異世界を統べるのは人ではなく竜だ

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第8章 勇者の暮らし篇

第91話 子供勇者

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 さて、新人冒険者と手合わせすると言っても何から始めればいいか。まぁ考えても仕方ないのでぶっつけ本番でいいだろう。
 
 手合わせの場所は何時ぞやの試験会場でもある場所だ。俺と手合わせしたい相手は、特になんの制約もなく、ただただ俺の前にやって来る。

 一人の男性冒険者がやって来た。

 「あれ?ここに勇者が居るって聞いてきたんだけど、子供しかいないな?」

 この見た目はつくづく面倒くさいな。

 「俺が勇者だが?」

 「えっ!こんな子供が?ギルドマスターも冗談が過ぎる。勇者なんて呼べなかったんだな…」

 いちいち腹が立つ野郎だな。軽く屠るか。

 「まぁそこまで勇者と信じられないなら、かかって来なよ。後ろに隠れてる全員まとめてな」

 入口付近に集まっていた冒険者たちに声をかける。

 「おいおい、この人数相手に大丈夫か?」

 「後、一万人くらい連れてきても余裕だ」

 この場に集まった冒険者は約20人。全員Dランク以下の冒険者だ。余裕だろう。

 「おっ?なんだなんだ?」

 「楽しそうなことやってるじゃないか」

 観客も集まってくる。

 「じゃあ遠慮なく行かせてもらうぜ!はぁ!」

 最初に来た男性冒険者が剣を振りかざしてくる。うん、遅い。遅すぎて止まって見える。せっかくの手合わせだから、挑んでくる相手の武器と同じ武器で対応しよう。

 「遅いぞ」

 「何?」

 両手で振りかざしてきた剣を片手で持った剣で受け止める。

 「剣はこうやって使うんだ」

 俺は一瞬で相手の剣を払い除け、後ろに回り、剣を突き立てる。

 「は、速えぇ…」

 一瞬の出来事に周りの観客も呆気に取られる。

 「す、凄いぞあのガキ!」

 「本当に勇者なのか?」

 すると、今度は双子の女槍使いが俺の前に現れた。

 「ふん!何が勇者よ!」

 「私たちがあんたみたいなちびっ子なんて、倒しちゃうんだから」

 しかし、お前らは通常の俺より明らかに年下なんだよなぁ。この見た目だと明らかに年上に見えるが。

 「くらえ!」

 「はぁぁぁ!」

 左右から槍の連続攻撃が繰り出される。しかし、槍は一向に俺には当たらない。

 「何で!」

 「当たらない!」

 戦場でそんなに焦ったら足元すくわれるぞ。槍を二本創成し、両手に持つ。そして、双子の双撃を全ていなす。

 「こ、こいつ!両手で!」

 「まさか本当に勇者なの!」

 「最初から勇者と言ってるだろ!」

 一気に踏み込み、双子の槍を両方とも吹き飛ばす。槍は地面に刺さる。

 「次は誰だ?」

 「俺だ!」

 超デカイ男戦士が現れた。

 「先程の実力、正しく勇者!勇者と手合わせ出来るなんて、恐悦至極。いざ!」

 こいつはなかなか話がわかるやつだな。ただ、一つ勘違いをしている。

 「実力?あれは実力でもなんでもないさ」

 「うおぉぉぉぉ!」

 戦士は斧を振りかざす。うーん。戦士系の攻撃の最高峰を見た後だと、物凄くしょぼく感じる。

 「なかなかいい筋だが、まだまだだ!」

 攻撃を斧ではじき返す。戦士は軽く吹き飛ぶ。

 「うおー!いいぞ!子供勇者!」

 「子供勇者!行けぇ!」 

 なんだその呼び名は。まぁこの見た目では仕方ないが。

 そんな感じで挑んでくる冒険者、一人一人に合わせた攻撃をした。少しでも自分の参考にしてくれたら嬉しい。

 「フゥ。こんなものか」

 だいぶ長い時間戦っていた。周りにはくたくたになった冒険者たちがいる。この経験は恐らく冒険者たちの役に立つはずだ。

 ふと、入口の方に目をやると、一人の女の子がこちらを見ていた。その女の子は目が合うと、そそくさと逃げていった。一体なんだったのだろうか。

 「お疲れ様です。リュート君」

 ギルドマスターが、労いに来る。

 「こんな感じだが、大丈夫だったか?」

 「あぁ。それぞれがいい体験になっただろう」

 セムラから報酬を受け取る。

 「そう言えば、この国にも勇者が居る。今度会ってみるといいだろう」

 「それもいいな」

 こうして、依頼をこなした俺はギルドを後にするのだった。
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