まつろわぬ番【完結済・番解除した僕らの末路シリーズ】

藍生らぱん

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番外編 番解除した僕らの末路・裏

前日譚 But still, I'll live

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**A視点**
 
ルイが20歳の誕生日を迎えた頃に、がんが再発した。

「手術はできない。危険すぎる。」

検査の結果、腫瘍の位置が外科手術で取り除くのが難しい位置にあり、生命維持活動に支障がでる可能性が大きいからと、放射線と投薬を中心に治療をするか、緩和ケアを受けるか、この二つの方法しか残されていなかった。
そしてルイは最悪の場合を想定され、ウィリアムから余命一年の宣告を受けた。

「治療するかどうか決めるの、一週間だけ待ってくれる?」
今後の方針を家族で話そうと、叔父の家に呼ばれた。
そこで思いつめた表情のルイにそう切り出された。
「どうして?」
「どっちにしろ、あと一年しかないなら、自分の足で歩けるうちに日本を旅行してみたい。昔通ってた学校とか、住んでた家とか見たいし、藤原のおじいちゃんとおばあちゃんのお墓詣りもしたい。伯母さんたちや従兄弟たちにも会いたい。」
「しかし・・・」
「お願い。僕、一人で行けるから、大丈夫だから・・・」
「わかったわ。」
三人のやり取りを黙って見つめていると、叔母さんがルイの意思を支持した。
「叔母さん?」
「ルイに後悔して欲しくない。」

そうだ、ルイに残された時間は一年しかないんだ。
動けるうちに、悔いのないように・・・
心配ではあるけれど、日本にいる叔母さんの姉夫妻は医者だし、ルイもみんなに心配かけないように無理はしないはずだ。

「・・・そうだな。ルイ、毎日健康観察と報告、忘れるな。」
叔父さんも叔母さんの言葉に決心がついたようだ。
「うん。」
「玲子姉さんにも連絡しておくから、何かあったら頼りなさい。」
「うん。」
「ホテルはお父さんがいつも学会の時に泊ってるところに予約を入れるわ。あそこのスタッフはみんな優秀でとても親切だから気持ちよく過ごせるはずよ。」
叔母さんはそう言ってテキパキとフライトやホテルの予約を入れていった。


「じゃあ、行ってきます!」

時間が運よく空いたので、空港までルイを送ることができた。
ルイは元気よく手を振って、搭乗口に向かっていった。



**L視点** 

がんが再発して、手術はできないとウィリアム先生に言われた。
そして、このまま何もしなければ余命は一年だとも・・・

僕にはふたつの選択肢が残された。

治療を受けるか受けないか。

受けなければ一年で死ぬし、受けても一年以上生きられるかどうかわからない。

前の時、手術と治療はとても苦しくて痛かった。
でも、治ると信じて頑張ったんだ。

今度はもう、治らない。

それなら痛いのも、苦しいのも嫌だ。

まだ、自由に動けるうちに日本に行きたい。

日本に住んでいた頃はとても楽しかった。

藤原の祖父母の家の広い畳の部屋で、夏は従兄弟たちとみんなで川の字になって寝たり、スイカ割とか、花火もした。
季節ごとのイベントも多かったけれど、宗教に関係なくクリスマスやバレンタインを楽しむ独特の考えがあって、それも面白かった。


「おじいちゃん、おばあちゃん、久しぶり。」
日本に来て、僕は真っ先にお墓参りをした。
お墓を拭いて、お花を供えて、お祈りをした。

写真をとって、お母さんとお父さん、アーサーに報告してからホテルに向かった。

ここのホテルは有名な芸術家さんの定宿で、彼の作品が展示されているコーナーがあるんだ。
前に家族で泊った時に見た海辺の町の景色の絵がとても綺麗だった。

お母さんが予約してくれた部屋はシングルだったけれど、グレードがいい部屋らしく、ベッドは広めでお風呂も広かった。
泊る部屋のルームツアーの動画を撮って、お母さんたちに送った。
時差が9時間あるから、そろそろ起きて朝ごはんの頃かな?

