はごろも伝奇

大文字 章

文字の大きさ
25 / 28

25. 言えない悩み

しおりを挟む

 学校からの帰り道。

 骨董屋こっとうやの前で、真人まさひとと、彼の飼い猫たちに出会った佳奈子…。

 真人は「ひさしぶり」と言って、佳奈子に会えてうれしそうにする。

 ただ、佳奈子が、真人と最後に会ったのは、一週間前…。

 久しぶり、というには短すぎる期間だ…。

 しかし、ほぼ毎日、彼と会っていた佳奈子は、たしかに、そんな気がするな…、と感じた。

 そして佳奈子は、真人と最後に会った、あの事件の日を思い出す…。

(…真人まさひとさんには、あの事件で、ずいぶんと迷惑めいわくをかけちゃったからな…。ちゃんとおびを言わないと…)

 佳奈子はそう思い、おびを言うため、彼に歩みった。

「…ほんと、なんか、久しぶりって感じですね…。真人まさひとさん…」

「うん…。あれから、佳奈子ちゃんは、どうしているだろうって、ずっと気になっていたんだ…。学校もしばらく休んでいたみたいだし…。大丈夫かなって…」

「…心配をおかけしてすいません…。…それに、あの時、助けてくださって、本当にありがとうございました…。もしも、真人さんが、助けてくださらなかったら、私、一体どうなっていたか…。それに、真人さんが早く助けて下さったから、皆の体にも、がいがでなかったんです…。本当にありがとうございました…」

 佳奈子は、深く頭を下げる。

「いやいや…!そんなおれいなんていいよ…!佳奈子ちゃんや、皆が無事ぶじだったのが、何よりだから…!それより、体調たいちょうは大丈夫…?具合ぐあいが悪くなったりはしなかった…?」

「いえ…。体調は全然ぜんぜん…。学校を休んでいたのは、おばあちゃんに謹慎きんしんしてろって言われたからで…」

「そっか…。でも、体調に問題がないならよかったよ…。それで、今日からは学校に通えるんだね…?…学校…、大丈夫だった…?…なにか、イヤな事とか、言われたりしなかった…?…たとえば、功刀くぬぎくんとかに…」

 真人は、あの事件のとき、功刀が怒って帰っていくのを見ていた。

 だから、彼に何か、仕返しかえしをされたのでは…、と心配をしているのだ。

「いえ…!功刀くぬぎくんは何にも…!…むしろ功刀くんは、私の事を、ゆるしてやるって言ってくれて…。…あの優待ゆうたいカードの、おかげのような気もするけど…」

 佳奈子は最後、ボソッ…と、つぶやく…。

「えっ?優待カード…?」

「ハッ…!い、いえ…!なんでもありません…!たしかに、色々いろいろとウワサはされてますけど…、あれだけの事件だったんですから、それは仕方しかたがないですし…」

「…佳奈子ちゃん…」

 真人は、心配そうな顔をする。

「あっ…!だ、大丈夫ですよ…?!多恵たえちゃんとか、中学からなかの良かった友達とかは、ウワサなんか気にせずに、いつも通りに、話をしてくれますし…!だから、学校は大丈夫です…!これまでどおりに、かよっていけます…!」

 佳奈子は、真人に心配をかけないよう、元気に答える。

「…そう…?…でも、何かイヤな事があったら、無理むりをしないで、俺に相談そうだんして…?できるかぎり、力になるから…」

「…ありがとうございます…。真人まさひとさん…」

 佳奈子は、真人の優しい言葉に、心があたたまる。

(…真人さんって、ホント優しくて、いい人だなぁ…。きっと、私にだけじゃなく、皆にやさしいんだろうな…)

 佳奈子はそう思う。

(…でも、皆に優しい人って、人の痛みがわかるぶん、繊細せんさいだっていうからなぁ…。あんまり、心配をかけないようにしないと…。むしろ、いつも仕事の相談に乗ってもらってるぶん、何かあったら、私が助けてあげなくちゃ…!)

