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第12話 廊下での会話と聖女アルメア
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「エリス、ちょっと良いか?」
会議が終わり、不安と緊張とともにエリスが講堂を出た時、ディアナが声をかけてきた。
「はい、なんでしょう。ディアナお姉様」
会議で堂々と発言していたディアナ。あそこに集まっていたのは聖女の精鋭だというし、そこでああやって振る舞えるのは大したものだ。想像以上の大人物なのかもしれない。
だが、俺はもう人間ではない。なので人間関係の複雑な糸に巻き込まれることはない。ディアナに気後れする必要もないのだ。なんて気楽なのか。
エリスとディアナは廊下の壁に寄って会話を始める。
「まずは、今回の任務への参加おめでとう。私の思っていた以上に大きな任務のようだ。大神官様の推薦もあったというし、名誉なことだぞ」
「ありがとうございます。ディアナお姉様」
「お前もついに私たちと肩を並べて任務に赴くわけだが、ついては必要なことがある」
「なんでしょうか」
「実戦経験だ。お前の先の任務での成果は十分承知しているし、お前の守護者の実力も十分。だが、お前にはまだ実戦経験が足りていない」
なんだか俺まで褒められているようで照れる。顔には出さないが。
だが、ディアナの言う通りだ。エリスと俺はまだスライムとライカンスロープ。ただの2度戦闘しただけだ。足りていないと言われれば間違いない。
「承知しています、お姉様」
「よろしい。では、足りないならどうするか。補うしかない。だから───」
ディアナが言いかけた時だった。
「エリスちゃああぁん!!!」
唐突に大声を上げながらエリスに後ろから抱きつく者が現れた。
「あ、アルメア様! どうされたのですか!」
「どうされたもこうされたもないわよぅ! 守護者の発現おめでとうエリスちゃぁん! ようやく一緒に働けるわねぇ!」
エリスに抱きついてきたのはさきほどディアナとともに聖女の中心的な雰囲気を出していた美しい銀髪の女性だった。
だが、なんだろうか。さっきと雰囲気が全然違うような。
「アルメア様、今一応エリスと大事な話をしていたのですが」
「なによぉ。ディアナちゃんはエリスちゃんを独り占めしすぎなのよ。私だってエリスちゃんをかわいがりたいんだから!」
「アルメア様...」
2人が会話している間にもアルメアはモニモニとエリスの頬をこねていた。エリスは困ったように顔を赤らめながらされるがままになっている。
「エリスちゃん大活躍じゃないのぉ。良いわよぉ」
「あ、ありがとうございます。アルメア様」
「そのまま活躍していって。そして私の仕事をどんどん奪い取っていって」
「ア、アルメア様...」
「もう嫌なのよぉ! あのじいさんたちどんどこ私に仕事を押し付けるんだからぁ! なにがこの時代の聖女の顔よ! 仕事を押し付ける口実なのよ!」
「アルメア様、会議のように凛となさってください。衛士の目もありますよ」
ディアナが諌めるがアルメアの調子は変わらない。なんなんだこの大人は。どうも生前の俺と同世代に見えるというのに。
「あれはポーズよ! あんな風にそれっぽい雰囲気を出して、一言二言それっぽいこと言ったらお偉方は黙るのよ! 聖女歴イコール年齢の私が身につけた処世術!」
「アルメア様...」
とうとうディアナが戸惑うレベルだった。
「エリスちゃんがこんなに立派になって。これはお祝いが必要ね。酒よ、酒だわ。酒盛りよ」
「アルメア様、一応我々は聖職者なのですから。大っぴらにそういうことは」
「なによ! ディアナちゃんの堅物! 真面目! デキる女!」
「収集がつかないなこれは」
ディアナは呆れていた。なんなのかこのアルメアという女性は。聖女といえばなんだかんだエリスみたいに敬虔な神の信徒みたいなイメージだったのに、これでは居酒屋でグチを言っているOLではないか。
「エリスちゃんがこんなに立派になったのに祝いのひとつも出来ないなんて! ....こんなに.....あらここがこんなに。すごいわねエリスちゃん」
「や、やめてくださいアルメア様!」
「そうです! あなただけのものじゃないんですよ!」
「きゃあ! ディアナお姉様もやめてください!」
3人でなにがなにやらエリスのデリケートな部分をくんずほぐれつしていたのだった。俺は目線を外して対応した。
なんなんだこの大人たちは。
そしてやがてそれも終わり、ディアナがアルメアの首根っこを掴んで引っ張っていった。
「この人をしかるべき場所に送り届けてくる。話の途中になったが、すまないなエリス」
「い、いえ」
「エリスちゃーん! 助けて!」
「あなたにはまだ仕事があるはずです」
「鬼!」
「エリス、明日の朝に修練場に来るように。お前には訓練をしてもらう。詳しい話は明日だ!」
そう言ってディアナは半泣きのアルメアを引きずって廊下の向こうに消えていったのだった。
ようやく静寂が訪れた。
「すごい騒がしい人だったな。あの人がディアナと並ぶ聖女の顔なのか?」
「ア、アルメア様はああ見えてすごい人なんですよ!」
「そうなのか?」
俺には疑いしかなかった。ダメな大人にしか見えなかった。
「アルメア様が守護者様を発現させたのは乳飲子のころ、アルメア様の村がドラゴンに襲われた時です。そして、アルメア様の守護者様はそのままドラゴンを倒された。なのでアルメア様は『竜殺しの聖女』と呼ばれています」
「そ、そんな経歴が」
ドラゴンとはモンスターでも最上位の存在だそうだ。レジェンドランクの冒険者でも手を焼くと。それを乳幼児のころに倒したのか。
つまり乳幼児の時点でレジェンドランクの冒険者並のことをしたということだった。とんでもない話だ。
「守護者様の強さについては聖女のみならず、市民のみなさんも度々議論されます。しかし、最強と言われればこの国の全ての人間が断言します。それはアルメア様のアルトリウス様だと」
エリスは誇らしいでも悔しいでもなく、畏怖を込めてただ事実を述べるように言った。
いつも朗らかで明るいエリスにその言い方をさせるということが、どれだけのことなのかは俺でもなんとなく分かる。
アルメアはああ見えて、エリスが畏怖するほどの人物だということなのだろう。
ディアナと並ぶ聖女の顔、その肩書きは伊達ではないようだ。
会議が終わり、不安と緊張とともにエリスが講堂を出た時、ディアナが声をかけてきた。
「はい、なんでしょう。ディアナお姉様」
会議で堂々と発言していたディアナ。あそこに集まっていたのは聖女の精鋭だというし、そこでああやって振る舞えるのは大したものだ。想像以上の大人物なのかもしれない。
だが、俺はもう人間ではない。なので人間関係の複雑な糸に巻き込まれることはない。ディアナに気後れする必要もないのだ。なんて気楽なのか。
エリスとディアナは廊下の壁に寄って会話を始める。
「まずは、今回の任務への参加おめでとう。私の思っていた以上に大きな任務のようだ。大神官様の推薦もあったというし、名誉なことだぞ」
「ありがとうございます。ディアナお姉様」
「お前もついに私たちと肩を並べて任務に赴くわけだが、ついては必要なことがある」
「なんでしょうか」
「実戦経験だ。お前の先の任務での成果は十分承知しているし、お前の守護者の実力も十分。だが、お前にはまだ実戦経験が足りていない」
なんだか俺まで褒められているようで照れる。顔には出さないが。
だが、ディアナの言う通りだ。エリスと俺はまだスライムとライカンスロープ。ただの2度戦闘しただけだ。足りていないと言われれば間違いない。
「承知しています、お姉様」
「よろしい。では、足りないならどうするか。補うしかない。だから───」
ディアナが言いかけた時だった。
「エリスちゃああぁん!!!」
唐突に大声を上げながらエリスに後ろから抱きつく者が現れた。
「あ、アルメア様! どうされたのですか!」
「どうされたもこうされたもないわよぅ! 守護者の発現おめでとうエリスちゃぁん! ようやく一緒に働けるわねぇ!」
エリスに抱きついてきたのはさきほどディアナとともに聖女の中心的な雰囲気を出していた美しい銀髪の女性だった。
だが、なんだろうか。さっきと雰囲気が全然違うような。
「アルメア様、今一応エリスと大事な話をしていたのですが」
「なによぉ。ディアナちゃんはエリスちゃんを独り占めしすぎなのよ。私だってエリスちゃんをかわいがりたいんだから!」
「アルメア様...」
2人が会話している間にもアルメアはモニモニとエリスの頬をこねていた。エリスは困ったように顔を赤らめながらされるがままになっている。
「エリスちゃん大活躍じゃないのぉ。良いわよぉ」
「あ、ありがとうございます。アルメア様」
「そのまま活躍していって。そして私の仕事をどんどん奪い取っていって」
「ア、アルメア様...」
「もう嫌なのよぉ! あのじいさんたちどんどこ私に仕事を押し付けるんだからぁ! なにがこの時代の聖女の顔よ! 仕事を押し付ける口実なのよ!」
「アルメア様、会議のように凛となさってください。衛士の目もありますよ」
ディアナが諌めるがアルメアの調子は変わらない。なんなんだこの大人は。どうも生前の俺と同世代に見えるというのに。
「あれはポーズよ! あんな風にそれっぽい雰囲気を出して、一言二言それっぽいこと言ったらお偉方は黙るのよ! 聖女歴イコール年齢の私が身につけた処世術!」
「アルメア様...」
とうとうディアナが戸惑うレベルだった。
「エリスちゃんがこんなに立派になって。これはお祝いが必要ね。酒よ、酒だわ。酒盛りよ」
「アルメア様、一応我々は聖職者なのですから。大っぴらにそういうことは」
「なによ! ディアナちゃんの堅物! 真面目! デキる女!」
「収集がつかないなこれは」
ディアナは呆れていた。なんなのかこのアルメアという女性は。聖女といえばなんだかんだエリスみたいに敬虔な神の信徒みたいなイメージだったのに、これでは居酒屋でグチを言っているOLではないか。
「エリスちゃんがこんなに立派になったのに祝いのひとつも出来ないなんて! ....こんなに.....あらここがこんなに。すごいわねエリスちゃん」
「や、やめてくださいアルメア様!」
「そうです! あなただけのものじゃないんですよ!」
「きゃあ! ディアナお姉様もやめてください!」
3人でなにがなにやらエリスのデリケートな部分をくんずほぐれつしていたのだった。俺は目線を外して対応した。
なんなんだこの大人たちは。
そしてやがてそれも終わり、ディアナがアルメアの首根っこを掴んで引っ張っていった。
「この人をしかるべき場所に送り届けてくる。話の途中になったが、すまないなエリス」
「い、いえ」
「エリスちゃーん! 助けて!」
「あなたにはまだ仕事があるはずです」
「鬼!」
「エリス、明日の朝に修練場に来るように。お前には訓練をしてもらう。詳しい話は明日だ!」
そう言ってディアナは半泣きのアルメアを引きずって廊下の向こうに消えていったのだった。
ようやく静寂が訪れた。
「すごい騒がしい人だったな。あの人がディアナと並ぶ聖女の顔なのか?」
「ア、アルメア様はああ見えてすごい人なんですよ!」
「そうなのか?」
俺には疑いしかなかった。ダメな大人にしか見えなかった。
「アルメア様が守護者様を発現させたのは乳飲子のころ、アルメア様の村がドラゴンに襲われた時です。そして、アルメア様の守護者様はそのままドラゴンを倒された。なのでアルメア様は『竜殺しの聖女』と呼ばれています」
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つまり乳幼児の時点でレジェンドランクの冒険者並のことをしたということだった。とんでもない話だ。
「守護者様の強さについては聖女のみならず、市民のみなさんも度々議論されます。しかし、最強と言われればこの国の全ての人間が断言します。それはアルメア様のアルトリウス様だと」
エリスは誇らしいでも悔しいでもなく、畏怖を込めてただ事実を述べるように言った。
いつも朗らかで明るいエリスにその言い方をさせるということが、どれだけのことなのかは俺でもなんとなく分かる。
アルメアはああ見えて、エリスが畏怖するほどの人物だということなのだろう。
ディアナと並ぶ聖女の顔、その肩書きは伊達ではないようだ。
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