15 / 28
15. 朝のケンカ
しおりを挟む新人退魔師研修のあった次の日の朝、佳奈子は学校に向かっていた。
「ふぁ~。昨日はいつもの修行に加えて、研修もあったからな~。すごく疲れちゃった…。まだ眠いよ~」
佳奈子はそう言って、目をこすって歩く。
すると…。
「おっはよ~!か~なちゃん!」
「!多恵ちゃん!おはよう!」
佳奈子は、多恵に肩を叩かれ、後ろを振り向く。
「今日、数学の小テストだね~。私、自信ないよ~。あっ、英語の宿題もあったよね?やってきた?」
「うん。一応ね…。文字がところどころ、くにゃっとなっちゃったけど…」
「くにゃっと…?」
「昨日、退魔師の新人研修があったから、ちょっと疲れてウトウトしちゃったんだ…」
「あっ、そっか。佳奈ちゃん、退魔師の研修があったんだ…。どうだった?誰か、気になる人とかいた?」
「うん…。それがさ…」
佳奈子は昨日の研修の事を話した。
「へぇ~。そんな剣士がいたんだ~。その人、ウチの高校の学ラン着てたんでしょ?どんな感じの人だったの?」
興味をひかれたのか、多恵が聞いてくる。
「う~ん…。クールで、ちょっとトゲがある感じ、かな…。背が高くて、大人っぽかったから、たぶん2年生か、3年生だとは思うんだけど…」
佳奈子は昨日の剣士を思い出して語る。
「ふ~ん…。クールな謎の剣士か…。ちょっとカッコイイね!…そうだ!あとで、2組の情報通に、その人の事、聞きに行こうよ!」
「えっ?情報通がいるの?」
「うん。この前、佳奈ちゃん、この学校に、大人顔負けの退魔師がいるって言ってたでしょ?実は気になってさ、2組のソイツに話を聞きに行ったんだ。その時に、大まかな情報は聞いたんだけど、剣士の話までは聞いてないからさ」
「そうだったんだ…。私もちょっと気になるから、話を聞きに行きたいな…」
「!そう来なくっちゃ!じゃあ昼休み、一緒に話を聞きに行こうよ!」
「うん!」
佳奈子は笑顔で返事をする。
するとその時…。
「あれ…?あそこ、人だかりが出来てる…。どうしたんだろう…?」
佳奈子たちは校舎へ入る手前に、人だかりを見つけた。
「何かあったみたいだね…。よしっ!見に行こう!」
「えっ?!多恵ちゃん!ちょっと…!」
佳奈子は野次馬の多恵に手を引かれ、人垣をかいくぐった。
「ちょっと失礼っと…。!…なぁんだ…。ウチのクラスのバカ山コンビが、バカ騒ぎしてるだけじゃない」
多恵は怒鳴り声を上げるクラスメイトを見て、そう表現する。
「バカ山コンビって…、山崎くんと、山田君の事?その呼び方はちょっと…。あっ!あの2人が絡んでる人、昨日の剣士だ…!」
佳奈子は謎の剣士を見つけて驚く。
「えっ?!あの人がそうなの?!あの美男子なら、私、知ってるよ!同じ1年生で、3組の人だよ!」
「えっ?!あの人、1年生なの?!」
「うん。この前聞いた情報じゃ、あの人、この町で退魔師デビューする為に、わざわざ引っ越して来たんだって。確か名前は…、クヌギ君…、だったかな?どういう字を書くのかは知らないけど…」
「…クヌギ君…。まさか同じ1年生だったなんて…」
佳奈子は驚いて、クヌギを見る。
すると彼は、山崎と山田の2人に、殴りかかられる所だった。
「!」
周りで見ていた観衆は、過激な展開に息をのむ。
しかし殴られる寸前のクヌギは、スッ…と、いともたやすく、拳をかわした。
一方、殴りかかった方は、かわされるのが予想外だったのだろう、よろめいて、倒れ込みそうになっている。
しかし、よろめいた2人は、怒りが治まらないのか、すぐに体勢を立て直し、
「くそっ!このやろー!」
「はあぁぁぁぁ~!」
大声を上げて、なおもクヌギに向かって行く…。
「…いい加減しつこいな…。俺は遅刻したくないんだ」
クヌギはそう言うと、今度は攻撃をかわしつつ、その勢いを使って2人を投げ飛ばした。
「ぐぁ!」
「ガハッ!」
山崎と山田の2人は投げ飛ばされ、地面にたたきつけられる。
そして地面の上で苦悶の声を上げている2人を、クヌギは冷たく見下ろして、
「ふんっ!ザコが」