 佳奈子は、そう思い立つ。

「真人さん…!真人さんこそ、何かあったら、私に言ってくださいね…!私も、できる限り、力になりますから…!」

「えっ?あ、うん…。…ありがとう…。佳奈子ちゃん…」

 真人は、一瞬、驚き、そのあと、とてもうれしそうな顔をする。

 そして、あっ、と何かを思い出し、話をつづけた。

「そういえば…。このまえ連盟会館れんめいかいかんで、絹代きぬよさんに会ったんだ…」

「えっ?おばあちゃんに…?」

「うん。それで、この前の事件の、おれいを言われたんだけど…、その時に「まご未熟みじゅくなせいで、迷惑をかけて申し訳ない」って言われたんだ…。「これからは、孫を、もっときびしく監督かんとくする」って…。その言葉が、なんだか気になって…。…佳奈子ちゃん…、あれから、絹代さんの修行しゅぎょう、厳しくなったりしていない…?何か、とんでもない事をさせられたりとか…」

「えっ…?!」

 佳奈子は、ギクッ…!とする。

(す、するどい…!なんてかんがいいの…!真人さん…)

 佳奈子は、真人の洞察力どうさつりょくしたく。

(…でも…、いくら真人さんでも、山籠やまごもりのことは言えないよ…。すっぱだかになって、修行をする事になっただなんて…。…言うのもずかしいし…、もしかしたら、あんな修行をやるって決めた事、軽蔑けいべつされちゃうかも…)

 佳奈子は、軽蔑する真人を思い浮かべる…。

「…はぁ…?!山で、すっぱだかで修行をする~?!…祭りとかの神事しんじならともかく、それ以外で、そんな事をしようだなんて、考えること自体じたい、信じられないよ…。あっ…!まさかきみ裸体らたい主義者だったわけ…?!」

 世の中には、裸体らたい主義者・ヌーディストと呼ばれる、はだかで生活することを主義しゅぎとする人々がいるのである。

 日本とは違い、ヨーロッパけんでは、比較的ひかくてき、彼らに寛容かんような文化があり、ヌーディストビーチや、専用のリゾート施設しせつなど、公認のヌーディストエリアが、多数存在している。


「そんな修行をしようだなんて、きみ裸体らたい主義者だよね…!…けど、ヨーロッパとは違って、日本には裸体主義を実践じっせんする公認の施設しせつはない…。他人の目にれない場所なら、制限せいげんされてはいないけど…、たとえ私有地しゆうち屋内おくないであっても、他人の目に触れる状況じょうきょうなら、変質者へんしつしゃ露出狂ろしゅつきょうとみなされる…」

 そう、日本では、自宅や、温泉などの一部のみとめられた場所以外では、人前ひとまえで、すっぱだか全裸ぜんら)になることは、犯罪である。

 外でぱらって、こんな格好かっこうにならないよう、気をつけよう…!

「…けど、裸体らたい主義者は犯罪者とは違うし、差別するのはいけないことだ…。はだかは、健康にいいっていうしね…。絶対に人目ひとめにつかない場所や、認められた場所でなら、それをしたって、俺も、何も言う気はない…」

 ここで誤解ごかいがないよう、注記ちゅうきするが、裸体主義者たちは、決してよこしまな気持ちで、はだかになっているわけではない。

 裸体らたい主義とは、性的な感情とは、無関係な点が、非常に重要視されているからだ。

 彼らは、裸体でいることが、大変健康に良いと考えて、この活動をしている。

 また、彼らの活動には、社会規範きはんからの解放、という思想的な側面そくめんがあるとされている。

 そして、この裸体主義は、一般的に言われている露出ろしゅつ行為こういとは、ことなるものだとされているのだ。

 露出行為との違いは、「性的感情の有無うむ」などを基準きじゅんに、区別されている。

 また、ヨーロッパなどでは、社会問題や、政治問題への抗議こうぎとして、はだかになってデモ活動をすることが、わりと知られている。

 このはだかになってのデモ活動は、必ずしも、裸体主義者たちだけが行うものではない。

 様々な目的を持った人々が、世間せけんの注目を集めるために、「抗議こうぎ戦術せんじゅつ」として、はだかもちいることがあるのである。

 はだかでのデモの参加者の中には、裸になることに抵抗ていこうを感じている人もいるが、抗議という目的のために、あえて裸を選択しているのである。

 しかし、このデモの形がとられるのも、ヨーロッパ諸国が、比較的ひかくてき、裸体主義に寛容かんようで、理解があることと、無関係ではないだろう…。


「…でも…、君が修行をしようとしてる場所は、屋外おくがいだ…。他人の目に、絶対にれないとは、言いきれない…。しかもあの山は、この町の人たちに、それをしていいと認められた場所でもない…。それなのに、あの山で、すっ裸になろうだなんて…。俺にはとても信じられないよ…。だって、もしも、自分の子供の目の前に、そんなすっぱだかの人間が、突然、あらわれたら、どう思う…?!もしかしたら、変質者へんしつしゃ露出狂ろしゅつきょうかもしれないんだ…!怖いだろう…?!そんなふうに、不安に思う人や、不快ふかいに思う人がいるのに、認められてない場所で、それをやろうとするなんて…。…俺は君を軽蔑けいべつする…。…君みたいな子、したしいと思われるのも不愉快ふゆかいだ…。もう、ここへは来ないでくれる…?」

「!」

 自分の想像したことなのに、佳奈子は強いショックを受ける…。

(も、もしも、そんなふうに言われたら、私…!)

