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第一部
オーディションに落ちた少女①
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『──くぅ~もぉ~の~♪隙~間からぁ~♪』
それは入学式を終えた帰り道の事。母さんは入学式を終えるとすぐにまた仕事へ向かったので、俺は少し遠回りをして河川敷方面から家に帰る事にしたんだ。すると河川敷にある高架下から女性らしき澄んだ綺麗な歌声が聴こえてきたんだ。
「っ!?」
その瞬間──脳が…心臓が…全身が震えた。
心に宿り永遠に輝き続ける…そんな歌声に俺は思えた…いや、出逢えたんだ。
「…彼女に歌って欲しい」
口から自然と漏れる心の声…
『──輝いてっ♪見えるのはぁぁぁ~♪ 』
その歌声に導かれるように高架下へと自然に足が運ばれていく。
『── きぃみぃを~っ♪ 』
彼女が歌っているのは最近の流行り歌。
サビの部分に入ると彼女の声に曲がついていけていない。
『違う…そうじゃない…彼女の声ならもっと音を弾ませて、リズミカルにっ』
俺なら…俺が作る曲なら彼女の歌声にあうはずなんだ。例えるならそれはパズルの最後の一ピースが綺麗にピッタリとハマるかのよう…。
前世では夢を叶えられなかった自称作曲家の俺だけど不思議とそう思えたんだ。
『──探してぇぇぇぇ♪ るぅぅぅぅぅ♪ ♪ 』
彼女は高架下の壁際に居た。ミディアムストレートの綺麗な黒い髪の美少女は目を閉じて歌うの夢中で俺の存在には気がついていない。
不用心だなあ。こんな人気がない所に美少女が一人でいたら悪い男に連れ去られたり、とんでもない事をされそうだぞ?
いや…それは前世だけか?
うん…?今更だが…もしかして…
シチュエーション的にこの場合俺が彼女を襲うと思われてしまうんじゃないだろうか?
それはマズイ!!
よし、ここは一度距離を取ってから…
「…ぁっ…!?」
うわぁ…。やっちまった。距離を取る前に彼女は俺という存在に気がついてしまった。閉じていた目を大きく見開き驚いている。
「あ、あの、違うからね?俺は怪しいものじゃなくて…君の歌声に惹かれて…」
俺がそう声を掛けると同時に彼女は俺に向かって全力で駆け出してきた──
「…えっ?」
もしかして母さんや深雪が言ったように俺が襲われる…?そ、そんな事ないよな…?
彼女は俺の目の前でジャンプ…
「っ!?飛んだっ!?」
そして──
「──大変申し訳ございません!なんでもするので許して下さいぃぃぃぃ!!!」
──ジャンピング土下座を繰り出した…。
「…はい?」
何で俺は美少女に土下座で謝られてるんだろうか?
「あ、あの…と、とりあえず…立ち上がって謝られた訳を聞いてもいいかな?」
「ゆ、許してくれりゅの?」
「許すも何も…そもそもの話、俺は君に謝られてる理由が分からないんだけど…?」
とりあえず立ち上がってもらい、理由を聞く事に。
「それは──」
彼女が言うには男性の俺に下手くそな耳障りな歌を聴かせてしまったからだそうだ…。
「いやいや…何言ってるの?」
「…へぇっ?」
「耳障りどころか綺麗な歌声だと俺は思ったんだけど」
「──ふぇっ? あっ…いや…でも…私は…私の歌声は…」
俺の言葉にキョトンとして頬を赤くしたのは一瞬…すぐに彼女の表情はみるみる曇っていった。
それを見て俺の前世の記憶が呼び起こされた。
「もしかして…誰かに何か言われたりとかしたの?」
「っ!?」
何で分かったんだというような顔をしているな。まあ、前世でそれは何度も味わった俺だから分かったんだけども。
「良かったら…何があったのか話してみない?」
俺がそう言うと、彼女は暫く俯いて考え込んだ後…ゆっくりと口を開いた。
「…さっき…通知が来ていたんです…歌の…オーディションの通知です…」
オーディション…かぁ…。落ちるのは慣れてるけど…やっぱり落ちたらショックなんだよな。
「…初めて落ちたんじゃないんですっ!また落ちたんです!!もう…何度も何度も何度も…受けるオーディション全て落ちてるんですっ!」
前世の俺と同じ…だな…。
「先日のオーディションでは…『また受けたの?』とか言われるし、その前なんてっ『才能ない』とか『君にこの歌はレベルが高すぎる』とか『耳障りだ!』とまで言われてっ!!」
似てる…。そんなところまで似てるんだな。それは前世の俺が全部言われた言葉だ。
彼女の瞳から零れた涙は頬を伝い地面を濡らしていく。
『…悔しいよな…悲しいよな…分かるよ…俺も同じだったから…凄く分かる…』
でも…
君は俺とは違う!才能がなかった俺とは違い彼女には才能がある!それを分からない者がおかしいだけだ!
