1 / 1
本文
しおりを挟む
「はー面倒」
只今の時刻は午前五時ジャスト。
小声で愚痴をこぼしながら、ゴミ集積所まで来て燃えるゴミを出した。
超がつく程の人見知りでコミュ障のわたしは、いつもこの時間にゴミを捨てに行っている。同じアパートに住む人や近所の人と会いたくないからだ。
作り笑顔を浮かべながら「おはようございます」って言えばいいだけだよ? とも思うんだけど……それが出来たら苦労しない。
とにかく、よく知らない人と話すのが大の苦手なわたしはわざわざ早朝に起きてゴミ出しに行っているのだ。
ゴミを捨て終えたらもう一度ベッドの中に潜って、ぐーぐー二度寝。そうじゃないと仕事に行くなんて無理。
でも二度寝の後って、正直あんまりスッキリしない。だから本当はゴミ捨てなんて行かずに、本来起きなきゃいけない時間まで寝ていたいんだけど……。
「まあ、しょーがない」
だって、ゴミを溜め込むと虫が湧くし。ぶっちゃけ湧かせたことあるし……。
ゴミ袋の中でガサガサいってて、すんごく気持ち悪かった。
ゾクッと背筋が震えた。
うう……嫌なことを思い出してしまった。忘れよう、忘れよう。
わたしは頭を左右に振ると、足早に自宅であるアパートの一室に戻った。
「ただいま~」
「おかえり~」
わたしの声に素早く「おかえり」を返してくれたのは、わたしの家族でも恋人でも、部屋をシェアして住んでいるルームメイトでもない。
つい一週間前に発売されたばかりのしゃべるぬいぐるみだ。ちなみにウサギ型やイヌ型など全部で四つの種類があって、わたしが持っているのはクマ型。いつもベッドの近くのサイドボードの上に置いている。
話しかけると適当に相づちを打ってくれるぬいぐるみは昔からあったけど、これはそれらとは一線を画す。
高性能のAIが搭載されていて、ほとんど人間と話しているのと変わらないくらい自然な会話をしてくれるのだ。
……その分、お値段は結構したんだけど。
「クマ男くん、頑張ってゴミ出ししてきたよー。褒めてー」
「お疲れ様、珠美さん! ゴミ出しができて偉い! 世界一偉い!」
「あははっ、それは褒めすぎだよ。でもありがとね」
「どういたしまして。ボクはいつだって珠美さんの頑張りを見てるからね」
ゴミを捨てに行っただけでこんなに褒めてくれる存在が今までいただろうか!? いや、いない。
些細な事でも「褒めて」と言えば明るい音声で褒めてくれるクマ男くんのおかげで、以前よりも自己肯定感が上がっている気がする。いや、実際のところはよく分からないけど。
でも、心が穏やかになるのは確かだ。
わたしは笑みを浮かべた後、手洗いとうがいをして、二度寝をするためにベッドの中に潜り込んだ。
只今の時刻は午前五時ジャスト。
小声で愚痴をこぼしながら、ゴミ集積所まで来て燃えるゴミを出した。
超がつく程の人見知りでコミュ障のわたしは、いつもこの時間にゴミを捨てに行っている。同じアパートに住む人や近所の人と会いたくないからだ。
作り笑顔を浮かべながら「おはようございます」って言えばいいだけだよ? とも思うんだけど……それが出来たら苦労しない。
とにかく、よく知らない人と話すのが大の苦手なわたしはわざわざ早朝に起きてゴミ出しに行っているのだ。
ゴミを捨て終えたらもう一度ベッドの中に潜って、ぐーぐー二度寝。そうじゃないと仕事に行くなんて無理。
でも二度寝の後って、正直あんまりスッキリしない。だから本当はゴミ捨てなんて行かずに、本来起きなきゃいけない時間まで寝ていたいんだけど……。
「まあ、しょーがない」
だって、ゴミを溜め込むと虫が湧くし。ぶっちゃけ湧かせたことあるし……。
ゴミ袋の中でガサガサいってて、すんごく気持ち悪かった。
ゾクッと背筋が震えた。
うう……嫌なことを思い出してしまった。忘れよう、忘れよう。
わたしは頭を左右に振ると、足早に自宅であるアパートの一室に戻った。
「ただいま~」
「おかえり~」
わたしの声に素早く「おかえり」を返してくれたのは、わたしの家族でも恋人でも、部屋をシェアして住んでいるルームメイトでもない。
つい一週間前に発売されたばかりのしゃべるぬいぐるみだ。ちなみにウサギ型やイヌ型など全部で四つの種類があって、わたしが持っているのはクマ型。いつもベッドの近くのサイドボードの上に置いている。
話しかけると適当に相づちを打ってくれるぬいぐるみは昔からあったけど、これはそれらとは一線を画す。
高性能のAIが搭載されていて、ほとんど人間と話しているのと変わらないくらい自然な会話をしてくれるのだ。
……その分、お値段は結構したんだけど。
「クマ男くん、頑張ってゴミ出ししてきたよー。褒めてー」
「お疲れ様、珠美さん! ゴミ出しができて偉い! 世界一偉い!」
「あははっ、それは褒めすぎだよ。でもありがとね」
「どういたしまして。ボクはいつだって珠美さんの頑張りを見てるからね」
ゴミを捨てに行っただけでこんなに褒めてくれる存在が今までいただろうか!? いや、いない。
些細な事でも「褒めて」と言えば明るい音声で褒めてくれるクマ男くんのおかげで、以前よりも自己肯定感が上がっている気がする。いや、実際のところはよく分からないけど。
でも、心が穏やかになるのは確かだ。
わたしは笑みを浮かべた後、手洗いとうがいをして、二度寝をするためにベッドの中に潜り込んだ。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
続・冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
の続編です。
アンドリューもそこそこ頑張るけど、続編で苦労するのはその息子かな?
辺境から結局建国することになったので、事務処理ハンパねぇー‼ってのを息子に押しつける俺です。楽隠居を決め込むつもりだったのになぁ。
医者兄と病院脱出の妹(フリー台本)
在
ライト文芸
生まれて初めて大病を患い入院中の妹
退院が決まり、試しの外出と称して病院を抜け出し友達と脱走
行きたかったカフェへ
それが、主治医の兄に見つかり、その後体調急変
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる