転生したら聖女の守護霊だった〜俺を精霊としか思ってない聖女の行動が危なっかしくて困る〜

かもめ

文字の大きさ
12 / 35

第11話 シュレイグでの任務と作戦会議

しおりを挟む
「お歴々、よく集まってくださった」


 司教のじいさんは言った。場所は講堂。大聖堂の建物の一室。要は会議室のようなところだろう。会議室にしては壁や天井の装飾があまりに壮麗だが。

 壇上の司教の前には10人の聖女たち。その中にいるのが俺とエリスだった。一般人には見えないのだろうがその聖女全員の後ろには守護者が控えている。


「今回呼び出された理由についてはもうご存知のことと思うが」

「シュレイグでの大規模な任務のことですね」

「その通りだ」


 ディアナの言葉に司教のじいさんは答えた。

 司教のじいさんはかなり神経質そうな顔だった。失礼ながら笑顔が想像できないようなじいさんだ。この前会話しているエリスとディアナを睨んでいたじいさんその人だった。


「聖女をこれだけ集めるほどの任務。どういったものなのですか。モンスターの討伐ならともかく、場所は市街地です」


 言ったのは美しい銀の髪の女性だった。


「アルメア殿の言う通り。これはモンスターの討伐のようないつもの任務ではない」

「では、どういった」

「お歴々にやっていただくのは堕ちた聖人の捕縛だ」

「聖人の捕縛?」


 ディアナの言葉とともに一斉に全ての聖女がざわついた。


「なんだ? 聖人って」


 聖なるお兄さん的な話なのか。


「守護者を呼ぶのは基本的に女性ですが、やはり男性に聖痕がある場合もあるんです。つまり、守護者を呼んだ男性ですね」

「なるほどぉ」


 つまり、エリスの同業者ということか。

 だが、捕縛とは? そもそも堕ちたとは?


「今のラグナル王に変わってから、教会から出奔した者はいなかったはずですが」


 ディアナは言う。


「他国から来た男だ。デラポアの出だと聞いている。名はエンリケ・オーハイム。各国で犯罪行為を働いては渡り歩く男だ」

「エンリケ、聞いたことがあります。クロイツェンでは確か聖女を殺している」

「そのようだ。これといった目的がある男ではない。ただ、その日を暮らすために守護者の力を用い、恐喝や強盗、裏世界の用心棒などを行なっている」

「なるほど、犯罪内容自体は小悪党といった感じですか」

「だが、用いているのは守護者だ。この男に何人も殺されている。その力を盾に銀行だろうが、貴族の宝物庫だろうがお構いなしで襲撃する。これは紛れもない女神への冒涜だ」


 司教のじいさんは実に忌々しそうに言った。元々不機嫌そうな顔がますます不機嫌そうになった。

 なるほど、要するにとんでもない重犯罪者なのでそれを捕縛しようということなのか。

 警察のような仕事だが、相手が同じ守護者を従えている以上、教会の領分になるということか。


「その男をここにいる全員で捉えるのが任務ということですか」

「その通りだ。エンリケは人間性は小悪党そのものだが、起こしている犯罪の規模が大きい。守護者も強力なようで各国の教会も手を焼いているようだ。そういったことから、我が国へ直接捕縛の依頼をしてきた国もある。これは我々だけの任務ではないということだ」

「なるほど、王族のメンツにも関わっているということですか」


 ディアナの言葉に聖女たちは再びざわついた。


「お国の絡みの仕事ってことか」

「思った以上に大きな任務ですね。ディアナお姉様とアルメア様が同時に関わる任務なんて滅多にないから不思議に思ってたんです。そういうことだったんだ」

 俺の言葉にエリスは答える。

 なるほどこの国の聖女の顔とエリスが言ったディアナとアルメアが一緒に居た時点で仕事の規模はある程度測れたということか。


「静粛に。ここに呼んだお歴々は国を跨いだ仕事もいくつもこなしている実力者ばかりだ。気負うことはない。ただいつものようにこなせば良い」

「あの、私は本当にここに居て良いんでしょうか.....」


 そこでエリスが恐る恐ると言った感じで口を挟んだ。

 確かに、昨日表彰されたとはいえ、今言われたような実績はエリスにはない。

 ない以上不安になるのは当たり前だ。


「第6聖女エリス」


 そんなエリスに司教のじいさんはいかつい表情で言った。

 やめろ、エリスをビビらすな。


「は、はい」

「はっきり言って貴殿がこの任務につくだけの実績があるとは私は思っていない。時期尚早、そう思っている」

「は...はい.....」

「だが、大神官様直々の申し付けなのだ。貴殿は期待されている。それに報いることだけを考えよ」

「は、はい!」

「とはいえ、前線に立たせる気はさらさらない。後方から先輩の聖女たちを支援し、どのように働いているかよく学ぶように。以上」

「あ、ありがとうございます!」


 厳しい口調で淡々と司教はそう告げた。

 つまり、実力が伴っていない分、今回は見習いとして作戦に参加させるが、期待されているからちゃんと働け。そういう話らしい。

 そんなに悪い話でもないのではないか。

 後方なら危険も少ないであろうし。仕事の勉強にはこの上ないように思える。

 それから司教のじいさんは任務の詳しい説明を始めた。


「で、できるでしょうか、私」

「大丈夫だろう。後方支援という話だし。頼りになる先輩もいっぱいいるじゃないか」

「そ、そうですよね! よ、よーし、がんばるぞー!」


 エリスは小さくガッツポーズをする。


「第6聖女エリス」

「は、はい! すいません!」


 そして、それを咎められたのだった。

 なんだ、このじいさんめ。エリスが自分を奮い立たせてるところだろうが。心が狭いんだよ。

 だんだんこの司教の顔が生前のむかつく上司と重なってくる俺だった。

 そして、仕事の説明が続き、朝から始まったこの会議は正午を前にして終わったのだった。

 そして最後に、


「では最後にお祈りを。女神の加護があらんことを」

「女神の加護があらんことを」


 みんなで手を組んでお祈りをしたのだった。

 荘厳な雰囲気だったが、俺は昨夜みんなが祈る女神に、安眠を激しく妨害されたので複雑な気分だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

最強お嬢様、王族転生!面倒事は即回避!自由気ままに爆走しますけど何か?

幸之丞
ファンタジー
転生したら――まさかの王族。 豪華な生活は大歓迎だが、政治?儀式?婚約? そんな面倒事、わたしには無理! 「自由に生きるわ。何が悪いの!」 そう考えた主人公エリーゼは、王家の常識を軽々とぶっ壊しながら、 好きなことだけを全力で楽しむ“自由至上主義”の王族ライフを爆走する。 だが、面倒事から逃げているはずなのに、 なぜか家族は勝手に主人公を「天才」「救世主」と勘違いし始め―― 気づけば女神も巻き込む大騒動に発展していく。 面倒は回避、自由は死守。 そんな主人公の“予測不能な王族生活”が今、幕を開ける。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

転生したら最強賢者だけど、村人と思われたので好きに生きます ~気づけば聖女も勇者も跪いていた~

eringi
ファンタジー
戦場で散った青年リオは、異世界の辺境で「ただの村人」として転生した。だが、彼のスキル「思考加速」は世界最上位のチート。薬草を摘むだけで奇跡を生み、魔物を追い払えば伝説級。世界の英雄たちが“隠者の賢者”を追い求める中、本人は今日も平和な日常を満喫する――。 無自覚最強×ハーレム×ざまぁ要素満載の、痛快異世界スローライフ開幕!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...