トゥルルルル……!

羽黒

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タカシの変貌

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 タカシとは大学での知り合いだ。

 始めて会った頃の彼は絵に描いたようなオタクであった。
 ヒビ割れた眼鏡をかけたキモイヤツだった。
 弦はセロハンテープで補強したまま、修理に出そうとすらしない。

 そのうえ、線が細くて薬物中毒者みたいなボサボサな頭をしていて! 

 テンションが上がると早口になったり、奇怪な行動をとってみたり。

 人目もはばからず大声で発狂し、悪目立ちした事もあった。

 ……俺、なんでアイツと友達だったんだろう。
 良い所なんもねぇじゃん。

 振り返る内に、俺はよくわからなくなっていた。

 確かな事と言えば、もしカンタが俺に紹介してこなければ、タカシと関わる事は絶対になかった事である。

 今でもたまにあの時の彼は夢に出て来る。

 別にタカシは死んだわけではないが、定期的にアイツの夢を見る。
 ここだけ聞くと勘違いする輩が現れ兼ねないので、一応否定しておくが、タカシを見て恋に落ちてるわけでもない。

 むしろアイツが人から好かれる要素など、何一つとしてないのである。

 夢に出てくる姿は相変わらずパッとしないオタクファッションだ。

 シャツはヨレヨレでモノトーンのダサいストライプが入っている。
 履いてるジーンズもかなりの年期物で、洗濯のし過ぎか色褪せていた。
 背負ったリュックサックも例外なく骨董品だ。
 彼のリュックがボロいとバカにされないのは、至る所に目玉の大きいアニメキャラの缶バッジが、それこそトンボの複眼みたいに付いているせいである。

 酷い時はそこへポスターが捻じ込まれている有様だった。

 だが誤解を恐れず言うならば、俺はそんな気持ち悪いオタクだった頃のタカシの方が好きだった。

「俺、アイツと会ったのか?」

「知らないよ、会ったんじゃないの」

 「でもなぁ」と俺は納得がいかなかった。

「アイツと話すなんてありえないよ」

 俺は、もうタカシの友達ではないのだ。
 彼の方から疎遠となり、俺の方から友達を辞めたのだ。
 自然消滅と言った方が間違いない。

 文字通り、彼は急に人が変わってしまった。
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