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第一部
定番の…
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「お~い、神楽坂ぁ~」
「はい、何でしょうか先生?」
「コレも一緒に片付けといてもらえるか?」
「分かりました」
それは本日最後の授業を終えた時の事だ。最後の授業は体育の陸上競技だったのだが、その片付けをしている最中に優花が体育担当の先生に何かを頼まれているのを見掛けたんだ。
「優花、何か頼まれていたみたいだから俺も手伝うよ」
ソレを知ったからには勿論俺も手伝うつもりだったし、離れている時に何かあったら困るからそう声を掛けた。まあ、優花の護衛の誰かが優花の事はどこかで見守っているとは思うんだけどな。
「あ、ありがとうね♪豊和君♪」
「気にしないでいいよ。それで何を頼まれたんだ?」
「うん、コレを旧体育館の倉庫になおしておいて欲しいんだって。壊れてるけど…」
それは今日の授業で使ったハードルの一つ。ただし壊れて折れているんだけどな…。コレは捨ててもいいのではと思うのだが、もしかして修理して使うつもりなのだろうか?
「これ1個だけのようだし、俺が優花の代わりに持って行くから、優花は先に戻っていてもいいよ?」
「…う~ん。そう言ってくれるのはありがたいだけど一緒に行くわ。私が元々頼まれたんだし…と、豊和君と少しでも一緒に居たいから…」
「一緒に行くのは分かったけど…その後は何て言ったんだ?ボソボソ言われても聞こえないんだけど?」
「にゃ、にゃんも行ってないわよ!」
「そ、そうか…じゃあ向かうとするか」
「…うん」
俺と優花は旧体育館の倉庫へと向かった。物語の定番中の定番…体育倉庫に閉じ込められる事態が待ち受けるとはこの時は微塵も思ってもいなかった。
♢♢♢
「──う~んと…ここでいいんだよな?」
「ええ…聞いた限りそこで良いと思うわ。本当にありがとうね?私が頼まれたのに…」
水筒を片手に持った優花が少し申し訳なさそうにそう口を開いた。
「そう気にすんなって…別にコレくらいはいつでも言ってくれていいんだからな?変わるしさ。それに何よりここは人気が無いじゃん。こんなところに優花を一人でこさせるのはちょっとな」
旧体育館という事もあり、今ではほぼ使われていない。ゲームではイベントというかエロシーンが発生する場所だったしな…。まあ、そういうのがあったから念の為にこうして優花に付いて来たんだけど…どうやら嬉しい事にそれは杞憂に終わる様だ。
「そ、そんなに…私の事が心配なの?」
「そりゃあそうだろ」
「──っ!?ば、馬鹿っ…ホント…そういうところだからね?」
「そういうところって何が?」
「…鈍感な人には言っても分からないわよ」
「俺は鈍感じゃないが?」
「鈍感よ…それは紛れもない事実じゃない…愛も凛ちゃんもそう言うわよ?」
ぐぬぬっ!?鈍感認定されるとは… 俺はそこまで鈍感じゃあないが?
「──まあ、そんな鈍感な豊和君は置いておくとして…あそこは何かしら?」
置いておかないでもらいたいが…。とにかく優花が言った方向に視線を向ける。
「う~ん…ただの物置じゃないか?」
「倉庫の中にまた倉庫?」
そう言われると気になるな。体育館の壇上脇のドアから入った所にこの倉庫があるんだけど…その倉庫の中にもう一つ鉄製のドアがあるんだ。何でドアが鉄製なのかも謎なんだがそれは置いておくとして…。
ゲームでこの倉庫の中にドアがあるなんて情報一言も言ってなかったしな…。建て増しとか地下へと続く階段があるという裏設定か?
とりあえず今後の為にも様子も兼ねてドアが開くなら見ておいた方がいいか?