 佳奈子は、想像しただけで泣きそうになり、ふるえ始める…。

「?!ど、どうしたの…?!佳奈子ちゃん…?!ごめん…!俺、何かイヤな事を言った…?!それとも、どこか具合ぐあいが悪いの…?!ど、どうしたら…?!」

 真人は取りみだし、おろおろとする…。

 けれど、そんな時、骨董屋の中から、ジリリリリ~ン…!という音が聞こえてきたのだ。

 これは、この時代に一般的な、黒電話がかかってくる時の音である。

 しかし真人は、その電話を無視して、佳奈子のことを気にかける…。

「と、とりあえず、そこのイスに座って…?!あっ、店の中の方がいいかな…?!」

「いえ…。大丈夫です…。心配をおかけしてすみません…。何でもないんです…」

「何でもないって…」

「ホント、大丈夫ですから…!どうぞ、電話に出てください」

「でも…」

「大事な電話かもしれないでしょ…?ご家族に何かあったとか、緊急きんきゅうのことかもしれない…。だから、どうか出てください…」

「~~~っ!ちゃんと、あとで話を聞くから…!ちょっとだけ待っていて…?!」

 真人はそう言って、急いで店の中へと入っていく…。

 佳奈子はそれを見ると、小さな声で…。

「…真人さんに、言えるわけない…。今度の連休…、山で、すっぱだかになって、修行することになっただなんて…。そんな恥ずかしいこと、知られたくない…。なにより、軽蔑けいべつされるのはイヤ…!」

 佳奈子は泣きそうな顔で、そう、つぶやく…。

 それは、誰も聞いていないと思ったからこそ言えたこと…。

 しかし…、それを聞いていた者たちがいた…。

 そう、真人の飼い猫たちである。

 2匹の猫たちは、佳奈子のつぶやきを聞くと、驚いたように目を見開く。

 そしてそこへ、真人が戻ってきた。

「ごめん…!おたせ…!佳奈子ちゃん…!全然ぜんぜんたいした電話じゃなかった…!だから、ちゃんと話を聞くよ。外だと話しにくいだろうし、店の中に入って…!」

 真人まさひとはそう言って、佳奈子を店の中にまねく。

 しかし佳奈子は…、

「…いえ…。今日はこれで、おいとまします…。真人さん…」

「えっ…?!」

「私…、今は、修行に専念せんねんしなくちゃいけなくて…。だから、しばらく、ここには、来ないことにします…。さよなら…!真人さん…!」

 佳奈子はそう言って、もうダッシュで走りっていく…。

「えっ…?!ちょっ…!って…!佳奈子ちゃ~ん…!!!」

 真人は佳奈子を呼び止めようと、必死に手を伸ばし、声を上げる…。

 しかし、佳奈子はり返らない…。

「…俺…、もしかしてきらわれた…?」

 真人まさひとは、ガーン…!とはげしいショックを受ける…。

 ズーン…と落ち込み、震える真人…。

 しかし、そんな真人に、

「いや、違うんじゃね…?」

 そう言って、なんと猫のクロが、話しかけてきたのである。

「えっ…?」

 真人は、クロを見る。

「佳奈子のヤツ、お前が電話に出てるとき、言ってたんだよ。今度の連休に、山で、すっぱだかになって修行をすること、お前には知られたくないって…」

「えっ…?!す、すっぱだか…?!」

 真人は真っ赤になる。

 そしてそこへ、

「うんうん、言ってた…!そんな恥ずかしいこと、言えないって。軽蔑けいべつされるのがイヤだって。そう思うのも無理はないわね~」

 そう言ったのは、なんと猫のシロである。

「それにしても、すっぱだかで修行をさせるなんて、絹代さんったら、厳しすぎるんじゃないかしら…?佳奈子ちゃん、あんなにイヤそうだったし、かわいそうだわ~!」

「たしかにな…。まぁ、あんな事件、二度と起こしたくないって気持ちは分かるけどさ…。やりすぎは良くねーぜ…!」

 クロは、そう、シロに言う。

「でしょ~!」

「ああ。…けどな…、佳奈子は知られたくないと思ってるんだし…、絹代に、真正面ましょうめんから意見いけんをするのもな…。それに絹代は、佳奈子の事を、すげぇ大事に思ってる…。たいした理由もなく、ひでぇ事をするヤツでもねぇ…。だから、もしかすると、その修行、八乙女家に必要な、伝統でんとうの、行事ぎょうじとかなのかもしれねぇ…」

