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高等部 一年目 皐月 ゴールデンウィーク
054 GW 3日目 4
しおりを挟む**すばる視点**
「「おうっふ・・・」」
向井さんが俺達に渡した高級アパレルブランドのパンフレットの表紙はウェディングドレスを着たモデル仕様の健太だった。
亜麻色の髪をハーフアップにしてティアラで飾り、清楚系お嬢様メイク、そしてプリンセスラインのドレスを身につけている。
「彼女、シアンって名前でモデル活動をしているんですけど、このブランドのデザイナー、宇佐美凪さんの身内なので何所の事務所にも所属してないんですよ。
今上映中の城山監督の最新作の試写会で宇佐美さんと一緒にいるところでスカウトしたら、未成年で原作者のお孫さんだと教えられまして、ご両親を交えて契約の事お話しさせていただけないかと名刺を渡したんです。」
向井さんが興奮気味に捲したてる。
健太の性別が女性じゃなく男性だと言いたいのを我慢する。
健太が女装してモデルしていることは公にしていないから、勝手に正体バラすのは駄目だ。
俺と健太の母親同士がメル友で仲良しだからモデルの仕事の事は特別に教えて貰えたんだ。
対談する大手出版社に着くまで向井さんのマシンガントークは止まらなかった。
叔父さんはそれを聞き流しながら眉間にシワを寄せて難しい顔をしている。
向井さんに健太のスカウトを続行させるかどうか悩んでいるようだ。
もし叔父さんの事務所に健太が入ってしまったら、手を出せなくなるもんな。
でも、健太がずっとフリーならいいけれど、他の事務所にとられるのも嫌そうだ。
出版社に着くと出迎えてくれた編集部の人に案内されて応接室に通された。
中には雑誌の複数の編集部員やカメラマンが黒いスーツを着た女装メイクの健太に群がっていた。
健太は俺達に気付くと、ソファーから立ち上がって会釈した。
その後は編集長の仕切りで軽く紹介されて、健太のじいちゃんの作家先生──黒峯健吾氏とのツーショットを撮ったりと忙しなく、健太に声をかける間もなく対談になった。
健太の母ちゃんと颯の母ちゃんには幼稚舎の時に何度も会ったことがあるけれど、じいちゃんとは初めましてだ。
健太のじいちゃんは威厳のある厳つい系の漢前で和服が凄く似合っていて格好いい。
対談では俺の両親のことやピアノやバイオリンのこと、大会の時の心情とか葛藤とかを聞かれた。
健太のじいちゃんは話を引き出すのが巧くて、洗いざらい色々と話してしまった。
聞かれた事には素直に応じて、喜怒哀楽の表情もきちんと見せた。
健太のじいちゃんの俺への好感度、上がってるといいな。
外堀を埋めるの大事だもんな。
対談の合間にバイオリンで健太のじいちゃんが好きなバッハのG線上のアリアとかを弾いたりもした。
・
・
・
「モチベーションになった初恋の子には会えましたか?」
「はい!」
「10年ぶりに会ってどうでした?」
「綺麗で格好いいと言いますか、凛々しくて惚れ直しました。」
「ほう!」
俺は固定カメラの後ろで対談を見学している健太をチラリと見つめた。
「統計では初恋が実って結婚した人の割合は1%らしいですよ。100人中99人も実っていないんですよ。天野君の初恋は、実ると良いですね。」
そう微笑みながら言った健太のじいちゃんの目は笑っていなかった・・・
怖っ!
健太のじいちゃんの鋭い視線が、固定カメラの後方でジワジワと健太に近寄っている叔父さんを射貫いている。
叔父さん、健太のじいちゃんに敵認定されたっぽい・・・
向井さんのスカウト、門前払い決定かな?
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