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第9話 - ウルダン ギルド支部 魔法とは
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「そも、魔法とはなにか。本来、妖精界にしか存在しない現象を、人間界に仮の形で再現しているものが、それだ。では、どうやって再現をしているのか」
ダイオンが、黒き魔力を纏いながら、ずしり、ずしり、とレウに寄る。
レウは、これまでの強気はどこへやら。静かに後ずさり、距離を取ることしかできない。
そんな様子を愉しげに見ながら、ダイオンは低い声で講義を続ける。
「妖精と契約をした人間は、妖精文字のみを借り受けるのだ。その文字で、人間界そのものに指令を下す。火を起こす、水を湧かせる、凍らせる、など。そう。結局は、世界が妖精文字の指示に従った結果の現象にすぎない。つまり魔法とは、緻密に組み上がった妖精文字の塊なのだ」
それが魔法の正体である。妖精文字という極小の指示言語《コード》が、現象の機序を指定し、それが結果魔法という形で現れる。
「妖精文字は、人間界のどの物質でも壊すことはできないだろう。上位存在であるからだ。だから、剣で魔法を斬るなど、とんでもない、あり得ないことだ」
だから、全ての敵は驚嘆していた。魔法を斬る、なんてことは、よほどの聖剣や魔剣でない限り、原理上、あり得ないことなのだ。
だから、もし、ただの鉄の剣でそれが為せるとするのならば。
「そう。不可能なのだ。文字と文字の隙間に刃を通し、妖精文字の塊を崩す、なんてことをしない限りは」
それのみが、可能性として考えられる。だが、それは、あまりにもあり得ないことだ。人間界で例えて言うならば、モノを構成する最小の単位――分子と分子を目で見分け、その間に剣を通す、なんて言っているようなものなのだ。
だが、ここに一人、それが為せる者が、いる。
「その夢想の剣の名を“魔崩剣”。そんな不可能を追い求めた馬鹿たちがいた。水平の残党。お前らのことだ。当然、誰もそれを会得するに至らなかった、と聞いていたが」
壁際までレウを追い詰めたダイオンは、にたりと笑った。
そんな不可能を可能にする、笑い話のような奇跡があったのだと。
「こんなところで、その奇跡を目の当たりにするとは。ハハハハハ! 呪いの力でようやく開眼したか? 傑作だ、こんな間抜けな完成は、笑うしかない! だが、それも限界があるな。お前の魔崩剣、より緻密な魔法には、対応ができないと見た」
「……」
ダイオンは、レウの剣を指さした。
「お前の剣、少し焦げているだろう。ここの部屋にいた、雷魔法を受けたときに付いた失着の跡だ。高位の魔法は、より緻密な妖精文字で構成される。お前が斬る隙間など、ないほどに、な」
「……」
ダイオンは、見抜いていたのだ。ここの部屋に降臨する前から。
レウの魔崩剣は、未だ未完成であると。
男は、再び酷く高く嗤う。
「ハハハハハ! 妖精の中でも高位な【色付き妖精】。その中でも格別の妖精たち……【貴種妖精】の守護は、そんなちんけな刃は通さない! この鉄壁の守りに加え、魔力により爆発をまき散らす魔剣【クランバオル】! お前は爆風で吹き飛ばされるが、魔法に護られた我は、無傷だ。さあ、どうする、どう戦う、生意気な鼠よ」
これが、ダイオンの力であった。オーラの如く揺蕩う黒い魔力のバリア。
それはどんな攻撃も通さない、無敵の守護を与える。
なので、自爆を恐れずに、広範囲の攻撃手段をガンガン浴びせることができる。
いっそ卑怯なほどに一方的。しかし、これが魔法の力であり、それを独占するギルドという組織の恐ろしさでもあった。
「ほらほらほら! さあ、お前の力を見せろ、水平の輩よ!」
水平、という単語を、ダイオンは不自然なほどに連発する。
そして男は、青白く光る魔剣を容赦なく振り下ろした。
受けても避けても、爆発が起こる、理不尽の刃である。
対処不能の魔剣を目の前に、レウは――
ただ、真っすぐに、己の剣をぶつけた。
剣と剣が重なり、澄んだ高音が鳴り響く。
そして、なんと。ダイオンの魔剣のほうが、後方に弾き飛ばされたのだ。
レウは、小細工を使ったわけでは無い。
迫りくる大剣の重心を捉え、そこに己の剣の筋を、ただ真っすぐぶつけただけなのだ。
こちらは最小の衝撃だけに抑え、相手が剣に込めた力を、向こうにそのまま返す。
極限の剣技にのみ許された、跳ね返しの絶技である。
魔剣の爆発は、モノに接地しているときにのみ発動する。
つまり、瞬時に跳ね返せば、爆発をする間もなく、跳ね返すことができるのだ。
「――ほお」
ダイオンは……愉しそうに、にやりとまた、嗤った。
それを見て、レウは、けっ、と、血の混じった唾を吐き捨てる。
「べらべらべらべらと、ご機嫌にお喋りしやがって……! 僕ァ、ちょっと、腹が立ったよ……!」
ダイオンが、黒き魔力を纏いながら、ずしり、ずしり、とレウに寄る。
レウは、これまでの強気はどこへやら。静かに後ずさり、距離を取ることしかできない。
そんな様子を愉しげに見ながら、ダイオンは低い声で講義を続ける。
「妖精と契約をした人間は、妖精文字のみを借り受けるのだ。その文字で、人間界そのものに指令を下す。火を起こす、水を湧かせる、凍らせる、など。そう。結局は、世界が妖精文字の指示に従った結果の現象にすぎない。つまり魔法とは、緻密に組み上がった妖精文字の塊なのだ」
それが魔法の正体である。妖精文字という極小の指示言語《コード》が、現象の機序を指定し、それが結果魔法という形で現れる。
「妖精文字は、人間界のどの物質でも壊すことはできないだろう。上位存在であるからだ。だから、剣で魔法を斬るなど、とんでもない、あり得ないことだ」
だから、全ての敵は驚嘆していた。魔法を斬る、なんてことは、よほどの聖剣や魔剣でない限り、原理上、あり得ないことなのだ。
だから、もし、ただの鉄の剣でそれが為せるとするのならば。
「そう。不可能なのだ。文字と文字の隙間に刃を通し、妖精文字の塊を崩す、なんてことをしない限りは」
それのみが、可能性として考えられる。だが、それは、あまりにもあり得ないことだ。人間界で例えて言うならば、モノを構成する最小の単位――分子と分子を目で見分け、その間に剣を通す、なんて言っているようなものなのだ。
だが、ここに一人、それが為せる者が、いる。
「その夢想の剣の名を“魔崩剣”。そんな不可能を追い求めた馬鹿たちがいた。水平の残党。お前らのことだ。当然、誰もそれを会得するに至らなかった、と聞いていたが」
壁際までレウを追い詰めたダイオンは、にたりと笑った。
そんな不可能を可能にする、笑い話のような奇跡があったのだと。
「こんなところで、その奇跡を目の当たりにするとは。ハハハハハ! 呪いの力でようやく開眼したか? 傑作だ、こんな間抜けな完成は、笑うしかない! だが、それも限界があるな。お前の魔崩剣、より緻密な魔法には、対応ができないと見た」
「……」
ダイオンは、レウの剣を指さした。
「お前の剣、少し焦げているだろう。ここの部屋にいた、雷魔法を受けたときに付いた失着の跡だ。高位の魔法は、より緻密な妖精文字で構成される。お前が斬る隙間など、ないほどに、な」
「……」
ダイオンは、見抜いていたのだ。ここの部屋に降臨する前から。
レウの魔崩剣は、未だ未完成であると。
男は、再び酷く高く嗤う。
「ハハハハハ! 妖精の中でも高位な【色付き妖精】。その中でも格別の妖精たち……【貴種妖精】の守護は、そんなちんけな刃は通さない! この鉄壁の守りに加え、魔力により爆発をまき散らす魔剣【クランバオル】! お前は爆風で吹き飛ばされるが、魔法に護られた我は、無傷だ。さあ、どうする、どう戦う、生意気な鼠よ」
これが、ダイオンの力であった。オーラの如く揺蕩う黒い魔力のバリア。
それはどんな攻撃も通さない、無敵の守護を与える。
なので、自爆を恐れずに、広範囲の攻撃手段をガンガン浴びせることができる。
いっそ卑怯なほどに一方的。しかし、これが魔法の力であり、それを独占するギルドという組織の恐ろしさでもあった。
「ほらほらほら! さあ、お前の力を見せろ、水平の輩よ!」
水平、という単語を、ダイオンは不自然なほどに連発する。
そして男は、青白く光る魔剣を容赦なく振り下ろした。
受けても避けても、爆発が起こる、理不尽の刃である。
対処不能の魔剣を目の前に、レウは――
ただ、真っすぐに、己の剣をぶつけた。
剣と剣が重なり、澄んだ高音が鳴り響く。
そして、なんと。ダイオンの魔剣のほうが、後方に弾き飛ばされたのだ。
レウは、小細工を使ったわけでは無い。
迫りくる大剣の重心を捉え、そこに己の剣の筋を、ただ真っすぐぶつけただけなのだ。
こちらは最小の衝撃だけに抑え、相手が剣に込めた力を、向こうにそのまま返す。
極限の剣技にのみ許された、跳ね返しの絶技である。
魔剣の爆発は、モノに接地しているときにのみ発動する。
つまり、瞬時に跳ね返せば、爆発をする間もなく、跳ね返すことができるのだ。
「――ほお」
ダイオンは……愉しそうに、にやりとまた、嗤った。
それを見て、レウは、けっ、と、血の混じった唾を吐き捨てる。
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