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まつろわぬ番・裏 V視点
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しおりを挟むオメガは汚くて卑怯な生き物だ。
フェロモンの匂いでアルファを狂わせる悪魔。
オメガのせいで俺は穢された。
たくさんのオメガとベータに前も後ろも犯されて、俺は壊された。
カウンセリングを受けても、どんなに強い抑制剤を飲んでも衝動が収まらない。
犯された分だけ、いや、それ以上誰かを犯さないと元に戻れない。
そんな強迫観念に囚われて、寄宿学校では爛れた生活を送った。
表向きは最高位のアルファにふさわしい品行方正な学生を装い、成績もトップを取り続け、両家の子女のアルファの取り巻きに囲われて、裏では家が用意してくれたオメガやベータを好き勝手に抱いた。
けれど、同じアルファの女を抱いても、ベータやオメガの男女を組み敷いても悪夢は終わらなかった。
「君、大丈夫?」
人気のない裏庭の木陰でひとりで丸くなっていると、誰かがそう声をかけてきた。
「具合でも悪いの?」
薄目を開けて声のする方をみれば、同じ学年のカラーである赤いネクタイをした綺麗な少年が心配そうに俺を見ていた。
彼の綺麗な顔と清廉そうな佇まいに、俺は思わず見惚れてしまった。
「・・・寝てただけだから。」
「そう、でも雨が降りそうだから部屋に戻った方がいいよ。」
彼はそう言うと振り返りもせずに去って行った。
振り向いて欲しい。
彼の背中を見送りながらそう思った自分に驚いだ。
そして、彼が言った通り、ポツリと雨が落ちてきた。
俺は走って寄宿舎へ戻った。
不思議なことにその日の夜は、一人でも悪夢を見ることなく、ぐっすりと眠れた。
同じ学年でもクラスが違えば接点は殆どない。
けれど一度認識すれば、いつも目で追ってしまっていた。
彼は俺とは別の意味で人気がある成績優秀者だった。
全体的には10位以内の常連だったけれど、理系だけなら俺と並ぶTOPの成績だった。
彼の名前は、アーサー・リチャード・バーンスタイン。
金茶の髪にアースアイのような青みがかった琥珀色の瞳は神秘的で、その瞳に俺だけを映して欲しいと焦がれるのに時間はかからなかった。
アーサーは俺と違って汚れていない。
見た目も人柄も、美しく穏やかで洗練されていた。
始めは、ただ見ているだけで満足だった。
けれど、アーサーの友人たちは陽気な連中が多く、アーサーに対するボディタッチが多いのが不快だった。
どうにかして仲良くなりたいと思ったけれど、どうやって声をかけたらいいのかがわからなかった。
言葉もタイミングも見つからないまま、ただ時間だけが過ぎていった。
Sixth Form (高校2年生~3年生)に進級したころ、アーサーの両親が事故で亡くなった。
アーサーの両親は世界的に人気があるロックバンドのメンバーで、誰もがその死を惜しんだ。
悲しみで塞ぎがちになったアーサーを彼の友人たちはより一層守るように囲い、他の学生たちにお悔やみの言葉さえかけるスキを作らなかった。
クリスマス休暇の頃、帰省する生徒たちであふれていた寄宿舎のロビーで、アーサーが友人たちと一緒に話しながら、保護者が迎えに来るのを待っていた。
和気あいあいとしたアーサーたちを横目に、俺はスマホを見てるふりをしながら彼らの会話に耳を傾けた。
「アーサーは進路きめた?」
「うん、俺は医者になるつもり。」
「音楽じゃないんだ?」
「音楽は親が凄かっただけで、俺には才能無いよ。」
「でも、ピアノ弾けるじゃん。」
「ただの趣味だよ。エイベル、君だってヴァイオリン弾けるだろ?」
「俺はコンクールで優勝してくる!」
「がんばれ~」
「まだ親来そうもないし、俺と合奏しようぜ。」
「あ、俺聞きたい!」
「僕も~」
アーサーたちはロビーにあるグランドピアノの方へ行ってしまった。
アーサーの伴奏で、パガニーニの24のカプリス第24番の演奏が始まった。
ヴァイオリンのエイベルとかいう奴は「コンクールで優勝」とか言うのも納得のすばらしい腕前だった。
アーサーも才能無いとか言いつつも、ヴァイオリンの音に遜色の無い演奏だった。
アーサーも、アーサーの友人たちも楽しそうで、俺は面白くない。
なんで、アーサーの隣に俺がいないのか・・・
自分からアーサーに話しかける勇気もないことを棚に上げて、俺は嫉妬で狂いそうだった。
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