曙花町男娼夜鷹坂

み馬下諒

文字の大きさ
188 / 200

〘188〙指導原理

しおりを挟む

 数十日ぶりに性交渉を遂げたハルチカは、タカムラに対する感情が迷走し、気分が悪くなった。顔色が青ざめると、「おぇッ!」と、腹をかかえて前のめりになる。まるで妊娠したかのような張りがある腹部には、タカムラの精液が大量に溜まっていた。ガウンを羽織り、ガラスのコップに水を注いで差しだす楼主は、「アカラギを呼ぶか」と訊く。事後処理が不得手なハルチカは、カァッと赤面した。ひとまず、コップを受け取り、水をのんで、深呼吸をする。激しく抱きあったあとの室内は、壺の間と同じく、独特な空気が漂っている。

 楼主と抱きあった始末を、現状いまのアカラギに頼むことは、ためらいが生じた。ハルチカは思わず、「エ、エンオウなら……」と口がすべった。ピクッと、タカムラの眉が吊りあがる。下働きのエンオウが、アカラギの指示のもと、男娼の世話を焼いている件は、タカムラも承知していたが、今夜はエンジュと枕席ちんせきで愛しあっている。そうとは知らないハルチカは、エンオウに処理をお願いしようと考えた。楼主は溜め息を吐くと、ハルチカの膝へ腕をすべり込ませ、開口部へ指を挿入してきた。

「くァッ!? ダンナさま、なにを……ッ、」

「掻きだしてやろうと思ってな。」

「あぅッ、んんッ、……い、痛い!」

「やさしくしてやるつもりはない。」

「……はッ、ぁうッ! くぅッ!」

 内壁を強く指圧されるハルチカは、ガタガタと口唇くちびるや腰がふるえたが、ゴプッと残留物が流れでると、全身の力が抜けおちて、ぐったりと躰を横たえた。せわしない呼吸が苦しくて顔をしかめると、タカムラに乳首を甘噛みされた。

「ダンナさまの……いじわる……、ハァハァ……、ゼェハァッ……、」

「おまえが云ったのだろう。今宵で最後となるゆえ、存分に愉しめと、」

「……それは……そうですが、……ぁッ! だ、だめぇ!」

 クチュクチュと陰茎を擦りあげられたハルチカは、ふたたび快感に悦がってしまう。タカムラはガウンの腰紐をゆるめて巨根を取りだすと、「や、やだ、だめっ、だめぇ!」と拒絶するハルチカの股をひらき、体内領域へ挿入した。すぐさま腰をふり、ハルチカをあえがせる。

「やッ、いやぁッ、……ダンナさま、……ダンナさまぁ!!」

「いい声だな。今夜は、好きなだけ泣き叫ぶがいい。なにをしても赦してやる。」

「はぅッ! あァぁぁーッ!」

 すでに体力も気力も消耗していたハルチカは尿意をもよおしたが、必死にがまして、タカムラの中出しを受けいれた。楼主が腰を引き抜くさい、精液が逆流し、ドプッと体外へ排出された。さすがに、これ以上は無理につき、ハルチカは涙目で会話した。

「ダンナさまは……、いつもこんなことをしているンですか……、」

「なにが云いたい。」

「……ですから、ダンナさまには、その……、す、好きな人が、いないのかなって……、」

 寝台に躰をうずめてたずねるハルチカは、ガウンを着直して枕もとに坐るタカムラの横顔を見つめた。物事の考え方が冷徹で、厳しい手段をもいとわない楼主だが、断じて、悪人ではない。花町に君臨する覇者としての力量を備えており、肉体関係をもった相手の数は、百を超えている。たとえ理想にはほど遠い部類の容姿であっても、肌を合わせたときの手応えで内在する特徴を引きだす才能を発揮してきたタカムラは、社会的な圧迫にとらわれない諸価値に固着した。

 集団の理想は、従属的かつ世上の通念や偏見を改めて問い直すことであり、道徳的批判の脅威から個人の運命を排除することである。内面の支配と管理材料の対象となったハルチカだが、夜鷹坂の男娼という道具と化したわけではない。


✓つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

処理中です...