ミドくんの奇妙な異世界旅行記

作者不明

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一攫千金の国『ベガ・ラグナス編』

侵入者を排除します……‼ キール対ルル、青鈍色の激闘!

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「〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰っ‼」
「あ、もごもご……目が覚めたっスか? ……ごっくん。相変わらず頑丈っスね」

 悪夢から目覚めたかのようにうめき声を上げて起きたミドに、ベッドの左のイスに座ってバナナを頬張っているフィオが声をかけた。

「……あれ、えっと、ココは?」
「マンボウ号の中っスよ」

 まんまるマンボウ号の一室。ベッドに寝かされていた状態のミドは上半身を上げた。右手で後頭部を掻きながら周囲を見渡し、包帯グルグルで止血されている左手首を見てミドが言う。

「あは、こりゃ。またフィオとマルコに心配描けちゃったみたいだね~……」
「ちょっとは反省してほしいっス。そんな調子だと命がいくつあっても足りないっスよ」
「ギリギリでやめるつもりだったんだけど。意外と重症だったからさ」
「言い訳なんて聞きたくないっス!」
「……あはは、ごめん」
「よろしい。マルちゃんにもちゃんにも謝るっスよ。ミドくんの血のやつ見るの初めてだったから、マルちゃん泣きそうになってたっスから」
「うん、わかった」

 眉を下げて申し訳なさそうにミドが謝罪した。どうやらフィオはミドが目覚めるまでベッドの隣にいてくれたらしい。さっき食べていたバナナはミドに食べさせるはずだったのだが、小腹がすいたから一本、いや二本ほど食べてしまったそうだ。

 現在ミドの治療をして完全回復をさせるため、フィオとマルコ、気を失っていたミドはまんまるマンボウ号に戻っている。

 フィオの話では入国審査官に事情を説明してマンボウ号に戻ろうとしたのだが一度止められてしまい、面倒な手続きを経て、現在に至るらしい。カジノの国にある医療機関をお勧めされたのだが、金額が桁違いで払える金額ではない。国外での治療の場合は自己責任ということで、マンボウ号に戻ることを許してもらった。

 ミドはフィオにマルコを呼んできてもらった。ミドが目覚めたことを知ったマルコはドタドタと走って来て、また泣きそうになっていた。

 ミドが「心配かけちゃったね」と謝ると、マルコは嬉しそうに涙を目に浮かべ、鼻水をすすった。フィオとマルコ、そしてミドの三人は状況を整理し始める。

 二日目の朝食時。突然の爆破テロ事件でキール奪っていった謎の人物たちを追いかけて、ミドたちは尾行を開始した。

 そして気づかれずに彼女らの隠れ家アジトを発見したのだが、中に何人いるか分からず、迂闊な行動はできないと判断。テロリストたちが何を目的にしているのかを調べるために隠れ家アジトの周辺に盗聴器を仕掛けて遠目から監視することにした。いつもキールが使っていたフィオ特注の盗聴器だ。

 その結果、テロリストたちがキールと共に発電所を襲う計画をしていることをミドとフィオ、マルコの三人は知ってしまう。

 キールに戻る気がない以上は、無理やり連れ戻すのは難しい。とにかくキールが向かった発電所方面に向かってミドたちも行く予定だった。しかしフィオが聞き間違えてラムダとラッシュが向かった発電所に来てしまったのだ。

 ラムダとラッシュの二人を発見するミドたち。フィオは急に「おしっこしたいっス」と言って森の奥の物陰に隠れてしまい、ミドとマルコは次の行動を考えている最中だった。

 その時、ドナルドがラムダの背後に現れて一撃で心臓を貫いてしまったのだ。声を上げそうになったマルコの口をミドが押さえて身を隠した。

 それからミドは周囲を警戒しながらドナルドの動向の観察を続けた。ミドたちに気づいていない様子のドナルドはラムダが息絶えたのを確認すると嬉しそうに嗤いながらその場を去っていった。

