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一攫千金の国『ベガ・ラグナス編』
午前2時06分。タイムリミットは、あと2時間!
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「──大丈夫ですか、意識はありますか⁉」
誰かの話し声が、彼女の耳の奥に響いてくる。
深い眠りから目を覚ましたばかりのボヤけた感覚の中。まぶたの裏側におぼろげな暗闇が広がっている。眠りと目覚めの狭間を彷徨う中で、彼女が少しだけ、目を開いた。
まどろみの視界の先に二人の人影がいる。その内の一人が彼女に向かって話しかけてきたのが分かった。声を出そうとしたのだが、喉の奥にタンが絡んだような……ねっとりした不快感に襲われて声が出ない。異物を吐き出そうとするかのように彼女は咳き込む。
「──っ! げほっ、げほっ! おぇ……」
喉に不愉快な感覚が込み上げてきて、体の中の膿を吐き出すかのように咳が出る。口元を唾液が伝っていくのが分かって不快感を覚えた。だが少しだけ胸が楽になった。すると、また誰かの声が聞こえてきた。
「やった、息を吹き返しましたよ!」
「……ぅ」
──ドサッ。
「大丈夫ですか⁉ ミドさん! ミドさん‼」
うっすらと聞こえる誰かの声。寝ている自分の腹部に誰かが倒れてきたのが分かった。それに隣りにいた少年らしき人物が必死に声をかけている。すると森の茂みの中から少女らしき人物が現れた。
「あ、二人ともこんなとこにいた! も~、いきなりいなくなったらビックリするじゃないっスか! おしっこしてる間に置いて行かれたのかと思ったっスよ。ミドくんがティッシュ出してくれないから、その辺の葉っぱで拭くはめに……⁉ ミドくん? ミドくん⁉⁉」
「どうしましょう、フィオさん! ミドさんが、血を流しすぎて‼」
「あ~ダメっスよマルちゃん、そんな揺らしたら! 何があったっスか?」
「実は──」
鼻をすすりながら少年が少女に事情を話している。それを聞いて頭を抱えながら少女が言った。
「あちゃ~、ま~たムチャなことしたっスか。ミドくんったらも〰〰‼ 加減知らないんだから!」
「で、でも! ミドさんが平気だからって……」
「こう見えて、ミドくんも人間っスからね。大量に出血したら、そりゃ気絶もするっスよ。でも大丈夫っス、ミドくん頑丈だから。数時間は寝て栄養のある食材たくさん食べたらすぐ元気になるっス」
ぼやけて見える視界の先、知らない二人の会話が聞こえてくる。頭がボ~っとして話の内容を理解はできなかった。
自分に覆いかぶさるように倒れていた緑髪の人物の左手首から、ダラダラと流血しているのが見える。左手首に白い包帯らしきものを手際よく巻き終わると少女が言った。
「これでよし! とりあえず応急処置は完了っス。ミドくん連れて一旦飛行船に帰るっスよ」
「分かりました! この人はどうしましょう?」
「そんなの心配してる場合じゃないっスよ。死にかけてたのを蘇生までさせたんだから、あとは自力でなんとかしてもらうっス。モタモタしてたらミドくんの方が死んじゃうっスよ!」
そう言って少女が重症の緑髪の人物を背負った。心配してくれた少年もそれについて行く。徐々に意識が戻り、視界が鮮明になってきた。ゆっくりと起き上がって、何も言わずに去っていこうとする二人におもわず声をかけてしまう。
「ちょっと……待ち、な……!」
声を聞いて少年だけが振り返った。声を絞り出すように言う。
「アンタ、たちは……誰、なんだい?」
「もう大丈夫ですよ。胸の穴は完治してるはずです」
「あた、しは……死んだと、思ったのに……どう、やって……?」
「キールさんに会ったら、伝えてください」
「?」
「ミドさんは、いつまでも待ってますから。って──」
「………………」
それだけ言うと謎の少女と少年は森の茂みの中に消えていった。
*
「……え? ラムダ、さん⁉」
真夜中の午前1時53分、南東の発電所。
へたり込んでいるエイミーの目の前に、パチパチと静電気を放電させながら、ラムダが立っている。生きているラムダの姿を見て驚いた様子の赤髪のピエロ男が言う。
「おかしいナァ……確実に心臓は止まっていたはず……♦」
「ハッ、残念だったね! 奇跡の力で、あたしは蘇ったのさ!」
「死者を蘇らせる奇跡……僕の知ってる死神くんの仕業かな★」
「死神? 死神はアンタの方だろ!」
「キミは知らないだろうけど、いるんだよ……一人だけ。人の生き死にを弄ぶ死神くんがネ……♥」
「何、わけ分かんないこと言ってるだい! 今度は不意打ちなんて卑怯な手は通用しないよ! 覚悟しな‼」
「んふふ……安心しなよ。今度は確実に──」
右足のつま先を前に出し、両腕を交差させてトランプを扇状に広げ、ドナルドは真っ赤な口元をにんまりさせて言う。
「首を切り落としてあげるから♠」
「殺れるもんなら、やってみな……ピエロ野郎‼」
──バチィッ‼ バチバチ‼
全身から青鈍色の静電気を放出させながらムエタイのように両拳を前に構え、ラムダがドナルドを警戒する。それを見て安心したのかエイミーが声を上げた。
「やっぱり、ラムダさん! 生きてたんですね!」
「エイミー無事かい⁉ 怪我はないね?」
「はい!」
ドナルドから目をそらさず、顔を右に少し動かして、ラムダが背後のエイミーに声をかける。ラムダの無事な姿を見てエイミーも返答する。すると激しく放電して威嚇しているラムダの横に、加勢するようにキールが来て訊ねる。
「無事だったか、よかった。ラッシュはどうした?」
「さぁね……。助けられたのはあたしだけさ……」
「まさか、死んだのか⁉」
「分からない。無事に逃げくれてたらいいんだけどね……」
「そう、か」
「あたしを助けてくれた連中から、アンタに伝言だよ」
「?」
「いつまでも待ってるってさ。変な連中だったけど、心配してくれる仲間がいるんじゃないか。何があったか知らないけど、大切にしなよ」
「………………」
ラムダに諭されるように言われたキールは何も言えず閉口する。痺れを切らしたのか、ドナルドがラムダとキールに言う。
「お喋りは終わりにして……そろそろ始めよう♠ ぐずぐずしてると、可愛い鬼の子たちがみ~んな爆散《ばくさん》して肉片になっちゃうヨ? ま、僕はどっちでもいいんだけどネェ……んふふふふふ★」
そう言ってトランプで口元を隠しながら、ドナルドが嬉しそうに嗤っている。キールとラムダがドナルドを睨んで構える。頭部を失った鬼族の少女の遺体にラムダが気づき、問いただすようにキールに訊ねた。
「鬼族の子たちは全員、死んじまったのかい⁉」
「いや、全員は死んでない。多分な」
「本当かい⁉ どうしてそう言いきれるんだい⁉」
「爆破には『読み込み時間』があるからだ」
「は??? タイムラグ?」
粛清の爆破が発動するまでには『タイムラグ』が生じる。一人の魔法発動には、約30秒~1分間の読み込み時間が必要である。しかも複数人の魔法が同時に発動すると読み込み負荷がかかり、処理速度が著しく低下する。
鬼族の奴隷の数が多いため相当な読み込み負荷が予想される。ざっくり計算しても、全ての鬼族が粛清爆破されるのは夜明け頃だろう。
現在時刻は午前2時6分。夜が明ける時間は今の季節だと4時~5時頃だ。つまり全ての爆破が発動するのは、早ければ2時間後ということになる。
悠長に説明している時間などなく、キールが手短に説明したのだが、ラムダは理解できていない様子だ。それを見てキールが言う。
「単純計算すれば、タイムリミットは夜明けまでだ! それまでにベガを殺さないと発電所の鬼族たちは全員、爆死しちまう……‼」
「……っ⁉ 夜明けまでって、あと2時間くらいしかないじゃないか⁉」
──ビュ、ビュン‼
「⁉」「‼」
回転した何枚ものトランプがキールとラムダに向かって飛んでくる。咄嗟に避けようとしたがキールの頬をトランプがかすって傷をつけられる。両腕で顔を隠しながら、ラムダは放電してトランプを焼いて勢いを殺す。しかし何枚かは腕や太ももに刺さる。キールがラムダに言う。
「おい⁉ 大丈夫か?」
「ハッ、これくらい平気さ」
そう言うとラムダは太もものトランプを引き抜いて捨てる。すると右手にハートのAのカードを持ち、左手を腰に当てながらドナルドがこちらに向かって優雅に歩み寄りながら言う。
「お喋りは終わりって言ったろう? 早く僕と遊ぼうよ★」
──ダッ‼
楽しそうに嗤いながらドナルドがこちらに直進してきた。
キールとラムダが構えると2、3枚のトランプが飛んでくる。
キールは左手にナイフを順手持ちで構えて右手のナイフを逆手持ちし、次々とトランプを弾き落としていく。
ビュ、ビュン‼ ビュ、ビュ、ビュン‼
キン! キ、キン! キン‼ ガキン!
トランプとは思えないような金属音が鳴り響く‼
キールが鬼紅線で、ドナルドを捕らえようとする!
しかし華麗に躱されてしまい、キールの目前にドナルドが急接近!
ドナルドの顔面がキールの目前に迫った。すると唇を窄め、ドナルドが口から老緑色の体液をキールに吐きつけてきた⁉
ドナルドの毒霧を左腕で防ぎつつ、薄目で見ながらキールが左に避けて躱す‼
そのままドナルドの右脇の下に潜り込むように重心を移動! 右手の逆手持ちナイフで、ドナルドの右脇をスリ抜けざまに撫でるように斬りつける!
それに気づいたドナルドが、バックステップで飛び上がる‼
距離を取って興奮しながら口元についた毒霧を「ぺろり♥」と舐めて、嬉しそうにドナルドがキールを見ている。ニヤリと嗤って再び動こうとすると、ドナルドが違和感を感じたらしく視線を右手に落とした。
なんと右手に鬼紅線が巻き付いていることに気づいた。キールが「ニッ」と笑った。
ドナルドの右手を切り落とそうと、キールが勢い良く鬼紅線を引っ張った‼ その勢いで、ドナルドの右手が鬼紅線によって切り落とされた!
「?」
──と思いきや、ドナルドの右手が前方に引っ張られてピンと伸びただけだ。
「な⁉」
傷一つないドナルドの右腕のあまりの頑丈さに驚いたキールが目を丸くしてる。
すると右手首の鬼紅線をドナルドが指で摘み、軽く上下に振った。鬼紅線が大きく波打ち、逆にキールが放り投げられて地面に激しく叩きつけられた。
「──ぁ、痛っ⁉」
顔面や胸、腹などを強打し、キールは悶絶する。それを見下ろしながらドナルドが言う。
「もう終わりかい? 案外、大したことないんだネ★」
「こ……このやろ‼」
これ以上振り回されないように、ドナルドの右手首からキールが鬼紅線の縛りを解いた。そしてキールが胸を押さえながら立ち上がり、忌々しそうに前方を確認する。
「……⁉」
さっきまでいたはずのドナルドの姿がキールの目の前から消えていた。キールが周囲を見渡そうとした時、背後からドナルドが突然現れた⁉
キールの首をめがけて袈裟斬りするように、ドナルドは左手に持った鋭利なトランプを振り切る!
だが膝抜きによる脱力で頭部を下げたことで、キールが間一髪それを避ける!
頭頂部の金髪がハラハラと少しだけ切られただけだ。
その時、キールは視線の右端に青白い放電が走った!
バチバチ、ビリリリッ‼ どっすん……‼
電撃を帯びたラムダの左拳がドナルドの右脇腹を打ち抜いたのだ。ラムダに殴られたドナルドは右から左方向へ殴り飛ばされ、通路の壁に激突する。ラムダがキールに声をかける。
「大丈夫かい?」
「ああ」
ラムダの声にキールが応える。薄く粉塵が舞い上がる中、ピクピク感電しているドナルドが壁にもたれかかっているのが影で分かった。警戒しながらキールとラムダがそこから目を離さずに近づく。するとキールが気づいて声を上げた。
「違う! コイツ、ピエロ野郎じゃねぇ⁉」
壁にもたれかかっているのは、ドナルドではなく施設の職員と思われる男だったのだ。すると突然、男の服が風船のように膨らみだした。
シュ〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰‼
空気が送り込まれるような音が聞こえてきたと思った時──。
──ボォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン‼‼‼
突然の熱風がキールとラムダを襲い、周囲が一瞬だけ白く光って弾けた‼
両腕で顔を隠してキールとラムダが光の眩しさを防ごうとする。だが同時に両腕と腹部、太ももなどに棘のような何かが突き刺さり、激痛が走った。
「痛っ⁉」
顔は隠していたため目を潰されて視力を失うことはなかった。しかし徐々に皮膚が熱くなるのを感じ、同時に蜂の大群に刺されるような激痛が全身を襲ってきた⁉
壁に倒れていた施設の職員と思わしき男は腹部が破裂し、腸などの内臓が散らばって床全体が血で染まっている。その背後の壁から、ぬるりと現れるように人影が出てきて言った。
「ダメダメ、油断しちゃあ★」
それは紛れもないドナルドだった。一体どんな奇術を使ったのかは分からないが壁の中に隠れていたらしい。
腕や太ももに刺さっている金属の針を顔を歪めながらキールが抜いて捨てる。ラムダも同じように針を抜く。キールに比べて軽症なのか、あるいはアドレナリンで痛みを感じないのか、ラムダは平気そうだ。すぐにドナルドと戦えるように拳を構えている。
ドナルドは左肩の埃を右手で払いながら、首を鳴らしている。ラムダに撃ち抜かれた右脇腹も全く効いていない様子で、ドナルドは呑気にストレッチまでしている。
すると、ドナルドに聞こえないくらい小さな声で深刻そうな表情のラムダがキールに言う。
「……頼みがある」
「?」
「エイミーを連れて逃げてほしい。このピエロ野郎は……あたし一人で足止めする!」
「は⁉ アンタ一人じゃ無理だ! 殺されるぞ」
「じゃあ、二人なら勝てるってのかい?」
「なに?」
「悔しいけど……二人でも無理だろうさ。あのピエロ野郎、化け物だよ。三人ここで殺されるより、一人が犠牲になって二人を生かす方がイイ。そうだろ?」
「待て、だったらオレがやる。アンタがエイミーを連れて逃げろ!」
「無理だよ。さっきの針、毒が塗ってあったんだろう? 足が笑ってるよ」
「それは……」
キールの片足が小刻みに震えている。足の筋肉に力が入りづらいようだ。それを見て、ラムダが言う。
「鬼族のあたしなら少量の毒くらい体質的に平気なんだよ。そんな状態じゃ戦えないだろうけど、エイミーを連れて逃げるくらいならできるはずさ……」
「………………」
キールは言い返すことができなかった。すると、それを聞いていたエイミーが反対してラムダに向かって言う。
「ダメです! ラムダさんも一緒に逃げ──」
ドスっ‼
「ぅっ⁉」
問答無用でエイミーの腹部をラムダが殴って気絶させた。エイミーが力なく倒れてそれを支えながら、キールが言う。
「……死ぬなよ」
「生き返ったばかりでまた死ぬのはゴメンだよ。さぁ、早く行きな!」
ラムダの微笑みにキールが頷き、気絶したエイミーを背負って走り出した。同然ドナルドがそれを許すわけがなく、トランプを飛ばしてく。
「逃がすわけないだろう♦」
バリバリバリ‼ バッチン‼ バチ、バチン‼ トランプが青白い放電によって焼かれてパラパラと落ちていく。
ラムダの横を通り過ぎてキールを追いかけようとするドナルドだが、ラムダの右拳で左横顔を殴られる。しかし、ドナルドは胴体を右回転させて殴られた勢いを殺し、同時にラムダのうなじ付近を右肘で打ち抜こうとする。
間一髪、ラムダが頭を後ろに引いて避けるが、ドナルドはさらに右肘を伸ばして人差し指と中指で挟んだトランプでラムダの頸動脈を切ろうとする‼
「んぐっ⁉」
避けきれずに、ラムダは首を薄皮一枚ほど切られてしまう。しかしラムダも負けじと左足のハイキックをして、ドナルドの右頬の顎を蹴り飛ばした‼
蹴り上げられたドナルドは通路の奥に向かって飛んでいくが、バク宙をしながら優雅に体勢を立て直す。
ラムダは首の傷口からツーッと血が流れ、それを手の甲で血を拭った。
ドナルドが周囲をチラリと見渡す。キールとエイミーは消えたことに気づくと、ドナルドがニンマリ嗤って言う。
「くふふ……。やってくれたネ……★」
「今度はあたしがアンタを黒焦げにしてやる……覚悟しな‼」
そう言って拳を顔の前に構えながら青鈍色の光と共にラムダが放電し始める。そして静電気によって、威嚇するようにふんわり髪の毛が持ち上がった──。
*
一方、気絶したエイミーを抱えたまま発電所の脱出に成功したキールは、森の中を走っていた。万全な状態とは言えないが逃げるだけなら問題なかった。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
できれば今すぐにでもカジノ・ザ・ベガ・ラグナスに向かいたいが、エイミーを抱えたままではどうしようもない。
「仕方ない、隠れ家まで一旦戻るしか……」
ガサガサ……!
「⁉」
木の裏から獣人らしき人影が現れた。キールが少し驚きながら言う。
「ラッシュか⁉」
目の前に現れた犬系の獣人、ラッシュは全身に擦り傷を負っており、尻尾が切断されて痛々しい状態だ。ラムダがいないことに気がついたのか、ラッシュがキールに問いただす。
「……? おい、ラムダはどこだ⁉ 先に来ただろ⁉」
「………………」
「まさか……てめぇ‼ ラムダを見捨ててきたのかァ‼」
「違う‼」
「じゃあ何でラムダがいねぇんだァ‼‼」
「それは……ラムダが、オレとエイミーを、逃してくれたんだ……」
「やっぱり一人だけ残して逃げてきたんだろうがァ‼」
「………………」
キールは言い返せずに俯いてしまう。ラッシュは興奮が収まらず、牙を剥き出しにして唸り声を上げて言う。
「ガルルルル‼ ちくしょう‼ クソがァ! だから余所者に頼るなんて、オレは反対だったんだ‼‼」
「口を慎め。逃げたのはラッシュも同じ。キールを攻める権利、ない」
荒ぶっているラッシュの後ろに巨人族の大男、ゴメズが現れて言った。キールがそれを見上げた。するとキールが抱えているエイミーを見て、ゴメズが言う。
「キール、お前はこれからどうする気だ?」
「オレは……ベガ・ラグナスを、殺しに行く」
「一人でか?」
「ああ」
「無謀だ。一度、作戦を立て直すのが賢明だ。ラムダは私とラッシュで必ず連れ戻す。キールは隠れ家に帰ってからエイミーを見ていてほしい」
「そんな悠長にしている時間はない! 急がないと鬼族、全員が死んじまう‼」
「む、どういうことだ? 説明してほしい」
ゴメズとラッシュにキールは状況を手短に説明した。
粛清による爆破魔法が発動したこと。このままでは夜明けまでに、この島にいる鬼族がすべて爆死してしまうこと。ラムダがドナルドと名乗るピエロの刺客と一人で対峙していること。
ゴメズとラッシュは顔を歪ませている。ゴメズが言う。
「最悪の展開、ということか……」
「まだ希望が無いわけじゃない! ベガが死ねば魔法が解除されるはずだ!」
「以前も言ったが、それは無理だ。勝利の女神に愛されたベガに勝てる者など、この世に存在しない。今回の作戦だけが、唯一の希望だったのだ」
「それでも……やるしかない」
「なるほど。忠告しても、無駄のようだな」
するとイライラした様子で腕組みをしたラッシュが叫んだ。
「おい、ゴメズ! そんな薄情な野郎ほっとけよ‼ 今はラムダを助けに行くのが先決だろ‼」
ラッシュを見て頷き、ゴメズがキールに言う。
「隠れ家にはダリアが戻っているはずだ。エイミーは彼女に預けてくれ。ラムダのことは私とラッシュに任せろ」
「そのあとはどうする気だ?」
「独断では決められないが、私はこの島を脱出した方がいいと考える。ベガを殺すことが不可能な以上、もう我々にはどうすることもできん。鬼族の奴隷たちは……かわいそうだが助けられんだろう」
「そうか……」
「私にとってはエイミーやラムダ、仲間たちの命の方が優先順位が高い。自分たちも助けられん状態で他人を助けることなど、到底できないだろうからな。キールもそうじゃないか?」
ゴメズの言い分を聞いてキールは小さく頷いた。仲間の命が優先なのはキールも同じである。続けてゴメズがキールに言う。
「作戦が失敗に終わった以上、これで我々の協力関係は終了する。報酬はダリアから貰ってくれ」
「失敗しておいて、報酬なんて……」
「一時的とはいえ、危険な作戦に協力してもらって無報酬では、エイミーの顔に泥を塗ってしまうに等しい。我々の誠意だ、受け取ってくれ」
「………………ああ、わかった」
キールが小さく返事をする。遠くでラッシュがなにか叫んでいるようだ。
「ゴメズ! は、早く来いって!」
そんなに早く行きたいなら一人で先に行けばいいのだが、よほど一人が怖いのだろう。ゴメズが一緒でないと発電所の中に入りたくないらしい。それにゴメズが返事をする。
「分かっている! ……短い間だったが、ありがとう。あんな楽しそうなエイミーの顔は久しぶりに見た気がする」
「え?」
「それでは、健闘を祈る」
そう言って、ゴメズはラッシュの元へ、ドスドスと走っていった。気絶したままのエイミーを抱え、キールは振り返らずに、急いで隠れ家に向かって走っていった。
隠れ家に到着すると中にはゴメズの言う通り、炭鉱族の女のダリアがイスに座っていた。ダリアはキールと抱えられているエイミーに気づいて驚き、すぐにエイミーを寝かせるためにキールに手を貸してくれた。
キールがダリアに状況を説明した。そのまま隠れ家を出ていこううとした時、キールはダリアに呼び止められる。
「ちょっと待ちなさいな」
「………………」
「少ないけど、これを……」
そう言ってダリアは金貨を三枚、キールの手に握らせた。申し訳なさそうな緊張で口元に力が入り、声を漏らすようにキールが言う。
「しかし……」
「ちゃんと報酬は受け取れって、ゴメズが言ってたんじゃないかい?」
「……ああ」
「じゃあ、それを断るほうが失礼ってもんだよ。ま、エイミーをしっかり隠れ家まで運んできたお礼だと思って、遠慮なく受け取りな」
ダリアにそう言われたキールは金貨三枚をポケットにしまった。そしてキールが隠れ家を出ていこうと玄関ドアの前まで行くと、心配そうにダリアが問いかけてきた。
「一人で、行く気かい?」
「そのつもりだ」
「エイミーが目を覚ましたら、悲しむだろうね」
「………………」
「キールさん、アンタ。この娘のこと……どう思ってるんだい?」
「どういう意味だ?」
「そのままの意味だよ」
やれやれとため息をつき、両手を腰に当ててダリアが言った。キールは眉間にシワを寄せて複雑そうな表情で言う。
「オレとエイミーは……昔、旅先で出会った知り合いで──」
「ハァ……そうかい。ま、キールさんにその気がないんじゃあ、仕方ないね……」
「?」
「死なないでおくれよ。エイミーのためにもさ」
「……約束は、できない」
「そこは嘘でも『イエス』って言っておくれよ」
「………………死なない、約束する」
「ありがとうね」
そして、振り返らずにキールはドアを開けて出ていった──。
──現在時刻は、午前2時21分。タイムリミットは、約1時間半ほどだ。
隠れ家のドアの前で、キールは夜空の星空を見上げて深呼吸を数回繰り返す。両目をつぶって沈黙して3秒間静止する。そして決意するように両目を見開いて前を見据えた。
カジノ・ザ・ベガ・ラグナスのタワーがある方向を見て、キールは一心不乱に走り出した──。
*
眠らない街、カジノ・ザ・ベガ・ラグナス。
カジノの一階では今日も24時間営業でギャンブルが行われている。カラフルなネオンカラーの人工的な光があちこちに眩しく輝いており、大勢の道楽者たちで賑わっている。
対象的に、エレベーターで上がって最初にドアの向こうに広がる最上階の大広間。そこは床が黒く光沢しており、天井は透明なガラスで自然な星空の光が広がっている静寂の世界。
その中央にポツンと一脚のイスがあり、メイド服を身につけた桃髪の鬼族の少女が行儀よく座っている。
両足を閉じて、両手を太ももの上に合わせて置き、両目を閉じて瞑想のような深い呼吸を繰り返している。4秒で空気を吸って、8秒で息を吐く。
まるで美しく可愛らしい人形が座っているかのような妖しい雰囲気を漂わせている。少女は誰かを待つように、ジッ……とその場から微動だにしない。その時──。
「痛っ⁉」
突然、痛みを感じたのか、少女が少し顔を歪めてうなじ付近を手で押さえた。首筋のうなじに刻まれた呪印が紫色に点滅し、不穏な雰囲気を漂わせる。
少女が上半身を前のめりに倒し、数秒だけ呼吸を止めて苦しそうに息を詰まらせる。
少女の額から汗の水滴が流れ落ち、そのまま引力に吸い込まれて床めがけて飛んでいく。黒光りする床の上にポチャっと落ちて、水滴が虚しく砕け散っていく。
「……キール様、どうして?」
苦しそうに、そして悲しそうに、桃髪の少女は小さく、小さく……つぶやいた。
誰かの話し声が、彼女の耳の奥に響いてくる。
深い眠りから目を覚ましたばかりのボヤけた感覚の中。まぶたの裏側におぼろげな暗闇が広がっている。眠りと目覚めの狭間を彷徨う中で、彼女が少しだけ、目を開いた。
まどろみの視界の先に二人の人影がいる。その内の一人が彼女に向かって話しかけてきたのが分かった。声を出そうとしたのだが、喉の奥にタンが絡んだような……ねっとりした不快感に襲われて声が出ない。異物を吐き出そうとするかのように彼女は咳き込む。
「──っ! げほっ、げほっ! おぇ……」
喉に不愉快な感覚が込み上げてきて、体の中の膿を吐き出すかのように咳が出る。口元を唾液が伝っていくのが分かって不快感を覚えた。だが少しだけ胸が楽になった。すると、また誰かの声が聞こえてきた。
「やった、息を吹き返しましたよ!」
「……ぅ」
──ドサッ。
「大丈夫ですか⁉ ミドさん! ミドさん‼」
うっすらと聞こえる誰かの声。寝ている自分の腹部に誰かが倒れてきたのが分かった。それに隣りにいた少年らしき人物が必死に声をかけている。すると森の茂みの中から少女らしき人物が現れた。
「あ、二人ともこんなとこにいた! も~、いきなりいなくなったらビックリするじゃないっスか! おしっこしてる間に置いて行かれたのかと思ったっスよ。ミドくんがティッシュ出してくれないから、その辺の葉っぱで拭くはめに……⁉ ミドくん? ミドくん⁉⁉」
「どうしましょう、フィオさん! ミドさんが、血を流しすぎて‼」
「あ~ダメっスよマルちゃん、そんな揺らしたら! 何があったっスか?」
「実は──」
鼻をすすりながら少年が少女に事情を話している。それを聞いて頭を抱えながら少女が言った。
「あちゃ~、ま~たムチャなことしたっスか。ミドくんったらも〰〰‼ 加減知らないんだから!」
「で、でも! ミドさんが平気だからって……」
「こう見えて、ミドくんも人間っスからね。大量に出血したら、そりゃ気絶もするっスよ。でも大丈夫っス、ミドくん頑丈だから。数時間は寝て栄養のある食材たくさん食べたらすぐ元気になるっス」
ぼやけて見える視界の先、知らない二人の会話が聞こえてくる。頭がボ~っとして話の内容を理解はできなかった。
自分に覆いかぶさるように倒れていた緑髪の人物の左手首から、ダラダラと流血しているのが見える。左手首に白い包帯らしきものを手際よく巻き終わると少女が言った。
「これでよし! とりあえず応急処置は完了っス。ミドくん連れて一旦飛行船に帰るっスよ」
「分かりました! この人はどうしましょう?」
「そんなの心配してる場合じゃないっスよ。死にかけてたのを蘇生までさせたんだから、あとは自力でなんとかしてもらうっス。モタモタしてたらミドくんの方が死んじゃうっスよ!」
そう言って少女が重症の緑髪の人物を背負った。心配してくれた少年もそれについて行く。徐々に意識が戻り、視界が鮮明になってきた。ゆっくりと起き上がって、何も言わずに去っていこうとする二人におもわず声をかけてしまう。
「ちょっと……待ち、な……!」
声を聞いて少年だけが振り返った。声を絞り出すように言う。
「アンタ、たちは……誰、なんだい?」
「もう大丈夫ですよ。胸の穴は完治してるはずです」
「あた、しは……死んだと、思ったのに……どう、やって……?」
「キールさんに会ったら、伝えてください」
「?」
「ミドさんは、いつまでも待ってますから。って──」
「………………」
それだけ言うと謎の少女と少年は森の茂みの中に消えていった。
*
「……え? ラムダ、さん⁉」
真夜中の午前1時53分、南東の発電所。
へたり込んでいるエイミーの目の前に、パチパチと静電気を放電させながら、ラムダが立っている。生きているラムダの姿を見て驚いた様子の赤髪のピエロ男が言う。
「おかしいナァ……確実に心臓は止まっていたはず……♦」
「ハッ、残念だったね! 奇跡の力で、あたしは蘇ったのさ!」
「死者を蘇らせる奇跡……僕の知ってる死神くんの仕業かな★」
「死神? 死神はアンタの方だろ!」
「キミは知らないだろうけど、いるんだよ……一人だけ。人の生き死にを弄ぶ死神くんがネ……♥」
「何、わけ分かんないこと言ってるだい! 今度は不意打ちなんて卑怯な手は通用しないよ! 覚悟しな‼」
「んふふ……安心しなよ。今度は確実に──」
右足のつま先を前に出し、両腕を交差させてトランプを扇状に広げ、ドナルドは真っ赤な口元をにんまりさせて言う。
「首を切り落としてあげるから♠」
