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愛 玩 人 体〔114〕
しおりを挟む「聞いてくれよ、ロイド! オレ、バージルにフられたかもしれない~」
「えっ、それはどういう過程ですか!?」
丸いメガネをかけた28歳のロイドは、バージルがエイジの話し相手に見つけてきた人物で、心は女性というTransgenderの青年だった。決して少数派な個人ではないが、ロイドはロングスカートが普段着につき、医局では目立つ存在でもあった。初めてロイドを紹介された時、エイジはバージルが女性を連れ込んだと勘違いしたくらい、華やかな色が似合う青年だった。ちなみに、ロイドの職業は学棟の講師である。
平日の講義を済ませて研究室を訪ねてきたロイドを見るなり、エイジは、ワッと、泣きついた。
「いったい何があったのです? バージル教授はどこへ?」
「知るか! さっきまでいたけど、何も云わず出ていった!」
「AZくん、落ちついて。とりあえず、椅子に座りましょうか」
ロイドは愛玩人体の肩に手を添えると、椅子が置いてあるところまで誘導した。エイジは、昨晩の出来事をロイドに相談する前に、ドンッと、中央テーブルを叩いた。
「人がせっかく覚悟を決めて告白したってのに、バージルの奴、ずっと背を向けてたンだぜ! あり得なくないか!?」
「そ、それは確かにそうかも知れませんが、ええっと、つまり、可でも不可でもないと云うことではありませんか?」
「……え?」
「きっぱり否定されなかった、ということにもなりますよね?」
「否定は……されなかったと思うけど、無視されたのは事実なんだぞ!」
「ですが、返答を保留にした理由が必ずあるはずです。AZくんとしては、これまで抱えてきた想いを打ち明けたことになりますが、それからどうしたいのか、明確な意思決定までバージル教授にお伝えしましたか?」
「意思決定……? そんな難しいこと訊かれても、よくわかんねぇよロイド……」
「ふふ、そうですよね。告白とは勇気がいるものです。AZくんは、思い切りましたね」
「う、うん……。もう気持ちを我慢するのが限界だった……」
ロイドが微笑みを浮かべて「頑張りましたね」と励ましてくれたので、エイジの心は少しだけ楽になった。
+ continue +
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