 ドナルドの足音が遠ざかっていくのを聞いてからミドは倒れているラムダに向かい、それにマルコもついていく。

 その後は、ミドが自らの血に含まれた世界樹の雫の成分を使ってラムダをぎりぎりで蘇生させて気を失い、現在に至る。

 するとマルコが言う。

「本当に、ミドさんの傷はすぐ治るんですか?」
「そうだね~。左手首だけだから、あと一時間くらいで完治すると思うよ~」
「どうしてミドさんは……そんなに治りが早いんですか?」
「ボクの体の中の血液には『世界樹の雫』っていう成分が流れてるからだよ~」
「え? だから人間なのに、そんなに自己治癒力が早いんですか?」
「だね~、それだけが取り柄かな~」

 二人の会話を横で聞いていたフィオが小型のラジオを置いて言う。

「死んだら治癒もできないっスよ。だいたいミドくんは女にだけ甘すぎるっス! 男は見捨てるくせに!」
「そんなことないよ~」
「じゃあ何で、あの後ラッシュって獣人は無視したっスか?」
「覚えてないな~」
「ほら、そうやって誤魔化す!」

 その時、フィオが持ってきていたラジオから女子アナウンサーの声が聞こえてきた。

「──それでは続きまして天気予報です。今夜、午前3時56分頃から大雨になるとの予報です。カジノにご来店の方は濡れないように傘を持参してください」

 それを聞いていたミドが言う。

「すごいね、最近の天気予報って分単位で予報できるんだ」
「あ~それ聞いたっスけど、この国って天気予報もギャンブルにしてるらしいっスよ」
「え? どゆこと?」
「いやだから、これからの天気が『晴れ』か『雨』かで賭けるらしいっス。丁半博打と同じっスよ。分単位で賭けると金額が膨れ上がるから、昨日ベガ・ラグナスが『3時56分に雨が降る』って賭けたみたいっス。お天気キャスターがそれ信じて『雨』だって確信してるんじゃないっスかね。もはや予言っス。勝利の女神に愛されてるって本当っぽいっスね」
「なるほどね~……」 

 すると胡座あぐらをかいて座り、瞑想と同じ様に手を合わせ、ミドは考え込むように目をつぶる。そして一分ほど経つと、ミドが目を開けて言った。

「はは……こりゃ、参ったね~」

 そう言って窓の外で曇る空を見上げながら、ミドは静かにつぶやいた。

   *

「はぁ……」

 カジノ・ザ・ベガ・ラグナスのタワーを木の陰からキールが見上げている。最初の侵入では無様に捕まって拷問まで受けた経験から、同じ方法で行くのは気が引ける。

 それに警備だって厳重になっているのは明白だ。チラッと見ただけでも入口付近には黒服の男たちが以前よりも多く配備されている。最上階にいた黒服たちも一階や二階、VIPルームなどに移動させられている可能性が高い。つまり内部からの侵入はより困難になってるってわけだ。

 別の方法で上まで行けないかキールは周囲をくまなく探索することにした。カジノの裏側にキールが回って行く。

「……?」

 カジノの壁面に奇妙な植物のツルをキールが発見した。どこまで続いているのかキールが見上げると、壁面をびっしりと植物のツルが最上階まで成長しているのが分かった。それを見てキールが思わず声を上げる。

「そうか! ミドの種か!」

 入国してすぐカジノの周辺を調べた時にミドが侵入しやすくするために森羅の種を撒いたと言っていた。その後、一日以上時間をかけて成長していったのだろう。

 ミドと仲違いしてしまって結局は最初の潜入時には使わなかった。そのときはまだ成長段階で最上階までは植物のツルは登っていなかったかもしれないが……。

 とにかくラッキーだ、これを登っていけば楽に最上階まで行けるはず。キールは植物のツルを掴んでグイグイっと引っ張って強度を確認する。ミドが生んだ植物は非常に強固でキールの体重くらいではちぎれないようだ。キールはニヤリと口角を上げて勢い良く登っていった。

 カジノ一階、二回、VIPルーム。そして最上階まで続くエレベーターの周りのガラスの壁をキールが登っていく。徐々に風が強くなり、しっかり捕まってないと落ちそうになる。チラリと真下をキールが見てしまう。

「落ちたら一環の終わりだな」

 そう言いながら右手で掴んだツルに力を込める。鬼紅線をガラスの壁に突き刺してキール自身の胴体に巻きつけて命綱代わりにする。万が一、植物が切れて落ちそうになっても鬼紅線がキールをその場にとどめてくれるだろう。そして再び視線を天に上げてキールが丁寧にツルを登っていった。

 エレベーターの最上階付近まで登ってきたキールは最上階の大広間のガラス天井と思わしき場所まで来た。キールはふところからガムテープを取り出してガラスにペタペタと何重にも貼り付ける。

「まさか、こんな古い手口を使う羽目になるとはな……」

 キールはそう言いながらガムテープを貼り終えると、ガムテープの中心を肘鉄ひじてつでコツンと軽く突いた。

 ピキッ!

