異世界を統べるのは人ではなく竜だ

第20章 終わる日常篇

第241話 神の居る世界

　車に乗り、車が発進する。ナフは俺の横に座り、この車は他の誰かが運転しているようだ。この世界のどこに神が居るのだろうか。

　「どのくらいで着くんだ？」

　「およそ20分くらいです。もう少々お待ちください」

　車の窓から外の景色を眺める。何度見ても現代日本にしか見えない。この世界に日本が干渉しているとでも言うのだろうか。

　「リュート様はこの世界を見ても、あまり驚きにならないのですね」

　ナフが俺に言う。

　「どうしてだ？」

　「普通の方でしたら、こんな見ず知らずの物が溢れた世界は恐怖を感じてもおかしくは無いからです。今までも何人かを案内してきましたが、その方々は皆、驚きを隠せない様子でした。しかし、リュート様の反応はまるでこの光景を見たことがあるような反応でしたので気になりまして」

　なるほど。俺が異世界人でこの世界の風景を知っているという事は天使達には知られていないという事か。このことは何かのメリットになることなのかもしれない。俺がこの世界の景色や物を知っているという事はバレない方がいいのだろう。

　「いや、驚くという感情が疎くてね。これでもかなり驚いているさ」

　「これは、失礼いたしました。もうすぐ到着致します」

　車が止まり、ナフが先に降りて俺側のドアを開く。

　「リュート様、こちらへ」

　ナフの後をついて歩く、俺が連れてこられたのは、この世界で最も高いビルのような建造物だ。ここに俺を呼んだ奴が居るのだろうか。

　建造物の中に入る。中は豪華な内装で高級なホテルのような印象を受ける。

　「こちらで上の階層に参ります」

　どう見てもエレベーターだが、知らないふりをする。ナフはエレベーターに内蔵しているパネルを操作する。

　『最上階に参ります』

　エレベーターのナレーションがなり、エレベーターが上がっていく。しばらく待つと、エレベーターの扉が開く。

　「私に着いてきてください」

　言われるがまま、ナフの後に続く。長い廊下のような場所の先に大きな扉がある。

　「私の案内はここまでです。依頼者は中でお待ちです」

　「案内してくれてありがとうな」

　「なぜ、私にお礼を？私はただ命令に従っているだけですよ？」

　薄々感じていたが、ナフからは生気を感じない。まるでロボットのようだ。恐らくだが、神が作り出したものなのだろう。

　「いや、君だって今を生きる一つの命だろ？だから礼を言うのは当然さ。じゃあ行ってくる」

　「は、はい」

　リュートが部屋の中に入っていく。ナフはその様子を見守る。

　「私が今を生きる一つの命とは…変わった人もいるのですね…」

　ナフの中に感じたことの無い何かが芽生えていた。