そう捨て台詞を吐いてから、2人に背を向け、校舎に向かって歩いて行った…。
「…ザコ…」
佳奈子たちは、クヌギの冷たい言葉に驚きを隠せない。
一方、山崎と山田の2人は、
「!…くっそ~!」」
「…ちっくしょ~っ!」
今にも泣きそうな顔で悔しがる。
けれどそんな2人も、周りの観衆たちに気づいたらしく、
「…何見てんだよ…。お前ら…。見てんじゃね~!」
「ぶっとばすぞ!」
そう言って、観衆たちを脅し始めた。
ケンカを見ていた観衆たちは、危険を感じて、ざわめきながらも校舎へと向かい始める。
「……。…バカ山コンビは、バカだとは思うけど…、クヌギ君も、なにもあんなに挑発しなくてもいいのに…」
「うん…」
佳奈子たちは、校舎に入って行くクヌギを、微妙な気分で見送った…。
ちなみに昼休み、佳奈子たちは、2組の情報通・井住くんに、クヌギの事を聞きに行った。
そしてクヌギ君の名字は、漢字で、功刀、と書くのだと知ったのだ。
ちなみに彼の下の名前は、刀馬だった。
「へぇ…。クヌギって、こういう字を書くんだ…。それにしても、苗字と名前の両方に、刀って字が入ってるなんて…、さすがは剣士…」
佳奈子たちは彼の名前に、妙に感心したのであった。
0
あなたにおすすめの小説
ヤクザのお嬢は25人の婚約者に迫られてるけど若頭が好き!
タタミ
恋愛
関東最大の極道組織・大蛇組組長の一人娘である大蛇姫子は、18歳の誕生日に父から「今年中に必ず結婚しろ」と命じられる。
姫子の抵抗虚しく、次から次へと夫候補の婚約者(仮)が現れては姫子と見合いをしていくことに。
しかし、姫子には子どもの頃からお目付け役として世話をしてくれている組員・望月大和に淡い恋心を抱き続けていて──?
全25人の婚約者から真実の愛を見つけることはできるのか!?今、抗争より熱い戦いの幕が上がる……!!
碧天のノアズアーク
世良シンア
ファンタジー
両親の顔を知らない双子の兄弟。
あらゆる害悪から双子を守る二人の従者。
かけがえのない仲間を失った若き女冒険者。
病に苦しむ母を救うために懸命に生きる少女。
幼い頃から血にまみれた世界で生きる幼い暗殺者。
両親に売られ生きる意味を失くした女盗賊。
一族を殺され激しい復讐心に囚われた隻眼の女剣士。
Sランク冒険者の一人として活躍する亜人国家の第二王子。
自分という存在を心底嫌悪する龍人の男。
俗世とは隔絶して生きる最強の一族族長の息子。
強い自責の念に蝕まれ自分を見失った青年。
性別も年齢も性格も違う十三人。決して交わることのなかった者たちが、ノア=オーガストの不思議な引力により一つの方舟へと乗り込んでいく。そして方舟はいくつもの荒波を越えて、飽くなき探究心を原動力に世界中を冒険する。この方舟の終着点は果たして……
※『side〇〇』という風に、それぞれのキャラ視点を通して物語が進んでいきます。そのため主人公だけでなく様々なキャラの視点が入り混じります。視点がコロコロと変わりますがご容赦いただけると幸いです。
※一話ごとの字数がまちまちとなっています。ご了承ください。
※物語が進んでいく中で、投稿済みの話を修正する場合があります。ご了承ください。
※初執筆の作品です。誤字脱字など至らぬ点が多々あると思いますが、温かい目で見守ってくださると大変ありがたいです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
レオナルド先生創世記
ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!
二十五時の来訪者
木野もくば
ライト文芸
とある田舎町で会社員をしているカヤコは、深夜に聞こえる鳥のさえずりで目を覚ましてしまいます。
独特でおもしろい鳴き声が気になりベランダから外を眺めていると、ちょっとしたハプニングからの出会いがあって……。
夏が訪れる少し前の季節のなか、深夜一時からの時間がつむぐ、ほんのひと時の物語です。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる