上 下
43 / 45

043 露顕

しおりを挟む

 赤い髪の男は、まちがいなく[ファーレン]である。相変わらず、お気に入りの[伝統下着]を身につけていた。むろん、キルクス少年とは初対面だが、フレンドリーな態度でせっしてくる。

「へぇ、キルクスっていうんだ。もしかして、ハンバーガーのピクルス、、、、と発音いっしょ? オレさ、そんなにピクルスって好きじゃないから、きみのことは[キルっち]って呼ばせてもらおっと! そっちも、オレのことは好きに呼んでね!」

 馴れ馴れしいというより、図々しい気もするが、本人に悪気わるぎはないため、キルクスのほうで受け流した。服を脱いではだかになると、入浴のため先にきていたファーレンと、それほどひろくない湯船ゆぶねに、肩を並べてつかる状況となった(ファーレンのふんどしは、ついでに洗うといって、おけに引っかけてある)。

「オレ、勇者イベントをクリアして、伝説の剣をもってるンだぜ。キルっちは、もう勇者の称号を手に入れたか?」

「ぼくはまだですが、勇者イベントに向け、レベルを上げている最中でした」

 思いがけず、少年より先に目標を達成したファーレンの登場により、[リージョンフライハイト]の世界は大きく動きだす。そうとは知らない俺は、部屋のベッドで(すっかり)ひと眠りしていた。

「それって、なんかの貴重品アイテム?」

 と、ファーレンがキルクスの左手の薬指を見ていう。脱衣所で外そうとしたが、抜けなかった。

「これは[仲間のきずな]という、ペアリングです。ぼくは今、ブレイクさんと行動を共にしていて、もう片方は彼が……」

「ブレイクだって!?」

「わっ、なんですか?」

 ファーレンはザバッと立ちあがり、キルクスを見おろした。

「キルっちといっしょなら話が早い。ブレイクに会わせてくれ!」

「どうして、ブレイクさんをご存じなんですか?」

「だって、あのひと[リージョンマスター]のひとりだろ。仲良くなれば、こっそりヒントとか教えてくれそうじゃん」

「ブレイクさんが、リージョンマスターって、ほ、本当ですか!?」

「なんだ、キルっち。いっしょにいて気がつかなかったのか」

 ファーレンのかんは、意外とするどい。ふたりの会話は俺の真相に迫りつつあったが、キルクスとファーレンこそ、俺の予想どおりのプレイヤーであることは、まちがいないだろう。あとは、ヒロイン役の[レンド]を待つばかりだ……。


✓つづく
しおりを挟む
1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

シシガミ様

ホラー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

大江戸怪物合戦 ~禽獣人譜~

歴史・時代 / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:4

夢幻燈

青春 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

恋と桜が散る刻

key
恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

処理中です...