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第36話 - 王国会議室 苦肉の策
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「エルセイドが、負けました」
報告は、王国の会議室に重々しく響いた。
それを聞いた重臣たちは、皆一様に口を閉ざす。
エルセイド。《黄金騎士》。王国の最高戦力。ギルドへの抑止力。
それが、魔法すら使えぬ一介の剣士に、泥を付けられた。
これが意味するところは遥かに深刻である。
王国の名そのものが汚された。ここに付け入る不届き者が後を絶たないであろう。
政治的にどのように立ち回ろうが、完全に無傷で収束させることは難しい。
できる限り、この一件のダメージを最小限にさせるか。
最優先で考えなければならないが、簡単に答えが出るものではない。
王の御前にて雁首を揃える重臣たちは、眼前の大問題に対し口火を切る勇気も無く、ただただ項垂れ下を向いていた。
そんな中で一人――手を挙げる重臣がいる。
「……私に、考えがあります」
その重臣は、この中で最も若く、最もギルド憎しと考えている者であった。
彼の問いに対し、返すは沈黙。それを肯定と捉え、言葉を続けた。
「始めに言っておきますが、苦肉の策です。最上級の高難易度クエストとして――かの剣士の討伐依頼を、ギルドに出すのです」
「なっ……!」「き、貴様! バカか!?」「言うに詰まり、何を申すか!」「狂っている」
「お聞きください!」
まさかの提案に騒然とする重臣たちを、一喝で黙らせる。
彼は、決然と、王と目を合わせながら、己の考えを開陳する。
「参加制限は一名のみ。王国を汚した下郎を倒すことを、ギルドの仕事とさせるのです。必ずや、S級の最上位の冒険者が来るでしょう。その結果、かの剣士がギルドの冒険者を倒すことになれば、この問題は王国からギルドまでの問題として、拡大化させることができる。奴らの言いなりとなることを防ぐことができます」
「……」
この事態で最も恐れるべきは、ギルドの影響力が増すことだ。
あの手この手で、王国の軍事に口出しするであろうし、そうなった場合の末路は、他国の幾つもの、悲惨の例がある。
だから逆に、こちらから依頼を出すことで、剣士とギルドをぶつけさせる。
無論、彼が言うとり、これは苦肉の策である。
王が、重々しく口を開いた。
「もしも、ギルドが彼奴を倒したならば?」
もしもその依頼が達成されたのであれば。王国が倒せなかった敵をギルドが倒した、ということになる。王国に口出しをする大義名分がより強まってしまうのだ。
故に、この依頼をギルドは決して断らないだろう。この上ない好機であるからだ。
皮肉なことに、この策では、王国を汚した下郎の武運を祈らねばならぬという、おかしな矛盾が生まれることになる。
王の問いは、尤もであった。それに対し、彼は、震えながら答える。
「――我らが誇る《黄金騎士》が倒せなかった相手です。ならばギルドのどんな冒険者でも、敵うはずがない。そう考えるのは、おかしいでしょうか?」
再び、沈黙が訪れた。
おめでたい理想論だと笑うべきか。誇りを賭けた名案だと賞賛するか。
その答えは――愉快そうに吊り上がる王の口端に込められていた。
報告は、王国の会議室に重々しく響いた。
それを聞いた重臣たちは、皆一様に口を閉ざす。
エルセイド。《黄金騎士》。王国の最高戦力。ギルドへの抑止力。
それが、魔法すら使えぬ一介の剣士に、泥を付けられた。
これが意味するところは遥かに深刻である。
王国の名そのものが汚された。ここに付け入る不届き者が後を絶たないであろう。
政治的にどのように立ち回ろうが、完全に無傷で収束させることは難しい。
できる限り、この一件のダメージを最小限にさせるか。
最優先で考えなければならないが、簡単に答えが出るものではない。
王の御前にて雁首を揃える重臣たちは、眼前の大問題に対し口火を切る勇気も無く、ただただ項垂れ下を向いていた。
そんな中で一人――手を挙げる重臣がいる。
「……私に、考えがあります」
その重臣は、この中で最も若く、最もギルド憎しと考えている者であった。
彼の問いに対し、返すは沈黙。それを肯定と捉え、言葉を続けた。
「始めに言っておきますが、苦肉の策です。最上級の高難易度クエストとして――かの剣士の討伐依頼を、ギルドに出すのです」
「なっ……!」「き、貴様! バカか!?」「言うに詰まり、何を申すか!」「狂っている」
「お聞きください!」
まさかの提案に騒然とする重臣たちを、一喝で黙らせる。
彼は、決然と、王と目を合わせながら、己の考えを開陳する。
「参加制限は一名のみ。王国を汚した下郎を倒すことを、ギルドの仕事とさせるのです。必ずや、S級の最上位の冒険者が来るでしょう。その結果、かの剣士がギルドの冒険者を倒すことになれば、この問題は王国からギルドまでの問題として、拡大化させることができる。奴らの言いなりとなることを防ぐことができます」
「……」
この事態で最も恐れるべきは、ギルドの影響力が増すことだ。
あの手この手で、王国の軍事に口出しするであろうし、そうなった場合の末路は、他国の幾つもの、悲惨の例がある。
だから逆に、こちらから依頼を出すことで、剣士とギルドをぶつけさせる。
無論、彼が言うとり、これは苦肉の策である。
王が、重々しく口を開いた。
「もしも、ギルドが彼奴を倒したならば?」
もしもその依頼が達成されたのであれば。王国が倒せなかった敵をギルドが倒した、ということになる。王国に口出しをする大義名分がより強まってしまうのだ。
故に、この依頼をギルドは決して断らないだろう。この上ない好機であるからだ。
皮肉なことに、この策では、王国を汚した下郎の武運を祈らねばならぬという、おかしな矛盾が生まれることになる。
王の問いは、尤もであった。それに対し、彼は、震えながら答える。
「――我らが誇る《黄金騎士》が倒せなかった相手です。ならばギルドのどんな冒険者でも、敵うはずがない。そう考えるのは、おかしいでしょうか?」
再び、沈黙が訪れた。
おめでたい理想論だと笑うべきか。誇りを賭けた名案だと賞賛するか。
その答えは――愉快そうに吊り上がる王の口端に込められていた。
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