ミドくんの奇妙な異世界旅行記

竜がいた国『パプリカ王国編』

竜が死んだ日と、英雄が生まれた日

「竜が出たぞおおおおおおおおおおおおおおおおお！！」

　一人の兵士が叫ぶと、目の前に金色こんじきの巨大な竜が出現していた。

「ひゃあああああああああ！　た、助けてくれええええええええええええええええ！」

　竜は目の前にいた男に噛みつき、上半身を食いちぎってしまう。竜はその男の上半身を口から吐き出した。

「ドッペルフ様あああああああああああああああああああああああああああああ！」

　ドッペルフと呼ばれた男の上半身は血しぶきを上げて地面に叩き落とされる。竜は怒りをあらわにするように咆哮を上げた。

「ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッッッッ！」

　だが次の瞬間、竜の首が斬り落とされた。

　ドスンと地響きを立てて竜の首が地面に横たわる。そして数秒の沈黙があると、兵士の一人が大声で叫んだ。

「カタリナ様が竜を討ち取ったぞおおおおおおおおおおおおおおおお！」
「やった……やったああああああああああああああああああ！」
「汚れた邪竜め！　思い知ったかあ！」

　兵士たちが大喝采が始まる。
　すると雨が降り始めた。まるで竜が悲しんでいるかのように、雨が竜の瞳に落ちていく。

　カタリナは竜の瞳から涙が零れ落ちるのを見た。そして誰にも気づかれぬよう、静かに涙を流し、雨空を見上げた。

「マルコ、ごめんね……」

　こうしてカタリナという女性は、竜を討ち取った英雄として尊敬され、後に女王の地位にまで上り詰めるのである――。