10 / 28
10. 天然パーマ
しおりを挟む泥田坊と再戦した次の日、佳奈子は、真人のいる骨董屋を訪れていた。
「真人さん、ありがとうございました!策を教えてもらったおかげで、なんとか無事、泥田坊を捕獲する事が出来ました!これも全て、真人さんのおかげです!本当にありがとうございました!」
佳奈子は真人に感謝の言葉を伝える。
「いやいや!あれは策ってほどのものじゃないし、成功したのは、佳奈子ちゃん自身の力だよ。よく頑張ったね、佳奈子ちゃん」
「!真人さん…!」
(努力を認めてもらえた…!うれしい…!)
佳奈子は嬉しさで泣きそうになり、目を潤ませる。
けれど、その様子を見た真人は…。
「うっ…!」
顔を赤くし、口元を押さえて目をそらす。
「?真人さん…?」
「あ、あ~!そ、そういえば!最近、町の山手の方で、土転びが暴れてるんだって!知ってた?!」
土転びとは妖怪の名で、その姿は、毛の生えた、巨大なマリモによく似ている。
そして彼らは時たま、山道を行く人めがけて、ゴロゴロと転がってくるのであった。
「はい。その話なら知ってます。実は今日これから、その土転びを捕まえに行くんです!」
「あ、そうだったんだ…。…連日の仕事で大変じゃない?」
「いえ!おばあちゃんが一緒だから力強いし、むしろ、退魔師になれたって感じがして、嬉しいです!」
「…そっか…。でも、くれぐれも無理はしないでね」
「はい!」
佳奈子は元気に返事をする。
するとその時、ガラガラ~ッと、骨董屋の戸が開かれる音がした。
そして…。
「お~い!マサ~!いるか~?」
そう言って骨董屋に、人が入って来たのである。
「?!この声…。まさか武男か?!」
真人は驚きの声を上げ、立ち上がる。
一方、佳奈子の位置からは、骨董のせいで、相手の姿が見えない。
しかし来客は、こちらに歩いて来ているようだ。
「おお!いたか、マサ!久しぶり~!」
そう言って現れたのは、天然パーマの男性だった。
歳は真人と同じくらいで、30ほど。
見た目はワイルドな感じで、なかなかの男前である。
「武男!どうしてお前がここにいる?!九州に出張しているはずだろう?!」
「ああ、その出張がやっと終わったんだよ。3年は長かったぜ~!」
「なに?!聞いてないぞ、そんな話!」
「ハハッ!ビックリさせようと思ってな!…ん?なんだ?客がいたのか?」
武男という人物は、佳奈子の姿を見つけて言う。
「あ、いえ、私は、真人さんに、仕事のアドバイスのお礼を言いに…」
「仕事のアドバイス?」
「あ~、彼女はな、俺たちと同じ、退魔師なんだよ」
「…へぇ?」
「えっ?!同じって事は…、この方も退魔師なんですか?!」
佳奈子は真人の言葉に驚く。
「あ、うん。紹介するよ。こいつは、山背 武男。俺の幼馴染で、同い年の退魔師なんだ」
「!そうだったんですか!じゃあ、私の先輩になるんですね!」
「まぁ、一応、そういう事になるかな…」
真人はそう説明する。
一方、武男の方は、説明の間も、ジロジロと佳奈子の事を見ていた。
「ふ~ん。こいつが退魔師ねぇ…。…けど知らない顔だな…。お前、3年前には、この町にいなかっただろ」
「え?ええと…。私は3年前にこの町に来て…。あっ、申し遅れました。私は、八乙女 佳奈子って言います。初めまして!先輩!」
佳奈子は立ち上がり、礼儀正しく挨拶をした。
「八乙女…?」
「彼女はね、幾太郎さんの娘さんだよ」
「えっ?そうなのか?東京にいるって聞いてたが…」
「!山背さん、父を知っているんですか?!」
佳奈子は、父の名前を聞いて驚く。
「ん?ああ。幾太郎さんには、ガキの頃、よく遊んでもらった。あの人は10才年上だったけど、年下にもよく構ってくれたからな…。いい兄貴分だった…。…幾太郎さんは、元気にしてるか?」
「…えと…、元気だとは聞いています…」
「あ?」
「父とはその…、ケンカをしたまま、こちらに来てしまったので…。3年前から、あまり口をきいていないんです…。夏休みとかに東京に帰っても、ほとんど話をしてくれないし…」
「は?なんだってそんな事に…」
「それはその…、私、どうしても退魔師になりたくて…、父の反対を押し切って、こちらに来てしまったから…」
「…ああ~。そういえば、幾太郎さん、退魔師を毛嫌いしてたな…。…けどお前、なんだって、そんなに退魔師になりたかったんだよ?」
「…私、4年前のお祭りのとき、大首に襲われたんです…。そしてその時に、常盤木の伊吹さまに、命を救って頂いた…。それでその時から、伊吹さまみたいな退魔師に、どうしてもなりたくなって…」
「…4年前…、常盤木の伊吹…」
「あの!山背さん!山背さんは、常盤木の伊吹さまの事、何かご存じないですか?!私、伊吹さまに、その時のお礼が言いたいんです…!」