 するとガラスにヒビが入った。本来ならガラスを割った瞬間に大きな音が響き渡るのだがガムテープを貼ったおかげで音が出ない。古い空き巣の手口だ。

 そして慎重にガムテープを剥がしながら割れたガラスを外していく。ガラスで手を切らないように気をつけながら中に入り、鬼紅線を使ってスルスルと大広間の床まで降りていった。

 キールの目の前に広がっているのは、真っ暗なカジノ最上階の大広間。

「──待っていました」
「!」

 キールは中央の人影の声に気づく。大広間の中央には両手に双錘そうすいを持った人影が静かにたたずんでいた。

 双錘とは棒の先に鉄球がついているシンプルな打撃武器である。ルルの持つ鉄球には無骨な棘のような突起があり、一撃で致命傷になりかねない殺傷能力を感じさせる。

 その人影を見てキールは目を開く。その桃髪の愛らしい少女はキールを見据えると覚悟を決めたようにこちらに向き直った。

 ──それは『ルル・アーシュラ』で間違いない。キールが思わず声を漏らす。

「……っ! ルル⁉」
「キール様が粛清魔法プログラムを発動させたことは、既に知っています」
「?」
「あれほど、この国から出ていってくださいとお願いしたのに……残念です。キール様──」

 ルルが双錘そうすいを構えて言う。

キール様侵入者を排除します……‼」
「待て! オレは、ルルと戦いに来たんじゃない!」
「問答無用です‼」

 バチィンッッッ‼

 青白い静電気に身を包み、乾いた空気を切り裂くような雷の音と共にルルが直進して飛びかかって来た‼

「はぁッ‼」

 ルルが右手の双錘でキールの右横腹を殴りつけようとする。しかし電気をまとった双錘はキールの腹を空振りし、近くの柱に激突する!

 ガギン‼ ビキビキ……!

 柱はキレイな球状に凹み、所々にヒビが走っている。キールはルルから距離を取って叫んだ。

「待て、話を聞け! 魔法プログラムを発動させたのはオレじゃない!」
「じゃあ、誰だって言うんですか‼」
「それは……」

 睨みつけてくるルルに問われがキールが言葉に詰まる。奴隷開放運動エイミーたちの作戦の失敗が原因だと言えば、ルルにとっては同じことだ。ルルは悲しそうに声を漏らす。

「やっぱり……キール様が……。──ぅぐっ‼」

 すると、ルルが首を押さえて苦しみ始めた。首筋の呪印が点滅している。苦しみながらルルが言う。

鬼族同胞に仇なす存在は、たとえキール様といえど……許しません‼」
「違うんだ、本当に、オレは──」

 ビリリ! バァン‼ バチバチバチバチバチ‼

 次の瞬間。ルルが激しく放電し、青鈍色あおにびいろに発光したかと思うと、一瞬でキールの眼前まで飛んできた。

 ルルが両手の双錘を振り上げる。
 キールがバク転して後ろにかわす。
 ルルの双錘が勢い良く床を叩きつける‼
 キールは反撃せず両手ナイフで、ルルを見て構える。
 ここから本格的なルルの猛攻が始まった!

 ガッ‼ ガッ‼ ガッ‼ ガッ‼ ガキンッ‼ ガキンッ‼ ブンッ‼ ブンッ‼ ガキンッ‼ ガッ‼ ガッ‼ キンッ‼ キンッ‼ ガキンッ‼ ガッ‼ ガッ‼ ガッ‼ ガッ‼ ガキンッ‼ ガキンッ‼ ブンッ‼ ブンッ‼ ガキンッ‼ ガッ‼ ガッ‼ キンッ‼ キンッ‼ ガキンッ‼ ガッ‼ ガッ‼ ガッ‼ ガッ‼ ガキンッ‼ ガキンッ‼ ブンッ‼ ブンッ‼ ガキンッ‼ ガッ‼ ガッ‼ キンッ‼ キンッ‼ ガキンッ‼ ガッ‼ ガッ‼ ガッ‼ ガッ‼ ガキンッ‼ ガキンッ‼ ブンッ‼ ブンッ‼ ガキンッ‼ ガッ‼ ガッ‼ キンッ‼ キンッ‼ ガキンッ‼ ガッ‼ ガッ‼ ガッ‼ ガッ‼ ガキンッ‼ ガキンッ‼ ブンッ‼ ブンッ‼ ガキンッ‼ ガッ‼ ガッ‼ キンッ‼ キンッ‼ ガキンッ‼ ガッ‼ ガッ‼ ガッ‼ ガッ‼ ガキンッ‼ ガキンッ‼ ブンッ‼ ブンッ‼ ガキンッ‼ ガッ‼ ガッ‼ キンッ‼ キンッ‼ ガキンッ‼ ガッ‼ ガッ‼ ガッ‼ ガッ‼ ガキンッ‼ ガキンッ‼ ブンッ‼ ブンッ‼ ガキンッ‼ ガッ‼ ガッ‼ キンッ‼ キンッ‼ ガキンッ‼ ガッ‼ ガッ‼ ガッ‼ ガッ‼ ガキンッ‼ ガキンッ‼ ブンッ‼ ブンッ‼ ガキンッ‼ ガッ‼ ガッ‼ キンッ‼ キンッ‼ ガキンッ‼ ガッ‼ ガッ‼ ガッ‼ ガッ‼ ガキンッ‼ ガキンッ‼ ブンッ‼ ブンッ‼ ガキンッ‼ ガッ‼ ガッ‼ キンッ‼ キンッ‼ ガキンッ‼ ガッ‼ ガッ‼ ガッ‼ ガッ‼ ガキンッ‼ ガキンッ‼ ブンッ‼ ブンッ‼ ガキンッ‼ ガッ‼ ガッ‼ キンッ‼ キンッ‼ ガキンッ‼ ガッ‼ ガッ‼ ガッ‼ ガッ‼ ガキンッ‼ ガキンッ‼ ブンッ‼ ブンッ‼ ガキンッ‼ ガッ‼ ガッ‼ キンッ‼ キンッ‼ ガキンッ‼

 ルルの力任せの猛攻に、キールは両手ナイフで受け流していく!
 しかし防御するだけでは避けきれず──。

 ゴスッ‼

ぐ⁉ ぃぎ、あぁ、ががぁ‼」

 しかし、キールは避けきれずルルの双錘で腹を殴られてしまう。同時に激しい電撃を浴びて全身に電流が走った。

 ドッスン‼

 そのまま吹き飛ばされたキールは柱に激突する。双錘の棘によって一撃で腹部が血まみれだ。腹部を押さえながらキールは柱に寄りかかって立ち上がろうとする。しかし全身が痺れてキールは満足に立つことすらできなかった。

 ……バチッ! ……バチッ! ……バチッ!

 一歩歩くたびに足元からバチッと放電させながら、こちらに歩み寄ってくるルルに迷いは感じられなかった。

 キールは迷っていた。このままでは本当にルルに命を奪われるだろう。鬼紅線で拘束しようにもさらに感電させられてしまうだけだ。かといってルルを傷つけるなんてできない。

 バチンッ‼

 放電の音を響かせてキールの目の前まで、ルルが歩み寄る。ピクピクと感電して倒れているキールを見下ろしながら、ルルが口を開いた。

「……どうして反撃しないんですか?」
「い、言っただろ……オレは、ルルと……戦いに、来たんじゃ、ない……」

 ルルは何も言わず、ただ右手に持った双錘を真上に振り上げて、キールの頭部を見据えている。そして冷たい目つきで、ルルがつぶやく。

「キール様、ご覚悟を」
「………………」

 キールは両目をつぶって覚悟を決めた。
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