27 / 66
第二部
花咲く果実⑺
しおりを挟む感覚は麻痺していても、体内領域に挿入された異質な肉塊は、アセビの咽喉をふるわせ、細胞は素直な反応を示してゆく。硬く張りつめた乳頭に吸いつき、浅く腰をふる男は、寵主の意識がはっきりしないうちに性交渉を遂げた。
グレンハイトの誕生祭当日、寝台から起きあがったリュンヌは、全身が重怠く、頭がズキズキと痛むのを感じた。目覚めてすぐ、寝所に顔をだしたクオンは、平然としたようすで鎮痛剤を差しだしてくる。
「薬だ。頭がすっきりするぜ」
「よくも、そのようなことが云えるな。この、人でなし医官め……!」
皇帝に弄ばれたと誤認したアセビは、クオンに向かって枕を投げつけた。全裸で目を覚ました挙げ句、胸もとに鬱血した歯形があり、腹部の違和感が否めない。まして、意識が途絶える寸前、皇帝と目が合っている。
(……お、おのれぇ、リヤンムスカ! わたしを第二夫人と呼んでおきながら、一方的に凌辱するとは許せぬ!)
怒りのあまり、ボスッと寝台に拳を振りおろすアセビに、クオンが口を挟んだ。
「昨夜は、素直で悦かったぜ」
「なんだと? まさか、見ていたのか!?」
「見ていたもなにも、おまえを抱いたのはリヤンじゃない」
「な、なに? それでは、いったい誰が……」
困惑するアセビをよそに、鎮痛剤を口腔に含んだクオンは、口移しで呑ませてきた。あっさり接吻を交わす医官にリュンヌは唖然としたが、にわかに紫寝殿の外が騒がしいことに気づき、平静を取り戻した。
「グレンはどうしている」
「皇太子なら、ヒルダの担当だろ。今頃は朝食の時間だ。こっちも早いところ身装を整えて準備しようぜ。……シルキ、膳を持ってこい」
クオンは扉を振り向いて声をかけると、廊下で待機していた少年は「かしこまりました」と返事をして、炊事場へ向かった。そのあいだに薬湯でアセビの肌を拭き取り、仮の衣装を着せるクオンの息づかいに過剰反応してしまうアセビは、苦心して気にしないふりをした。
「リュンヌ、食事が済んだら化粧をするぞ。おれが紅をさしてやる。……口紅を塗る意味を知っているか」
「……いや、知らぬが」
「悪しきものに影響を受けないよう、晴れ舞台の日には赤化粧をするのさ。要するに魔除けだ」
グレンハイトは次期皇帝として臣下に顔見世を行い、アセビは寵主として、ルリギク皇后と初めて対面する。田舎者で罪人だったアセビは、きょうほど複雑な心境に陥ったことはない。
(悪しきものとは、誰のことだ? リヤンか、あるいは……。むぅ、いかん、緊張してきた……)
「リュンヌさま、失礼します。お食事をお持ちしました」
膳を運ぶシルキは、13歳になっていた。当初より背丈も伸び、ずいぶん男らしい顔つきに成長している。クオンが化粧道具を取りに姿を消すと、シルキから「おめでとうございます!」と祝福された。
「なんだかぼくもうれしいです。いよいよ、リュンヌさまが、皇族に認められる日が来たのですね!」
シルキの笑顔を見たアセビは、ピリピリとした緊張感が少し和らいだような気がした。
✓つづく
1
あなたにおすすめの小説
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです
沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる