異世界を統べるのは人ではなく竜だ

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第5章 竜王の暮らし篇

第50話 何でも屋

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 家を建てて1ヶ月くらいが経過した。未だに大きな依頼は来ていない。

 この国は思ったより平和だ。そう簡単にゴロゴロと大物退治の依頼は舞い込んでこない。なので、何でも屋として働くことを始めた。モンスター退治だけではなく、商人の護衛や、逃げたペット探しまで色々な仕事をこなした。俺たちもこの街では割りと顔が利くようになってきた。

 「リュート。今日は海に大量発生したモンスターの駆除だよ」

 俺たち五人は基本一緒にいるが、時にバラバラに仕事をする時がある。今日はその日だ。サレナは剣の腕、ミラは弓の腕、ルージュは魔法の腕を買われ、王国の兵士の指導者として、時折王城に呼ばれるようになった。しかし、何故か俺とクリアは一向に呼ばれる気配がない。まぁ面倒だからいいのだが。そんなクリアは秘書的なことをしてくれている。ありがたいことだ。

 今日はサレナが城に呼ばれ、ミラとルージュは家で留守番だ。俺は今、依頼された仕事にクリアと二人で向かっている。

 「なんか嬉しそうだな?クリア?」

 「しばらくリュートと二人きりってなかったから、二人きりになれて嬉しいの」

 そう言って、腕を組んでくる。相変わらず可愛いな、クリアは。

 「仕事しないとな」

 海にやってきた。やっぱりここの海は綺麗だ。前に来た時はまだ竜だった。だいぶ懐かしく感じる。

 「人は誰もいないね」

 「モンスターが大量に出たからだろう」

 しばらく砂浜を歩いていると、赤い蠢くものを発見する。

 「あれだよリュート!」

 そこには大量のカニがいた。

 「さっさと掃除するぞ」

 「雷撃の雨ライトニング・レイン

 カニが雷に打たれ、蒸発していく。1分も経たずに仕事を完了する。

 「よし。終わりと」

 「お疲れリュート」

 今回の依頼者の元へ向かう。どうやらあの辺に土地を持つ貴族らしい。

 「ありがとうございました。本当に助かりました」

 「いえいえ、困ったらまた呼んでください」

 報酬を受け取り、家に帰宅する。ミラとルージュが出迎える。

 「お帰りリュート」

 「お帰りなさい!リュートさん!」

 「ただいま」

 いやー。家に帰って誰かいるっていいもんだ。サレナはまだ帰って来ていないようだ。ソファに寝転がる。こういったゆっくりと過ごす時間も悪くない。

 みんなもこの家でそれぞれの時間を楽しんでいる。サレナやミラは読書をするのが好きでよく本を読んでいる。ルージュは新たな魔法を構築するのが趣味のようだ。クリアは掃除や洗濯など家事をするのが大好きみたいだ。今は洗濯物を干している。

 「クリア?手伝おうか?」

 「ううん。大丈夫だよリュート。私が好きでやってることだから」

 クリアはなんていい女なんだ。このままクリアに一生頼りきりで、ダメ人間になってしまいそうなくらいだ。

 この世界にはもちろんテレビはない。それが俺のダメ人間化を防いでくれている。これで、ゲームなんてあった日にはもう。一生外に出なくなる自信がある。ゲームがない世界で良かった。

 そんなことを考えていると、サレナが帰宅した。

 「ただいま戻りましたわ」

 「お疲れ。サレナ」

 「リュート様。帰宅してそうそうですが、大事な話が」

 「なんだ?」

 「リュート様にお仕事ですわ。しかも、王城の」

 ついに俺は王城にお呼ばれすることになったのだった。
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