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第11話 クエスト訓練
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──翌日、俺はラプラスと共にクエストの訓練に参加していた。初めての異世界、そして冒険者としての一歩を踏み出す俺にとって、いきなり実戦を挑むよりも、まずは訓練を通して冒険者の基礎知識を身につける方が賢明だ。ここでの訓練が、今後の冒険に大いに役立つはずだと自分に言い聞かせながら、俺たちはクウェールの街から少し離れた「フタバ原野」へと足を運んだ。この場所は、危険な魔物がほとんど出現しない、初心者冒険者たちの訓練のために利用される広大なエリアだという。
空は澄み渡り、少し湿った風が俺たちの頬を撫でる。遠くの山々が薄く霞んで見え、地平線まで続く草原が広がっている。見たこともない植物や、異形の動物たちが辺りをうろついているのを目にすると、改めてこの世界が俺にとって未知の場所であることを実感せざるを得ない。
「ここフタバ原野に出現する魔物は、せいぜいDランク止まりだね。どれも、君の実力ならば容易く討伐できるだろうが……まぁ、油断は禁物だね」
ラプラスが歩きながら、俺に注意を促すように声をかける。彼女の表情は穏やかで、どこか余裕を感じさせるものだった。彼女は学者のように、常に冷静に物事を観察し、深く理解しているかのような態度を崩さない。
「そういえば、昨日はどうだったんだい?」
突然ラプラスが、少しからかうような調子で尋ねてきた。
「昨日って?」
俺は、あまりに唐突な話題の切り替えに少し戸惑いながら、返事をする。
「セシルのことさ。あの彼女を、あそこまで制御するとはね。なかなかやるじゃないか、君」
「……冗談じゃねーよ。こっちは殺されかけたぞ。説得すんのに必死すぎて、あんまし魔力のこと教わってないし……」
その記憶が蘇り、俺は少し苦笑しながら答えた。セシルの暴走は予想以上に激しく、冷や汗をかく場面が多かったことを思い出す。
「そうかい、そうかい。それは災難だったねぇ。彼女を相手にして、命があっただけで上出来さ」
彼女の言葉には、どこか他人事のような軽さが感じられる。俺は肩をすくめ、特に反論する気もなく、そのままフタバ原野の探索に戻ることにした。
しばらく歩き、やがて、俺たちは大きな湖にたどり着いた。
湖のほとりには澄んだ水面が広がり、その周囲には一面に青々とした植物が茂っている。そんな風景の中で、ひときわ目を引くのは、湖面を舞う巨大な青い蝶の群れだった。数匹の蝶が風に乗って優雅に飛び回り、その背後には青い鱗粉がキラキラと光りながら宙に漂っている。陽の光を反射して輝くその姿は、まるで異世界の幻想そのものだ。
「うわ、なんだこれ……でっかい蝶……。こんなの、地球じゃ見たことないぞ……」
俺が驚きの声をあげると、ラプラスは一瞥をくれて、知識を披露するように口を開いた。
「これはオオルリマダラだね。彼らの鱗粉には、主に薬草と類似した成分が含有されており、古くから冒険者の間で高く評価されてきたんだ。特に民間療法では、その死骸を乾燥させて粉末状に加工し、マダラ茶として摂取する方法が一般的だ。これは、抗炎症作用と共に免疫賦活効果が期待されていて、長期にわたる身体的負担を軽減する目的で用いられている。とはいえ、味覚的には多少の癖があるがね……」
「蝶を飲むって……ちょっと抵抗あるな」
俺は少し顔をしかめながら答えたが、ラプラスは全く気にせず続けた。
「オオルリマダラがいるということは、近くにレジン草も自生しているはずさ。レジン草は湿潤な環境での適応性が高く、その内部にはアセプノイドと呼ばれる物質が豊富に含まれている。このアセプノイドは、昆虫の発育を促進するホルモン様物質として知られており、オオルリマダラのように特定の昆虫が異常なサイズまで成長する原因ともなっている。街で流通しているポーション薬の大半は、このレジン草を基に精製されているため、いざという時にはその代用としても十分な効能を発揮するのさ」
