異世界を統べるのは人ではなく竜だ

1ta

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第4章 竜人の試練篇

第44話 クリアの試練

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 「あれ?リュート?みんな?」

 私は急に一人になってしまった。リュートと離れるのはいつぶりだろうか。

 脳内アナウンスによると、20階層のボスを倒さなければ、私は帰ることが出来ないらしい。こんな所、すぐに攻略しなければ。みんなもきっと同じ状況にあるはずだ。でも、みんなの事だからきっと大丈夫だろう。私もモタモタしてはいられない。

 私はモンスターを全て重力操作で吹き飛ばしながら進む。さらに、重力操作で自身の体を浮かび上がらせ高速で移動する。

 あっという間に20階層へたどり着く。早くリュートに会いたい。そんな想いが胸を締め付け、焦りが見え始める。

 落ち着かなければ。冷静になろう。この先はボスだ。とてつもない強敵が、出てくるかもしれない。

 だいぶ気持ちが落ち着いたので、ボス部屋に入る。すると、

 『混神種の存在を確認しました。ボスが強化されます』

 えっ?私の相手強くなるの?

 そこには私が立っていた。

 「私が相手か…勝てるかな…」

 自分と戦うことになるとは夢にも思わなかった。しかも、今の私よりもおそらく強い。どう戦おうか。

 そんな事を考えていると、私に重力がかかった。

 「うっ!」

 びたん!と床に押さえつけられる。

 「なら、こっちも!」

 「重力操作グラヴィティプロセス超過重ギガトン!」

 相手に重力をかけるが、ビクともしない。

 「なんで私の重力が効かないの!」

 私の体にかかる重力が次第に強くなる。このままでは身体が持たない。

 「身体強化!」

 身体強化を使って、体を頑丈にする。が、このままではいつか競り負ける。なにか手を考えなくては。

 今、私にかけられている重力と逆向きの力に重力をかける。少しずつ体が軽くなる。少しだが、体が動くようになった。

 偽者の私に徐々に近づいていく。近づくたびに私にかかる重力が強くなるが、気合いで、押し返す。そして、手の届く距離までやって来た。

 「はぁぁぁぁぁ!」

 気合いの掛け声とともに、偽私の身体にしがみついて、私ごと重力をかける。このまま押し潰そうと画策する。

 しかし、やはり偽者の私はビクともしない。このままいくと、私の体が先に限界を向かえる。

 「うぅ。なんて強さなの?」 

 正直勝てる未来が見えない。私は今の今まで重力しか使って来なかった。重力しか使えないのだ。今まで重力が効かない相手なんてほとんどいなかった。あの巨大なゴーレムのコアにさえ効いたのだから。

 何か手はないか。思いついたことを手当たり次第にやってみる。最大まで身体強化した手で殴りかかってみるがまるで聞かない。逆に殴り返される。

 バキィ!鈍い音が部屋に響き渡る。激しい痛みが襲ってくる。頭を殴られ右角が片方折れる。脳が揺さぶられ、気を失いそうになるのを必死に耐える。

 勝てない。そう感じてしまった。さらに重くなる体に立っていられなくなる。膝をついてしまう。相手の足から蹴りが繰り出される。避けられないので、まともに食らう。顔、体、腕、足。あらゆる箇所に蹴りが入る。とても痛い。血が出てくる。

 徐々に意識が薄くなっていく。今までの出来事が、走馬灯のように駆け回る。ごめんね、リュート。私このまま死んじゃうみたい。

 「俺はクリアを信じてる」

 その言葉に我を取り戻す。そうだ。なぜ、諦めた。まだ、死んではいない。リュートやみんなとまだ再開していない。

 死の危険からか、感情が爆発する。リュートに信じてもらったあの日からずっと私はリュートのことが…

 「リュート!愛してる!これまでもこれからも!」

 想いが溢れだす。リュートを愛しているという大切な気持ち。みんなも同じくらい愛しているという、かけがえのない気持ち。だから私は絶対に負けない。

 『感情の高揚を確認しました』

 『重力操作が強化され、進化先が解放されました』

 『致死の危機より強制的に進化を開始します』

 体が白く光る。久しぶりの感覚だ。身体が変化していく。角が再び生え直し、少しだけ立派になる。体のあらゆる所が成長する。身長が少し伸び、胸も尻も大きくなり、尻尾と翼が消える。

 『進化が完了しました』

 全身に力がみなぎる。今の私ならやれる。私の新しい力で! 

 「重力操作グラヴィティプロセス透渦クリアボルテックス!」

 激しい重力はやがて一箇所に固まり、渦になる。

 私以外の全てがそこに吸い寄せられる。偽者の私も為す術なくそこに吸われ、渦は全てを飲み込みやがて消えた。

 「勝ったよ!リュート!」

 私は勝利の喜びを噛み締めた。
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