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高等部 一年目 皐月→水無月 体育祭
083 駄犬と玉子焼きサンド 1
しおりを挟む**すばる視点**
決起集会から数日後。
帰りのホームルームが終わって、1年S組担任の亮輔が教室から出て行った。
亮輔は最近、恋人ができたらしく、始終機嫌がいい。
リア充め、滅べ!
「すばる、どうしたんだ?」
「最近ずっと、元気ないよね?」
放課後になってすぐ、翔とヨシヒコが心配そうに俺を覗きこんできた。
「颯っちに絶縁された・・・」
「はぁあ?」
「天野君、なにしたの?」
「健太の弁当・・・」
「黒峯先輩の弁当?」
「颯っちの為の健太の手作り弁当、全部食ったら嫌われた・・・」
「もう、ちょっと、詳しく?」
と言ったのは翔。
ヨシヒコも一緒になって、二人して俺をじっと見つめてる。
俺は観念して事実を簡潔に話した。
「一口だけって言われたのに、あんまりにも美味すぎて、全部食った。」
「うわぁ・・・」
「謝ったのか?」
「謝ったよ。んで、学食でお詫びに好きなの奢るって言ったのに、嫌われた・・・」
「手作りのお詫びが学食じゃあ、ダメに決まってんじゃん。」
と、翔が頭を抱えながら言った。
「学食は確かに旨いけどよ、神月は黒峯先輩の弁当が楽しみだったんだろ? その楽しみ奪われて、その代りが学食って、おかしくないか?」
「じゃあ、どうすればいいんだよ?」
「手作りには手作りだろ?」
「・・・手作り・・・?」
「神月の為に心を込めてお詫びの弁当とかお菓子、作ってみたらいいんじゃね?」
「早田君、それ、いい! 天野君、作ってみたら?」
「でも、俺、料理したことない・・・」
「簡単なものでもいいんだよ、おにぎりとか、サンドイッチとか。」
「・・・でも・・・」
「練習しようよ。僕も一緒にするから、ね?」
「俺も言い出しっぺだし、協力するぞ? 俺、ゆで卵とか、玉子焼きなら作れるし。」
「早田君、凄い! 玉子焼きが作れるの?」
「委員長は作れないのか?」
「うん、玉子割ったこともないよ・・・」
「お坊ちゃんかよ・・・」
「・・・玉子焼きサンド・・・」
「ん?」
「前に健太が俺に作ってくれたんだ。でも、その時、振られたんだけどね・・・」
「お、お前、黒峯先輩にも振られてたのか? ストーカーがバレたのか?」
「違っ、」
「「・・・・・・」」
可哀相な子を見るような目で俺を見る二人・・・
もうこの際、洗い浚いぶちまけて相談に乗ってもらおうかな?
「・・・健太、好きな人ができたんだって・・・だからさ、颯っちと健太の好きな奴の荒探しして、ぶっ潰そうと思ってたのに・・・うぐっ・・・颯にまで嫌われたら、健太と復縁できない! ・・・なあ、どうしたらいいと思う?」
「そんな物騒なことも考えてたのかよ・・・」
「そんな事しても黒峯様に嫌われるだけだよ? 天野君、目を覚まして!」
「そうだよ、神月をそんな物騒な事に巻き込むんじゃない! 親衛隊の皆様に殺されるぞ?」
「本当に黒峯様の事が好きなら、黒峯様の幸せを一番に考えよう?」
「健太の幸せ・・・?」
「そうそう!」
健太の幸せは俺の番になること。
それ以外は認めない。
「とりあえず、神月との仲直りが先決だ! 神月と気まずいままだと黒峯先輩との関係改善は不可だ!」
「うん、俺、玉子焼きサンド作りたい。健太の味の・・・」
***
俺とヨシヒコ、翔は寄宿舎に併設されているスーパーで卵と食パンを買って、翔の部屋で玉子焼きサンドを作る練習をすることにした。
まず、翔がぐちゃぐちゃの玉子焼きを作って見せてくれた。
それを食パンに挟んで味見。