そう結論づけた俺は鉄製のドアノブに手を掛け回す。カチャッっと音がしたので手前に引くとギィギィギィっと嫌な音とともに扉が開いていく。
部屋の中は暗いが足を踏み入れ注意深く部屋の中を注視する。大体広さは3畳くらいか?窓はなく…古びて破れた体育マットが穏坐に置かれているのみ…。
「…倉庫というよりは…いらないもの置き場って感じだな?」
「うん…そうみたいね。中はカビ臭いしね?でも…何でわざわざ倉庫の中に倉庫があるんだろ?」
「建て増ししたとかじゃないか?」
最近誰かが足を踏み入れた様子もないし、そんなに気にする事はないか…?まあ、念の為にこの倉庫の存在も覚えておこうと思いながら部屋を出ようとして──
“ギィギィ…ガチャン─!”
「「…えっ?」」
急にドアが閉まった。心霊現象かよ…。まあ、こういう事もあるかと思いながらドアノブを回すと…んっ?おかしいな…
やけにスカスカしているんだが?
お……落ち着け…落ち着くんだ、俺。なんだかドアノブを回している感触が軽すぎるとしてもとにかく落ち着け。
も、もう一回ゆっくりとドアノブを回して…
スポン!
いや、スポン!じゃないんだがっ!?
同時にネジか何か分からないがカランカランと音を立てて床の上を転がっていく音が響いた…。スッポ抜けたドアノブを捨て去り、ドアを押したり引いたりしてみるが…
ビクともしない。
「…ええと…豊和君…今のは何の音だったの?真っ暗なんで早く開けて欲しいんだけど…」
「そ、そうだな…。一応聞いておきたいんだけど…さっきの音ってなんだと思う?」
「えっ?えっ…と…う~ん…何か金属のような物が床に落ちた音だと思うけど」
「…流石だな…優花…正解だ」
「あってた?まあ、それはいいとして、とりあえずこんな所に閉じ込められたらアレだし、早く出よう?」
「ああ…それなんだけどな…何と言えばいいか」
「…閉じ込められたとかベタな事じゃないわよね?」
「おっ!優花正解!」
「ふふっ…そうなのね……………………… って…ええ──っ!?ちょ、ちょっと!?ホントに閉じ込められたのっ!?」
「うん、マジ…」
「…嘘でしょ」
こんなの起こるなんて聞いてないんだがっ!?コレも色々とズレた結果だったりするのか…?ふとそんな風に思ってしまった。
さて…どうしようか…。
「はい、何でしょうか先生?」
「コレも一緒に片付けといてもらえるか?」
「分かりました」
それは本日最後の授業を終えた時の事だ。最後の授業は体育の陸上競技だったのだが、その片付けをしている最中に優花が体育担当の先生に何かを頼まれているのを見掛けたんだ。
「優花、何か頼まれていたみたいだから俺も手伝うよ」
ソレを知ったからには勿論俺も手伝うつもりだったし、離れている時に何かあったら困るからそう声を掛けた。まあ、優花の護衛の誰かが優花の事はどこかで見守っているとは思うんだけどな。
「あ、ありがとうね♪豊和君♪」
「気にしないでいいよ。それで何を頼まれたんだ?」
「うん、コレを旧体育館の倉庫になおしておいて欲しいんだって。壊れてるけど…」
それは今日の授業で使ったハードルの一つ。ただし壊れて折れているんだけどな…。コレは捨ててもいいのではと思うのだが、もしかして修理して使うつもりなのだろうか?
「これ1個だけのようだし、俺が優花の代わりに持って行くから、優花は先に戻っていてもいいよ?」
「…う~ん。そう言ってくれるのはありがたいだけど一緒に行くわ。私が元々頼まれたんだし…と、豊和君と少しでも一緒に居たいから…」
「一緒に行くのは分かったけど…その後は何て言ったんだ?ボソボソ言われても聞こえないんだけど?」
「にゃ、にゃんも行ってないわよ!」
「そ、そうか…じゃあ向かうとするか」
「…うん」
俺と優花は旧体育館の倉庫へと向かった。物語の定番中の定番…体育倉庫に閉じ込められる事態が待ち受けるとはこの時は微塵も思ってもいなかった。
♢♢♢
「──う~んと…ここでいいんだよな?」
「ええ…聞いた限りそこで良いと思うわ。本当にありがとうね?私が頼まれたのに…」
水筒を片手に持った優花が少し申し訳なさそうにそう口を開いた。
「そう気にすんなって…別にコレくらいはいつでも言ってくれていいんだからな?変わるしさ。それに何よりここは人気が無いじゃん。こんなところに優花を一人でこさせるのはちょっとな」
旧体育館という事もあり、今ではほぼ使われていない。ゲームではイベントというかエロシーンが発生する場所だったしな…。まあ、そういうのがあったから念の為にこうして優花に付いて来たんだけど…どうやら嬉しい事にそれは杞憂に終わる様だ。
「そ、そんなに…私の事が心配なの?」
「そりゃあそうだろ」
「──っ!?ば、馬鹿っ…ホント…そういうところだからね?」
「そういうところって何が?」
「…鈍感な人には言っても分からないわよ」
「俺は鈍感じゃないが?」
「鈍感よ…それは紛れもない事実じゃない…愛も凛ちゃんもそう言うわよ?」
ぐぬぬっ!?鈍感認定されるとは… 俺はそこまで鈍感じゃあないが?