『おはよう。僕はアフターヌーンティーを食べに行ってきます』

というメッセージを追加で送った。

エレベーターに乗ってドアを閉め、レストランがある二階のボタンを押した。

予約していたおかげで結構見晴らしのいい席に案内された。
アフターヌーンティーの写真ももちろんみんなに送ったよ。

『今日はもう休んで、明日は玲子伯母さんの家に行ってきます』

翌日、コンシュルジュさんにタクシーを手配してもらって、玲子伯母さんの住む家に向かった。
今日は休日だから従兄弟たちもいるはず。
伯母さんの子供たちは男ばかりの三兄弟で、年は離れているけれど仲が良い兄弟なんだ。
会うのは一年ぶりくらいだから、楽しみだ。

「ルイ!」
タクシーから降りると、家の門の前によっちゃんがいた。
よっちゃんは三人兄弟の末っ子で、小学生なんだけど、僕より背が高くなっていた。
ぎゅうってハグされたので、抱きしめかえしてほっぺにキスをした。
「よっちゃん、また背が伸びたね。」
「165センチ!」
ドヤ顔で言われた。
「早く入って!」
「うん、お邪魔しまーす!」
よっちゃんと一緒に中に入ると、藤原家が全員そろっていた。

玲子伯母さんとそのお婿さんの樹一郎きいちろう伯父さん。
長男の景虎くんは大学四年生。
次男の幸村くんは高校二年生。
そして、よっちゃんこと三男の良経よしつねくんは小学6年生だ。

それぞれに挨拶をして、席に着くとよっちゃんがべったりとくっついてきた。
相変わらず、甘えん坊さんだなぁ。
「ルイ一人かぁ・・・」
景虎くんは僕の背後にアーサーがいないので不満顔だ。
アーサーが僕たち家族と日本に住んでた頃、景虎くんはアーサーに一目ぼれしちゃったんだよね。
「アーサーは忙しいから来れないし、」
「残念~」
「それに、彼氏できたから、諦めた方がいいよ。」
「うそだろ・・・」
「彼氏の写真見る?」
僕はみんなに見えるようにヴィクトールの画像をスマホの画面に出した。
「やだ、凄いイケメン!」
と叫んだのは幸村くん。
幸村君はニヤニヤと笑いながら景虎くんのビックリした顔を見ていた。
「ヴィクトールって言って、伯母さんと同じ薬学博士なんだ。玲子伯母さんの論文のファンだよ。」
玲子伯母さんは医師をしながら薬学の博士号も取っていて、アルファやオメガの抑制剤の研究をしているんだ。
「まぁ!」
ついでに二人で写ってる画像も見せたら、景虎くんはがっくりと項垂れてしまった。
アーサーもだけど、ヴィクトールも綺麗系だから、二人が並ぶと耽美の世界で、他を寄せ付けない雰囲気があるんだよね。
「ルイ、ルイもこういうのが好きなの?」
よっちゃんがヴィクトールを指さして聞いてきたので、僕は首を横に振った。
「僕はよっちゃんみたいに、優しくて紳士な人が好みだよ。」
「ふふん。」
よっちゃんは得意げに景虎くんと幸村くんを見やった。
「ルイ、俺アルファだったからさ、俺が大人になったら番になろうな?」
「・・・うん、そうなれたら素敵だね。」

お昼は玲子伯母さんの手料理をごちそうになった。
お母さんと同じ味だから、とても美味しいしホッとする。
そのあと伯母さんたちは、勤め先の宿直があるからって出かけてしまった。

帰りは景虎くんが運転する車でホテルまで送って貰った。
「今度はみんなで会いに行くから。」
よっちゃんの言葉に「待ってるね。」と言って手を振った。
「またな。」
「ありがとう、またね。」
景虎くんの車が見えなくなるまで手を振った。

次に会える時、僕は自分の足で立って歩けているだろうか。
みんなの顔を見て、声をきくことができているだろうか。

残された時間は決まっているのに、不安なことばかり大きくなる。

それでも、生きていくんだ。
最後の日まで。

最後に、みんなに幸せだったよって、ありがとうって言う為に。

みんなには笑顔の僕の顔だけを思い出してほしいから。

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