「殺れるもんなら、やってみな……ピエロ野郎‼」
──バチィッ‼ バチバチ‼
全身から青鈍色の静電気を放出させながらムエタイのように両拳を前に構え、ラムダがドナルドを警戒する。それを見て安心したのかエイミーが声を上げた。
「やっぱり、ラムダさん! 生きてたんですね!」
「エイミー無事かい⁉ 怪我はないね?」
「はい!」
ドナルドから目をそらさず、顔を右に少し動かして、ラムダが背後のエイミーに声をかける。ラムダの無事な姿を見てエイミーも返答する。すると激しく放電して威嚇しているラムダの横に、加勢するようにキールが来て訊ねる。
「無事だったか、よかった。ラッシュはどうした?」
「さぁね……。助けられたのはあたしだけさ……」
「まさか、死んだのか⁉」
「分からない。無事に逃げくれてたらいいんだけどね……」
「そう、か」
「あたしを助けてくれた連中から、アンタに伝言だよ」
「?」
「いつまでも待ってるってさ。変な連中だったけど、心配してくれる仲間がいるんじゃないか。何があったか知らないけど、大切にしなよ」
「………………」
ラムダに諭されるように言われたキールは何も言えず閉口する。痺れを切らしたのか、ドナルドがラムダとキールに言う。
「お喋りは終わりにして……そろそろ始めよう♠ ぐずぐずしてると、可愛い鬼の子たちがみ~んな爆散《ばくさん》して肉片になっちゃうヨ? ま、僕はどっちでもいいんだけどネェ……んふふふふふ★」
そう言ってトランプで口元を隠しながら、ドナルドが嬉しそうに嗤っている。キールとラムダがドナルドを睨んで構える。頭部を失った鬼族の少女の遺体にラムダが気づき、問いただすようにキールに訊ねた。
「鬼族の子たちは全員、死んじまったのかい⁉」
「いや、全員は死んでない。多分な」
「本当かい⁉ どうしてそう言いきれるんだい⁉」
「爆破には『読み込み時間』があるからだ」
「は??? タイムラグ?」
粛清の爆破が発動するまでには『タイムラグ』が生じる。一人の魔法発動には、約30秒~1分間の読み込み時間が必要である。しかも複数人の魔法が同時に発動すると読み込み負荷がかかり、処理速度が著しく低下する。
鬼族の奴隷の数が多いため相当な読み込み負荷が予想される。ざっくり計算しても、全ての鬼族が粛清爆破されるのは夜明け頃だろう。
現在時刻は午前2時6分。夜が明ける時間は今の季節だと4時~5時頃だ。つまり全ての爆破が発動するのは、早ければ2時間後ということになる。
悠長に説明している時間などなく、キールが手短に説明したのだが、ラムダは理解できていない様子だ。それを見てキールが言う。
「単純計算すれば、タイムリミットは夜明けまでだ! それまでにベガを殺さないと発電所の鬼族たちは全員、爆死しちまう……‼」
「……っ⁉ 夜明けまでって、あと2時間くらいしかないじゃないか⁉」
──ビュ、ビュン‼
「⁉」「‼」
回転した何枚ものトランプがキールとラムダに向かって飛んでくる。咄嗟に避けようとしたがキールの頬をトランプがかすって傷をつけられる。両腕で顔を隠しながら、ラムダは放電してトランプを焼いて勢いを殺す。しかし何枚かは腕や太ももに刺さる。キールがラムダに言う。
「おい⁉ 大丈夫か?」
「ハッ、これくらい平気さ」
そう言うとラムダは太もものトランプを引き抜いて捨てる。すると右手にハートのAのカードを持ち、左手を腰に当てながらドナルドがこちらに向かって優雅に歩み寄りながら言う。
「お喋りは終わりって言ったろう? 早く僕と遊ぼうよ★」
──ダッ‼
楽しそうに嗤いながらドナルドがこちらに直進してきた。
キールとラムダが構えると2、3枚のトランプが飛んでくる。
キールは左手にナイフを順手持ちで構えて右手のナイフを逆手持ちし、次々とトランプを弾き落としていく。
ビュ、ビュン‼ ビュ、ビュ、ビュン‼
キン! キ、キン! キン‼ ガキン!
トランプとは思えないような金属音が鳴り響く‼
キールが鬼紅線で、ドナルドを捕らえようとする!
しかし華麗に躱されてしまい、キールの目前にドナルドが急接近!
ドナルドの顔面がキールの目前に迫った。すると唇を窄め、ドナルドが口から老緑色の体液をキールに吐きつけてきた⁉
ドナルドの毒霧を左腕で防ぎつつ、薄目で見ながらキールが左に避けて躱す‼
そのままドナルドの右脇の下に潜り込むように重心を移動! 右手の逆手持ちナイフで、ドナルドの右脇をスリ抜けざまに撫でるように斬りつける!
それに気づいたドナルドが、バックステップで飛び上がる‼
距離を取って興奮しながら口元についた毒霧を「ぺろり♥」と舐めて、嬉しそうにドナルドがキールを見ている。ニヤリと嗤って再び動こうとすると、ドナルドが違和感を感じたらしく視線を右手に落とした。
なんと右手に鬼紅線が巻き付いていることに気づいた。キールが「ニッ」と笑った。
ドナルドの右手を切り落とそうと、キールが勢い良く鬼紅線を引っ張った‼ その勢いで、ドナルドの右手が鬼紅線によって切り落とされた!
「?」
──と思いきや、ドナルドの右手が前方に引っ張られてピンと伸びただけだ。
「な⁉」
傷一つないドナルドの右腕のあまりの頑丈さに驚いたキールが目を丸くしてる。
すると右手首の鬼紅線をドナルドが指で摘み、軽く上下に振った。鬼紅線が大きく波打ち、逆にキールが放り投げられて地面に激しく叩きつけられた。
「──ぁ、痛っ⁉」
顔面や胸、腹などを強打し、キールは悶絶する。それを見下ろしながらドナルドが言う。
「もう終わりかい? 案外、大したことないんだネ★」
「こ……このやろ‼」
これ以上振り回されないように、ドナルドの右手首からキールが鬼紅線の縛りを解いた。そしてキールが胸を押さえながら立ち上がり、忌々しそうに前方を確認する。
「……⁉」
さっきまでいたはずのドナルドの姿がキールの目の前から消えていた。キールが周囲を見渡そうとした時、背後からドナルドが突然現れた⁉
キールの首をめがけて袈裟斬りするように、ドナルドは左手に持った鋭利なトランプを振り切る!
だが膝抜きによる脱力で頭部を下げたことで、キールが間一髪それを避ける!
頭頂部の金髪がハラハラと少しだけ切られただけだ。
その時、キールは視線の右端に青白い放電が走った!
