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スーツの下の化けの皮/二幕
第74話
しおりを挟む幸田は身なりを整えると、ソファのうえで放心している姫季へ手を差しのべた。
「今から、セックスをしに、ラブホテルへ行くとしよう。……立てる?」
「ほ、本気なの?」
「当然。それとも、前言撤回するかい?」
「し、しない。行く!」
予想外の展開とばかり、にわかに当惑した姫季だが、すぐさま我に返り、ガバッと起きた。幸田は、先に玄関の外で待っている。簡単な身仕度をして通路に顔をだした姫季は、少し息切れをしていた。
「そんなに急がなくても、だいじょうぶだよ。昼間に利用するラブホテルなら、満室の心配はないだろう」
「……う、うん。そうだね」
ラブホテルの営業時間は、夜から朝にかけてのイメージが一般的かもしれないが、多くの場合、昼から利用できる。また、ビジネスホテルのように滞在目的ではなく、ラブホテルでは休憩と称して、昼でも夜でも短時間の利用が可能だった。幸田は、あらかじめ調べておいたホテルの近くまでタクシーを使い、姫季をエスコートした。内心、石津と訪れたことがある場所ではないかとハラハラしたが、姫季の反応を見るかぎり、初めて利用する部屋だと思われた。
「へぇ、内装きれいだな。新築みたい」
「ここは2ヵ月前にオープンしたところなんだよ。気に入ったかい?」
「うん。壁も床もシックで、かっこいい。ベッドも、いい感じ」
姫季は靴を脱いでシーツのうえに寝そべると、すぐに「シャワー浴びてくる!」といって、ダブルサイズのベッドから裸足でおりた。磨りガラスの奥に姿を消し、シャワーの流れる音が聞こえてくると、幸田は備え付けの冷蔵庫をあけ、缶ビールを購入した。酒が身体へはいることにより、より一層、非日常気分を味わえる。飲酒物の持ち込みは基本的に問題ないが、急遽、訪れた展開につき、ふたりとも心の準備が必要だった。ソファに、姫季のサックがおいてある。いつかのように、着信音が鳴り響かれては行為に集中できないため、幸田は自分の携帯から電話をかけてみた。すると、サックのなかで、姫季の端末がブルブルと振動する。メロディは鳴らない。幸田もシャワーを済ませると、姫季のバスタオルを床へ落として、ベッドインした。
「……んっ、こ、幸田さ……ん……っ」
湯を浴びて火照る肌を重ね合い、深い口づけをくりかえす。そのうちに興奮状態となった下半身は、どちらも硬く張りつめ、欲望のまま勃ちあがった。
✰つづく
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