「……」
武男は一瞬、真人の方を見る。
しかしその視線をすぐに戻した。
「…悪いが何も知らねぇな」
「そうですか…。やっぱり、常盤木の方を知っている人は、ほとんどいないんですね…。おばあちゃんも知らなかったし…」
佳奈子はそう言って肩を落とす。
そしてその時、ボ~ン!と時計が鳴って、午後4時を知らせた。
「あっ!いけない!早く家に帰らなきゃ!仕事に遅れちゃう!すみません!私、今日はこれで失礼します!真人さん、アドバイス、本当にありがとうございました!」
「あ、うん。気をつけて帰ってね」
「はい!それでは!」
佳奈子は、また礼儀正しく挨拶し、急いで家に帰っていった。
「…アドバイス、ね~?お前、そういうの、するガラだったか~?」
武男はニヤニヤしながら、真人に言う。
「おい!冷やかしは止めろよ!」
「あ~、さてはお前、感謝されて、ほだされちゃったか~?なぁ?イ・ブ・キ・さ・ま?…けど、未成年に手を出すのは止めとけよ~」
「なっ!そんな事するわけないだろ!あの子は姪っ子みたいなものだ!」
真人はそう言って怒る。
しかし武男が伊吹と呼んだことに対しては、否定しなかった。
「ハハッ!まっ、そうだよな。あの子、お前の趣味とは違うし。…それにしても、ひ弱そうな子だったな…。あんなんで退魔師をやっていけるのかねぇ…」
「…佳奈子ちゃんはすごい努力家で、とても心が強い子だ。今はまだ仕事に慣れていないけど、きっと、いい退魔師になる」
「へぇ…?俺には頼り無く見えたがねぇ…。それこそ最近暴れてるっていう土転びに、ポーンと、撥ね飛ばされそうな感じに、さ?」
「いや、あんな小型の妖怪に、さすがにそれはない…はずだ…」
真人はそう言いつつも…、
(…大丈夫だよね?佳奈子ちゃん…)
佳奈子の事が、とても心配になったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
ヤクザのお嬢は25人の婚約者に迫られてるけど若頭が好き!
タタミ
恋愛
関東最大の極道組織・大蛇組組長の一人娘である大蛇姫子は、18歳の誕生日に父から「今年中に必ず結婚しろ」と命じられる。
姫子の抵抗虚しく、次から次へと夫候補の婚約者(仮)が現れては姫子と見合いをしていくことに。
しかし、姫子には子どもの頃からお目付け役として世話をしてくれている組員・望月大和に淡い恋心を抱き続けていて──?
全25人の婚約者から真実の愛を見つけることはできるのか!?今、抗争より熱い戦いの幕が上がる……!!
碧天のノアズアーク
世良シンア
ファンタジー
両親の顔を知らない双子の兄弟。
あらゆる害悪から双子を守る二人の従者。
かけがえのない仲間を失った若き女冒険者。
病に苦しむ母を救うために懸命に生きる少女。
幼い頃から血にまみれた世界で生きる幼い暗殺者。
両親に売られ生きる意味を失くした女盗賊。
一族を殺され激しい復讐心に囚われた隻眼の女剣士。
Sランク冒険者の一人として活躍する亜人国家の第二王子。
自分という存在を心底嫌悪する龍人の男。
俗世とは隔絶して生きる最強の一族族長の息子。
強い自責の念に蝕まれ自分を見失った青年。
性別も年齢も性格も違う十三人。決して交わることのなかった者たちが、ノア=オーガストの不思議な引力により一つの方舟へと乗り込んでいく。そして方舟はいくつもの荒波を越えて、飽くなき探究心を原動力に世界中を冒険する。この方舟の終着点は果たして……
※『side〇〇』という風に、それぞれのキャラ視点を通して物語が進んでいきます。そのため主人公だけでなく様々なキャラの視点が入り混じります。視点がコロコロと変わりますがご容赦いただけると幸いです。
※一話ごとの字数がまちまちとなっています。ご了承ください。
※物語が進んでいく中で、投稿済みの話を修正する場合があります。ご了承ください。
※初執筆の作品です。誤字脱字など至らぬ点が多々あると思いますが、温かい目で見守ってくださると大変ありがたいです。
レオナルド先生創世記
ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
二十五時の来訪者
木野もくば
ライト文芸
とある田舎町で会社員をしているカヤコは、深夜に聞こえる鳥のさえずりで目を覚ましてしまいます。
独特でおもしろい鳴き声が気になりベランダから外を眺めていると、ちょっとしたハプニングからの出会いがあって……。
夏が訪れる少し前の季節のなか、深夜一時からの時間がつむぐ、ほんのひと時の物語です。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる