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第11話 シュレイグでの任務と作戦会議
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「お歴々、よく集まってくださった」
司教のじいさんは言った。場所は講堂。大聖堂の建物の一室。要は会議室のようなところだろう。会議室にしては壁や天井の装飾があまりに壮麗だが。
壇上の司教の前には10人の聖女たち。その中にいるのが俺とエリスだった。一般人には見えないのだろうがその聖女全員の後ろには守護者が控えている。
「今回呼び出された理由についてはもうご存知のことと思うが」
「シュレイグでの大規模な任務のことですね」
「その通りだ」
ディアナの言葉に司教のじいさんは答えた。
司教のじいさんはかなり神経質そうな顔だった。失礼ながら笑顔が想像できないようなじいさんだ。この前会話しているエリスとディアナを睨んでいたじいさんその人だった。
「聖女をこれだけ集めるほどの任務。どういったものなのですか。モンスターの討伐ならともかく、場所は市街地です」
言ったのは美しい銀の髪の女性だった。
「アルメア殿の言う通り。これはモンスターの討伐のようないつもの任務ではない」
「では、どういった」
「お歴々にやっていただくのは堕ちた聖人の捕縛だ」
「聖人の捕縛?」
ディアナの言葉とともに一斉に全ての聖女がざわついた。
「なんだ? 聖人って」
聖なるお兄さん的な話なのか。
「守護者を呼ぶのは基本的に女性ですが、やはり男性に聖痕がある場合もあるんです。つまり、守護者を呼んだ男性ですね」
「なるほどぉ」
つまり、エリスの同業者ということか。
だが、捕縛とは? そもそも堕ちたとは?
「今のラグナル王に変わってから、教会から出奔した者はいなかったはずですが」
ディアナは言う。
「他国から来た男だ。デラポアの出だと聞いている。名はエンリケ・オーハイム。各国で犯罪行為を働いては渡り歩く男だ」
「エンリケ、聞いたことがあります。クロイツェンでは確か聖女を殺している」
「そのようだ。これといった目的がある男ではない。ただ、その日を暮らすために守護者の力を用い、恐喝や強盗、裏世界の用心棒などを行なっている」
「なるほど、犯罪内容自体は小悪党といった感じですか」
「だが、用いているのは守護者だ。この男に何人も殺されている。その力を盾に銀行だろうが、貴族の宝物庫だろうがお構いなしで襲撃する。これは紛れもない女神への冒涜だ」
司教のじいさんは実に忌々しそうに言った。元々不機嫌そうな顔がますます不機嫌そうになった。
なるほど、要するにとんでもない重犯罪者なのでそれを捕縛しようということなのか。
警察のような仕事だが、相手が同じ守護者を従えている以上、教会の領分になるということか。
「その男をここにいる全員で捉えるのが任務ということですか」
「その通りだ。エンリケは人間性は小悪党そのものだが、起こしている犯罪の規模が大きい。守護者も強力なようで各国の教会も手を焼いているようだ。そういったことから、我が国へ直接捕縛の依頼をしてきた国もある。これは我々だけの任務ではないということだ」
「なるほど、王族のメンツにも関わっているということですか」
ディアナの言葉に聖女たちは再びざわついた。
「お国の絡みの仕事ってことか」
「思った以上に大きな任務ですね。ディアナお姉様とアルメア様が同時に関わる任務なんて滅多にないから不思議に思ってたんです。そういうことだったんだ」
俺の言葉にエリスは答える。
なるほどこの国の聖女の顔とエリスが言ったディアナとアルメアが一緒に居た時点で仕事の規模はある程度測れたということか。
「静粛に。ここに呼んだお歴々は国を跨いだ仕事もいくつもこなしている実力者ばかりだ。気負うことはない。ただいつものようにこなせば良い」
「あの、私は本当にここに居て良いんでしょうか.....」
そこでエリスが恐る恐ると言った感じで口を挟んだ。
確かに、昨日表彰されたとはいえ、今言われたような実績はエリスにはない。
ない以上不安になるのは当たり前だ。
「第6聖女エリス」
そんなエリスに司教のじいさんはいかつい表情で言った。
やめろ、エリスをビビらすな。
「は、はい」
「はっきり言って貴殿がこの任務につくだけの実績があるとは私は思っていない。時期尚早、そう思っている」
「は...はい.....」
「だが、大神官様直々の申し付けなのだ。貴殿は期待されている。それに報いることだけを考えよ」
「は、はい!」
「とはいえ、前線に立たせる気はさらさらない。後方から先輩の聖女たちを支援し、どのように働いているかよく学ぶように。以上」
「あ、ありがとうございます!」
厳しい口調で淡々と司教はそう告げた。
つまり、実力が伴っていない分、今回は見習いとして作戦に参加させるが、期待されているからちゃんと働け。そういう話らしい。
そんなに悪い話でもないのではないか。
後方なら危険も少ないであろうし。仕事の勉強にはこの上ないように思える。
それから司教のじいさんは任務の詳しい説明を始めた。
「で、できるでしょうか、私」
「大丈夫だろう。後方支援という話だし。頼りになる先輩もいっぱいいるじゃないか」
「そ、そうですよね! よ、よーし、がんばるぞー!」
エリスは小さくガッツポーズをする。
「第6聖女エリス」
「は、はい! すいません!」
そして、それを咎められたのだった。
なんだ、このじいさんめ。エリスが自分を奮い立たせてるところだろうが。心が狭いんだよ。
だんだんこの司教の顔が生前のむかつく上司と重なってくる俺だった。
そして、仕事の説明が続き、朝から始まったこの会議は正午を前にして終わったのだった。
そして最後に、
「では最後にお祈りを。女神の加護があらんことを」
「女神の加護があらんことを」
みんなで手を組んでお祈りをしたのだった。
荘厳な雰囲気だったが、俺は昨夜みんなが祈る女神に、安眠を激しく妨害されたので複雑な気分だった。
司教のじいさんは言った。場所は講堂。大聖堂の建物の一室。要は会議室のようなところだろう。会議室にしては壁や天井の装飾があまりに壮麗だが。
壇上の司教の前には10人の聖女たち。その中にいるのが俺とエリスだった。一般人には見えないのだろうがその聖女全員の後ろには守護者が控えている。
「今回呼び出された理由についてはもうご存知のことと思うが」
「シュレイグでの大規模な任務のことですね」
「その通りだ」
ディアナの言葉に司教のじいさんは答えた。
司教のじいさんはかなり神経質そうな顔だった。失礼ながら笑顔が想像できないようなじいさんだ。この前会話しているエリスとディアナを睨んでいたじいさんその人だった。
「聖女をこれだけ集めるほどの任務。どういったものなのですか。モンスターの討伐ならともかく、場所は市街地です」
言ったのは美しい銀の髪の女性だった。
「アルメア殿の言う通り。これはモンスターの討伐のようないつもの任務ではない」
「では、どういった」
「お歴々にやっていただくのは堕ちた聖人の捕縛だ」
「聖人の捕縛?」
ディアナの言葉とともに一斉に全ての聖女がざわついた。
「なんだ? 聖人って」
聖なるお兄さん的な話なのか。
「守護者を呼ぶのは基本的に女性ですが、やはり男性に聖痕がある場合もあるんです。つまり、守護者を呼んだ男性ですね」
「なるほどぉ」
つまり、エリスの同業者ということか。
だが、捕縛とは? そもそも堕ちたとは?
