【R18】一匹狼は愛とか恋とか面倒くさい

藍生らぱん

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高等部 一年目 皐月

065 忠犬は駄犬に別れを告げる

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**健太視点**

夜明け前に目が醒めた。
自分の体から、微妙に青臭い匂いが鼻につく。
すぐ側には、すぴすぴと寝息を立てているすばる。
俺が寝ている間に何かしたな・・・

少し怠いけれど動くのには障りがなさそうだったので上体を起こした。
回復力が早い強靱なαの体でなければ一日寝たきりだったかもしれない。
「・・・けんたぁ・・・」
すばるの寝言にビクリと肩が震えた。
「・・・」
そっとベッドから出て風呂場に向かう。
項に貼り付いていたガーゼを剥がして鏡越しに咬み跡をチェックした。
紫色に所々腫れているけれど、黄ばみがかってきているので数日で綺麗に治りそうだ。
頭から熱いシャワーを浴びて全身を洗った。

ジャージのズボンと半袖Tシャツに着替えてタオルでガシガシと髪を拭いて、首にタオルをかけたままキッチンに向かう。

米を研いで炊飯機のタイマーをセット、そして昨日セットしたままになっていたコーヒーメーカーの中の残骸を片付けて、半日程保温状態だったポットの中身を捨てて洗ってから新しく豆と水をセットした。

洗面所に戻って髪をドライヤーで乾かし、ジャージの上着を着て財布を持って外に出た。
流石にスーパーは開いていないので24時間営業のコンビニで弁当用の食材を購入して部屋に戻った。

冷蔵庫を開けると買った覚えのないプリンとゼリー、何故かレトルトのお粥まで入っていた。
「・・・すばるか、」
クスリと笑ってレトルトのお粥を一つ取り出した。

鍋に水を入れて火にかける。
戸棚から弁当箱を三つ取り出して食卓に並べてからボウルに卵を割り入れた。
卵を箸で少し解してから冷凍保存していたシラスとネギのみじん切り、顆粒だしを入れて混ぜ合わせる。
まな板と包丁を出してコンビニで買った赤ウィンナーに切れ目を入れた。
沸騰した鍋にレトルトを入れて弱火にしてから空いているコンロにフライパンを乗せた。
耐熱皿に冷凍保存していたピーマンの肉詰めを乗せてレンジで解凍する。
解凍している間に卵焼きを作った。
次に空いたフライパンにウィンナーを乗せて焼いた。
ウィンナーの切れ目が綺麗にカールしてタコさんウィンナーの完成だ。
次は解凍が終わったピーマンの肉詰めをフライパンで焼き色を付けてからオーブンに入れた。
ピーマンの肉詰め用のソースを作り終わった頃、米が炊き上がった。
蒸らしている間、温めておいたレトルトのお粥を食べた。

弁当を詰め終わって時間を確認すると、6時少し前だった。
冷蔵庫から卵を出して、今度は甘めの出汁巻き玉子を作った。
コンビニで買った食パンの耳を切り落として辛子マヨネーズを塗り、玉子焼を挟んで一口サイズに形を整えた。

「すばる、起きろ。」
寝室に行って布団を引き剥がすと、すばるが飛び起きた。
「健太!」
抱き付こうとしたすばるをいなして襟首を掴む。
リビングのソファーに座らせて、インスタントのコーンスープとさっき作った玉子焼きサンドを並べた皿を置いた。
「これ食べたら自分の部屋に帰れよ。」
「はぁい。いただきます!」
俺はコーヒーを飲みながら、すばるが食事をする様子を見守った。
ニコニコと美味そうにサンドイッチにかじりつくすばる。
「俺、甘い玉子焼き大好き!」
玉子焼きの好み、前世と同じだな。
すばるの前世──エリオスも甘めのオムレツが好きだった。

「ご馳走様でした、健太、凄え美味かったよ!」
「すばる、」
「ん?」
「俺、好きな人が出来た。」
食べ終わったタイミングですばるに告げた。
「だから、もう昨日のようなことはしないでくれ。」
「・・・俺を・・・捨てるの?」
涙目ですばるが俺を見つめた。

「捨てるも何も俺達、付き合ってない。」
「でも、セックスしたじゃん!」
「ごめん、それは俺が悪い。」
「何で?」

間違ってた。
一番悪いのは俺だ。
八つ当たりなんかしなければ良かった。
言葉にして、信じて貰えなくても言えば良かったんだ。
そして、すばるの気持ちも、きちんと聞けば良かったんだ。
だけど、抱かれたかった。
すばるの中のエリオスに・・・

「・・・俺もだけどさ、お前も言ってないよな?」
「何を?」
「好きとか愛してるって、お互いに今まで面と向かってさ、一度も、一言も言ってない。」
「あ・・・」
「俺たち、一番大事な事、すっ飛ばしてた。」
「でも、好きだからしたんじゃん!」
「うん、好きだった。」
「何で、過去形?」
「愛してた。」
「だからっ、何で?」
「お前であってお前じゃない人を、俺であって俺じゃない女が愛してた。」
「何、言ってんの?」
「ごめん、せっかく生まれ変わったのに、記憶があるのに、俺の一番は唯一は、お前じゃない。」
「俺の一番も唯一も健太だよ? 健太だけなんだよ?」
「ごめん、すばる。」
「・・・いいよ、わかった。」
もっとごねて泣かれると思った。
けれど、予想外に冷静な様子ですばるはそう言って静かに部屋を出て行った。

「すばる・・・」
すばるが出て行った後、涙が止め処なく溢れてきた。
前世も今世も俺は、最低だ。

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