彼女はそう言って、湖の岸辺にしゃがみ込み、周囲の植物をじっくりと観察し始めた。
湖面に反射する光が彼女の薄紫の髪に淡く輝き、その仕草には何とも言えない冒険者然とした風格が漂っていた。やがて、彼女は一本の植物を慎重に引き抜いた。それは、葉を持たない茎だけの不思議な植物だった。
「これがレジン草だ。見た目は素朴だが、中には豊富な蜜が含まれていて、オオルリマダラを始めとする多くの昆虫がこれを好んで食する。レジン草の蜜には抗菌作用もあるため、ポーションが手に入らない時は代用品として役立つんだ。覚えておくといい」
ラプラスは、レジン草の茎を軽く折り、俺に手渡した。折れた部分からは粘り気のある透明な蜜がじわりと染み出していた。
「……ほら、舐めてみたまえ。恐れることはない」
彼女の言葉に促され、俺は思い切って蜜を舐めてみる。途端に、口の中に広がる甘味が驚きをもたらした。
「ん? 甘い……! まるで蜂蜜みたいだ!」
「そうだろう? レジン草の蜜は、一般家庭でも料理に使われることが多い。用途は多岐にわたり、その万能性は他の植物に類を見ない。しかし、ボクはキャンディの方が好みだ。さまざまな味が楽しめるからね」
ラプラスはそう言って、ポケットからキャンディを取り出し、悠然と舐め始めた。その行動を横目に、茎をしゃぶる自分がやけに惨めに思えてきた。
「……ん?どうかしたのかい?」
俺の表情に気づいたのか、ラプラスが不思議そうに尋ねてくる。俺はその視線を避けるように、話題を変えることにした。
「あ、いや、なんでもない。次行こ」
俺は茎を口から抜き、軽く吐き捨てるように足を踏み出した。足元の土は柔らかく、時折湿気が残る場所では靴底がわずかに沈む。風が木々の間を通り抜け、かすかな葉のざわめきを運んできた。その静寂の中、俺たちは魔物が生息しているとされるエリアへと進んでいく。
「これを見たまえ」
不意に立ち止まったラプラスが、指さす先に何かが転がっていた。近づいてみると、それは黒い小さな土の塊のようなものが無数に散らばっている。
「.......これは?」
俺は無意識に眉をひそめながら、その奇妙な物体に目を凝らす。乾いた土のようにも見えるが、どこか違和感がある。
「これはミコ鳥の糞だね。ミコ鳥は極めて高速な移動能力を持つが、糞を見つけることで、その行動経路を特定するのが定石だ。さらに、内面視鏡を使うことで、排泄物の発生時間や、餌の消化状態などから行動パターンを読み解くことができる」
ラプラスはまるで当たり前のように言いながら、ポケットから小さな道具を取り出した。それはまるで虫眼鏡のようだが、レンズの周りには微細なメモリが刻まれていた。
俺は彼女が手に持つその道具をじっと見つめた。透明なレンズの中には細かいダイヤルがいくつもついていて非常に精密な作りをしている。
「内面視鏡?なんじゃそりゃ」
不思議そうに見ていると、ラプラスはにやりと笑いながら、そのダイヤルを指で回し始めた。彼の手つきは熟練したもので、まるで何度も同じ作業をしてきたようだ。
「うん、約6分前だ。ここからざっと500メートル以内にいる可能性が高いな。ミコ鳥は身体構造的に、広い平地以外ではその速度を発揮できない。足の骨格は軽量化されており、細長い筋肉繊維が高速運動に特化しているが、その分、長時間の運動には耐えられない。雑木林のような複雑な地形では、すぐに動きを止めてしまうのさ。ここから推測するに、この近くの広場で一息ついている可能性が高い……」
彼女はダイヤルを調整し終えると、辺りをじっと見回した。木々がうっそうと生い茂る中、遠くで鳥のさえずりが聞こえる。
ラプラスはその場に立ち止まり、顎に手を当てて思索にふける。その表情には一片の迷いもなく、彼女の頭の中ではすでに計算が進んでいるのだろう。