「今のラグナル王に変わってから、教会から出奔した者はいなかったはずですが」
ディアナは言う。
「他国から来た男だ。デラポアの出だと聞いている。名はエンリケ・オーハイム。各国で犯罪行為を働いては渡り歩く男だ」
「エンリケ、聞いたことがあります。クロイツェンでは確か聖女を殺している」
「そのようだ。これといった目的がある男ではない。ただ、その日を暮らすために守護者の力を用い、恐喝や強盗、裏世界の用心棒などを行なっている」
「なるほど、犯罪内容自体は小悪党といった感じですか」
「だが、用いているのは守護者だ。この男に何人も殺されている。その力を盾に銀行だろうが、貴族の宝物庫だろうがお構いなしで襲撃する。これは紛れもない女神への冒涜だ」
司教のじいさんは実に忌々しそうに言った。元々不機嫌そうな顔がますます不機嫌そうになった。
なるほど、要するにとんでもない重犯罪者なのでそれを捕縛しようということなのか。
警察のような仕事だが、相手が同じ守護者を従えている以上、教会の領分になるということか。
「その男をここにいる全員で捉えるのが任務ということですか」
「その通りだ。エンリケは人間性は小悪党そのものだが、起こしている犯罪の規模が大きい。守護者も強力なようで各国の教会も手を焼いているようだ。そういったことから、我が国へ直接捕縛の依頼をしてきた国もある。これは我々だけの任務ではないということだ」
「なるほど、王族のメンツにも関わっているということですか」
ディアナの言葉に聖女たちは再びざわついた。
「お国の絡みの仕事ってことか」
「思った以上に大きな任務ですね。ディアナお姉様とアルメア様が同時に関わる任務なんて滅多にないから不思議に思ってたんです。そういうことだったんだ」
俺の言葉にエリスは答える。
なるほどこの国の聖女の顔とエリスが言ったディアナとアルメアが一緒に居た時点で仕事の規模はある程度測れたということか。
「静粛に。ここに呼んだお歴々は国を跨いだ仕事もいくつもこなしている実力者ばかりだ。気負うことはない。ただいつものようにこなせば良い」
「あの、私は本当にここに居て良いんでしょうか.....」
そこでエリスが恐る恐ると言った感じで口を挟んだ。
確かに、昨日表彰されたとはいえ、今言われたような実績はエリスにはない。
ない以上不安になるのは当たり前だ。
「第6聖女エリス」
そんなエリスに司教のじいさんはいかつい表情で言った。
やめろ、エリスをビビらすな。
「は、はい」
「はっきり言って貴殿がこの任務につくだけの実績があるとは私は思っていない。時期尚早、そう思っている」
「は...はい.....」
「だが、大神官様直々の申し付けなのだ。貴殿は期待されている。それに報いることだけを考えよ」
「は、はい!」
「とはいえ、前線に立たせる気はさらさらない。後方から先輩の聖女たちを支援し、どのように働いているかよく学ぶように。以上」
「あ、ありがとうございます!」
厳しい口調で淡々と司教はそう告げた。
つまり、実力が伴っていない分、今回は見習いとして作戦に参加させるが、期待されているからちゃんと働け。そういう話らしい。
そんなに悪い話でもないのではないか。
後方なら危険も少ないであろうし。仕事の勉強にはこの上ないように思える。
それから司教のじいさんは任務の詳しい説明を始めた。
「で、できるでしょうか、私」
「大丈夫だろう。後方支援という話だし。頼りになる先輩もいっぱいいるじゃないか」
「そ、そうですよね! よ、よーし、がんばるぞー!」
エリスは小さくガッツポーズをする。
「第6聖女エリス」
「は、はい! すいません!」
そして、それを咎められたのだった。
なんだ、このじいさんめ。エリスが自分を奮い立たせてるところだろうが。心が狭いんだよ。
だんだんこの司教の顔が生前のむかつく上司と重なってくる俺だった。
そして、仕事の説明が続き、朝から始まったこの会議は正午を前にして終わったのだった。
そして最後に、
「では最後にお祈りを。女神の加護があらんことを」
「女神の加護があらんことを」
みんなで手を組んでお祈りをしたのだった。
荘厳な雰囲気だったが、俺は昨夜みんなが祈る女神に、安眠を激しく妨害されたので複雑な気分だった。
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