「・・・なんか、別々に食べた方がいいな・・・」
翔が溜息を吐きつつ、水を飲む。
「パンに何か塗った方がいいんじゃないかな?」
と、ヨシヒコ。
うん、俺もそう思った。
「塗るとしたら、マヨとかマーガリン、バターとかか? すばるはどう思う?」
「・・・甘さが足りない・・・」
「ん?」
「健太の玉子焼きサンドはもっと甘かったし、ぐちゃぐちゃしてなくて柔らかくて、ジュワッってしてた。」
「もしかして出汁巻か? それに玉子焼きの砂糖の量も増やさないとダメってことか? 砂糖増えると焦げやすくなるんだよな。それに出汁巻は作り方がわからん!」
「料理初心者だけで考えるのにも限界あると思うから、誰か得意な人に相談しない?」
「家庭科の先生とか?」
「家庭科の先生は女学院がメインだから、来るの月火水の午前中だけじゃなかったかな?」
「それだったら、陸上部の先輩に料理とかお菓子作るの趣味な先輩がいるぞ。でも・・・」
「でも?」
「風紀委員なんだよな・・・」
「風紀・・・京夜の舎弟か?」
「舎弟かどうかは知らんけど、副委員長の山野さんな。」
「ああ、山野さん・・・教えてくれるかな?」
「ダメ元で聞いてみる。」
**翔と山野の会話**
「もしもし~」
「お疲れ様です、山野さん。早田です。」
「珍しいね、どした?」
「あの、実は友達の天野の事なんですけど、」
「颯君をゲキオコさせた天野すばる?」
「あ~、はい、その天野です。その天野がですね、神月にお詫びとして玉子焼きサンドを作りたいそうなんです。でも、」
「でも?」
「黒峯先輩の作った玉子焼きサンドが基準らしくて、俺の手には負えなくて・・・誰かに相談してみようって事になりまして・・・」
「それで、俺?」
「はい、山野さん、料理とかお菓子作るの上手いですし。」
「うん、健太に出汁巻玉子焼きサンドの作り方教えたの俺だから、人選間違ってないよ。」
「え! マジっすか?」
「マジマジ。」
「あの、俺と天野と牧島の三人なんですけど、ご教授願えますか?」
「いいよ。」
「いいんですか?」
「うん、ヘタに変なの作られて、颯君のお腹壊されたら困るし。」
「ははは・・・」
「で、健太に教えたレシピの指導でいいのかな?」
「はい、それでお願いします!」
「ホントにそれだけでいいのかな?」
「はい、よろしくお願いします。」
「じゃあ、今度の土曜日の9時頃に俺の部屋においで。」
「はい、ありがとうございます。では、土曜日にお邪魔します。失礼します!」
**風紀委員会室サイド**
スピーカーにしていた電話を切った後、山野は
「颯君、出汁巻玉子キライなんだけど、いいのかな?」
と、呟いた。
「颯君は黒コショウ入りの少しピリッとしたゆで玉子サンドが好きなんだよね。そっちの方が簡単で喜ばれるのに、リサーチしない方が悪いよね?」
「すばるが食ったのは特別甘めに作ったやつだから、甘さ控えめで教えてやれよ?」
と言ったのは、風紀委員会室で颯の見廻り当番が終わるのを待っている部活帰りの健太。
「もちろん。あ、でもビシバシ料理指導するの楽しみ~」
───────────
余談
颯は風紀委員で見廻りする時は三人編成で行ってます
京夜と行ける時は二人で行ってます
普段、颯は一人で学園内を自由行動していますが、GPS付のチョーカー型ネックガードと小型通信機付けて、防犯グッズを複数持ち歩いてます
お昼寝する場所には防犯カメラが複数設置されています
健太は基本的に颯の交友関係に口出ししないので、大和とすばるとの付き合いに関しても見守るだけです
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