バチバチ、ビリリリッ‼ どっすん……‼
電撃を帯びたラムダの左拳がドナルドの右脇腹を打ち抜いたのだ。ラムダに殴られたドナルドは右から左方向へ殴り飛ばされ、通路の壁に激突する。ラムダがキールに声をかける。
「大丈夫かい?」
「ああ」
ラムダの声にキールが応える。薄く粉塵が舞い上がる中、ピクピク感電しているドナルドが壁にもたれかかっているのが影で分かった。警戒しながらキールとラムダがそこから目を離さずに近づく。するとキールが気づいて声を上げた。
「違う! コイツ、ピエロ野郎じゃねぇ⁉」
壁にもたれかかっているのは、ドナルドではなく施設の職員と思われる男だったのだ。すると突然、男の服が風船のように膨らみだした。
シュ〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰‼
空気が送り込まれるような音が聞こえてきたと思った時──。
──ボォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン‼‼‼
突然の熱風がキールとラムダを襲い、周囲が一瞬だけ白く光って弾けた‼
両腕で顔を隠してキールとラムダが光の眩しさを防ごうとする。だが同時に両腕と腹部、太ももなどに棘のような何かが突き刺さり、激痛が走った。
「痛っ⁉」
顔は隠していたため目を潰されて視力を失うことはなかった。しかし徐々に皮膚が熱くなるのを感じ、同時に蜂の大群に刺されるような激痛が全身を襲ってきた⁉
壁に倒れていた施設の職員と思わしき男は腹部が破裂し、腸などの内臓が散らばって床全体が血で染まっている。その背後の壁から、ぬるりと現れるように人影が出てきて言った。
「ダメダメ、油断しちゃあ★」
それは紛れもないドナルドだった。一体どんな奇術を使ったのかは分からないが壁の中に隠れていたらしい。
腕や太ももに刺さっている金属の針を顔を歪めながらキールが抜いて捨てる。ラムダも同じように針を抜く。キールに比べて軽症なのか、あるいはアドレナリンで痛みを感じないのか、ラムダは平気そうだ。すぐにドナルドと戦えるように拳を構えている。
ドナルドは左肩の埃を右手で払いながら、首を鳴らしている。ラムダに撃ち抜かれた右脇腹も全く効いていない様子で、ドナルドは呑気にストレッチまでしている。
すると、ドナルドに聞こえないくらい小さな声で深刻そうな表情のラムダがキールに言う。
「……頼みがある」
「?」
「エイミーを連れて逃げてほしい。このピエロ野郎は……あたし一人で足止めする!」
「は⁉ アンタ一人じゃ無理だ! 殺されるぞ」
「じゃあ、二人なら勝てるってのかい?」
「なに?」
「悔しいけど……二人でも無理だろうさ。あのピエロ野郎、化け物だよ。三人ここで殺されるより、一人が犠牲になって二人を生かす方がイイ。そうだろ?」
「待て、だったらオレがやる。アンタがエイミーを連れて逃げろ!」
「無理だよ。さっきの針、毒が塗ってあったんだろう? 足が笑ってるよ」
「それは……」
キールの片足が小刻みに震えている。足の筋肉に力が入りづらいようだ。それを見て、ラムダが言う。
「鬼族のあたしなら少量の毒くらい体質的に平気なんだよ。そんな状態じゃ戦えないだろうけど、エイミーを連れて逃げるくらいならできるはずさ……」
「………………」
キールは言い返すことができなかった。すると、それを聞いていたエイミーが反対してラムダに向かって言う。
「ダメです! ラムダさんも一緒に逃げ──」
ドスっ‼
「ぅっ⁉」
問答無用でエイミーの腹部をラムダが殴って気絶させた。エイミーが力なく倒れてそれを支えながら、キールが言う。
「……死ぬなよ」
「生き返ったばかりでまた死ぬのはゴメンだよ。さぁ、早く行きな!」
ラムダの微笑みにキールが頷き、気絶したエイミーを背負って走り出した。同然ドナルドがそれを許すわけがなく、トランプを飛ばしてく。
「逃がすわけないだろう♦」
バリバリバリ‼ バッチン‼ バチ、バチン‼ トランプが青白い放電によって焼かれてパラパラと落ちていく。
ラムダの横を通り過ぎてキールを追いかけようとするドナルドだが、ラムダの右拳で左横顔を殴られる。しかし、ドナルドは胴体を右回転させて殴られた勢いを殺し、同時にラムダのうなじ付近を右肘で打ち抜こうとする。
間一髪、ラムダが頭を後ろに引いて避けるが、ドナルドはさらに右肘を伸ばして人差し指と中指で挟んだトランプでラムダの頸動脈を切ろうとする‼
「んぐっ⁉」
避けきれずに、ラムダは首を薄皮一枚ほど切られてしまう。しかしラムダも負けじと左足のハイキックをして、ドナルドの右頬の顎を蹴り飛ばした‼
蹴り上げられたドナルドは通路の奥に向かって飛んでいくが、バク宙をしながら優雅に体勢を立て直す。
ラムダは首の傷口からツーッと血が流れ、それを手の甲で血を拭った。
ドナルドが周囲をチラリと見渡す。キールとエイミーは消えたことに気づくと、ドナルドがニンマリ嗤って言う。
「くふふ……。やってくれたネ……★」
「今度はあたしがアンタを黒焦げにしてやる……覚悟しな‼」
そう言って拳を顔の前に構えながら青鈍色の光と共にラムダが放電し始める。そして静電気によって、威嚇するようにふんわり髪の毛が持ち上がった──。
*
一方、気絶したエイミーを抱えたまま発電所の脱出に成功したキールは、森の中を走っていた。万全な状態とは言えないが逃げるだけなら問題なかった。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
できれば今すぐにでもカジノ・ザ・ベガ・ラグナスに向かいたいが、エイミーを抱えたままではどうしようもない。
「仕方ない、隠れ家まで一旦戻るしか……」
ガサガサ……!
「⁉」
木の裏から獣人らしき人影が現れた。キールが少し驚きながら言う。
「ラッシュか⁉」
目の前に現れた犬系の獣人、ラッシュは全身に擦り傷を負っており、尻尾が切断されて痛々しい状態だ。ラムダがいないことに気がついたのか、ラッシュがキールに問いただす。
「……? おい、ラムダはどこだ⁉ 先に来ただろ⁉」
「………………」
「まさか……てめぇ‼ ラムダを見捨ててきたのかァ‼」
「違う‼」
「じゃあ何でラムダがいねぇんだァ‼‼」
「それは……ラムダが、オレとエイミーを、逃してくれたんだ……」
「やっぱり一人だけ残して逃げてきたんだろうがァ‼」
「………………」
キールは言い返せずに俯いてしまう。ラッシュは興奮が収まらず、牙を剥き出しにして唸り声を上げて言う。
「ガルルルル‼ ちくしょう‼ クソがァ! だから余所者に頼るなんて、オレは反対だったんだ‼‼」
「口を慎め。逃げたのはラッシュも同じ。キールを攻める権利、ない」
荒ぶっているラッシュの後ろに巨人族の大男、ゴメズが現れて言った。キールがそれを見上げた。するとキールが抱えているエイミーを見て、ゴメズが言う。
