愛 玩 人 体

み馬

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愛 玩 人 体〔85〕

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 白衣に着替えた三船が施術室へやって来た時、ユンクは寝台ベッドの上で手脚をベルトに拘束されていた。裸身で両膝を立てられ、左右へひらかれている。意識はあるが、言葉を発する自由は薬で奪われていた。直視するには、あまりにも気の毒な姿だった。しかし、愛玩人体あいがんボディとなる少年の身体検査は、入念におこなわれなければならない。“エイジ”がそうであったように、ユンクにも、同じ工程が待っていた。
 
 寝台を取り囲む人影は要人Bを含め、7人である。8人目となる三船に指で作業をうながし、端末を使って注文をだす。三船は、モニターに映し出された内容を見、眉をひそめた。室内で声を発することは禁止とされているため、ユンクを気遣うことすらできない。単純に、自然な反応を数値化するために必要な処置らしい。三船は覚悟して、ユンクの下腹部に腕を伸ばした。まずは性感度を調べるため、股のあいだをさぐり、少年を無理やり興奮させる。ユンクは目をつむり、三船の不器用な指づかいにもかかわらず、従順な反応を示した。最初から躰のどこにも余計な力がはいっておらず、受け身として良好な態度を取るため、もはや、ユンクに平穏な日常は望めなかった。 

 これからは、管理者としての責任を果たすだけである。ついでに、ユンクに対する恋愛感情はまったくない。少年の下半身を煽りながら、三船は、ようやくバージルの立場を理解した。このような扱いを受ける少年に好意を寄せては、仕事として割り切ることが不可能となってしまう。もとより、管理者と愛玩人体が愛し合うなど幻想にすぎない。
 
 三船は、ユンクの末梢器官を興奮状態にさせておきながら、頭の中でエイジを思い浮かべた。その容姿すがたや性格だけでなく、存在そのものがいとおしくてならない。要人Bの指示どおり、三船はエイジを抱き、一方的な快楽を得た。しかし、ひどく痛がるエイジの顔が脳裏に焼きついて離れない。もっと丁寧に、もっと優しくするべきだった。そう後悔しても遅かったが、エイジへの未練を捨て切れずにいた。

 ユンクをあっさり昇天させた三船は、続いて1枚の図面を受け取った。次なる作業はラベリングの施術である。三船は頷いて承知すると、寝台の上で乱れた呼吸をくり返すユンクへ目もくれず、施術の準備を始めた。今さら同情しても、都合のよすぎる話である。なにより、管理者は心を平静に保つことが必須であり、実験対象を世話サポートする上で、重要な能力のひとつだった。

 三船は麻酔で眠らされたユンクを見おろして、つくづく、バージルの有能さに感服した。すでに半年以上、バージルはエイジの管理に徹している。およそ3年後、医局が正式な愛玩人体を世間に公表するまで、三船はユンクと共に第2研究室へ身を置くことになる。


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