異世界を統べるのは人ではなく竜だ

第19章 最強の証篇

第224話 予選の始まり

　こうして、ユリウス主催の闘技大会が始まった訳だが、俺たちのグループ分けはこうだ。
　AからJまであるブロックの中で、俺がJブロック、クリアがHブロック、サレナはBブロック、ミラはCブロック、ルージュがIブロック、ローザはFブロック、コットンはAブロックとなった。
　因みに、アイティオはDブロック、スプラはサレナと同じBブロック、ユリウスはGブロックとなっている。

　早速、コットンが出場するAブロックの試合が始まろうとしていた。俺たちは観客席でコットンを見守る。会場が大きいだけに観客も多い。

　「頑張れー！コットン！」

　クリアが声援を送る。

　「ご主人様が我を…！ご主人様の為にも、勝たなくてはな！」

　相変わらずのローブ一枚スタイルのコットンだが、クリアの声援を聞いてやる気満々だ。

　「カーン！」

　試合開始を告げる鐘が鳴り響く。

　「ふん。どいつもこいつも雑魚ばかり。我の敵ではないわ！」

　この予選、最大の戦法は逃げ回ることと言っても過言ではない。なぜなら500人にも及ぶ大乱戦なのだ。誰の流れ弾が飛んでくるかわからない。

　しかし、コットンはそんなこと気にすることも無く、ひたすら敵を殴り飛ばしている。流石に人を食べる訳には行かないので、必然的にコットンの攻撃は限られる。得意技を封じられたとはいえ流石は天狼、コットンの動きは素晴らしいものだ。

　「ふん！弱い！弱すぎるぞ！」

　華奢な美少女が巨漢をバッタバッタとなぎ倒している姿はとても絵になる。

　「うおー！アイツすげーぞ！」

　「見ない顔だな？よその国の冒険者か？」

　「しかも、あの動きだ。只者じゃないぜ！」

　観客達もコットンを注目している。しばらくすると、別方面から歓声が上がる。

　「あっちも凄いぞ！」

　「なんて速さだ！」

　観客の視線の先には刀を使って圧倒的な速さで敵を切り裂いている、犬耳の女剣士の姿があった。俺以外の刀使いを初めて見た。どうやら、刀も普通にこちらの世界にあるようだ。

　「ほう？あやつは出来そうだな」

　コットンは自ら犬耳剣士の元へ近づく。

　「貴方は？」

　「我の名はコットン。貴様がかなり出来そうだから我が直々に相手をしてやろうと思ってな」

　「私はルーフと申します。コットンさんもなかなかお強いのですね。相手にとって不足はありません。私の刀、狼煙切のろしぎりの錆になっていただきます」

　「ほう？ルーフ貴様なかなかいい武器を持っているんだな」

　ルーフが居合の構えをする。コットンは何の警戒もしていない。

　「貰いましたよ！」

　ルーフの刀が高速でコットンを切り掛る。

　ガキィーン！

　「えっ！」

　コットンは刀に噛みつき止めた。

　「ふん！甘いわ！」

　バキバキィ！コットンは容赦なく刀を噛み砕いた。

　「そんな…狼煙切が…」

　「我の勝ちだな。我に勝ちたかったらそんなものに頼らないことだ。ふん！」

　どごぉ！

　「ぐ！」
　　
　ルーフはコットンのパンチで沈んだ。

　そのままコットンはAブロックの予選を難なく勝ち抜いたのだった。