「──まあ、そんな鈍感な豊和君は置いておくとして…あそこは何かしら?」
置いておかないでもらいたいが…。とにかく優花が言った方向に視線を向ける。
「う~ん…ただの物置じゃないか?」
「倉庫の中にまた倉庫?」
そう言われると気になるな。体育館の壇上脇のドアから入った所にこの倉庫があるんだけど…その倉庫の中にもう一つ鉄製のドアがあるんだ。何でドアが鉄製なのかも謎なんだがそれは置いておくとして…。
ゲームでこの倉庫の中にドアがあるなんて情報一言も言ってなかったしな…。建て増しとか地下へと続く階段があるという裏設定か?
とりあえず今後の為にも様子も兼ねてドアが開くなら見ておいた方がいいか?
そう結論づけた俺は鉄製のドアノブに手を掛け回す。カチャッっと音がしたので手前に引くとギィギィギィっと嫌な音とともに扉が開いていく。
部屋の中は暗いが足を踏み入れ注意深く部屋の中を注視する。大体広さは3畳くらいか?窓はなく…古びて破れた体育マットが穏坐に置かれているのみ…。
「…倉庫というよりは…いらないもの置き場って感じだな?」
「うん…そうみたいね。中はカビ臭いしね?でも…何でわざわざ倉庫の中に倉庫があるんだろ?」
「建て増ししたとかじゃないか?」
最近誰かが足を踏み入れた様子もないし、そんなに気にする事はないか…?まあ、念の為にこの倉庫の存在も覚えておこうと思いながら部屋を出ようとして──
“ギィギィ…ガチャン─!”
「「…えっ?」」
急にドアが閉まった。心霊現象かよ…。まあ、こういう事もあるかと思いながらドアノブを回すと…んっ?おかしいな…
やけにスカスカしているんだが?
お……落ち着け…落ち着くんだ、俺。なんだかドアノブを回している感触が軽すぎるとしてもとにかく落ち着け。
も、もう一回ゆっくりとドアノブを回して…
スポン!
いや、スポン!じゃないんだがっ!?
同時にネジか何か分からないがカランカランと音を立てて床の上を転がっていく音が響いた…。スッポ抜けたドアノブを捨て去り、ドアを押したり引いたりしてみるが…
ビクともしない。
「…ええと…豊和君…今のは何の音だったの?真っ暗なんで早く開けて欲しいんだけど…」
「そ、そうだな…。一応聞いておきたいんだけど…さっきの音ってなんだと思う?」
「えっ?えっ…と…う~ん…何か金属のような物が床に落ちた音だと思うけど」
「…流石だな…優花…正解だ」
「あってた?まあ、それはいいとして、とりあえずこんな所に閉じ込められたらアレだし、早く出よう?」
「ああ…それなんだけどな…何と言えばいいか」
「…閉じ込められたとかベタな事じゃないわよね?」
「おっ!優花正解!」
「ふふっ…そうなのね……………………… って…ええ──っ!?ちょ、ちょっと!?ホントに閉じ込められたのっ!?」
「うん、マジ…」
「…嘘でしょ」
こんなの起こるなんて聞いてないんだがっ!?コレも色々とズレた結果だったりするのか…?ふとそんな風に思ってしまった。
さて…どうしようか…。
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