「ここから一番近い広場は......こっちだ」
そう言うが早いか、ラプラスは突然走り出した。俺は慌てて後を追いかけたが、彼女の動きは早い。踏み固められた道を駆け抜け、時折木々の間をすり抜けると、目の前に広がるのは崖から滝が流れ落ちる広大な場所だった。
霧のように細かい水しぶきが空気中に漂い、肌にひんやりとした感覚が伝わる。
「ほら、あそこを見たまえ」
ラプラスが示す方向に目を向けると、小さな鳥たちが水たまりの周りに集まり、水を飲んでいた。その姿は鶏に似ていて、まるで小さな群れが休息を取っているように見える。
「あれがミコ鳥だ。休憩中だな」
ラプラスは一切のためらいもなく、その群れの中にゆっくりと歩み寄る。そして、一羽のミコ鳥を背後から抱きかかえるように捕まえた。鳥は驚く様子もなく、ただ無抵抗に彼女の腕の中に収まった。
「捕獲完了」
そのあまりのあっけなさに、俺は一瞬言葉を失った。
「.....なんだそれ。あっさりだな」
「休憩中のミコ鳥は、抵抗する体力が残っていないんだ。あと少し遅れていたら、暴れ出すところだった。捕まえたら早く締めないといけない」
ラプラスは地面に転がっていた石を羚い上げ、そ
のまま無造作にミコ鳥の頭に叩きつけた。鳥は一瞬痙攣し、やがて静かに動かなくなった。
「ミコ鳥は塩焼きにすると美味しいんだ」
その言葉が耳に入る瞬間、俺の背筋がゾクッと妙な寒気に包まれた。無意識に周囲を見渡すと、異様な気配が立ち込めているのを感じる。何かがこちらを見ている?そんな感覚が体を支配した。休んでいたミコ鳥たちも、その異変に気づいたのか、羽ばたいて一斉に逃げ去っていった。
「ラ、ラプラス......」
俺の声は自然と震えを帯びた。ラプラスはミコ鳥の始末をしていた手を止め、ゆっくりと振り返った。
「ん?どうしたんだい?」
「.....なんだろう、なんか、嫌な気配がしないか?......?」
俺の言葉に反応し、ラプラスは持っていた石をゆっくりと地面に置き、辺りを見回した。
俺とラプラスはとりあえず、その場にしゃがんで辺りの様子を見回した。遠くからメキメキメキという木々がなぎ倒される音が聞こえてくる。
「なにかがコチラに近づいてきている……!!しかもこの地響き、かなりデカい!」
ズシーンという重く大きいなにかの足音が聞こえてくる。どうやらこちらに向かっているようだ。
「あ、あれは────」
空は澄み渡り、少し湿った風が俺たちの頬を撫でる。遠くの山々が薄く霞んで見え、地平線まで続く草原が広がっている。見たこともない植物や、異形の動物たちが辺りをうろついているのを目にすると、改めてこの世界が俺にとって未知の場所であることを実感せざるを得ない。
「ここフタバ原野に出現する魔物は、せいぜいDランク止まりだね。どれも、君の実力ならば容易く討伐できるだろうが……まぁ、油断は禁物だね」
ラプラスが歩きながら、俺に注意を促すように声をかける。彼女の表情は穏やかで、どこか余裕を感じさせるものだった。彼女は学者のように、常に冷静に物事を観察し、深く理解しているかのような態度を崩さない。
「そういえば、昨日はどうだったんだい?」
突然ラプラスが、少しからかうような調子で尋ねてきた。
「昨日って?」
俺は、あまりに唐突な話題の切り替えに少し戸惑いながら、返事をする。
「セシルのことさ。あの彼女を、あそこまで制御するとはね。なかなかやるじゃないか、君」
「……冗談じゃねーよ。こっちは殺されかけたぞ。説得すんのに必死すぎて、あんまし魔力のこと教わってないし……」
その記憶が蘇り、俺は少し苦笑しながら答えた。セシルの暴走は予想以上に激しく、冷や汗をかく場面が多かったことを思い出す。
「そうかい、そうかい。それは災難だったねぇ。彼女を相手にして、命があっただけで上出来さ」
彼女の言葉には、どこか他人事のような軽さが感じられる。俺は肩をすくめ、特に反論する気もなく、そのままフタバ原野の探索に戻ることにした。
