異世界を統べるのは人ではなく竜だ

第13章 天竜の試練篇

第149話 番犬

　城に踏み込む。中はとても豪華で雅な雰囲気がある。こんな場所に住んでみるのも悪くないなと思う。そんなことを考えていると、前方に何かがいることに気が付く。

　「グルルルルルル！」

　白い毛並みの獣がそこには居た。ここを守っているボスと言ったところだろうか。見るからに凶暴そうな性格で近づいたら噛みつかれてしまいそうだ。周囲を確認しても先に進む道は見つからない。先に進むにはこの獣をどうにかするしかないみたいだ。

　しばらく様子を観察してみる。向こうから近づいてくる様子はない。だが、こちらが一歩でも近づけば、唸りを上げ威嚇してくる。
　よくよく見ると可愛い見た目をしている。正直倒すのはしのびない。どうにかして手懐けることは出来ないだろうか。

　「大丈夫だよ。怖くないよ」

　声をかけながら近づく。

　「ガルルルルルルル！」

　獣はさらに唸る。まるで効果がない。

　どうすればいいのだろうか。何故この獣がここに居るのかを考えることにした。

　この獣は外敵が近づくと威嚇し、襲いかかる。この獣は何かを守っているのだろうか？そして、ここは天のダンジョンだ。このダンジョンも誰かが作り上げたものに違いはない。その作った何者かがこの獣を配置したのだとしたら…この獣は主人を待っている？

　この獣は新たな主人が現れるのを待っているのかもしれない。その主人に私がなれば…そう、ここで私の種族を思い出す。「天」竜小人。奇しくも天の名を冠する種族なのだ。かつてこのダンジョンを作ったのが、天を冠する種族ならば、この獣の新しい主人に私はなることが出来るかもしれない。

　しかし、天の種族を証明するにはどうしたら良いのだろうか。ステータスを確認する。

　名前　クリア
　種族　天竜小人・神種-超過(ヘヴンリィドラゴニュートキッズ･ディバインオーバー)
　rank　99
　称号　慈愛の透女

　神号　感情覚醒者[愛]
　
　技能　重力操作 慈愛 成長超促進 身体超強化 透明化 変身 天力

　「天力」。これだ！これを発動させれば！

　「白き獣よ。天の力の前に静まりたまえ」

　体から光のオーラのようなものが溢れ出す。

　「くぅーん」

　さっきまで唸っていた白き獣は大人しくなり、擦り寄って来た。

　「可愛い！」

　こんなに可愛いのだ。倒さなくてよかった。

　『擬似眷属を入手しました。名前を決めてください』

　脳内アナウンスが流れる。ローザもやっていたが、これが眷属か。しかし、疑似のとは何なのだろう。それより名前、名前か…白くてもふもふでまるで綿みたいな見た目だ。

　「じゃあ、あなたの名前は『コットン』でどう？」

　「くぅん！」

　嬉しそうにしっぽを振っている。喜んでくれたみたいだ。

　『疑似眷属「コットン」が追加されました。尚、召喚術の適性がなかったため破棄されました。よって眷属は擬似になります』

　なるほど。それで擬似なわけだ。

　こうして、私は新たな仲間コットンが増えたのだった。