「キール、お前はこれからどうする気だ?」
「オレは……ベガ・ラグナスを、殺しに行く」
「一人でか?」
「ああ」
「無謀だ。一度、作戦を立て直すのが賢明だ。ラムダは私とラッシュで必ず連れ戻す。キールは隠れ家に帰ってからエイミーを見ていてほしい」
「そんな悠長にしている時間はない! 急がないと鬼族、全員が死んじまう‼」
「む、どういうことだ? 説明してほしい」
ゴメズとラッシュにキールは状況を手短に説明した。
粛清による爆破魔法が発動したこと。このままでは夜明けまでに、この島にいる鬼族がすべて爆死してしまうこと。ラムダがドナルドと名乗るピエロの刺客と一人で対峙していること。
ゴメズとラッシュは顔を歪ませている。ゴメズが言う。
「最悪の展開、ということか……」
「まだ希望が無いわけじゃない! ベガが死ねば魔法が解除されるはずだ!」
「以前も言ったが、それは無理だ。勝利の女神に愛されたベガに勝てる者など、この世に存在しない。今回の作戦だけが、唯一の希望だったのだ」
「それでも……やるしかない」
「なるほど。忠告しても、無駄のようだな」
するとイライラした様子で腕組みをしたラッシュが叫んだ。
「おい、ゴメズ! そんな薄情な野郎ほっとけよ‼ 今はラムダを助けに行くのが先決だろ‼」
ラッシュを見て頷き、ゴメズがキールに言う。
「隠れ家にはダリアが戻っているはずだ。エイミーは彼女に預けてくれ。ラムダのことは私とラッシュに任せろ」
「そのあとはどうする気だ?」
「独断では決められないが、私はこの島を脱出した方がいいと考える。ベガを殺すことが不可能な以上、もう我々にはどうすることもできん。鬼族の奴隷たちは……かわいそうだが助けられんだろう」
「そうか……」
「私にとってはエイミーやラムダ、仲間たちの命の方が優先順位が高い。自分たちも助けられん状態で他人を助けることなど、到底できないだろうからな。キールもそうじゃないか?」
ゴメズの言い分を聞いてキールは小さく頷いた。仲間の命が優先なのはキールも同じである。続けてゴメズがキールに言う。
「作戦が失敗に終わった以上、これで我々の協力関係は終了する。報酬はダリアから貰ってくれ」
「失敗しておいて、報酬なんて……」
「一時的とはいえ、危険な作戦に協力してもらって無報酬では、エイミーの顔に泥を塗ってしまうに等しい。我々の誠意だ、受け取ってくれ」
「………………ああ、わかった」
キールが小さく返事をする。遠くでラッシュがなにか叫んでいるようだ。
「ゴメズ! は、早く来いって!」
そんなに早く行きたいなら一人で先に行けばいいのだが、よほど一人が怖いのだろう。ゴメズが一緒でないと発電所の中に入りたくないらしい。それにゴメズが返事をする。
「分かっている! ……短い間だったが、ありがとう。あんな楽しそうなエイミーの顔は久しぶりに見た気がする」
「え?」
「それでは、健闘を祈る」
そう言って、ゴメズはラッシュの元へ、ドスドスと走っていった。気絶したままのエイミーを抱え、キールは振り返らずに、急いで隠れ家に向かって走っていった。
隠れ家に到着すると中にはゴメズの言う通り、炭鉱族の女のダリアがイスに座っていた。ダリアはキールと抱えられているエイミーに気づいて驚き、すぐにエイミーを寝かせるためにキールに手を貸してくれた。
キールがダリアに状況を説明した。そのまま隠れ家を出ていこううとした時、キールはダリアに呼び止められる。
「ちょっと待ちなさいな」
「………………」
「少ないけど、これを……」
そう言ってダリアは金貨を三枚、キールの手に握らせた。申し訳なさそうな緊張で口元に力が入り、声を漏らすようにキールが言う。
「しかし……」
「ちゃんと報酬は受け取れって、ゴメズが言ってたんじゃないかい?」
「……ああ」
「じゃあ、それを断るほうが失礼ってもんだよ。ま、エイミーをしっかり隠れ家まで運んできたお礼だと思って、遠慮なく受け取りな」
ダリアにそう言われたキールは金貨三枚をポケットにしまった。そしてキールが隠れ家を出ていこうと玄関ドアの前まで行くと、心配そうにダリアが問いかけてきた。
「一人で、行く気かい?」
「そのつもりだ」
「エイミーが目を覚ましたら、悲しむだろうね」
「………………」
「キールさん、アンタ。この娘のこと……どう思ってるんだい?」
「どういう意味だ?」
「そのままの意味だよ」
やれやれとため息をつき、両手を腰に当ててダリアが言った。キールは眉間にシワを寄せて複雑そうな表情で言う。
「オレとエイミーは……昔、旅先で出会った知り合いで──」
「ハァ……そうかい。ま、キールさんにその気がないんじゃあ、仕方ないね……」
「?」
「死なないでおくれよ。エイミーのためにもさ」
「……約束は、できない」
「そこは嘘でも『イエス』って言っておくれよ」
「………………死なない、約束する」
「ありがとうね」
そして、振り返らずにキールはドアを開けて出ていった──。
──現在時刻は、午前2時21分。タイムリミットは、約1時間半ほどだ。
隠れ家のドアの前で、キールは夜空の星空を見上げて深呼吸を数回繰り返す。両目をつぶって沈黙して3秒間静止する。そして決意するように両目を見開いて前を見据えた。
カジノ・ザ・ベガ・ラグナスのタワーがある方向を見て、キールは一心不乱に走り出した──。
*
眠らない街、カジノ・ザ・ベガ・ラグナス。
カジノの一階では今日も24時間営業でギャンブルが行われている。カラフルなネオンカラーの人工的な光があちこちに眩しく輝いており、大勢の道楽者たちで賑わっている。
対象的に、エレベーターで上がって最初にドアの向こうに広がる最上階の大広間。そこは床が黒く光沢しており、天井は透明なガラスで自然な星空の光が広がっている静寂の世界。
その中央にポツンと一脚のイスがあり、メイド服を身につけた桃髪の鬼族の少女が行儀よく座っている。
両足を閉じて、両手を太ももの上に合わせて置き、両目を閉じて瞑想のような深い呼吸を繰り返している。4秒で空気を吸って、8秒で息を吐く。
まるで美しく可愛らしい人形が座っているかのような妖しい雰囲気を漂わせている。少女は誰かを待つように、ジッ……とその場から微動だにしない。その時──。
「痛っ⁉」
突然、痛みを感じたのか、少女が少し顔を歪めてうなじ付近を手で押さえた。首筋のうなじに刻まれた呪印が紫色に点滅し、不穏な雰囲気を漂わせる。
少女が上半身を前のめりに倒し、数秒だけ呼吸を止めて苦しそうに息を詰まらせる。
少女の額から汗の水滴が流れ落ち、そのまま引力に吸い込まれて床めがけて飛んでいく。黒光りする床の上にポチャっと落ちて、水滴が虚しく砕け散っていく。
「……キール様、どうして?」
苦しそうに、そして悲しそうに、桃髪の少女は小さく、小さく……つぶやいた。
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