まつろわぬ番【完結済・番解除した僕らの末路シリーズ】

藍生らぱん

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まつろわぬ番・裏 V視点

幕間 L視点

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帰りの車の中で、僕たちは珍しく無言だった。

アーサーの番とあんな風に出会うとは思わなかった。

僕をアーサーと勘違いして、逃がすまいと威圧を放ってきた大人のアルファはとても怖かった。
でも、相手の人の感情が何となく僕には共感できる部分もあったから、怖かったけれど、僕はあの人を嫌いにはなれなかった。

アーサーは自分で気づいているのか、気づかない振りをしているだけなのかわからないけれど、あの人の言い分を怒ってはいたけれど、嬉しそうでもあった。

その辺の複雑な感情は「アルファ」特有の番への独占欲とか執着心が関係しているのかもしれない。

アーサーはきっと待っていたんだ。
あの人がアーサーの前に平伏ひれふして許しを請うことを。
そしてひたすらに愛を乞うことを。

あの人、ヴィクトールって名前だったかな?
見た目は大人で強いアルファみたいだったけれど、中身は僕よりも小さい子供みたいで頼りなく見えた。

僕は何となく、ヴィクトールを応援したい気持ちになっていた。


僕は小さいころからアーサーが大好きだった。
それが恋だと気づいたころ、アーサーに番がいることを知った。

オメガの判定が出た時、アーサーがうなじの咬み痕を見せてくれたことがあった。

「たとえどんなに仲がいい友達からでも、飲み物は受け取っちゃいけない。」

アーサーから聞かされた話は衝撃的すぎて、その日は眠れなかった。

アーサーは友達に裏切られて、憧れていたアルファに「ビッチング」されて「番」が成立してしまった。
それで僕のお父さんに助けを求めて保護された。

お父さんがバース性の専門医で研究者だったのは幸運だったとアーサーは言っていた。
お父さんは「番成立」や「番解除」「ビッチング」のメカニズムを研究しているから、アーサーからSOSが来た時にすぐに自分の代理人の弁護士さんを派遣して、アーサーを日本へ連れて来させた。
オメガ化が完了する前に距離を離して接触を断てばオメガ化は止まるし、番の「絆」も薄れるから。


「アーサー、今日はうちに泊まって!」

車が家に着いて、車庫から家の方へ歩きながら僕が言うとアーサーは「泊まりたい」と言ってくれた。

「久しぶりに川の字になって寝ようよ。」

アーサーが日本に来た時、悪夢で魘されるアーサーを心配して、みんなで一緒の部屋で川の字になって雑魚寝したことを思い出した。
お父さん、アーサー、僕、お母さんの並びで、悪夢のことを何も知らなかった僕は楽しくて色んなおしゃべりをしたり、歌を歌ったりした。
たまに日本にいる従兄弟たちが遊びに来て泊るときは、誰がアーサーの隣で寝るかで揉めたこともあった。

「ルイ、寝る時にいつものやつ歌ってくれる?」
「もちろん。」

家に入ると、珍しくお父さんが先に帰っていて、出迎えてくれた。
「アーサー、今日は泊まりなさい。久しぶりに川の字だ。」

僕とアーサーは思わず顔を見合わせて笑った。

「じゃあ、叔父さんとルイで子守歌デュエットしてもらおうかな。」

その日の夜はデュエットだけでなく、みんなでコーラスもした。
久しぶりに楽しい夜だった。



─────────
余談

叔父さんはウィリアムから電話を貰って急いで帰ってきました。

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