「ええっ…?!伝統の行事…?!まさか、山で、すっぱだかになってごすのが、八乙女家の伝統だっていうの…?!八乙女家は、代々だいだい、そんなことをしてきたって…?!…いや…、ないとは言い切れないわね…。…むしろ、ありえる…。ありえるわ…!だって、日本には、はだかまつりもあるし…!」

 そう、日本には、はだか祭り、と呼ばれる、おまつりが、全国にいくつもあるのである。

 この祭りの参加者たちは、基本的きほんてきに男性たちだ。

 例外的な一部の場所では、女性の変則的へんそくてきな形での参加もある。

 しかし、男性参加者たちの、その格好かっこうは、祭りの名前のとおり、全裸ぜんらに近い格好か、本当に全裸である。

 この格好は、もちろん、わるふざけでやっているわけではない。

 この格好をするのには、もちろん理由があるのだ。

 祭りなどの神事しんじでは、きよらかである事が、非常に重要視じゅうようしされる。

 衣服いふくなどから、俗世ぞくせけがれを持ち込まず、まれたままの姿すがたに近い、もっとも清らかな姿で、神とき合う…。

 そんな理由があるのである。

 この祭りの参加者たちは、してよこしまな気持ちで、こんな格好かっこうをしているのではなく、地域ちいき全体の、無病息災むびょうそくさいや、五穀豊穣ごこくほうじょう豊漁ほうりょうや、安寧あんねいを、神に祈願きがんするために、住民たちにのぞまれて、このような格好をしているのである。

 いうなれば…、

「パパ…!お願い…!行ってきて…!」

「おう!まかせとけ…!お前たちのために、神様にしっかりとお願いしてきてやるぜ…!」

「きゃっ!ステキ…!」

 …とまぁ、こんな感じである…。

 ちなみに、はだか祭への、参加を希望する人は多い。


「きっとそうだわ…!はだか祭りと同じで、山で、すっぱだかになってごすのは、八乙女家の伝統なのよ…!」

 シロは、そう言い切る。

「ああ。たぶんな…。けど、それなら、止めるのは、逆に、佳奈子のためにならねぇかも…」

「あっ…。たしかに…。伝統って大事だものね…。けど、伝統をイヤがる人の気持ちも分かるし…、佳奈子ちゃんが、あんなにつらそうなのに、なんにもしないのは、なんだかムシャクシャするわ~!」

 シロは、まるで人間のように、ほほに手を当てて、考え始める。

 そしてその間も、真人は、赤くなってかたまっていた…。

「…それにしても、山で修行って、どこでやるのかしら…?やっぱり修行場しゅぎょうばで有名な霊山れいざんとか…?」

「いやいや…!修行場で有名な霊山れいざんは、修行してるヤツらが、たくさんいるだろ…?!そんなヤツらの前で、すっぱだかになんかなったら、公然こうぜんわいせつざいつかまっちまうぞ…!」

 かさねて注記ちゅうきするが、日本では、認められた場所以外で、人前で、すっぱだかになることは、犯罪である。

 もしも、認められた場所以外で、そんな人を見かけたら、犯罪や、事件の可能性がある。

 すぐに警察に通報つうほうしよう…!

「…そもそも霊山は、神聖な場所として信仰しんこうされてるだろ…?そんな場所で、女が、すっぱだかになってたら、他の修行してるヤツのさまたげになるし、なにより、聖地せいちへの冒涜ぼうとくだって言われて、怒られるぞ…」

 そう、たとえば、富士山は代表的な霊山の一つだ。

 そして、その山頂さんちょうには、木花咲耶姫このはなのさくやひめ主祭神しゅさいじんとする、神社があることで有名である。

 しかし、富士山をのぼ登山者とざんしゃの中には、途中とちゅうで体が熱くなり、服をぬいで、上半身じょうはんしんはだかのまま、この神社に参拝さんぱいする人がいて、問題になっているのだ。

