り少ない液体を吸い上げる。
雑音だらけだ。
「聞いての通り無所属の……」
そっとファイルを閉じた。
「お前ら!人が話をしている時は飲むのをやめろ!」
怒りのあまりファイルで二人の頭を叩き始める。やめてと抵抗したがもう遅い。ストローごと無理やり奪い取ると、窓を開けて外に投げ出してしまった。
「ああっ!」
「まだ残ってたのに…」
「…ったく」
受話器を取ると、運転手に向けて言った。
「そっちの冷蔵庫には何か飲むものあるか?」
『コーラと野菜ジュースがあります』
「誰だよ野菜ジュース入れたの…」
運転手からコーラ二本と野菜ジュースを一本受け取ると、またファイルを開いて喋り出した。
「今回のターゲットは事前に伝えた通り無所属だ。名前は高峯レイ、懸賞金一億六千万」
「いっ…一億?」
(ルビーと同じ額…)
ハガキサイズでプリントされた顔写真。鎖骨まで届くセミロングのピンク、可愛い顔をしている。
「こいつは…少し面倒な奴でな」
詩織は野菜ジュースを飲みながら言う。
「協会と揉めたらしく、狙われているとの情報だ。運が悪かったら協会の戦闘員と…魔法少女と交戦するかもしれない」
「その……殺すんですか?」
「場合によってはな。だが今回は極力生け捕りにしろとの命令だ。殺せば報酬が三割減だ」
話していると、リムジン車が止まった。
「さて、新人の狩人たちよ…出番だ」
目的地までそれほど遠くは無いが、時間に余裕を持って行動するべきだ。初任務ということで緊張もする、特に御守。最低でも三十分前には着いて準備をしておく方がいい。
途中、警察が相乗りしているのを見てホイッスルを鳴らしたが、そんな些細なことでこの二人を止めることは出来ない。下り坂で加速し、風が二人の髪を靡かせる。
「そういえば、彩花ちゃん」
「なぁにぃ?」
「彩花ちゃんはどうやって変身してるの?」
風の音でよく聞き取れない。
彩花はもう一度言ってと頼んだ。
「彩花ちゃんは!どうやって変身してるの!」
「指パッチン!」
「それだけで変身出来るの?すごい!」
「そ、それほどでも」
カーブに差し掛かると、自転車は若干勢いを落とした。もはやペダルを漕ぐ必要すらない、チェーンがキリキリと音を立てるがこれにも趣を感じる彩花がいた。
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「ラムネ飲む?」
「あたし炭酸飲めないからオレンジジュースで」
ベンチに座った二人は、たっぷり流した汗を服の裾で拭きながら冷えた飲み物を味わう。口の中で弾ける炭酸、その味は淡白だがほんのりと甘みがある。
「おい」
「なんですぅ?」
「彩花ともう一人、ここは社内だぞ」
「別にいいじゃないですかぁ、私たち社員なんですよ?」
横に立った詩織が軽くチョップを喰らわせる。当たり所が悪かったらアザが出来そうだ。
「不埒…」
「どこがです?」
「そうやってだらしなくくつろいでいるところだ!ここはお前らの家じゃないんだぞ!全く……けしからん」
まだ冬は遠いというのに厚いコートで身を包んでいるその様子は、見ているこちらも暑くなりそうだ。
「弱そう」
御守は一言呟いた。何が弱いのかは言わなかった。
* * *
「車に乗れ、任務を説明する」
「うわ…でっか」
駐車場には巨大なリムジン車が停められていた。ドアマンが扉を開け、二人が乗る。詩織もその後に続いた。
「出せ」
窓をコンコン、と叩くとエンジンがかかり車が走り出す。
詩織は鞄から数枚のファイルを取り出すと、未だにジュースを飲んでいる二人に渡した。
「今回のターゲットは…」
ストローが残り少ない液体を吸い上げる。
雑音だらけだ。
「聞いての通り無所属の……」
そっとファイルを閉じた。
「お前ら!人が話をしている時は飲むのをやめろ!」
怒りのあまりファイルで二人の頭を叩き始める。やめてと抵抗したがもう遅い。ストローごと無理やり奪い取ると、窓を開けて外に投げ出してしまった。
「ああっ!」
「まだ残ってたのに…」
「…ったく」
受話器を取ると、運転手に向けて言った。
「そっちの冷蔵庫には何か飲むものあるか?」
『コーラと野菜ジュースがあります』
「誰だよ野菜ジュース入れたの…」
運転手からコーラ二本と野菜ジュースを一本受け取ると、またファイルを開いて喋り出した。
「今回のターゲットは事前に伝えた通り無所属だ。名前は高峯レイ、懸賞金一億六千万」
「いっ…一億?」
(ルビーと同じ額…)
ハガキサイズでプリントされた顔写真。鎖骨まで届くセミロングのピンク、可愛い顔をしている。
「こいつは…少し面倒な奴でな」
詩織は野菜ジュースを飲みながら言う。
「協会と揉めたらしく、狙われているとの情報だ。運が悪かったら協会の戦闘員と…魔法少女と交戦するかもしれない」
「その……殺すんですか?」
「場合によってはな。だが今回は極力生け捕りにしろとの命令だ。殺せば報酬が三割減だ」
話していると、リムジン車が止まった。
「さて、新人の狩人たちよ…出番だ」
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