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高等部 一年目 皐月→水無月 体育祭
082 剣道部の日常 弐
しおりを挟む**千葉視点**
黒峯は剣道部最強の剣士で最愛の姫。
俺や林原、レギュラー陣と部員の大半は幼稚舎時代の黒峯が初恋だった。
少しでも長く一緒にいたくて、黒峯が通う道場の習い事を一通り体験して剣道に落ち着いた。
一緒に体験した奴等は柔道とか空手に落ち着いた者もいる。
今は黒峯の強さに心酔して、恋愛感情抜きに忠誠心を向けている奴も多い。
本当なら黒峯は個人戦で全国制覇できる実力がある。
でも、黒峯は選手の替えのきく団体戦しか出ない。
黒峯にとって剣道の優先順位は高くない。
去年、黒峯は顧問に拝み倒されて、個人戦でインターハイまで行ったけど、準決勝で棄権した。
応援席にいた神月が他校の生徒にしつこく絡まれてたのにブチ切れて、神月連れて帰っちゃったんだよね。
そのことで神月を責める部外者の奴らもいたっけなぁ・・・
でも、悪いのは他校の奴で、神月は被害者で悪くない。
そのせいで黒峯退部の危機が勃発したりで、去年は大変だった。
神月が高等部に上がる前に城山先生が率先して動いてくれて、黒峯に心酔してる部員と狗遠寺の舎弟の中から神月の親衛隊が結成された。
黒峯を一回り小さく、幼くしたような容姿の神月はマッチョ系の大男らの庇護欲を掻き立てるらしく、黒峯推しの高等部のマッチョ四天王全員が親衛隊入りしてた。
神月は親衛隊員に「仔犬」と密かに呼ばれ、黒峯に次ぐ推しとなった。
実は俺も神月の親衛隊員なんだよ~
ヒラだけど、黒峯の役に立ちたくて、入隊試験頑張った!
お陰で名前も憶えて貰えたし、気軽に話もしてもらえるし、仔犬は可愛くて見守り甲斐あるし、毎日充実してる。
だから、推しの黒峯のためなら、俺は新人の監視でもなんでも頑張るのだ!
***
今日も黒峯が面を付けるタイミングで乾君を走り込みに行かせたマネージャーたち。
一人で走らせるのも可哀そうなので、俺も最近、乾君と一緒に裸足で走ってる。
俺は重し背負わないから、道着だけで身軽だけどね。
時々、走り込み用の遊歩道の整備をしてる園芸部とか美化委員の子たちが「がんばれ~」って言ってくれるんだよね。
もちろん我らが仔犬も。
でも、仔犬が乾君のこと「レッド」って呼んで、物凄くキラキラした目で応援してるのはちょっと妬ける。
「千葉さん、最近、俺、体力づくりの時間、長くないっすか?」
走り終わって、道場の出入り口前の水場で、息を切らしながら、流暢な日本語で、乾君が言った。
ワザと片言で話すの、面倒になったのかな?
キャラも何か、いい子ちゃんキャラからチーマーっぽくなったし。
「だって、乾君、スタミナ無いじゃん。」
「俺、早く打ち込みとかしてみたいっす。」
「校庭10周、30分以内になったらね。」
「こんな重し無ければ楽勝なのに・・・」
乾君は座り込んだまま重し入りのリュックを脱ぐと、ジャージの上着も脱いで、佐々木君が用意してくれたタライの水に足を浸した。
俺は別のタライに足を浸して、手ぬぐいで足裏の汚れを落とした。
「レギュラーは乾君と同じ条件下で20分以内で走れるよ。僕もこう見えて、20分で走れるんだよね。今は君に合わせてゆっくり走ってるだけだから。」
「くぅ~!」
「今の状態でかかり稽古に入ったら、君、5分も持たないよ? 簡単そうに見えるかもしれないけどさ、防具だけで四キロ以上あるからね。レギュラー陣はさらに重しつけて稽古してるんだよ?」
「うぇ~・・・」
「生半可な気持ちならさ、辞めた方がいいよ。」
「生半可では無いです。俺、殺陣師の免状習得が目標だし。」
「殺陣師になりたいの?」
「いえ、役者です。アクション俳優。」
「へぇ・・・それなら剣道部より演劇部の方が良かったんじゃない?」
「演劇部だと黒峯倒せないじゃないっすか。」
「・・・因みに、何で黒峯を倒したいの?」
「・・・俺の兄さんが・・・」
そう言って乾君は項垂れた。
「乾君のお兄さん、黒峯のファンなの?」
「かなり、入れ込んでて、目を覚まさせたいんですが、無理そうで・・・だから、一矢報いたくて・・・」
「ソウナンダ・・・」
乾君、ブラコンだったんだね・・・
「あれ、大和と千葉じゃないか。どういう組み合わせ?」
そこへ城山先生がやって来た。
城山先生は黒峯の幼馴染でシアンの専属カメラマンで、父兄のような保護者のような立ち位置の人だ。
うちの顧問の藤原先生の後輩で、剣道の有段者でもある。
今日は黒峯のお迎えかな?
「兄ちゃん!」
「「「「「は!?」」」」」
ちょっと、待って、城山先生が乾君のお兄さん?
苗字違うのに?
俺だけでなく、近くで洗い物をしていたマネージャー達の手も止まった。
「俺、剣道部に入部したんだ!」
「殺陣の勉強なら演劇部でもできるのに・・・」
「だって・・・」
「お前、健太に何かしたら、わかってんだろうな?」
「正々堂々、勝負するなら問題ないだろ?」
「百年早いよ・・・健太の実力も知らないで・・・」
「だって・・・」
「千葉、弟が面倒かけるな。」
「いえ、あの、兄弟なんですか?」
「ああ、半分な。それより、健太は中か?」
「はい、そろそろ稽古終わってシャワーしてると思います。」
「そうか、ありがとう。」
城山先生はいそいそと道場の中に消えた。
半分、ってことは片親が違うから、苗字も違うのかな?
「・・・・・・」
「くそっ!」
乾君は嫉妬心丸出しで悪態をつく。
「なんで、あんな奴に・・・!」
「黒峯はいい子だよ?」
「俺は、嫌いです。」
「・・・無理に好きにならなくてもいいけどさ、うちの部は黒峯推しが多いから、滅多なことは言わない方がいいよ。」
「推し?」
「ファンね。うちの部で一番強いし、綺麗でカッコいいからさ。俺も黒峯推しだからね~」
「千葉さん、見る目ないっすね・・・」
「え~、君にだけは言われたくないなぁ・・・」
取り敢えず、乾君が城山先生の弟だったことは、その日のうちに剣道部員全員に周知させた。
────────
余談
城山は高等部時代、演劇部で生徒会会計
殺陣の関係で剣道の段位もとっていたので、1年生の時、部員が少なかった剣道部の団体戦に助っ人していた
助っ人で出た全国大会の団体戦は優勝している
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