曙花町男娼夜鷹坂

み馬下諒

文字の大きさ
63 / 200

〘63〙汚名返上

しおりを挟む

 週明けの定休日、珍しくハルチカのほうから楼主をたずねた。

「ダンナさま、おはようございます。ハルチカです。」

 扉の前に立って声をかける。「はいれ。」ということばに従って、気がすすまないながら「失礼します。」と挨拶を返すと、できるだけ静かに室内なかへ足を踏みいれた。

「お出かけですか、」

介意かまわん。要件を聞こう。」

 上質で光沢のある朱子織サテンの黒いスーツに、高級そうな腕時計をはめるタカムラは、ハルチカを一瞥すると、長椅子ソファへ腰をおろした。いつまでも楼主の貫禄に怯えていられないハルチカは、キリッと顔をあげ、タカムラの正面に坐った。

 数日前、使者の間に呼びだされたハルチカは、ヒシクラとの性交渉を強要されたが、楼主の思いどおりの結果には至らなかった。ヒシクラは、見た目こそ髭面ヒゲヅラで野太い声をしているが、ハルチカにとっては理解者のひとりであり、数少ない常識人である。いくら計算高い楼主の思惑とはいえ、信頼できる男を利用してまでハルチカを追いつめる必要があったのか。少なくとも、周囲の人間を巻き込んで、間接的な調教をされるくらいならば、楼主の腕に抱かれたほうがマシだと思えたハルチカは、これまで以上の覚悟をもって、タカムラとの会話にのぞんだ。

「お願いがあります。これからは、ダンナさまが直接ご指導くだいませんか。なにもかも、あなたのうとおりにします。」

「ならば脱げ。おれを口説きたければ、指摘される前に裸身はだかになることだ。」

「きょうは、そんなつもりで来たわけじゃ……、」

「色仕掛けのひとつもできないのか。ふだんのおまえには興味もないが、名器であることは認める。」

 タカムラは嵌めたばかりの腕時計を外してスーツの内ポケットにいれると、ハルチカのとなりに移動してきた。されるがままに応じていると、コンコンッというノック音が聞こえた。ハルチカは全裸で股をひらいていたが、タカムラは涼しい顔で「どうぞ。」という。あらわれた人物は、長椅子で淫らな姿になっているハルチカに目を留め、微かに眉をひそめた。

「アカラギか、」

 すでに二本の指を挿入している楼主だが、何喰わぬ顔で聞き返した。

「おじゃまでしたか、」

介意かまわん。提出物ならば、そこに置いていけ。」

「承知しました。」

 アカラギも平然と会話する。ハルチカは衝撃のあまり意識が飛びそうになったが、トキツカサのときのように、第三者の登場に動揺しては、上級男娼として度胸が足りないと思い、わざと指を動かされても、素直にがってみせた。変化を認めた楼主は、ハルチカで性欲を発散する予定をやめ、身なりを整えるよう云いつけると、アカラギが持参した資料の黙読を始めた。

 下腹部が熱い。ヒクヒクと収縮する交接口アナルに途惑うハルチカは、タカムラの巨根を待ちわびていたかのような錯覚にとらわれたが、小袖の衿を合わせ、長椅子に坐り直した。

「おまえの自浄力を、ヒシクラにおぎなってもらう予定だったが、うまく作用さようしなかったようだな。……そんなに好きか、」

「……好き? お、おれは、夜鷹坂のみんな大事ですが……、」

 タカムラは扉に視線を移すと、「はいれ。」という。立ち去ったはずのアカラギは、廊下に待機していた。声がかかり、ふたたび室内にもどる。気まずい空気が流れたが、タカムラは微笑して告げた。

「アカラギよ、性教育の追加と延長を命じる。今後、定期的にハルチカを壺の間で抱いてもらうが、前戯に時間をかける必要はない。かならず、性器を挿入し、中出しをすること。……以上だ。」


✓つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

処理中です...