【Lv.999】から始まる異世界攻略譚 ~落ちこぼれゲーマーの俺は、ユニークスキル「ゲーム」を使って異世界を無双攻略する~

𝔐𝔞𝔡-𝔈𝔫𝔡

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第18話 平穏な村

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アッキ村。そこは、山々に囲まれ、時間の流れが一層緩やかに感じられる静かな村。クウェールの横に位置するこの村は、まるで風に乗る落ち葉のように穏やかで、外界から隔絶された小さな世界が広がっている。ここでは、季節が巡るごとに変わる景色だけが時の移ろいを告げる存在だ。人口はわずか30人程度。村の簡素な住宅は、木と粘土、そして藁で作られたもので、自然と共に生きる生活を象徴している。村の人々は自給自足を基本とし、畑や家畜の世話に追われる日々を過ごしている。魔物の出現もほとんどなく、農作物への被害は驚くほど少ない。そのため、村全体に漂う平穏さは、まるで時が止まっているかのようだった。

「おかあさーん!ただいま!」

エディの声が、村の静寂を破った。少年は、山からたくさんのピコの実を抱えて帰宅した。彼の小さな腕いっぱいに収まらないほどの赤く輝く果実は、秋の日差しを浴びている。彼の家は、村の中でも特に小さな木造の家だが、母の手で丁寧に手入れされたその外観は、質素ながらもどこか温かみを感じさせるものだった。

家に入ると、母親は外で洗濯物を干しており、弟のアルは木のおもちゃをいじって遊んでいた。エディが自分で作ったそのおもちゃは、まだ不器用な手で作られたものだが、アルにとっては大切な宝物だった。

「おかえりなさい、エディ。今日もたくさん採ってきたのね」  

母親の顔には、いつもの柔らかな笑みが浮かんでいた。その笑顔は、どんな時でもエディに安心感を与えてくれる。

「うん!今日はたくさん採れたよ!」  

エディは嬉しそうに、ピコの実をテーブルの上に並べた。その赤い果実は、村の中では貴重な食材のひとつだ。

「すごいわね、エディ。今日はこのピコの実で夕飯を作りましょう」  

母親がキッチンで準備を始める中、エディの心はすっかり夕飯のことに夢中だった。  

「やったー!」

エディはその声と共に、嬉しさを抑えきれない様子で跳ね回った。ピコの実の甘い香りが漂い始め、家の中は一気に活気づいた。

夕食の時間が近づく頃、ピコの実の甘く香ばしい匂いが家中に広がった。家の窓から見える夕陽が、赤く染まった空を背景にして、エディとアルの顔を穏やかな光で照らしていた。  

「できたわよー!」  

母親が声をかけると、ピコの実を使ったスープとパンが食卓に並べられた。

「いただきまーす!」  

エディとアルは揃って挨拶をし、さっそく目の前の料理に手を伸ばす。スープの温かさが、口の中いっぱいに広がり、家族の食卓は笑顔と共に満たされていった。

「エディ、今日も一人でこんなにたくさんのピコの実を採ってきたの?」  

母親が優しく尋ねる。

「うん!僕、もう六歳だもん!立派なお兄ちゃんなんだ!」  

エディは胸を張って答えた。彼にとって六歳は、もう立派な大人の証だった。

「そうね、もう頼もしいお兄ちゃんね」  

母親がそう言って微笑むと、弟のアルも負けじと声をあげた。

「明日はアルも一緒に魚を捕まえに行く!」  

アルの目が輝き、エディも笑顔を返す。

「よし、明日は二人で大きな魚を捕まえような!」  

エディの言葉にアルは元気よく頷き、兄弟はその夜、明日の冒険を楽しみにしながら眠りについた。


─────翌朝、

「行ってきまーす!」  

エディとアルは元気よく声を張り上げ、家を後にした。母親が見送るその姿は、二人の無邪気な笑顔に安心感を覚えつつも、どこか不安げだった。

川までの道は、いつもよりも短く感じられた。二人は網と釣竿、バケツを持ち、足元の小石を蹴りながら、自然と笑い声がこぼれた。ようやく川が見えた頃、エディは釣竿を手にして自信満々に声を張り上げた。  

「アル、兄ちゃんが大きい魚を捕まえてやるから、見てろよ!」  

アルもそれに応じて、小さな体を精一杯伸ばし、兄の勇姿を見守る。

────だが、その時だった。

「ねぇ、兄ちゃん。あっちに何かいるよ」

アルの小さな声が不安げに震えた。彼が指さす先、川の向こう岸に黒い影が揺れていた。風が冷たく肌を撫で、二人の無邪気な笑顔はいつの間にか消えていた。

森の奥からは鳥のさえずりひとつ聞こえない。まるで自然そのものが息を潜めたかのような、異様な静寂が漂っていた。  

「……なんだろ、あれ?」  

エディが呟いた。彼の目が影をじっと捉える。影はじわじわと動き、木々の間を抜けて姿を現した。

最初に見えたのは、異様に大きな背中。次に、それを覆う緑がかった粗い皮膚が薄暗い光の中でぼんやりと浮かび上がる。空気が急に冷たくなった。何か、目に見えない悪意のようなものが、その場に広がっていく。

「兄ちゃん……」  

アルが小さな声でエディの袖を引っ張った。その声には恐怖が色濃く滲んでいた。エディもその場から動けず、ただ凝視することしかできなかった。

それは、オークだった。  
豚のような鼻面に鋭い牙が露わになり、その異様な顔つきが木々の影から覗いた瞬間、エディは胸の奥で何かが崩れる音を感じた。緑色の厚ぼったい皮膚は光を受けてぎらぎらと輝き、筋肉が盛り上がった巨体がゆっくりと川沿いを進んでくる。  

異常なまでの静けさ。ただその存在が放つ凶悪なオーラが、エディたちの周りの空気を支配していた。

────ゴリッ……ゴリッ……。

何かが砕けるような鈍い音が響いた。オークがその巨大な足で地面を踏みしめるたびに、周囲の石や木の枝が容赦なく砕けていく。エディは思わず息を呑んだ。  

近づいてくる。ただその事実が、まるで時が止まったかのように感じさせた。体が石のように固まって、動けない。足元の冷たい水の感触さえも、いつの間にか消え去っていた。

「兄ちゃん……怖いよ……」  

アルの声がかすかに聞こえた。しかし、エディはその声に答えられなかった。声を出そうとしても、喉がひどく乾いている。脳が必死に命令を送るが、体が動かない。

オークの目。それがはっきりと見えた瞬間、エディの心臓が跳ねた。小さく濁った目が、まるで二人を嗤うように見据えている。その目には何の感情もなく、ただ空っぽで、しかしどこか底知れない飢えが渦巻いているように感じた。

「アル……逃げろ……」  

エディがようやく声を絞り出した。だが、声が震え、彼自身でさえその言葉が現実感を持っていないことを悟っていた。  
その一瞬後、オークは唐突に動いた。巨体に似合わない素早さで、エディたちの方へ一歩踏み出した。その動きは、人間の理性が許容する範囲を超えていた。エディの胸に冷たい刃物が突き立てられたような感覚が走った。

「兄ちゃん……?」  

アルの声がすぐそばから響く。しかし、エディの耳にはもはや何も届かない。全身が凍りついたように震え、血が足元からすべて抜け落ちるような感覚がした。

オークはじりじりと二人の方へ近づいてくる。その異様な呼吸音が耳にまとわりつく。  

「来るな……来るな……!」

エディは必死に呟いたが、声はまるで蚊の鳴くような弱々しさだった。次の瞬間、オークの巨大な手がエディの頭を無慈悲に───────






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