 日本にかぎらず、多くの聖地では、肌の露出ろしゅつひかえることが、求められているのだが…。

 こんなことを言うと、あれ…?じゃあ、はだか祭りはどうなんだ…?と疑問に思った人もいるだろう。

 神の前で、はだかになるのは、最も清らかなことだったんじゃなかったの…?と。

 一見いっけんすると、それらは矛盾むじゅんしているように見える。

 しかし、はだか祭りは、そこの神と、そこの地域の人々が望んだ、特定とくていの日に、特定の場所で行われる、日常的な、特別な神事なのである。

 そして、この祭りをまわりで見ている人々も、神事の参加者たちなのだ。

 すなわち、この地域の神と人々は、この祭りの間だけ、いっときの間だけ、この特別な神事のために、この格好かっこうを許しているのである…。

 つまり、はだか祭りは、日常的な肌の露出ろしゅつとは、まったくことなる、特別な意味を持っているのである。

 なので、特別な神事でもない限り、過度かどな露出は、トラブルのタネになることがあり、時には犯罪になることもある…。

 TPOに合った…、つまり、その時、その場所、その場面に合った服装であるならば、好きな格好をして、もちろん楽しんでいいのだ。

 服は、人に元気をくれたり、前向きな気持ちにも、させてくれるのだから。

 ただ、TPOにそぐわない服装は、周りの人々に不快感を与え、怒りなどの悪感情をいだかせてしまう…。

 そのため、一部の歴史ある教会などでは、肌の露出ろしゅつが多い格好かっこうの人には、入場をことわるケースもある…。

 聖地での、肌の露出が多い格好かっこうは、周りの人々に不快感ふかいかんを与えることも多く、いのりのさまたげになったり、修行の妨げになったりもするからだ…。

 神社、または教会などは、神聖な場所であり、そこを、いのりのとして、大切に思っている人々がいるのである…。

 彼らの思いを傷つけないためにも、聖地での、肌の露出ろしゅつが多い格好かっこうや、祈りのさまたげになる行動には、気をつけるべきである…。


「それもそうよね~?でも、有名な霊山じゃなかったら、どこで修行をするのかしら…?」

 シロはクロに聞く。

「え…?あ~、それは…、…自分ちの山とか…?自分ちだったら、怒るヤツもいないだろ…?」

「ああ、そうねぇ…。ってことは、八乙女家の所有しょゆうしてる土地のどこかね…。あの家って、おがみ屋としても有名だけど、他にもやってる事業じぎょうがあって、かなりかせいでるのよ…。だから土地や不動産ふどうさんをいっぱい持ってるのよね…。たしか、都内とないにも、土地や不動産があるって話よ…」

「…お前って、そういう話、やたらとくわしいよな…」

「やっだ~!そんなにめないでよ~!」

「いや…。褒めてはないぞ…」

「…でも、八乙女家が持ってる山で、修行に向いてる山っていったら…、この町にある、飛立山とびたちやまくらいかしら…?他の山は、大地の気がそんなにないし…」

「ふ~ん…。飛立山とびたちやまか…。すぐ近くだな…」

 そう、シロとクロは話す。

 すると、そんな時、

「おっ…!いたいた…!」

 そう言って、真人の友人、武男たけおが、道のこうからやって来たのである。

「お~い…!マサ~!」

 武男は、背を向けている真人まさひとに呼びかける。

「なぁ~!こんどの連休、飛立山とびたちやまに行かねぇ…?!あのあたりさぁ、いいらしいんだよ~!」

 武男は、笑顔で真人に話しかける。

 しかし真人は…、

「ああ~?!お前、今、なんて言った…?!飛立山って言ったか…?!言ったよなぁ…?!」

 そう言って、殺気さっきはなちながら、恐ろしい形相ぎょうそうで振り返る…。

 しかも、その手には、おふだがしっかりとにぎられていた…。

「いっ…?!お、お前、なんだよ、その殺気は…!しかも、その呪符じゅふ呪殺用じゅさつようのヤバいヤツじゃねーか…!携行けいこう禁止の危険物きけんぶつだろ…!なんでそんなの持ってんだよ…!」