しばらく歩き、やがて、俺たちは大きな湖にたどり着いた。
湖のほとりには澄んだ水面が広がり、その周囲には一面に青々とした植物が茂っている。そんな風景の中で、ひときわ目を引くのは、湖面を舞う巨大な青い蝶の群れだった。数匹の蝶が風に乗って優雅に飛び回り、その背後には青い鱗粉がキラキラと光りながら宙に漂っている。陽の光を反射して輝くその姿は、まるで異世界の幻想そのものだ。
「うわ、なんだこれ……でっかい蝶……。こんなの、地球じゃ見たことないぞ……」
俺が驚きの声をあげると、ラプラスは一瞥をくれて、知識を披露するように口を開いた。
「これはオオルリマダラだね。彼らの鱗粉には、主に薬草と類似した成分が含有されており、古くから冒険者の間で高く評価されてきたんだ。特に民間療法では、その死骸を乾燥させて粉末状に加工し、マダラ茶として摂取する方法が一般的だ。これは、抗炎症作用と共に免疫賦活効果が期待されていて、長期にわたる身体的負担を軽減する目的で用いられている。とはいえ、味覚的には多少の癖があるがね……」
「蝶を飲むって……ちょっと抵抗あるな」
俺は少し顔をしかめながら答えたが、ラプラスは全く気にせず続けた。
「オオルリマダラがいるということは、近くにレジン草も自生しているはずさ。レジン草は湿潤な環境での適応性が高く、その内部にはアセプノイドと呼ばれる物質が豊富に含まれている。このアセプノイドは、昆虫の発育を促進するホルモン様物質として知られており、オオルリマダラのように特定の昆虫が異常なサイズまで成長する原因ともなっている。街で流通しているポーション薬の大半は、このレジン草を基に精製されているため、いざという時にはその代用としても十分な効能を発揮するのさ」
彼女はそう言って、湖の岸辺にしゃがみ込み、周囲の植物をじっくりと観察し始めた。
湖面に反射する光が彼女の薄紫の髪に淡く輝き、その仕草には何とも言えない冒険者然とした風格が漂っていた。やがて、彼女は一本の植物を慎重に引き抜いた。それは、葉を持たない茎だけの不思議な植物だった。
「これがレジン草だ。見た目は素朴だが、中には豊富な蜜が含まれていて、オオルリマダラを始めとする多くの昆虫がこれを好んで食する。レジン草の蜜には抗菌作用もあるため、ポーションが手に入らない時は代用品として役立つんだ。覚えておくといい」
ラプラスは、レジン草の茎を軽く折り、俺に手渡した。折れた部分からは粘り気のある透明な蜜がじわりと染み出していた。
「……ほら、舐めてみたまえ。恐れることはない」
彼女の言葉に促され、俺は思い切って蜜を舐めてみる。途端に、口の中に広がる甘味が驚きをもたらした。
「ん? 甘い……! まるで蜂蜜みたいだ!」
「そうだろう? レジン草の蜜は、一般家庭でも料理に使われることが多い。用途は多岐にわたり、その万能性は他の植物に類を見ない。しかし、ボクはキャンディの方が好みだ。さまざまな味が楽しめるからね」
ラプラスはそう言って、ポケットからキャンディを取り出し、悠然と舐め始めた。その行動を横目に、茎をしゃぶる自分がやけに惨めに思えてきた。
「……ん?どうかしたのかい?」
俺の表情に気づいたのか、ラプラスが不思議そうに尋ねてくる。俺はその視線を避けるように、話題を変えることにした。
「あ、いや、なんでもない。次行こ」
俺は茎を口から抜き、軽く吐き捨てるように足を踏み出した。足元の土は柔らかく、時折湿気が残る場所では靴底がわずかに沈む。風が木々の間を通り抜け、かすかな葉のざわめきを運んできた。その静寂の中、俺たちは魔物が生息しているとされるエリアへと進んでいく。
「これを見たまえ」
不意に立ち止まったラプラスが、指さす先に何かが転がっていた。近づいてみると、それは黒い小さな土の塊のようなものが無数に散らばっている。
「.......これは?」
俺は無意識に眉をひそめながら、その奇妙な物体に目を凝らす。乾いた土のようにも見えるが、どこか違和感がある。
「これはミコ鳥の糞だね。ミコ鳥は極めて高速な移動能力を持つが、糞を見つけることで、その行動経路を特定するのが定石だ。さらに、内面視鏡を使うことで、排泄物の発生時間や、餌の消化状態などから行動パターンを読み解くことができる」
ラプラスはまるで当たり前のように言いながら、ポケットから小さな道具を取り出した。それはまるで虫眼鏡のようだが、レンズの周りには微細なメモリが刻まれていた。
俺は彼女が手に持つその道具をじっと見つめた。透明なレンズの中には細かいダイヤルがいくつもついていて非常に精密な作りをしている。
「内面視鏡?なんじゃそりゃ」
不思議そうに見ていると、ラプラスはにやりと笑いながら、そのダイヤルを指で回し始めた。彼の手つきは熟練したもので、まるで何度も同じ作業をしてきたようだ。
「うん、約6分前だ。ここからざっと500メートル以内にいる可能性が高いな。ミコ鳥は身体構造的に、広い平地以外ではその速度を発揮できない。足の骨格は軽量化されており、細長い筋肉繊維が高速運動に特化しているが、その分、長時間の運動には耐えられない。雑木林のような複雑な地形では、すぐに動きを止めてしまうのさ。ここから推測するに、この近くの広場で一息ついている可能性が高い……」
彼女はダイヤルを調整し終えると、辺りをじっと見回した。木々がうっそうと生い茂る中、遠くで鳥のさえずりが聞こえる。
ラプラスはその場に立ち止まり、顎に手を当てて思索にふける。その表情には一片の迷いもなく、彼女の頭の中ではすでに計算が進んでいるのだろう。
「ここから一番近い広場は......こっちだ」
そう言うが早いか、ラプラスは突然走り出した。俺は慌てて後を追いかけたが、彼女の動きは早い。踏み固められた道を駆け抜け、時折木々の間をすり抜けると、目の前に広がるのは崖から滝が流れ落ちる広大な場所だった。
霧のように細かい水しぶきが空気中に漂い、肌にひんやりとした感覚が伝わる。
「ほら、あそこを見たまえ」
ラプラスが示す方向に目を向けると、小さな鳥たちが水たまりの周りに集まり、水を飲んでいた。その姿は鶏に似ていて、まるで小さな群れが休息を取っているように見える。
「あれがミコ鳥だ。休憩中だな」
ラプラスは一切のためらいもなく、その群れの中にゆっくりと歩み寄る。そして、一羽のミコ鳥を背後から抱きかかえるように捕まえた。鳥は驚く様子もなく、ただ無抵抗に彼女の腕の中に収まった。
「捕獲完了」
そのあまりのあっけなさに、俺は一瞬言葉を失った。
「.....なんだそれ。あっさりだな」
「休憩中のミコ鳥は、抵抗する体力が残っていないんだ。あと少し遅れていたら、暴れ出すところだった。捕まえたら早く締めないといけない」
ラプラスは地面に転がっていた石を羚い上げ、そ
のまま無造作にミコ鳥の頭に叩きつけた。鳥は一瞬痙攣し、やがて静かに動かなくなった。
「ミコ鳥は塩焼きにすると美味しいんだ」
その言葉が耳に入る瞬間、俺の背筋がゾクッと妙な寒気に包まれた。無意識に周囲を見渡すと、異様な気配が立ち込めているのを感じる。何かがこちらを見ている?そんな感覚が体を支配した。休んでいたミコ鳥たちも、その異変に気づいたのか、羽ばたいて一斉に逃げ去っていった。
「ラ、ラプラス......」
俺の声は自然と震えを帯びた。ラプラスはミコ鳥の始末をしていた手を止め、ゆっくりと振り返った。
「ん?どうしたんだい?」
「.....なんだろう、なんか、嫌な気配がしないか?......?」
俺の言葉に反応し、ラプラスは持っていた石をゆっくりと地面に置き、辺りを見回した。
俺とラプラスはとりあえず、その場にしゃがんで辺りの様子を見回した。遠くからメキメキメキという木々がなぎ倒される音が聞こえてくる。
「なにかがコチラに近づいてきている……!!しかもこの地響き、かなりデカい!」
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