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第一部
Side風鳴風花
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「…全部が全部ホントだとは思えないんだよね…」
幸の家の前で水樹と別れた後、家への帰り道の事。ふとそんな言葉が洩れてしまった。だってそうでしょう?犯されて孕まされるなんて言われても信じられる?幸の表情を見る限りは嘘は言っていないようだけど、なんか大事な事を隠してる気がするのよねぇ…。それに城咲様を頼りにしろとか言われても私達にどうしろっていうのよ…。「どうやら私は犯されるみたいなので私を守って下さい」と、伝えろとでも言うの?そんな事言ったら絶対変な女って思われちゃうわよ。
あっ…さっきの事を思い返しているともう私ん家が見えてきた。二人の家から近いし、それが当たり前と言えば当たり前なんだけどね。
あっ…
──前からこちらに向かって歩いて来る人の姿が視界に入った。近所に住んでる顔見知りのおじさんだ。確か町内の何かの役員をしていたのを覚えてる。お父さんやお母さんならもっとおじさんの事を知ってると思うけど…。
──向こうも私に気がついたみたい。
買い物に行った帰りかな?その手にはギュウギュウに物が詰まったビニール袋を抱えていて、今にも破れそうにも見える。
「こんにちは」
「こんにちは」
お互い軽く頭を下げて挨拶する。いつもこうして会っても一言二言言葉を交わすくらい。「通学気をつけて行ってらっしゃい」という言葉に「行ってきます」とか返したり「今日は暑いねぇ」とか言われたら「ホント暑いですねぇ」と返したり…。まあ、顔見知りってそんなもんだよね。
とにかく挨拶を交わしながらその場を後にしようとすると、その瞬間おじさんが持っていたビニール袋が破けてしまい、中に入っていた物が地面にバラけて転がるのが視界に入った。
「あ~あ…やっちまったな…家までは持ってくれるだろうと思ったんだが…やれやれ…」
そう言いながら地面にバラけた物を拾っていくおじさん。一人じゃ持てないだろうし、このままこの場を後にするのはちょっとね…。二人ならなんとか抱えておじさんの家までは持っていけるんじゃないかな?
「あ、手伝います」
「ごめんね、風鳴さんの娘さん。助かるよ」
「いえいえ」
物を拾い終えると私とおじさんはおじさんの家へと向かう。おじさんの家の場所は私は知らないので後ろを付いていく形だ。
「いや、ホント助かったよ。私一人じゃあ物を落とした場所から自宅まで近いとはいえ何往復かしないといけなかっただろうからね」
「気にしないでください」
「それにしても風鳴さんの娘さんも大きくなったもんだねぇ。あんなに小さかったのに…いつの間にかこんなに大きくなって…いや、ホント時が過ぎるのは早いよねぇ。もう高校生なんだよね」
「はい、高校1年になりました」
「まあ、あっという間に高校生活も過ぎさってしまうから一日一日を大切に過ごした方がいいよ…ってちょっとお節介過ぎたかな」
「いえ、そうします」
「あっ…そうそう、風鳴さんに伝えておいてよ。今月月末に町内ゴミ拾いがあるから参加できるなら宜しくって。一応その旨が書かれた回覧板は回ると思うけどね」
「はい。伝えておきますね」
道中そんな他愛もない話をしながら歩いていると…
「着いたよ。本当にありがとうね。何度も言うけど助かったよ」
おじさんの家は私の家と幸の家の中心地点から北へ少し向かった場所にある二階建ての洋風の家だった。
おじさんは荷物を一度地面に下ろしその家の玄関のドアを開けると開けっ放しに。そしてまた荷物を抱えると今度はそれを玄関の上がり口に荷物を無造作に下ろす。
「荷物はそこに置いてくれて構わないから、ちょっと待っててくれるかい。渡してもらいたいものがあるしね」
「あ、はい」
私にそう言葉を掛けるとおじさんは家の奥へいそいそと消えていく。私は言われた通りの場所にゆっくりと抱えた物を下ろし、おじさんが戻って来るのを待つ事に。
その場に立ったままおじさんが消えた方向に視線を向けていると…
ガチャリ!
ドアが閉まる音。慌てて振り返ると…
玄関のドアはすでに閉まっていて、ドアの前にはおじさんの姿…。
『何で家の奥に消えた筈のおじさんが玄関に…?そもそも何でドアを…何っ!?何が起こってっ…!?』
カチャッ!