「うるさい…!それより質問に答えろ…!なんで飛立山とびたちやまなんて言葉が出た…!返答へんとう次第しだいじゃ、ただじゃおかない…!」

 真人はそう言って、呪符じゅふを武男にきつける。

て待て待て…!ちゃんと話すから、落ち着けって…!」

「俺は十分じゅうぶん、落ち着いてる…!早く話せ…!」

かった…!分かった…!はぁ…。一体、何に怒ってるのか知らねーが、別に、なんにも変な意味はないんだぜ…?ただ、最近、飛立山のふもとの川で、よく魚が釣れるって評判ひょうばんなんだよ…。めずらしい鳥が、来るとかも言われてる…。だから一緒いっしょに、釣りにでもどうかな~って、さそいに来ただけだったんだ…!」

 武男は、そう正直しょうじきに答える。

 すると真人は、

「…魚に鳥…。それを口実こうじつに、あの山に近づくつもりか…?!…害虫がいちゅうどもが…!そうはさせるか…!…行くぞ…!クロ…!シロ…!」

「ん…?おう…!」

「うふふ~!まっかせて~!」

 そう言って、真人と2匹の猫たちは歩き始める。

 その様子を見た武男は、

「お、おい…!お前ら…!行くってどこへ…?!何しに行くんだよ…?!」

 そう呼びかける。

「…決まってるだろ…。害虫がいちゅう駆除くじょだ…!…言っとくが武男…、連休中に、飛立山とびたちやまに近づいたら、殺すからな…」

 真人は、り返らずに、そう言い放つ。

「はぁ~?!お、おい…!待てよ…!真人…!待てって…!お~い…!」

 武男は、そう呼びかけるが、真人は振り返らない…。

「…おいおいおい…。ホントどうしちゃったんだよ…アイツ…。昔っから性格せいかくは良くなかったが、ここまで怒りっぽくはなかったぞ…?」

 武男は自分の頭をかきむしりながら、真人の変化を不審ふしんがる…。

「…はぁ…。お願いだから、ヤバい問題は起こさないでくれよ…」

 武男は、遠ざかっていく真人を見て、そうつぶやいたのだった…。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤクザのお嬢は25人の婚約者に迫られてるけど若頭が好き!

タタミ
恋愛
関東最大の極道組織・大蛇組組長の一人娘である大蛇姫子は、18歳の誕生日に父から「今年中に必ず結婚しろ」と命じられる。 姫子の抵抗虚しく、次から次へと夫候補の婚約者(仮)が現れては姫子と見合いをしていくことに。 しかし、姫子には子どもの頃からお目付け役として世話をしてくれている組員・望月大和に淡い恋心を抱き続けていて──? 全25人の婚約者から真実の愛を見つけることはできるのか!?今、抗争より熱い戦いの幕が上がる……!!

碧天のノアズアーク

世良シンア
ファンタジー
両親の顔を知らない双子の兄弟。 あらゆる害悪から双子を守る二人の従者。 かけがえのない仲間を失った若き女冒険者。 病に苦しむ母を救うために懸命に生きる少女。 幼い頃から血にまみれた世界で生きる幼い暗殺者。 両親に売られ生きる意味を失くした女盗賊。 一族を殺され激しい復讐心に囚われた隻眼の女剣士。 Sランク冒険者の一人として活躍する亜人国家の第二王子。 自分という存在を心底嫌悪する龍人の男。 俗世とは隔絶して生きる最強の一族族長の息子。 強い自責の念に蝕まれ自分を見失った青年。 性別も年齢も性格も違う十三人。決して交わることのなかった者たちが、ノア=オーガストの不思議な引力により一つの方舟へと乗り込んでいく。そして方舟はいくつもの荒波を越えて、飽くなき探究心を原動力に世界中を冒険する。この方舟の終着点は果たして…… ※『side〇〇』という風に、それぞれのキャラ視点を通して物語が進んでいきます。そのため主人公だけでなく様々なキャラの視点が入り混じります。視点がコロコロと変わりますがご容赦いただけると幸いです。 ※一話ごとの字数がまちまちとなっています。ご了承ください。 ※物語が進んでいく中で、投稿済みの話を修正する場合があります。ご了承ください。 ※初執筆の作品です。誤字脱字など至らぬ点が多々あると思いますが、温かい目で見守ってくださると大変ありがたいです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

レオナルド先生創世記

ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!

二十五時の来訪者

木野もくば
ライト文芸
とある田舎町で会社員をしているカヤコは、深夜に聞こえる鳥のさえずりで目を覚ましてしまいます。 独特でおもしろい鳴き声が気になりベランダから外を眺めていると、ちょっとしたハプニングからの出会いがあって……。 夏が訪れる少し前の季節のなか、深夜一時からの時間がつむぐ、ほんのひと時の物語です。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

処理中です...