俺の歌なら…今の俺なら彼女を地面から高く羽ばたかせてあげられる。どこまでも高く…。
だから俺は彼女にこう告げる。
「俺は…君が欲しい」
「………ふぁっ!?」
それは入学式を終えた帰り道の事。母さんは入学式を終えるとすぐにまた仕事へ向かったので、俺は少し遠回りをして河川敷方面から家に帰る事にしたんだ。すると河川敷にある高架下から女性らしき澄んだ綺麗な歌声が聴こえてきたんだ。
「っ!?」
その瞬間──脳が…心臓が…全身が震えた。
心に宿り永遠に輝き続ける…そんな歌声に俺は思えた…いや、出逢えたんだ。
「…彼女に歌って欲しい」
口から自然と漏れる心の声…
『──輝いてっ♪見えるのはぁぁぁ~♪ 』
その歌声に導かれるように高架下へと自然に足が運ばれていく。
『── きぃみぃを~っ♪ 』
彼女が歌っているのは最近の流行り歌。
サビの部分に入ると彼女の声に曲がついていけていない。
『違う…そうじゃない…彼女の声ならもっと音を弾ませて、リズミカルにっ』
俺なら…俺が作る曲なら彼女の歌声にあうはずなんだ。例えるならそれはパズルの最後の一ピースが綺麗にピッタリとハマるかのよう…。
前世では夢を叶えられなかった自称作曲家の俺だけど不思議とそう思えたんだ。
『──探してぇぇぇぇ♪ るぅぅぅぅぅ♪ ♪ 』
彼女は高架下の壁際に居た。ミディアムストレートの綺麗な黒い髪の美少女は目を閉じて歌うの夢中で俺の存在には気がついていない。
不用心だなあ。こんな人気がない所に美少女が一人でいたら悪い男に連れ去られたり、とんでもない事をされそうだぞ?
いや…それは前世だけか?
うん…?今更だが…もしかして…
シチュエーション的にこの場合俺が彼女を襲うと思われてしまうんじゃないだろうか?
それはマズイ!!
よし、ここは一度距離を取ってから…
「…ぁっ…!?」
うわぁ…。やっちまった。距離を取る前に彼女は俺という存在に気がついてしまった。閉じていた目を大きく見開き驚いている。
「あ、あの、違うからね?俺は怪しいものじゃなくて…君の歌声に惹かれて…」
俺がそう声を掛けると同時に彼女は俺に向かって全力で駆け出してきた──
「…えっ?」
もしかして母さんや深雪が言ったように俺が襲われる…?そ、そんな事ないよな…?
彼女は俺の目の前でジャンプ…
「っ!?飛んだっ!?」
そして──
「──大変申し訳ございません!なんでもするので許して下さいぃぃぃぃ!!!」
──ジャンピング土下座を繰り出した…。
「…はい?」
何で俺は美少女に土下座で謝られてるんだろうか?
「あ、あの…と、とりあえず…立ち上がって謝られた訳を聞いてもいいかな?」
「ゆ、許してくれりゅの?」
「許すも何も…そもそもの話、俺は君に謝られてる理由が分からないんだけど…?」
とりあえず立ち上がってもらい、理由を聞く事に。
「それは──」
彼女が言うには男性の俺に下手くそな耳障りな歌を聴かせてしまったからだそうだ…。
「いやいや…何言ってるの?」
「…へぇっ?」
「耳障りどころか綺麗な歌声だと俺は思ったんだけど」
「──ふぇっ? あっ…いや…でも…私は…私の歌声は…」
俺の言葉にキョトンとして頬を赤くしたのは一瞬…すぐに彼女の表情はみるみる曇っていった。
それを見て俺の前世の記憶が呼び起こされた。
「もしかして…誰かに何か言われたりとかしたの?」
「っ!?」
何で分かったんだというような顔をしているな。まあ、前世でそれは何度も味わった俺だから分かったんだけども。
「良かったら…何があったのか話してみない?」
俺がそう言うと、彼女は暫く俯いて考え込んだ後…ゆっくりと口を開いた。
「…さっき…通知が来ていたんです…歌の…オーディションの通知です…」
オーディション…かぁ…。落ちるのは慣れてるけど…やっぱり落ちたらショックなんだよな。
「…初めて落ちたんじゃないんですっ!また落ちたんです!!もう…何度も何度も何度も…受けるオーディション全て落ちてるんですっ!」
前世の俺と同じ…だな…。
「先日のオーディションでは…『また受けたの?』とか言われるし、その前なんてっ『才能ない』とか『君にこの歌はレベルが高すぎる』とか『耳障りだ!』とまで言われてっ!!」
似てる…。そんなところまで似てるんだな。それは前世の俺が全部言われた言葉だ。
彼女の瞳から零れた涙は頬を伝い地面を濡らしていく。
『…悔しいよな…悲しいよな…分かるよ…俺も同じだったから…凄く分かる…』
でも…
君は俺とは違う!才能がなかった俺とは違い彼女には才能がある!それを分からない者がおかしいだけだ!
俺の歌なら…今の俺なら彼女を地面から高く羽ばたかせてあげられる。どこまでも高く…。
だから俺は彼女にこう告げる。
「俺は…君が欲しい」
「………ふぁっ!?」
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