混乱する私を傍目におじさんは私を見ながら後ろ手に玄関の鍵を閉める…。
そしてニタァっとした気味が悪い笑みを浮かべた…。
「…お、おじさん…?」
「ホントさっきも言ったけど…大きくなったよね風花ちゃん♪待った甲斐があったよ。まさに食べ頃って奴だ…。胸は大きくならなかったみたいだけどおじさんは気にしないからね」
訳が分からない事を口にしながら近づいてくるおじさん。私は恐怖からか無意識にその場から後ずさり──
「──きゃっ!? …ぁっ!?」
──玄関の上がり口に引っ掛かり後方にそのまま倒れ込んでしまった…。その時ゴンと音がして、同時に鈍い痛みを後頭部に感じた…。
その瞬間から徐々に意識は遠くなり──
「こりゃあ…手間が省けた」
──おじさんのそんな言葉を耳にしながら…そこで私の意識はなくなった…。
幸の家の前で水樹と別れた後、家への帰り道の事。ふとそんな言葉が洩れてしまった。だってそうでしょう?犯されて孕まされるなんて言われても信じられる?幸の表情を見る限りは嘘は言っていないようだけど、なんか大事な事を隠してる気がするのよねぇ…。それに城咲様を頼りにしろとか言われても私達にどうしろっていうのよ…。「どうやら私は犯されるみたいなので私を守って下さい」と、伝えろとでも言うの?そんな事言ったら絶対変な女って思われちゃうわよ。
あっ…さっきの事を思い返しているともう私ん家が見えてきた。二人の家から近いし、それが当たり前と言えば当たり前なんだけどね。
あっ…
──前からこちらに向かって歩いて来る人の姿が視界に入った。近所に住んでる顔見知りのおじさんだ。確か町内の何かの役員をしていたのを覚えてる。お父さんやお母さんならもっとおじさんの事を知ってると思うけど…。
──向こうも私に気がついたみたい。
買い物に行った帰りかな?その手にはギュウギュウに物が詰まったビニール袋を抱えていて、今にも破れそうにも見える。
「こんにちは」
「こんにちは」
お互い軽く頭を下げて挨拶する。いつもこうして会っても一言二言言葉を交わすくらい。「通学気をつけて行ってらっしゃい」という言葉に「行ってきます」とか返したり「今日は暑いねぇ」とか言われたら「ホント暑いですねぇ」と返したり…。まあ、顔見知りってそんなもんだよね。
とにかく挨拶を交わしながらその場を後にしようとすると、その瞬間おじさんが持っていたビニール袋が破けてしまい、中に入っていた物が地面にバラけて転がるのが視界に入った。
「あ~あ…やっちまったな…家までは持ってくれるだろうと思ったんだが…やれやれ…」
そう言いながら地面にバラけた物を拾っていくおじさん。一人じゃ持てないだろうし、このままこの場を後にするのはちょっとね…。二人ならなんとか抱えておじさんの家までは持っていけるんじゃないかな?
「あ、手伝います」
「ごめんね、風鳴さんの娘さん。助かるよ」
「いえいえ」
物を拾い終えると私とおじさんはおじさんの家へと向かう。おじさんの家の場所は私は知らないので後ろを付いていく形だ。
「いや、ホント助かったよ。私一人じゃあ物を落とした場所から自宅まで近いとはいえ何往復かしないといけなかっただろうからね」
「気にしないでください」
「それにしても風鳴さんの娘さんも大きくなったもんだねぇ。あんなに小さかったのに…いつの間にかこんなに大きくなって…いや、ホント時が過ぎるのは早いよねぇ。もう高校生なんだよね」
「はい、高校1年になりました」
「まあ、あっという間に高校生活も過ぎさってしまうから一日一日を大切に過ごした方がいいよ…ってちょっとお節介過ぎたかな」
「いえ、そうします」
「あっ…そうそう、風鳴さんに伝えておいてよ。今月月末に町内ゴミ拾いがあるから参加できるなら宜しくって。一応その旨が書かれた回覧板は回ると思うけどね」
「はい。伝えておきますね」
道中そんな他愛もない話をしながら歩いていると…
「着いたよ。本当にありがとうね。何度も言うけど助かったよ」
おじさんの家は私の家と幸の家の中心地点から北へ少し向かった場所にある二階建ての洋風の家だった。
おじさんは荷物を一度地面に下ろしその家の玄関のドアを開けると開けっ放しに。そしてまた荷物を抱えると今度はそれを玄関の上がり口に荷物を無造作に下ろす。
「荷物はそこに置いてくれて構わないから、ちょっと待っててくれるかい。渡してもらいたいものがあるしね」
「あ、はい」
私にそう言葉を掛けるとおじさんは家の奥へいそいそと消えていく。私は言われた通りの場所にゆっくりと抱えた物を下ろし、おじさんが戻って来るのを待つ事に。
その場に立ったままおじさんが消えた方向に視線を向けていると…
ガチャリ!
ドアが閉まる音。慌てて振り返ると…
玄関のドアはすでに閉まっていて、ドアの前にはおじさんの姿…。
『何で家の奥に消えた筈のおじさんが玄関に…?そもそも何でドアを…何っ!?何が起こってっ…!?』
カチャッ!
混乱する私を傍目におじさんは私を見ながら後ろ手に玄関の鍵を閉める…。
そしてニタァっとした気味が悪い笑みを浮かべた…。
「…お、おじさん…?」
「ホントさっきも言ったけど…大きくなったよね風花ちゃん♪待った甲斐があったよ。まさに食べ頃って奴だ…。胸は大きくならなかったみたいだけどおじさんは気にしないからね」
訳が分からない事を口にしながら近づいてくるおじさん。私は恐怖からか無意識にその場から後ずさり──
「──きゃっ!? …ぁっ!?」
──玄関の上がり口に引っ掛かり後方にそのまま倒れ込んでしまった…。その時ゴンと音がして、同時に鈍い痛みを後頭部に感じた…。
その瞬間から徐々に意識は遠くなり──
「こりゃあ…手間が省けた」
──おじさんのそんな言葉を耳にしながら…そこで私の意識はなくなった…。
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