妹も転生者で困ったことになった

奏多

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 むしろキャロルのタイムリミットが目に見えはじめて、私は慌てていた。
 なにせ食欲に忠実なキャロルは、王子妃なんてできっこない。
 王子が上手くかじ取りしてくれるならまだしも、そんなタイプの人には見えないもの。むしろそこまで気を回せるなら、キャロルをこんな状況にはしないはずだ。

 それに気づいた王子の周辺から排除されるか、王子自身がキャロルの移り気(食欲的な)で嫉妬の末、激怒するまでの限界が近くなってきている。

(夢のお店を整えるのに、あともうちょっとかかるのに)

 姉妹二人だけとはいえ、犬生活以外は貴族令嬢としての生き方しか知らないキャロルだ。すぐに平民らしい生活が送れるわけがない、特に食事は、王子達の餌付けしている内容がなんか豪華だし、粗食に慣れるまで大変だろう。

 だからもう少しお店を軌道に乗せて、資金が貯まるまでは待って欲しかった。
 そうしてお金があれば、少しずつ、食事内容をランクダウンさせてキャロルに平民生活に慣れてもらうつもりなのだけど。

(急いでいたせいで、なんだか疲れたわ……)

 もうどうでもいいので、この話を切り上げて、さっさと作業しに家に帰りたい。
 なんてことを考えていたら、ふらっとして――――倒れてしまった。

「過労でございますよ、お嬢様」

 家に運び込まれた後、部屋付きの召使いマナがそう言った。

「過労で間違いないでしょう。医師を呼ぶまでもございません」

 馬車から私を部屋まで運んでくれた、執事のキアランもそう言う。
 心配そうな表情も、とてもよく似合うわねキアラン。さすが庶民出とは思えないほど顔が整っている人は違うわ。

「少しお休みなるしかありません、ディーナお嬢様。このままではまた倒れてしまわれます」

 心配顔の執事は、私の平民計画を知っている。彼もキャロルの素行に、危機感を抱いてはいたのだ。
 けれどこの青年、キアランが執事になったのは、私達が学校に通うようになってから。以前の執事は両親のことだけ優先していたので、キャロルや私への対応がおざなりな人だった。

 そのため、執事見習いのキアランでは何も手を出せず……どうしようもなかったのだ。
 平民が反抗なんてしたら、優秀でもすぐに解雇されてしまう世界だもの。

 代わりに私のお店計画に協力してくれて、晴れて執事となった今は、そちらの采配も手伝ってもらえて本当にありがたい。
 にしても、こんな状況で無理をして、過労死などしたくない。

「わかった。休むわ……」

 ほんの数日。
 それだけ休んだら、急いでお店のことをどうにかすればいい。そう思っていた。
 けれど遅かったのだ。
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